無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。

前回から大分空いてしまいましたが、32話でございます。


川神学園防衛戦④

リヒトー達は浮いていた。

いや、立ってはいる。しかし、何処かもわからない上下左右さえ分からない霧の包まれた空間に佇んでいるのだ。

「ハッ!」

リヒトーは抜刀と同時に斬撃を放つ。しかし、閃光の斬撃は泡沫のように静かに消失する。

続けて斬撃を放つが、結果は変わらない。

「参ったな…」

納刀しながらリヒトーが言葉を零す。その隣で園原がサブマシンガンを連射するが、結果は同じだった。

「俺の鉄もこの空間では無力のようだ…」

リヒトーの背後ではジェイルが鉄塊を生成している。しかし、鉄塊は生成された瞬間から消失していく。

「やっぱり、〝アノ〟光が原因かな?」

「そう考えるのが妥当だと思います」

リヒトーの疑問を園原が肯定する。

川神院におけるヴォイドとの戦闘にて発生した、というよりもヴォイドが放った光に飲まれたリヒトー達は何処かも分からない謎の空間に飛ばされていた。

「幸いなことに脚で踏みしめる感覚はある。進むしかないだろう」

ジェイルの言葉に頷いた一同は霧を祓うように歩きだした。

しかし、先も見えず進み続ける一行。いくら歩いても霧を抜ける様子は無く、同じところを周り続けているような感覚に陥る。

「埒があかないね」

「歩き続けましょう」

園原に促され、一行は進み続ける。

 

どれだけ歩き続けただろうか。考えることすら嫌になってきた時だった。

リヒトーが突然立ち止まる。ジェイル達は何事かと振り向くとリヒトーは周囲をキョロキョロしている。

「どうした? なんか見つけ―――」

訊ねる道安を手で制して人差し指を口元に立てるリヒトー。

先程とは打って変わり、真剣な表情をしたその様子に道安達の気配も変わる。

「聞こえないか? 声がする」

リヒトーは耳に手を当てて周囲の僅かな音も漏らさぬとばかりに集中している。

しばらくすると、静かに虚空を指さす。

「………あっちだ」

リヒトーが指した先は相変わらず霧しかなかったが、一行はその方角に歩みを進める。

声がする方角に歩き続けていると、リヒトー以外にも聞こえるほどの声量で声聞こえる。

「誰かー! 誰かいませんか!?」

声の主はどうやら女性のようだとリヒトー達は気付く。

「誰かいませんか! 助けてください。誰かいませ―――」

「そこにいてくれ。君の声は聞こえてるよ、すぐそっちに行くから!」

リヒトーは声の主に向けて叫ぶと、歩く速度を速める。

そして、さらに歩いた時だった。一行の前に架かる霧にぼんやりと人影が見えた。

ロングスカートのような服装のシルエットと、声の様子から察するに女性で間違いなかったとリヒトー達は思った。

そして、さらに近づいていくと姿がハッキリと確認できた。声の主は、メイドだった。

「…メイドさん?」

女性に会った第一声がそれだった、ちなみに第一印象も同じであったが。

女性が振り向く。赤茶色の髪を肩にかけ、若干薄汚れたメイド服に身を包む彼女は戸惑いと不安とが混ざった視線を向けている。

「助けを呼んでいたのは、君?」

「はい。あなた方は…?」

先程の叫んでいる声とは変わって弱弱しい声音で訊ねる女性。

いざ会ってみると不安で一杯になったんだな、とリヒトーは考えた。

「リヒトー・バッハ。ローズバルトっていう魔王の部下と戦っていたらこの空間に飛ばされちゃってね、脱出の方法を探りつつ歩いていたら君に声が聞こえたんだ。君の名前は?」

「アイシャ・グレイラットって言います。魔王ローズバルトと戦っているんですか?」

「ああ、そうだよ」

と、女性―――アイシャの問いに答えたところでリヒトーの脳に疑問が浮かぶ。

「グレイラットって………、君がルーデウスの妹さんか!?」

「兄を知ってるんですか!?」

知った名前が出たアイシャは目を丸くする。

食い気味に訊いてくるアイシャに若干戸惑いながらもリヒトーは答える。

「一緒に戦ってるんだ。エリスやオルステッドさんともね」

「アイシャさん。よかったら一緒に行動しませんか? お兄さんの元に帰るにも1人じゃ危険ですし」

リヒトーの隣にいた園原が手を差し出す。その手と園原達の顔を順番に見て、アイシャは握手を交わす。

「はい、よろしくお願いします!」

握手を交わしたままアイシャはぺこりと頭を下げるのだった。

 

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土煙が収まると、そこにはヴォイドと、その足元に横たわるランガがいた。

「あとはあなただけです。リムル=テンペスト」

横たわるランガには目もくれず、リムルとの距離を詰めるため歩き出す。

リムルも同じく、ヴォイドとの距離を詰める為に踏み出す。両者の距離がクロスレンジまで縮まった。

次の瞬間だった。

リムルが暴食之王を纏わせた拳を振りかぶると、地面を蹴って殴りかかる。その拳はアノスの『ベブズド』を参考にしたものだ。

拳は篭手によって防がれるがリムルは構わず拳を押し込む。力に任せての拳、仲間を目の前でやられて半分理性を欠いた攻撃であった。

「力技で私を倒すことは出来ませんよ。『ドゴス・アドラ』!」

篭手が光を放ち、リムルの拳が徐々に剥がされていく。

リムルは押されながらも踏み留まる、両者の態勢が拮抗する。ヴォイドが体重をかけてリムルを押し潰さんとする、リムルは徐々に押され、一歩、また一歩と後ずさる。

だが、それはリムルの計画でもあった。リムルの視界には入っていた、気絶から回復し、剛力丸を振りかぶってヴォイドの背後に肉薄するシオンの姿が。

シオンが振りかぶった剛力丸を振り下ろす。ヴォイドはそれに気付いたが、篭手をシオンに向けることが出来ずに剛力丸のフルスイングを腹部に受けた。

中途半端に発動した『金剛』によって両断は回避できたが、ヴォイドの身の丈よりも長い剛力丸とシオンの怪力によるフルスイングによる衝撃でヴォイドは口から血を吹き出すとともに態勢を崩した。

だが、篭手から放たれた反発力によって上空に退避すると、息を深く吸って呼吸を整える。

数十秒の後、ヴォイドがリムルを見下ろして口を開いた。

「油断、しましたよ。とどめを刺しておけばよかった」

口元の血を拭いながら川神学園の方角に目をやり、ヴォイドは続ける。

「…向こうも苦戦しているようですし、このあたりでお開きにしましょう」

「逃げるのか? ならおとなしく自分達の世界に引き籠ってればいいじゃないか」

リムルの挑発に僅かに眉を動かしたヴォイドは、溜め息を吐きながら口を開く。

「逃げる? 負けてもいないのに逃げると仰いますか? なら帰る道中にあなたの世界に寄らせていただきましょう」

「………来るなら来てみろ」

ヴォイドの挑発返しにリムルの眼光が鋭くなる。視線だけで人を射貫くのではないかと思わせる鋭さで、ヴォイドを睨みつける。

「………やめておきましょう」

ヴォイドは短く答えると、さらに上空へと飛び去ってしまった。

視線だけでそれを見送った後、視線をシオンへと落とす。

「大丈夫かシオン?」

「はい、大丈夫です。それより、ランガはどうですか?」

シオンとリムルがランガを見る。ランガは先程から動かない、しかし死亡したわけではない。先程までのシオンと同様、一時的に行動不能となっているのだ。

「『反発』か…。面倒だな」

そうこぼしながらリムルは周囲に倒れている川神院の修行僧やルー達にフルポーションを使用して回る。

「百代達の方は、どうなったかな…」

いまだ怒号が聞こえる川神学園の方角に視線を向けて、リムルは呟いた。

 

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川神学園での戦いも終わりを迎えようとしていた。百代とグワッツェの一騎打ちも百代が優勢である。

無双正拳突きを数発腹部に受けて、グワッツェにも疲れが見え始める。

無論、それは百代も同じであるが。

「ヴォイドの奴、撤退したか………。なら」

グワッツェはファイティングポーズを解くと、百代を指さす。

「楽しい時間はここまでだ、決着は次の機会にするとしよう!」

そう言った後、グワッツェは地面へと拳を打ち付ける。するとグワッツェを囲むように地面が捲りあがり、まるで大砲が砲弾を打ち出すようにグワッツェが上空に真っ直ぐ飛び上がる。

瞬く間に姿が見えなくなり、百代達も戦闘態勢を解いた。周囲には戦闘不能となった敵兵とこちらの負傷者。

動ける者達で敵兵士達の捕縛と負傷者の手当てと搬送を行う。そうしていると、校舎内で戦闘していたルーデウス達が校庭へと出てきた。

「敵は撤退したか…」

オルステッドが周囲の惨状を見渡しながら口を開く。百代はオルステッドの前に立つと、右手を差し出す。

「みんなを守ってくれてありがとう」

「礼には及ばん」

そう答えながらオルステッドは百代の握手に応えた。

「少しよろしいかな?」

そこにアインズがやって来る。後ろにはアルベドが兜を外して控えている。

「そちらも、協力感謝するよ」

「なに、礼を言われるほどではないさ。共通の敵を追っているようだしね」

百代と握手を交わしながらアインズは答えると、グワッツェが飛び立った方向を見る。

「お前も魔王ローズバルトと戦っているのか?」

オルステッドに訊ねられ、アインズは「ああ」と頷く。

「自己紹介が遅れたな、私は川神百代。よろしく」

「オルステッドだ」

「私はアインズ・ウール・ゴウン。アインズと呼んでくれ」

オルステッドとも握手を交わしながらアインズは名乗る。

そこにリムルとシオンが到着し、続いてターニャ達も戻ってきた。

全員が自己紹介を終えると、川神学園の教室の1つを貸りての会議が始まった。

まずはじめにリヒトー達が行方不明になった事、川神院で戦闘していた鉄心を含む全員が戦闘不能となった事などの情報が共有された。

百代や一子達は心痛な面持ちではあるが、今後のためにも話を進めることにしたリムルであった。

「準備が出来次第、異世界に向かおうと思うんだが。どうだろうか?」

リムルの問いにオルステッドが訊ねる。

「構わないが、アノス達はどうする。魔王軍と戦闘中かもしれんぞ?」

その問いに続いてルーデウスが挙手をして口を開く。

「それに、他の世界が攻撃されているかもしれません。それを確認してからの方がいいのでは?」

「勿論、道中で魔王軍を発見したら戦うさ。アノス達は………大丈夫だろう」

オルステッドとルーデウスの問いに答える。そこにハルトとクリスが入室する。

「どうだった、ハルト?」

リムルに訊ねられたハルトは一度頷くと「成果はありました」と答えた。

「ローズバルトの情報を吐いたんですか!?」

「最初は口を割らなかったんですが、少し荒っぽい方法を試したらポロリと話しました」

身を乗り出したルーデウスにハルトは答えると、数枚の書類をリムルに渡す。

「リムルさん達が遭遇した『管理者』に関しての情報は得られませんでしたが、ローズバルトや異世界に関しての情報は得られました」

クリスがホッチキスでまとめられた書類を全員に渡してまわる。

受け取った者から書類に目を通していくと、1人を除く全員が驚愕に表情を歪める。

「ハルト、説明を頼む」

リムルが視線をハルトに向ける。ハルトは頷くと黒板の前に立ち、全員を見渡して口を開いた。

 

 

 

「では、説明します」

 




お読みいただきありがとうございました。

仕事が繫忙期に入るため、投稿スピードが落ちてくるかもしれません。

今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。


それでは次回でお会いしましょう。
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