無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

33 / 45
閲覧いただきありがとうございます。

大分投稿が遅れてしまいました。申し訳ありません。

今回から『86 ―エイティシックス―』の世界が舞台になります。


今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。


ギアーデ連邦防衛戦

魔王軍幹部であるエンリクスの尋問は最初こそ穏便であったが、エンリクスが黙秘を決め込んだために、〝尋問〟から〝拷問〟へと変わった。

顎、腹、そして急所などを段階的に殴打した。さらには刀による指詰めまで実行しようとした。

実際は刃が指に斬り傷を付けたところで、あっけなく吐露したのだが。

多くの世界の脅威となる魔王の配下である〝敵〟であるエンリクスに、ハルトは何の情も浮かばなかった。だからこそ、ここまで非情な手段を取ることが出来たし、情報を得ることが出来たのだ

そうして得られた情報を整理して資料にして全員に配る。無論、説明役であるハルト自身も資料を持っている。

ハルトは全員に、ローズバルトの目的を説明した。

他の世界の存続のためのリソースにされる自分達の存在、その確立と記憶のために多くの世界に侵攻しているのだと。

そして、その目的は〝侵攻〟から〝征服〟に変わったことも分かった。

これまで、漠然と考えてきた〝征服〟が事実となったことで、一同の表情は曇る。

これには、アインズ達、新規加入組も同様の反応を示した。

シティックの偵察によってちょっかいを受けたアインズ達からすれば、いまだ直接戦ったことが無いローズバルトの実力を判断しかねているのだ。

未知の強さの敵が征服目的で向かってくることは、焦りを生んだ。

次にハルトが話したことは、同時進行で行われている侵攻についてだ。千束達の世界に侵攻した部隊と百代達の世界に侵攻した部隊。それとは別でもう一つ、部隊があることが分かったのだ。

 

 

 

その世界は―――

 

--------------------------------------------

 

「ジオ・グレイズ」

アノスが前方に翳した掌に魔法陣が展開され、放たれた漆黒の太陽がローズバルト軍の機甲部隊を飲み込んだ。

現在アノス達はシンエイ達の世界にてローズバルト軍との戦闘を展開している。

ジャイアントガモッサが先陣を切り、ロンゴドルの機甲部隊が続く。それと別動隊としてガイコツとブギョルが部隊を展開しており、シンエイ達が所属する共和制ギアーデ連邦はローズバルト軍に包囲される形となった。

ジャイアントガモッサが巨体を動かし、進軍する。

連邦軍も戦力を投入しているが、その戦力差は圧倒的で、進軍を遅らせるので精一杯だ。

「これ以上進ませませんよ!」

エルネスティの駆るイカルガが進路上に降り立つと、二丁のソーデッドカノンを構える。

銃剣のような武装の剣身がY字に開き、銃弾のように魔力を射出される。放った全てがジャイアントガモッサに命中するが、その巨体に対して効果は無かった。

『効かんぞ、そんなもの!』

ジャイアントガモッサは頭部などを庇う事すらせず駆け出す。地響きを立てて巨体が地を踏みしめ、接近する。

イカルガに攻撃が届く距離まで近づくと、その剛腕を振りかぶり、文字通り鉄拳を叩きつける。

エルネスティはイカルガの背面のサブアームで鉄拳を受け止めた後、メインアームでジャイアントガモッサの頭部に拳を叩き込ませる。

直撃した感触はあったが巨体はビクともせず、サブアームに受け止められた拳を押し込んできた。

「イカルガが押されている!?」

イカルガのコックピット内でエルネスティが驚愕の表情を浮かべる。その額には一筋の汗が滴る。

ジャイアントガモッサが空いている左拳も振り下ろすがイカルガの右側サブアームが受け止める。

ソーデッドカノンを振るおうにも距離が近すぎるために思うように動けないでいる。取っ組み合いのような態勢で両機の視線が交差する。

ジャイアントガモッサの頭部が後方に振りかぶられたと思った、次の瞬間だった。

その巨人は、イカルガの鎧武者のような頭部目掛けて頭突きを見舞ったのだ。

態勢を崩し後ずさるイカルガに追撃せんと拳を振りかぶるジャイアントガモッサ。エルネスティは予想外の攻撃に僅かに怯み、結果それによって生じた時間がジャイアントガモッサの追撃を許すことになった。

だが、ジャイアントガモッサの拳はイカルガには届かなかった。

横から割って入った機体―――ツェンドルグがジャイアントガモッサに体当たりをしたのだ。

イカルガに並び立つようにツェンドルグが停止する。まるで人馬のような形態のこの機体にはエルネスティの仲間のキッドとアディが搭乗している。

体当たりによって転倒したジャイアントガモッサが起き上がり、2機に視線を向ける。

ツェンドルグは右手に握る斧槍を構えると、回り込むように駆けだした。

『エル。挟撃するぞ!』

「わかりましたキッド。合わせてください!」

キッドからの通信に応じると、エルネスティはイカルガを跳躍させる。

両方のメインアームに握られたソーデッドカノンをソードモードで上段に構えると機体の落下に合わせて振り下ろす。それに合わせてジャイアントガモッサの背後からツェンドルグが斧槍を横薙ぎに振りながら肉薄する。

『むんっ!』

腰を落とし、両腕で斧槍とソーデッドカノンを受け止めたジャイアントガモッサは、自身をコマのように回転させて攻撃をいなした。

攻撃を弾かれたツェンドルグとイカルガは一時距離を取ると、再び得物を構えて挟撃態勢をとる。

その足元を駆けて、敵機工隊集団に迫るシンエイ達スピアヘッド戦隊。

後方の装甲指揮者『ヴァナディース』にてレーナが各プロセッサーに指示を出す。

車内にはレーナの他にフレデリカと管制官のエルウィン・マルセルが搭乗している。

「『スピアヘッド戦隊』、敵集団と会敵。交戦に入りました」

マルセルからの報告を受けたレーナは直ちに他の戦隊への指示を出す。

「『クレイモア』、『サンダーボルト』両戦隊は北西から侵攻する敵機甲部隊を迎撃してください」

第86独立機動打撃群、第四戦隊『サンダーボルト』と第七戦隊『クレイモア』が北西に展開していく。

敵軍の主力が展開するのはギアーデ連邦の西部戦線。レーナが総指揮官を務める独立打撃群もそこに投入された。

巨神外骨格を装着した敵兵士群が迫る。第七戦隊長リト・オリヤが搭乗するレギンレイヴ『ミラン』を先頭に戦隊各機が地面を滑走するように迎撃に移る。四つ足の蜘蛛のようなフォルムを持つレギンレイヴを巧みに操り、侵攻する敵機甲部隊と会敵する。

シンエイ達からの報告にあった巨神外骨格を纏った兵士と、その後方には前足2本で姿勢を保ち、後部コンテナらしきものを引きずるように進軍してくる機動兵器が確認できる。

「あれはっ…、なんだ…?」

疑問を零すリト。巨神外骨格についてはシンエイ達からの情報共有によって知っていた。

だが先程、光学センサ越しに目視で確認できた機動兵器は完全に謎であった。その機動兵器に敵兵士が搭乗している様子が視認出来たことで、それが敵魔王軍のものである確信に変わった。

そして、謎の機動兵器の目撃情報は他の戦隊からも報告されていない。

「っ、北西方面で謎の機動兵器を確認!」

リトは知覚同調で機動打撃群各員に謎の機動兵器の存在を伝える。

すかさずレーナから同調が繋がる。

『敵魔王軍にもので間違いありませんか!?』

「魔王軍の兵士が搭乗することが目視で確認できました。間違いないと思います」

『その機動兵器の攻撃方法は?』

「今のところ攻撃してくる様子はありません。兵士が搭乗しているだけで、動きは止まっています」

〝謎の機動兵器〟の報告を受けた機動打撃群全体に緊張が走る。報告を受けたレーナは直ちに司令部との回線を開き、リトからの報告内容を伝えた。

司令部との通信を終えたレーナは再び知覚同調をリトに繋ぐ。

「敵機動兵器に何らかの動きがあれば、直ちに後退してください」

『了解っ!』

リトは同調を切ると、自機を前進させる。正面から戦隊各機を連れての迎撃を行う。リト達と衝突する敵機工隊の側面を突くように第四戦隊『サンダーボルト』が進撃する。

第四戦隊長ユート・クロウが駆る『ウルスラグナ』を先頭に敵機工隊を挟撃する。

両戦隊は巨神外骨格を纏った兵士に標的を絞って攻撃を開始する。謎の機動兵器に関しては一時放置することにしたのだ。

無論、警戒は怠らない。

リト達が駆るレギンレイヴは機動力はあるものの、装甲などは決して厚くはない。かつてリトやシンエイ達『エイティシックス』が隣国のサンマグノリア共和国の『86区』で戦っていた時に搭乗していたフェルドレス『ジャガーノート』に比べると、レギンレイヴはまだ〝多少〟マシなのだ。

だが、ギアーデ連邦の主力フェルドレス『ヴァナルガンド』と比べると非力ではある。

故にリト達も警戒は解かない。不意の攻撃を食らうことがいかに危険かを知っているからだ。

リトが機体前部に装着された『12.7㎜重機関銃』の照準を合わせる。

「…………やらなきゃ」

照準を敵兵士に定める。その瞳には迷いがあった。

これまで戦ってきた敵は『レギオン』。人間の脳を取り込んだ個体もいたが、その大半は無人兵器だった。リトだけではない、ユートも、他で戦っている仲間達も、異世界の敵とは言え生身の人間を撃つことは初めてなのだから。

「…………やらないと。こっちがやられる!」

意を決したリトがトリガーを引く。機体前方の格闘用サブアームに装着した12.7㎜重機関銃が火を噴いた。

 

--------------------------------------------

 

共和制ギアーデ連邦、中央指令室。

 

暫定大統領エルンスト・ツィマーマンはメインスクリーンに映し出だされた分布図を眺めている。

メインとなる照明は消され、室内を照らすのはメインスクリーンをはじめとする大小のモニターのバックライトだ。

エルンストは普段の量産品の背広ではなく軍服に身を包み、司令官用の席に座っている。その傍らには西方方面軍参謀長のヴィレムが控えている。

「押されているね」

席に腰を預けたままエルンストは口を開く。その言葉にヴィレムは一度頷くと、メインスクリーンの一部―――西部戦線を指す。

「はい。ミリーゼ大佐の独立打撃群が展開している西部戦線に主力が集中しています。アノス陛下達の助力もあり、突破はされていませんが…」

「他の戦線が危うい、ということだね?」

エルンストはヴィレムを振り向く。

ヴィレムは普段の表情を崩さず頷くと、他の戦線の損耗率などのデータを表示する。

「西部戦線以外の戦線の損耗率が30パーセントを超えました。このままではいずれ突破されます」

「アノス陛下達にそちらの応援に向かってもらうのはどうかな?」

「現在、幹部と思われる敵と交戦しているとのことですから。難しいかと…」

そう言われてエルンストは黙ると、別の策を思案する。だが、思い浮かばない。

ただでさえ無人兵器ではない生身の敵を相手にしているこの現状。各戦線からの「戦えない」旨の通信が先程から止まない。

敵とはいえ、顔が見えているのだ。そしてその敵を撃たなければならないのだ、前線の兵士達の心労は計り知れないだろうとエルンストも理解している。

 

 

 

だが戦わなければならない。

 

 

 

戦わなければ

 

「死ぬのは僕達か………」

 

--------------------------------------------

 

「埒が空かぬな」

アノスが敵兵士の頭を掴んで振り回し、そのまま振りかぶって投げ飛ばす。

投げ飛ばされた兵士は味方を巻き込んで彼方に消える。

アノス達が戦っている西部戦線の南には真魔王軍幹部のガイコツ旗下の部隊が展開している。

機甲部隊はレーナ達独立打撃群が展開している西部戦線の北方面から侵攻している為、こちらには生身の敵軍が展開していた。

数歩後退したアノスの背後の空間が揺らいだ次の瞬間、白骨の手刀が突き出される。

アノスが身を翻して手刀を躱すと、白骨は異次元に消えた。

「かくれんぼも飽きたな…」

アノスがため息交じりに言葉を漏らす。

いまだポケットに左手を入れたまま戦闘しているアノス。笑みをたたえた表情からも余裕が見て取れる。

再び空間が揺らぎ、手刀が繰り出される。

「ワンパターンでは芸が無いぞ」

アノスは指先を漆黒に染めて手刀を掴む。そのまま白骨を引き抜くように力をこめる。

引っ張られ、徐々に姿が露になっていく。

かつてルーデウスの世界で遭遇した骸骨の敵。エリスが戦っていたおかげで今回は対処が容易に出来た。

「引き籠っていないで、そろそろ出て来てはどうだ?」

アノスが思いっきり引き抜くと、ガイコツの全身が露になる。

「なぁにぃ!?」

髑髏顔の為表情は分からないが、驚愕しているのだとアノスは思った。

そして、今までポケットに入れていた左手を抜き、ベブズドによって漆黒に染めた指でガイコツの頭蓋を掴んだ。

メキメキと音をたてて頭蓋骨に亀裂が生じると、ガイコツが唸るような悲鳴を上げる。

「情報が欲しいとミリーゼが言っていたな。捕虜になるか、このまま消滅するか選べ」

さらに左手の力を強める。頭蓋を割れば消滅するのかはアノスにも分からなかったが、ガイコツが呻く様子を見て確信しつつあった。

「じぃ、次元がぁ、ゆがぁ、むぅぅぅぅ!」

ガイコツがさらに悲鳴を上げた、その時だった。

ガイコツの背後や横などの空間が歪む。先程攻撃してきた時の比ではない程に大きく捻じれる。

「これはなんだ?」

ガイコツを見下ろしながら訊ねる。だがガイコツは答えず、ただ悲鳴を上げている。

さらに歪みが大きくなり、周囲一帯の空間が捻じれていく。

 

 

 

「―――走れ、出口だ!」

声が聞こえた。アノスも聞いたことのある声だ。

声が大きくなる、まるで近づいているかのように。

周囲の歪んだ空間に亀裂が生じる。亀裂の隙間からは光が漏れ出している。

次の瞬間だった。亀裂が割れて人影が飛び出してきた。ガラスが割れるように飛び散り、一拍遅れて降り立った人影。

その人物をアノスは知っていた。

 

「―――あれ、アノスさん?」

 

リヒトー達がアイシャを伴って、この世界に降り立った。




お読みいただきありがとうございました。

エイティシックスのキャラのパーソナルネーム多すぎて頭が混乱しながらの執筆をしております。

前回にも書きましたが、仕事の関係で投稿が空くと思います。

次回の投稿は4月初めを予定しております。


今後もお楽しみいただければ幸いです。

それでは次回でお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。