無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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遅くなりましたが第37話になります。



ギアーデ連邦防衛戦⑤

シンエイは『アンダーテイカー』の脚部先端に収納されているパイルドライバを全て、オルディエンス・イータに打ち込んだ。

彼等が搭乗するレギンレイヴは四足機動の兵器だ。パイルドライバは合計4発。両前脚の2発が上半身ユニットに、両後脚の2発が脚部ユニットに打ち込まれる。

勢いよく撃ち出された杭は全て、ゼロ距離でオルディエンス・イータを貫通した。

『グゥッ! フー、フー! ウゥアアア!』

ロンゴドルが言葉にもなっていない叫びを上げる。それは最早、叫びとは形容出来なかった。雄叫びだった。

シンエイはパイルドライバを脚部からパージして、オルディエンス・イータから飛び退く。

着地をしてすぐに光学センサーをオルディエンス・イータに向ける。その場にてのたうち回るオルディエンス・イータと、雄叫びが響く。

『痛ぇ、痛ぇぞ! クソったれがぁ!』

体を起こしたロンゴドルはオルディエンス・イータに突き刺さったままのパイルドライバを引き抜く。

オルディエンス・イータの装甲だけではなく、ロンゴドルの体をも貫通したパイルドライバを引き抜くことはロンゴドルにさらなる激痛を与えた。

『殺してやる…。殺してやるぞ!』

先程よりも大きな雄叫びを上げてロンゴドルはオルディエンス・イータを跳躍させる。

パイルドライバを打ち込まれたことで脚部ユニットに不具合が生じたため、思うように動かせないのだ。故にロンゴドルが取った戦法は〝跳躍による一撃離脱〟だった。先程までの歩行が出来ないとあっては、こうする他なかった。

降下しながら左前脚を突き立てんと振り下ろす。左前脚は鋭利な剣となって『アンダーテイカー』を翳める。

〝当たらなかった〟と認識したら即跳躍して第二撃に移る。それを躱されて第三撃、第四撃と繰り返す。

しかし、シンエイも機体を巧みに操り回避する。

オルディエンス・イータが跳躍したタイミングを狙い、88㎜滑空砲の照準を定めるとトリガーを引く。

炸裂した火薬によって打ち出された徹甲弾が真っ直ぐオルディエンス・イータに迫る。

空中にて自由落下中のオルディエンス・イータに回避行動は不可能。万全のタイミングと狙いだ、シンエイも直撃を確信した。

だが、オルディエンス・イータが取った行動はシンエイの予想を裏切った。

『アンダーテイカー』が放った徹甲弾はオルディエンス・イータの脚部に吸い込まれるように飛来した。

だが、ロンゴドルはオルディエンス・イータの脚部を折り畳んだ。まるで、身を屈めるように。

そして、徹甲弾が脚部ユニットの真下を通過しようとした瞬間だった。

オルディエンス・イータの脚部が突如展開し、飛来した徹甲弾を蹴り返したのだ。

徹甲弾は来た方角に蹴り返される。無論、その先には『アンダーテイカー』がいる。シンエイはハッとして回避行動に映るが、蹴り返された徹甲弾が脇を翳めて大穴を穿つ。

クレーターのように穿たれた穴を一度振り返り、その衝撃で『アンダーテイカー』は僅かだが吹き飛ばされる。

いくらレギンレイヴが軽量とはいえ、フェルドレス一機を吹き飛ばす程の威力で蹴り返された徹甲弾。

その衝撃と、何よりその神技をやってのける敵に対して、シンエイはさらに戦慄した。

 

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「なんじゃあれは!?」

後方にて、『ヴァナディース』の車内でフレデリカが驚愕の声を上げる。

「何があったのですか?」

振り返ったレーナが訊ねる。フレデリカの瞳が〝真紅〟に染まってたため、〝誰かの現在を見たのだ〟と判断した。

「シンエイが戦っておる敵じゃが、少々分が悪いかもしれぬ………」

俯いたままフレデリカが話す。〝シンエイが戦っている敵〟〝分が悪い〟これらから分かることは〝シンエイが苦戦していて、敗けるかもしれない〟ということだ。

レーナはもちろんのこと、その場にいるマルセルもフレデリカの言った意味を理解できないでいた。

何を言ったかは分かった。だが〝何故〟シンエイが敗けるのかが理解できなかった。シンエイの強さはレーナもマルセルもよく知っている。

フェルドレスを扱わせたら、シンエイに勝てる者はいないだろう。それほどまでに強いシンエイが敗けるかもしれない、2人には全く想像できなかった。

「ライデン、シンの援護に向かえますか?」

レーナが同調を繋ぐと、すぐにライデンから応答があった。緊迫した声音で言葉が紡がれる。

『そうしたいんだが、敵の妨害が思いのほか強い。突破するにはもう少しかかるぞ』

「シンが敵幹部と思われる敵機甲兵器と交戦中です。どうやら苦戦しているようです、急いでください」

『やってみるさ!』

ライデン達『スピアヘッド』戦隊から少し離れた位置で、リト達も戦闘を継続している。

包囲陣が中途半端に構築された以上、敵を各個撃破しつつ包囲陣の完成を目指しているのだ。

だが現実は簡単にいかない。徐々に押し込んでいるが、それに比例するように味方の損失も増している。今のところ戦死者は出ていないが、戦闘不能となった機体も多い。

リトの『ミラン』も、戦闘続行は可能だが、右の『12.7㎜重機関銃』の砲身が折れて使い物にならなくなっている。

それに何より、弾薬の補充が追い付かない。

敵を押し留めるためには、攻撃し続ける必要がある。

戦隊を2チームに分けて入れ替わりで攻撃をすることで弾薬の消費を抑えているが、それも長くは続かないだろうとリトは考えていた。

そして、その考えはかなり早い段階で現実のものとなった。

先程まで押し留めていた敵軍が、攻勢に転じたのだ。こちらの攻撃に対して機甲兵器一機を先頭として、後続がその影に隠れるように前進する。

そして先頭が倒れると、二番目が先頭となって前進する。先程まで先頭だった味方を踏みつけながら。

味方を盾にしての攻勢、味方の犠牲を、死をものともせず前進し続ける敵軍に、リト達も恐怖を覚えていた。

だからといって包囲陣を突破されるつもりはリトにも毛頭ないが、現実問題として弾薬も残り少ない。

リトはシンエイのような近接戦闘を行えない。

いや、〝シンエイだけ〟なのだ。フェルドレスで斬り合いを行うような者は。

だからこそ、リト達は弾薬の消費を抑える戦闘を行う必要を強いられた。ローテーションを組んでの攻撃で敵軍を抑えてはいるものの、敵に徐々に押されている。このままでは包囲陣を破られるだろう。

「弾薬も少ない。破られる………」

トリガーを引き続けながら、それでも抑えきれない自分に舌打ちして、リトは同調を繋いだ。

「『ミラン』よりヴァナディースHQ。当戦隊の弾薬は残り僅か、敵集団の反撃を遅らせるので精一杯。指示を!」

一拍置いてレーナが答える。

『ヴァナディースHQより『ミラン』。『リュカオン』『サンダーボルト』戦隊と合流してください。北のポイントAで合流後、北東に移動してください』

レーナの指示を聞いたリトは息を呑む。そこに別の同調が割って入った。

『ちょっと待ってくれ女王陛下、それじゃあ包囲陣に穴が出来ちまう、敵を逃がすことになるぞ?』

声の主はシデンだ。シデンの言ったことは、リト達も懸念したことだった。リトの『クレイモア』含む3戦隊が北東に移動すれば。西方方面がガラ空きになる。それは、包囲陣を解除することになる。

だが、レーナが発した言葉で、各人は従うしかないと判断した。

『弾薬が残り少ないのは『クレイモア』だけではありません、『サンダーボルト』『リュカオン』も同様です。このまま包囲陣を継続すれば弾薬切れの戦隊が出ます、そうなれば被害は小さくありません』

『だがッ!』

それでも反対するシデン、しかしレーナは努めて冷静を心がけて続けた。

『このまま続けて包囲陣が破られる可能性があるなら、まだ余力がある内に行動すべきと判断しました。『ブリジンガメン』戦隊はアノス陛下達と共に南東から西方に移動してください』

そい言われてシデンは理解した、レーナは作戦の完遂ももちろんだが、何より〝誰も死なせない〟ことを今回の戦いで優先しているのだと。

『了解だ、女王陛下ッ』

シデンからの同調が切れる。リトも「『クレイモア』了解」と答えて合流地点に移動開始した。

 

一方、オルディエンス・イータと戦闘を継続中のシンエイも同調にて次にすべき行動を決断した。

『アンダーテイカー』を左右に跳躍させて距離を取ると、回り込むように後退を開始する。シンエイと『スピアヘッド』『ノルトリヒト』戦隊が目指すのは、西方。

レーナの搭乗するヴァナディースのいる地点だ。

『ブリジンガメン』戦隊がアノス達を伴ってレーナとの合流に向かっている。シンエイ達もそちらとの合流するべく動き出した。

追いついてきたライデン達と合流したシンエイは後方に迫っているであろうオルディエンス・イータに注意を向ける。

だが、シンエイの考えとは反対にオルディエンス・イータの追撃は無かった。しかも、他の機工隊による追撃もである。

「追撃が無い、なにかあるのか…?」

自機のコックピット内で独り言を漏らしたシンエイに同調が繋がる、相手はライデンだ。

『シンが撤退を開始した時点で俺達に対しての攻撃も弱くなった。追撃する余力が無いのか、他に考えがあるのかは分かんねぇけどな』

「だが、こちらとしては好都合だ。このまま合流地点に向かう」

『了解だ』

並走する『アンダーテイカー』と『ヴェアヴォルフ』を先頭に西方のレーナ達との合流を急いだ。

 

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「かなり押されているね」

シデン達『ブリジンガメン』戦隊とともに南東を移動中のレイが隣を行くアノスに声を掛ける。

「物量差によるものだな。戦闘を開始したころよりも敵の数が増えている、その謎が解けねば消耗戦になるだろうな」

アノスの表情は相変わらず余裕を湛えている。アノスの背後を行くシンは周囲を警戒しながら口を開いた。

「ミリーゼ大佐がこの先の戦況を予測していないとは思えません。合流を急ぎませんと」

シンの言葉にアノス達は頷き、レーナ達との合流を急いだ。




お読みいただきありがとうございました。

今回は少し短いですが、区切りのいいところだった為、このような切り方になりました。


次回も楽しんでいただければ幸いです。

それでは次回でお会いしましょう。
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