無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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86―エイティシックス―世界での話はもう少し続きます。

今後も楽しんで頂けるよう精進して参りますのでよろしくお願いいたします。


ギアーデ連邦防衛戦⑥

無数の世界が揺蕩う可能性の奔流。

 

その中で今まさに世界同士の戦闘が続いている。押し寄せる真・魔王軍を迎撃するアノス達。

そんな様子を世界の外から眺めている存在がいた。

1人は通常の人間サイズだが、もう1人は巨人だった。それも、とてつもなく巨大な。

『さぁて、と。どうしたものかな、行ってみるか?』

巨人が首を左右に鳴らしながら訊ねると、もう一人が巨人の肩に降り立った。

『災いの芽は、摘む。議会で決定した』

流暢とは程遠い言葉遣いで答える。仲間の返答を聞いた巨人は歯を剥き出しにして呻きを上げる。

『俺がプチプチ潰して回るからよぉ、お前はたらふく食えばいい!』

『無論、そうする。武器も集めなくては』

巨人の体が、世界の壁を越えた。

 

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空が揺れた。一瞬の出来事であったが、空が陽炎のように歪み、その直後には轟音が地上へと響いた。

轟音は音だけではなく衝撃となって地上に襲いかかる。敵味方関係なく、その衝撃を受けることとなった。

「今度は何です、敵の攻撃ですか!?」

ヴァナディースの車内にも衝撃は例外なく襲い掛かった。レーナはアイシャを庇いながらマルセルに訊ねると、マルセルからは「詳細不明」の返事が返ってきた。続けて

「敵軍の動きにそのような素振りはありませんでした。敵幹部の攻撃とも思えません」

マルセルからの回答を聞いたレーナも敵の攻撃ではないことは薄々感じていた。現在起こっている現象は先のオルディエンス・イータのアドラ・フィールドとは若干異なっているからだ。

そして、しばらくすると衝撃は収まった。周囲を見渡しながらレーナは立ち上がる。

「アイシャさん、ケガはありませんか?」

傍らのアイシャに声を掛けると「大丈夫です」という返事が笑顔とともに帰ってきた。

アイシャをゲストシートに座らせると、スクリーンを確認し、絶句した。

 

解除した包囲陣の中央、敵軍のど真ん中ににそれはいた。

エルネスティのイカルガよりも、ジャイアントガモッサよりも巨大な。

 

「さらに巨大な、巨人……?」

スクリーンには降り立ったであろう巨人が映し出されている。その足元には踏みつぶされ、絶命した真・魔王軍の兵士達。

「魔王軍の増援、でしょうか…?」

その様子を見たマルセルが独り言のように漏らす。レーナもフレデリカも、言葉を発することは出来なかった。

それほどまでに、その存在は圧倒的だった。

突如戦場に降り立った巨人が着地姿勢から起き上がると、その大きさはレーナ達にさらなる絶望を与えた。

エルネスティのイカルガより大きいジャイアントガモッサをも超える巨体。20mはあるであろうその巨体は、自信の足元を見渡す。

巨人の足元には着地の際に踏み潰された真・魔王軍の兵士の亡骸や機甲兵器の残骸が転がっている。

それらを足で払い、周囲の真・魔王軍を一瞥すると、少し離れた位置にいたジャイアントガモッサに視線を向ける。

ジャイアントガモッサは巨人の出現直後、エルネスティ達との戦闘を中断して巨人の動向を見ていた。

そして、巨人の視線が自身に向いたことの〝意味〟を理解したジャイアントガモッサはエルネスティ達に背を向けて巨人へと駆けだした。

実際のところは、巨人が疾走しているのでかなりの地響きが起こっているのだが。

『何者だ!』

巨人を拳の射程に収めると、ジャイアントガモッサは勢いよく拳を振りかぶると、巨人目掛けて拳を繰り出した。

轟音を伴って拳が空を切り、巨人に迫る。巨人の腹部に強烈なストレートが叩き込まれた。

しかし一発ではない、右拳、左拳と交互に拳が叩き込まれ、その都度、脳を揺さぶるような衝撃が周囲に轟く。

剛腕から放たれる拳の連打を受けても巨人はビクともしない。むしろ鬱陶しそうにジャイアントガモッサを見下ろしている。足に這う虫を見るような目で。

巨人の腕が動いた。右手でジャイアントガモッサの頭を掴み、持ち上げる。

『ぬぅおお、バカな!?』

驚愕の声を上げながらジャイアントガモッサはジタバタともがくが、巨人の右手を振り払うことは出来ない。

ゆっくりと持ち上げられ、地面から離れていくジャイアントガモッサ。そ様子はさながら今この場において、この巨人こそが絶対的な強者だと誇示するかのようである。

巨人の右腕が止まる。最早どう足掻いてもジャイアントガモッサは脱出出来そうもないと、この場のほぼ全ての者が感じていた。

その、次の瞬間だった。

巨人の右腕が勢いよく振り下ろされたのだ。無論ジャイアントガモッサを掴んだままで、だ。

着地の時と同程度の轟音が周囲を揺らす、舞い上がった土煙が、巨人を丸ごと覆い隠した。

ジャイアントガモッサを叩きつけた姿勢から立ち上がると、再び叩きつける。

それが何度繰り返されただろう。周囲は土煙によって何も見えなくなっていた。

土煙の中にシルエットが浮かび上がると、しばらくして土煙も収まって来る。

そこには、ピクリともしないジャイアントガモッサを片手で掴んで持ち上げている巨人がいた。

ジャイアントガモッサは腕を力なく垂らし、微動だにしない。何度も地面に叩きつけられたために全身傷だらけの状態だった。

巨人は興味が失せたのか、掴んでいた右手を開く。重力に従いジャイアントガモッサの巨体が落下する。

地響きと轟音、それと土煙を上げて横たわるジャイアントガモッサを踏みつけて巨人は周囲を見渡す。

「各員、新手の巨人の行動を警戒してください!」

レーナが同調で呼びかけると、各員の間にさらなる緊張が走る。

目の前の巨人はエルネスティ達が抑えるので精一杯だったジャイアントガモッサをいとも簡単に撃破した、眼前で起こった出来事からレーナが導き出した結論は。

 

〝まともに戦っては勝てない〟だった。

(アノス陛下でも苦戦するでしょうか…)

スクリーンに映る巨人は今のところ真・魔王軍を攻撃している。おそらく〝近くにいたから〟だとレーナは考えている。そこでレーナは各員に後退を指揮した。

北に移動していたレーナは東に下りつつ後退した他の戦隊との合流を急いだ。

東に向かいつつレーナは巨人の動向を観察していた。

巨人は真・魔王軍の機甲兵器や兵士を踏み潰しながら歩いている。それはまさに〝蹂躙〟とも〝虐殺〟とも取れた。

指揮官の1人であるジャイアントガモッサを失った敵軍の統率は完全に崩れた。

シンエイの追撃を中断して巨人に攻撃を仕掛けたオルディエンス・イータも、あっけなく返り討ちにされた。

上半身と脚部ユニットをそれぞれ掴まれ、真っ二つに引きちぎられたのだ。

引きちぎられたオルディエンス・イータはごみをポイ捨てするように放り捨てられた。

さらに指揮官を失ったことで、敵兵士達はさらに統率を失い撤退を開始した。

統一性も無くバラバラに逃げる様はまさに〝敗走〟だった。

 

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「…虐殺だね」

レイが巨人による惨劇を横目に見ながら呟く。

現在アノス達は『ブリジンガメン』戦隊に同行してレーナとの合流地点に向かっている。

「敵ながら哀れに思えてくるな」

レイと並ぶアノスも目の前で起こっている光景に嘆息する。

巨人の出現によって真・魔王軍は総崩れとなった。だが、こうも圧倒的な蹂躙となっては不憫に感じずにはいられなかった。

「あの巨人と〝もう1人〟、一体何者でしょうか」

アノスの背後を行くシンが巨人の肩を一瞥して言う。シンの言葉にアノスは「巨人の仲間で間違いないないだろうな」と返す。

そう、アノス達は巨人と〝もう1人〟の存在を認識していた。

今のところ、巨人の肩から動く様子がない為、特に警戒していなかったが。

「とにかく今はミリーゼ大佐との合流を急いだ方が良さそうだね」

レイの言葉に一同は頷き、シデン達と共に合流地点に急いだ。

「そういえば。あの骸骨はあれから見ないわね」

サーシャが周囲を見渡しながら言う。確かに、と一同は思った。

アノスに惨敗し、シンに撃退されたガイコツは今のところ襲撃してこない。巨人の出現による混乱に紛れて撤退したのではと考えたアノスは、すぐにその考えを訂正する。

「どうやら急いだほうが良さそうだな」

アノスは視線を目的地―――レーナの搭乗するヴァナディースがいる方角に向けた。

 

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「マルセル少尉、出してください!」

レーナの号令が飛ぶ。マルセルがハンドルを握り、ヴァナディースが戦場を爆走する。

 

突然の出来事だった。突如、ヴァナディースの搭乗ハッチが空いたと思った次の瞬間だった。ハッチの外の時空が急速に歪み、白骨の死神を思わせる髑髏が顔を覗かせた。

真・魔王軍幹部のガイコツだ。

「ヒッ、あれです! 私を攫ったの!」

アイシャが身を縮こませながら指さす。レーナは目の前の骸骨が敵だと認識した。

「エェサァは、おとなぁしぃく、してぇいろぉ!」

ガイコツが白骨の腕をアイシャに伸ばす。

レーナの切り替えは早かった。

「マルセル少尉、出してください!」

マルセルはレーナの指示を瞬時に理解し、行動に移す。ヴァナディースのエンジンが爆音を上げると、勢いよく加速する。

「にぃがすかぁ!」

ガイコツも逃がすまいと更に腕を伸ばすが、白骨の指先はヴァナディースの搭乗ハッチを僅かに翳めるだけだった。




お読みいただきありがとうございました。

ヤバいです、風呂敷を広げすぎてどう畳もうか思考の日々です。

ですが、全ての作品を尊重した終わり方を模索しておりますので、今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。

それでは、次回でお会いしましょう。
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