無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。

そんなこんなで39話です。

100話、行っちゃうかもしれません。
今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。


ギアーデ連邦防衛戦⑦

ヴァナディースとガイコツの鬼ごっこは続いている。

レーナは同調にて各員に状況を伝えるが、どの戦隊も合流までに時間がかかる。

直営の『ブリジンガメン』戦隊をアノス達の案内役に出してしまったことが仇となった。

ヴァナディースの進路上の空間が歪み、白骨の腕が伸びる。

「避けて!」

レーナの指示が飛び、マルセルが進路を変更する。だが、再び進路上にガイコツが出現する。

さらに進路を変更して南下する、先程からその繰り返しだ。

「機関銃の準備を、次に敵が出現したタイミングで斉射してください」

「了解!」

ヴァナディースには自己防衛用に必要最低限の火器が搭載されている。その1つ、12.7㎜機関銃を発射体制でヴァナディースを走らせる。

そして、その時は来る。

ヴァナディースの進路上の空間が歪む。裂けるように開かれた次元の裂け目からガイコツが髑髏顔を覗かせる。

しかし、今回は進路を変えない。さらに加速して前進する。

ガイコツは何かを察して慌てたような素振りを見せる。だが、もう遅い。

「今です!」

レーナの号令で機関銃が前方に斉射される。射線上にいるのは勿論ガイコツ。

無数に放たれた銃弾がガイコツを翳めていく。白骨の腕を眼前で組み、防御態勢を取るが遅かった。

進路がそのまま射線になるとはいえ、揺れながらの射撃では大半が命中しない。だが、ガイコツをその場に留めることには成功した。

「そのまま!」

レーナはスクリーンに映るガイコツを睨む。ヴァナディースは減速するどころかさらに加速する。

そして。

30トン級の装甲車両が白骨の敵を跳ね飛ばした。

土煙でガイコツの様子はよく見えないが、レーナは撃退出来たと判断して合流を急いだ。

レーナはスクリーンに映し出された分布図を確認する。『スピアヘッド』戦隊を中心に独立機動打撃群も追いつきつつある。

「アノス陛下達との合流を急ぎます。進路そのままで急いでくだ―――」

 

 

 

「―――いまぁのはぁ、おどろぉいたぞぉ!」

レーナが振り返る。フレデリカが振り返る。アイシャが振り返る。

その視線の先には。

「だがぁ、とぉらえたぁぞぉ!」

体中を損傷しながらもヴァナディースの搭乗ハッチに取り付いたガイコツはヴァナディースを放すまいと手刀を装甲に突き刺す。

白骨の髑髏が口を開く、髑髏の顎がカタカタと音を立てて笑い声を奏でる。

レーナは護身用に携帯していた拳銃を抜き、ガイコツに向けて発砲する。

乾いた音がヴァナディースの車内に響く。放たれた銃弾はガイコツの頭部に直撃するも、僅かに傷を付けるだけであった。

「いぃきなりぃ、なぁにをぉするぅぅぅ!」

ガイコツは声を荒げると、空いている方の左腕を次元の裂け目に収納する。その行動に異変を感じたレーナはマルセルに蛇行運転を命じた。

ヴァナディースが左右に車体を揺らしながら走行する。ガイコツは舌打ちしつつも次の行動に出た。

「いちぃどぉ、とまぁれぇぇ!」

収納された左腕をヴァナディースのタイヤへと伸ばした。狙いはタイヤのパンクによってヴァナディースを走行不能にすることだ。

しかし蛇行運転によって車体が左右に揺れながらの走行の為、狙いが定まらず、タイヤ付近の装甲に手刀が当たり、なかなかパンクさせられずにいた。

「めぇんどうなぁ!」

なかなかパンクさせられずにいたガイコツは痺れを切らしてヴァナディースの搭乗ハッチを手刀で切断する。

白骨の手刀が火花を散らして装甲の一部を斬り剥がした。

ガイコツの手刀は僅かに振動しており、接触した装甲から火花が散る。

舞う火花からアイシャを守るように立ち塞がったレーナは拳銃の引き金を連続して引いた。乾いた音に続いて弾丸が軌道を描き、ガイコツに迫る。

だが、先程同様に僅かな傷を付けるだけに終わった。

怯ませることすら出来なかった事実に内心舌打ちしつつレーナはアイシャを車両前方、ガイコツのいる位置の反対側に避難させる。

「マルセル少尉、振り落とせますか?」

ハンドルを握るマルセルを振り返る。訊ねられたマルセルは苦い表情を浮かべる。先程から試みてはいるが、一向に振り落とせそうにないからだ。

だが、上官であるレーナに訊ねられた以上は答えなければならない。

「先程までより少々荒っぽくなりますが、よろしいですね?」

額に脂汗を浮かべながら言葉を紡ぐ。レーナからの返答は―――

 

 

「構いません、やってください」

―――即答だった。

 

マルセルが僅かにハンドルを右に振った、次の瞬間だった。ハンドルを勢いよく反対に振ったのだ。

緩やかな右カーブからの左急カーブ。無論、ヴァナディースは大きく揺さぶられることになり、車体はバランスを崩した。

「こぉのぉぉぉぉ!」

ガイコツも例外ではなく、バランスを崩して引き剥がされた。次元の裂け目に逃げようとするも、大きく体勢を崩したことで上手くいかず、地面に激突後に転がることとなった。

ガイコツを引き剥がすことに成功したレーナ達だが、代償としてヴァナディースの態勢を崩すことになった。

マルセルが持ち直そうと試みるが、既に車体は倒れかかっており手遅れの状態だった。

「横転します。何かに掴まってください!」

持ち直すことは不可能だと直感したマルセルが一同に告げる。

フレデリカは近くのシートにしがみつき、レーナはアイシャを庇うように抱きながら搭乗用補助グリップを掴んでいる。

そして、大きく傾いたかと思った次の瞬間、ヴァナディースの車体が完全に横転して地面を滑る。

土煙を上げながら停車したヴァナディースの車内から出たレーナ達は周囲を見渡す。

ガイコツの追撃を警戒しているのだ。

「周囲を警戒してください。敵の出現には前兆があります、見逃さないでください!」

アイシャを背後に隠してレーナは拳銃を抜く。マルセルも同様だ。

今この場において戦闘可能な人物はレーナとマルセルだけだ。フレデリカとアイシャは数には入らない。

周囲は土煙が舞い、視界も悪い。だが、空間が歪んで出現する敵ならば好都合だとレーナは考えている。

横転したヴァナディースに身を隠しながら周囲を警戒する。土煙が上がっている今の状況で襲撃して来れば空間の歪みが顕著に現れる。

出現位置が分かれば対処も可能、そうレーナは判断した。

 

だがそれは、浅慮であったと後悔した。

背後のヴァナディースが突如バラバラに細断されたのだ。

残骸となり崩れ落ちるヴァナディースの向こうに、〝奴〟はいた。

「みぃつけたぁぁぁ!」

はなから見つけていたが、ガイコツは性格悪くレーナ達に笑いかける。

ケタケタと声を上げるガイコツの白骨の髑髏顔はさながら死神を思わせる。レーナ達が知る〝死神〟とは似ても似つかない目の前の化け物に一同は戦慄する。

レーナはヴァナディースから退避する際に持ち出したアサルトライフルをガイコツへと連射した。

拳銃の比ではない連射速度で打ち出される銃弾はガイコツの白骨の体に弾かれる。

銃弾を受けて僅かに欠けた部分もあったが、決して効いているとは言えないだろう。

それでも、レーナは撃ち続けた。隣のマルセルもアサルトライフルを連射している。

だが、それでも、異世界から来た化け物に有効打を与えることは出来ない。

そして、弾が尽きる。拳銃も撃つが結果は変わらない。隣のマルセルを見る、彼もレーナ同様弾が尽きたようだ。

「………アイシャさん。時間を稼ぐので逃げてください」

レーナは眼前の骸骨を睨んだまま背後のアイシャに言う。アイシャは戸惑い、躊躇する。

「でも、それでは皆さんは…?」

アイシャがレーナとマルセル、フレデリカを交互に見る。マルセルもフレデリカも覚悟を決めた表情をしている。

「アノス陛下達もこちらに向かっています。そちらと合流してください」

レーナが振り返る、アイシャは頷けずにいる。すると―――

 

 

 

「走れ!」

―――レーナの檄を受けてアイシャは走り出す。レーナ達に背を向けて、振り返らずに。

そこでアイシャは気付いた、先程まで土煙でよく見えなかった空が。

「空が、割れてる…?」

 

 

 

レーナはアイシャが走り出したことを確認すると、ガイコツに向き直る。

どうやら待っていたらしいガイコツはケタケタと歯を鳴らしてレーナ達を見渡す。

「えぇさは逃げぇたがぁ、おぉまえ達ぃがえさぁになるぅかぁらぁ、そぉれでぇ満足ぅしよぉう」

この状況を楽しんでいることが分かるほど、ガイコツの言い方は軽いものだった。

「ミリーゼ。わらわの身は自分で守る、わらわに構うなよ」

フレデリカも覚悟を決めた表情をしている。マルセルもだ。

「なるべく時間を稼ぎましょう」

レーナも覚悟を決めて迫るガイコツを睨む。

姿を隠しての奇襲ではなく、真っ向から襲撃するようだ。あまりにもな舐めプだが、レーナ達には好都合だ。

「まぁずは、お前ぇぇからだぁ、女ぁぁぁ!」

ガイコツが右手を手刀にして襲い掛からんと構える。そして、ピクリと動きを止めた。

「そぉらがぁ、わぁれてぇ―――」

空を見上げた直後だった。ガイコツの周囲に光が降り注いだ。

いや、光と呼称するには語弊があるだろう。さながらビームのような光の柱が何本もガイコツを囲むように降り注ぐ。

光が降り注ぐことで生じた衝撃波によってガイコツは身動きが取れない。

降り注ぐ光が徐々に速度を増す。それはもはや人間の眼で追うことは出来ない領域に入っている。

やがて光は柱を形成する。その内部にあったのは、退避も出来ず、攻撃も出来ず、ただ衝撃波に晒される髑髏顔の敵の姿だった。

一際大きな光が地上に激突した。雷鳴が轟き、光が炸裂したように周囲を包む。

それはまるで〝閃光〟が走ったようだった。

光が収束するように収まっていく。先程、閃光が降り注いだ地点にいたガイコツの頭部は粉々に粉砕され、その体は力なく横たわっている。

そしてもう一人。頭部を失った敵のを見下ろすその者は―――

 

「リヒトー上級大将、助かりました」

レーナが頭を下げる。閃光となってガイコツを撃破したのはリヒトーだった。

リヒトーの最強技である『閃撃』の直撃によって頭部を破壊されたガイコツは先程からピクリとも動かない。

「間に合ってよかった」

リヒトーが振り返って笑みを零す。リヒトーがこの場にいることに疑問を抱いたレーナは率直に質問した。

「他の戦線は大丈夫なのですか?」

「ジェイル達に任せてきたんだ、もうすぐ来ると思うよ。それに―――」

レーナの問いに笑みを崩さず答えるが、一度言葉を切って考える。

「…なにか、問題が起こったのですか?」

「敵の動きが止まって、一斉に撤退を始めたんだ。その前に強い衝撃がこっちにも届いていたから、それが原因だと思ったんだけど」

「その認識で間違いありません。………アレを」

レーナが巨人を指さすとリヒトーもそれに倣って同じ方向に視線を向ける。

「向こうからも薄っすら見えていたけど、大きいね」

「敵幹部と思われる者が2人倒されました。今のところ敵軍を標的にしていますが、こちらに仕掛けてくるのも時間の問題でしょう」

「あれほど大きい敵は斬ったことが無いな」

そう言うとリヒトーは自身の得物である太刀を抜刀姿勢で構える。

「ミリーゼ大佐はアノス陛下達との合流を」

「わかりました」

頷いたレーナから視線を巨人に移したリヒトーは一度深呼吸をした後、太刀を抜き放って跳躍した。




お読みいただきありがとうございました。

次回の投稿ですが、少し遅れるかもしれませんが、ご了承ください。


それでは次回でお会いしましょう。
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