無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。

今回から新規参戦キャラが増えます。

原作は人を選ぶかもしれませんが、参戦させたのは書き手の趣味です。

楽しんで頂ければ嬉しいです。


新たな仲間

ヨクゼン大陸で唯一の国家、カトルツ共和国。

 

一行はそこに向かっていた。目的はカトルツ共和国に向かった異世界人を追う為である。

森林を切り拓いて出来た街道を歩いている。

「僕たちと同じ境遇の人達がどれだけ転移しているのでしょうか」

ルーデウスは地図でカトルツ共和国までの道のりを調べながら言う。

「アノスを襲撃した少女が別の人物だとすれば。2つの世界が他にあるってことだな」

リムルが頭の後ろで手を組みながら歩いている。

「ここまできたら、ガ〇ダムみたいな巨大ロボットとかがある世界から来ないかな~」

「夢がありますが、難しいと思いますよ?」

「だよな~。…ところでルーデウス」

「何でしょう?」

「エリスは何を食べてるんだ?」

リムルはエリスが食べている揚げ肉を見ていた。エリスはこの揚げ肉が気に入って、カラワヤ港を出発する直前に大量に買ってきたのだ。

「なんでも、異世界人が伝えた食べ物だそうですよ?」

ご満悦のエリスが答える気が無い為、代わりにルーデウスが答える。

「でも、これって…」

リムルはエリスが笑顔で頬張る揚げ肉を見る。そう、どう考えても青いコンビニで売られているアレだ。『くん』付けの、親しみやすい名称のあれだ。

(今度シュナに作って貰おう)

「リムルさん」

魔国連邦で、その料理が味わえる日を想像していると、ルーデウスが耳打ちしてきた。

「この料理を伝えた人物が味方になるかは分かりません。カトルツ共和国に入ったら、警戒が必要だと思います」

「だな、敵意までは行かないまでも、警戒は必要だな」

そうしている内にカトルツ共和国の入国審査ゲートに着いた。

入国審査は問題なく終わり、全員が入国を許された。

国内はカラワヤ港以上に煌びやかだった。気取らず、かといって地味ではない、バランスの取れた煌びやかを演出する各建物の壁面などの装飾品が目を引く国だった。

「ふむ、どうやら見られているな」

アノスは息を吐き、言った。

アノスが視線を斜め先の建物へ向ける。視線の先は一際高い建物の屋上だった。しかし、ルーデウスやエリスは何のことかと首を傾げている。

それもそのはず、アノスから建物までは700メートルある。肉眼での視認は困難だ。

「こちらを狙っているようだな」

そう言うとアノスは、建物の方角に体を向けた。

 

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「ウソでしょ!? 気付かれた?」

声の主はアノスの視線の先の建物の屋上にうつ伏せで寝転がり、ライフル、417Dを構えている。見えない距離のはずだが、スコープ越しに見ている黒髪の男はこちらの存在を看破した。

それでも尚、余裕の笑みを崩さずこちらを見ている。

『何やってんのさ、竿師』

耳にはめたインカムから気だるげな声が聞こえる。

「狙撃手よ! 竿師って呼ばないで!」

インカムに向かって鬼の剣幕で叫ぶ狙撃手の少女。

すると、そこに別の声が入る。

『しっかり見張っていてください、味方かどうか分かりませんから』

「わかってる、このまま警戒を―――」

 

「―――やはり、族でしたか」

声とともに殺気を背中に受けて、少女は身を起こす。建物の屋上、少女の背後にはシンが立っていた。

シンは剣呑な表情で少女を睨む。その右手には『略奪剣ギリオノジェス』が握られている。

「我が君を狙う不届き者は、この場で斬らねばなりません」

シンがジリジリと距離を詰める。

少女はその殺気に怯み、その場を動けないでいた。

シンは間合いに入ると、ギリオノジェスを構える。

「何か、言い残すことはありますか?」

「…アンタ達は魔王軍?」

「我が君は魔王ですが、この世界の魔王ではありません」

「えっ? …そうなの?」

「あなたはこの世界の者ではありませんね?」

「そうよ」

「我々はこの世界の魔王と戦う為の準備をしています。もし供に戦ってくれる者がいれば、歓迎しましょう」

「………」

「しかし、我が君を狙う輩は。ここで斬ります」

シンはギリオノジェスで斬りかかった。

少女は目を瞑った。自分の最後を悟るように。

しかし、少女は斬殺されなかった。

少女とシンの間に割って入った者がギリオノジェスを受け止めたからだ。

 

「…何者です?」

ギリオノジェスを斬り下ろす力を緩めることなくシンは訊ねる。

少女との間に割って入った者はシンの目を見る。

「こんにちは。SORDです」

蒼い長髪を靡かせて、蒼井ハルトは笑みを崩さず言った。

 

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「ほう、シンの一撃を止めるか」

「剣技の心得があるみたいだね」

アノスとレイは、シンと対峙する蒼い髪の男―――ハルトを見ていた。

「大丈夫でしょうか? 相手は2人ですし、加勢に行った方がいいんじゃ?」

「心配は無用だルーデウス。シンは俺の右腕。敗けることは無い」

「奴等はこの世界はおろか、我々の世界の服装でも武器でもない。異世界人だろうな」

オルステッドもハルトを見ていた。

「誤解を解いて、協力してもらえばいいんじゃないか?」

リムルがアノスに問う。アノスは数秒思案してガトムの魔法陣を展開する。

 

「―――動かないで」

横から声がする。アノスは魔法陣を解くと振り向く、そこには紫色の長髪で長身の少女が拳銃を構えていた。

「拳銃!?」

ルーデウスがアクアハーティアを構える。

「―――動かないでって言ったじゃん」

反対側からも声がする。そこにはピンク色の髪の小柄な少女がいた。気だるげな目をして、首には変なマフラーを巻いている。

「あの剣士の仲間だよね?」

「そうだが、お前は?」

答えたのはアノスだ。拳銃を突きつけられても変わらない態度を貫いている。

「私達は『SORD―ソード―』だよ」

ピンク色の少女が答える。

「SORDとはなんだ?」

「まぁ、有体に言えば裏稼業かな」

「人には言えぬ仕事、といったところか。こちらは元々、敵対する気はなかったのだが、俺が狙われているとなれば、シンが動かぬはずがない」

「そちらを狙った事が発端なのは理解してるよ。でも未知の存在は警戒するのは当たり前なんじゃないかい?」

「それには同感だ。それで、1つ聞きたい」

「なんだい?」

「お前たちはこの世界の住人ではないな?」

「そうだね」

「俺達もこの世界の住人ではない。ならば、元の世界に帰るために供に戦わぬか?」

「え?」

「こちらは魔王ローズバルトに用がある。お前たちも同じ境遇なら。奴に用があるはずだ」

「生憎と、私達に決定権はないんだ」

「決定権を持っているのは、あの蒼い髪の男か?」

「そうだね」

「ならば、直接確認して来よう」

今度こそアノスは、ガトムで転移して行った。

 

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シンはハルトと一進一退の攻防をしていた。

「ここまで私と斬り合えた者は多くはいません。世界は広いということが分かりました」

「コレばっかりしてきたからね」

 

「シン、剣を収めろ」

ガトムで転移してきたアノスがシンを制す。

「御意」

シンはおとなしく剣を収め、アノスより一歩下がる。

「そこのお前。俺たちは同じ境遇だ、ここは協力せぬか?」

「やはり、あなた達も同じでしたか。狙ったことは謝ります」

「よい。下にいるのはお前の仲間か?」

「そうですね」

「その者から、決定件はお前にあると聞いた。で、どうする?」

「…その申し出を受けます」

ハルトは両手の刀を鞘に収めた。

 

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一行は酒場に入り、テーブルを囲んで話し合いをしていた。

一番端のテーブルにはルーデウス、アノス、リムル、オルステッド、ハルトの5人。

他のメンバーは、ハルトの仲間達を交えて、それぞれテーブルに分かれて話している。

「では、あなた方は再び、その魔王を倒すために来たのですか?」

前回の戦いの結末を聞き終えたハルトは訊ねる。

「そうだ。だが魔王ローズバルトは南の未踏大陸にいるから、この大陸から2つ海を超えないといけない」

リムルが串焼きのようなナニかを食べながら答える。

「敵の戦力が分からないこの状況で、無策に突撃する訳にはいきません。そこで、一緒に戦ってくれる仲間を探していたんです」

「なるほど、俺たちも元の世界に戻る方法が分からず立往生していました。敵魔王を倒すことに協力します」

「助かります。これから、よろしくお願いします」

そう言うとルーデウスは右手を差し出す。ハルトはその右手を握るのだった。

 

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未踏大陸

 

真・魔王城、円卓の間。

 

真・魔王軍幹部が円卓を囲み、話し合いをしていた。

その中にはアノスの世界を偵察していたブギョルもいた。

それに、ルーデウスの世界でエリスを襲撃した骸骨と、リムルの世界を偵察した漆黒のローブの女もいた。

3人の他に9人、合計で12人が円卓を囲んでいる。

 

「適応者の行方はどうなっている?」

ローブの女が切り出す。他全員の視線が集中する。

「部下からの報告では、ヨクゼン大陸まで来たようですね。他の適応者と接触したそうです」

眼鏡を掛けた白髪の女性幹部が答える。

「適応者どもを合流させる訳にはいかないぜ、どうする?」

隻眼の男性幹部が身を乗り出す。ローブの幹部は考え込んでいる。

「未踏ぅ大陸ぅにぃ現れたぁ適応者にぃも、対ぃ策が必要じゃぁないかぁ?」

骸骨が何もないはずの目を光らせる。

ブギョルはムスッとしながら口を開いた。

「敵、速い。見える、出来ない」

「報告にあった〝撃墜王〟とかいう適応者か? それこそ、囲んでしまえば、いくら速くても逃げられないだろうが?」

隻眼の幹部が肩を竦める。

「俺とガモッサの機工隊は他の適応者の対策で手一杯だ、そっちはブギョルとガイコツでどうにかしてくれよ! なあ、ガモッサ?」

「ロンゴドルの言うとおりだ。敵は数人の生身の人間なんだ、どうにか出来るはずだ」

ガモッサと呼ばれた男の背中には機械式の腕が4本付いている。

ガモッサの言葉を受けて、ブギョルとガイコツは口を閉ざす。

「合流される前に各個撃破する。もっと密に攻撃しろ」

ローブの女幹部の言葉に他全員が頷く。

「それと、大陸北部の船着き場に巨人が現れるという報告があったぜ。撤退してきた部下が目撃した」

隻眼の幹部―――ロンゴドルが一枚の巻物を取り出す。巻物は意思を持つかのように宙に浮くと、ひとりでに開いた。

その中には一体の蒼い巨人が映っていた。

「俺とガモッサの空戦機工隊を圧倒する性能、間違いなく適応者だろうな。最悪、こちらの〝ジョーカー〟を出す必要が出そうだぜ」

「構わんな? ミニッサ、ロマール」

ガモッサが〝ローブ〟と〝眼鏡〟を見る

「私は構いません。ロマールはどうですか?」

眼鏡の女幹部―――ミニッサがローブの女幹部のロマールを見る。

「私も構わない。『適応者を殺せ』というローズバルト様の命令を果たせるならな」

「もちろんだぜ。任せときな!」

「ところで、グワッツェの方はどうなっている?」

ロマールは1人の幹部に視線を移す。それまで一切話し合いに参加していなかった者だ。

グワッツェと呼ばれた筋骨隆々でスキンヘッドの男幹部は顔を上げると、静かに口を開いた。

「ガジーエー大陸にいる適応者の件なら、問題は無い」

「それは何故だ?」

ロマールが鋭い視線でグワッツェを睨む。

「弱い訳ではない。だが、あまり好戦的ではなさそうだ。こちらに取り込むことが出来れば、いい駒になるだろう」

「出来るのか?」

「シュトライドの『洗脳』を使えば容易いだろう」

「わかった、やってみろ」

「いい報せを待っているといい」

グワッツェの不敵な笑みに吐き気を覚えながらもロマールは全員を見渡す。

「では、各員持ち場に就け」

その号令に全幹部が立ち上がった。

 

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翌朝。

 

カトルツ共和国。宿屋

 

一行はハルト達5人を仲間に加え、宿屋で休んでいた。

 

 

宿屋、食事処。

 

「ハルトの仲間たちが使ってるのって、銃だよな?」

食事を取りながらリムルが訊ねる。

「ええ。各人で使用火器は変わりますが、銃という認識で間違いありません」

「アノスを狙ってたトーカが使ってたのがスナイパーライフルで、俺たちと対峙してたレナとムラサキが使ってたのがハンドガン?」

「ええ。それと、後から合流したクリスが使うのもハンドガンです」

「ミサイルランチャーとかは無いのか?」

「うちの子達は使いませんね。基本は対人の仕事がメインなので」

「弾切れとかしないの?」

「それが、この世界に来てからというもの弾薬が減らないんです」

「減らない? 撃ってもか?」

「そうです、同じく俺が使う刀なんかも一切刃こぼれがしないんですよ」

(魔法を使う者は『魔力が無限』で。弾薬などを使う者は『弾薬が無限』ってことか…)

リムルは思案しながら朝食を平らげた。

 

 

 

「見られているね」

ミサと並んで食事を摂っていたレイが離れた席で食事をしている2人の女性を観察する。

「敵、でしょうか?」

ミサもおそるおそる見る。長い黒髪の少女と青紫の短髪の少女がチラチラとこちらを伺っている。

黒髪の少女は本開き、顔を隠しながら、時折チラッとこちらを見る。

青紫の少女は激辛料理と思われる真っ赤な料理を食べながらこちらを観察しているようだった。

「カラワヤ港で遭遇した女と似た気配がするわね」

「根源、魂が似てる」

サーシャとミーシャも彼女らを見ている。

「なに、直接聞けばよいことだ」

レイの向かいに座っていたアノスが立ち上がり、少女達の元へ歩いて行った。

 

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「あれ? こっちにくる?」

「葉桜先輩、分かりやす過ぎたんじゃ?」

「ど、どうしよう。モモちゃんに連絡する?」

「まず話し合いをしましょう。もしもの時はお願いします」

 

「少し、いいか?」

「なにか?」

アノスに声を掛けられ、青紫の少女が顔を上げる。

「お前たちの『軍司』はどこだ?」

「さぁ。何のこと?」

「黒髪で、前髪をクロスした女が言っていた」

「し、知らないかな~」

黒髪少女の本を持つ手が震えている。

「俺達と目的は同じだと思うが、協力する気は無いか?」

「目的?」

「単刀直入に訊く。お前達はこの世界の者ではない、そうだな?」

「………」

「椎名さん。話していいんじゃないかな?」

黒髪少女が本を閉じる。机に置いて一息吐くと、口を開いた。

「私達は別の世界から来ました。突然光りだして、気が付いたらこの世界に来ていました」

「前髪をクロスした女は、お前たちの仲間か?」

「モモちゃんのことかな? だとしたら合ってるよ」

「俺達も別の世界から来たクチだ。供に戦ってくれる仲間を探している」

「元の世界に戻る方法は分かってるの?」

「魔王ローズバルト。奴を倒せば元の世界に帰ることができる」

「なんで分かるの?」

椎名と呼ばれた青紫の少女があ訊ねる。

「以前にも、この世界に来たことがあってな。その際、魔王ローズバルトを倒したら戻ることが出来たのだ」

「その魔王はまだ生きてるんでしょ?」

「ああ、どうやら復活したらしい。しかも戦力は以前より多いという情報もある。そこで、供に戦う仲間を探している、ということだ」

「なら、私達の軍司に訊いてくる」

 

「―――その必要は無いぞ、京」

入口から声がする。アノス達の視線が声の主に集中する。

そこには、カラワヤ港でアノスと交戦した前髪クロスの少女が立っていた。

その横や背後にも人影があった。

「モモちゃん、必要はないって、どういうこと?」

「私達も一緒に戦うってことだ」

モモちゃんと呼ばれた少女はアノスへと歩み寄る。

「この間は悪かったな」

「構わん。あの程度のこと、気にする俺ではないぞ」

「私たちも目的は同じだ、供に戦うよ」

「そうか、よろしく頼む」

そう言うとアノスは右手を差し出す。少女――川神百代はその手を強く握った。

「こちらこそ」




お読みいただきありがとうございました。

今回から参戦する2作品
『グリザイア・ファントムトリガー』
『真剣で私に恋しなさい!』(通称:まじこい)
どちらもPCゲームが原作であり、両作品ともアニメ化もした人気作品です。

ちなみにキャラの参戦タイミングですが。
グリザイアのキャラクターは原作第6巻と第7巻の間ぐらいです。
まじこいは『卒業編』の少し前の設定です。

この先もお楽しみいただければ幸いです。

それでは次回でお会いしましょう!

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