無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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大分時間が空き、失礼しました。

というわけで40話になります。



ギアーデ連邦防衛戦⑧

『揺れが、激しい。どうにかならないのか?』

巨人の肩に掴まっている人物が苦言を漏らす。巨人が大仰に動いている為、肩にて戦況を見下ろしているこの人物にも相当の振動が伝わっているのだ。

『降りればいいだろうが』

『………そうする、ことにする。珍しい武器を探しに行く』

『この〝虫〟もじきに殲滅出来る。その後は…』

『〝適応者〟達が、標的だ』

そう言って肩から降り立ったこの人物、名を〝グイア〟という。

グイアは戦場を見渡しながら歩き、あるモノを探す。この行動はグイアの趣味によるものであり、多くの可能性世界を見てきた中で追及してきたことだ。

『あれは、大きすぎる』

視線の先に横たわるジャイアントガモッサを一瞥して、すぐに視線を別の方向に向けた。歩みを止めて視線を足元に向けると真・魔王軍兵士の亡骸があった。

『どれ…』

膝を追って屈んで手に取ったそれは、真・魔王軍兵士が使用していた〝槍〟だった。

持ち上げたそれを眼前で円を描くように回した後、穂先をじっくりと観察する。数秒眺めた後、槍の両端を持ってへし折った。

『この程度では、ダメだ。脆い』

興味が失せたグイアは2本になった槍を放り捨てて再び歩き出した。

その時だった、頭上を〝ナニか〟が通過する気配を感じて頭上を見上げる。だが、すでにそこには何もない。

『………、問題、ないか』

視線を戻して、再び歩き出す。

辺り一面を埋め尽くす死体を避けることなく踏みつけて歩き続ける。

『…腹が減った。食事を、摂らなければ』

腹を摩りながら周囲を見渡すが、戦場のど真ん中に食料があるわけない。

普通なら諦めるだろう。そう、グイアが〝普通なら〟ば。

たまたま踏みつけていた死体を持ち上げると、死体の腕に噛みつく。歯が肉に食い込み、血を滲ませながら食いちぎった。

口をモゴモゴさせながら咀嚼し、飲み込む。そして再び肉を食らう。

あらかた食べ終えたところで死体を放り捨て、満腹で僅かに膨らんだお腹をポンポンと叩きながら再び歩き出した。

戦場を進みながら、瀕死の真・魔王軍兵士にトドメを刺していく。

『………ん?』

視線の先、遥か先から何かが飛来する。それは1本の鉄柱であった。鉄柱は一直線にグイアの顔面に迫り。

バシュッ、という音と共にグイアの首が吹き飛ばした。

残った胴体の首上から鮮血が飛び散り、首から上半身に滴る。だが、倒れない。

普通なら頭を失った生物の体は地面に伏すはずだ、だがグイアの体は直立のまま倒れない。

「気味が悪ぃぜ。まだ立ってやがる」

グイアの元に3つの影が差す。ジェイル、道安、園原の3人だ。

道安はグイアの周囲を周りながら観察する。ジェイルは右手に新たな鉄柱を出現させ、園原はサブマシンガンの銃口を向けている。

「胴体も潰しておくか?」

ジェイルが眼光鋭くグイアを見る。道安は頷くと両掌に『重撃』を発動させる。

「さぁ、潰れ―――」

 

 

『―――油断した。このような状況は、想定外』

声が響く。

3人の動きが止まり、僅かに距離を取る。3人の目の前でグイアの首から頭が生えてきた。

萎んだ風船のように生えてきた首は、プシュッという音と共に元の状態に戻る。

その様子を目の当たりにした3人の内、最初に仕掛けたのは園原だった。サブマシンガンの照準をグイアに向け、引き金を引く。

次々に撃ち出される銃弾は吸い込まれるようにグイアの体に命中する。

 

園原は『追撃』を〝使っていない〟

 

にも関わらず全ての銃弾が命中していく。グイアは防御も回避もすることなく、先程から直立で動いていないのだ。

『受け続けるのも、飽きた。限度がある』

銃弾を受けたことにより空いた無数の穴を見たグイアは一度息を吐き、視線を園原に向ける。

園原は危険を察知して飛翔し、距離を取る。

『逃げても、意味がない。追いかける』

そう言って一歩を踏み出したグイアの動きがピタリと止まる。首が回り、背後を見ると。

「行かせるかよ、相手してやるぜ」

重撃によって発生した重力でグイアを押さえつける道安がいた。

グイアの歩みを止めることには成功したが、道安の全力をもってして押さえつけるのが精一杯の状況だった。

横からジェイルが跳躍し、鉄獅子を顕現させると殴りかかった。

悪鬼を具現化したような、人間より遥かに巨大な鋼鉄の化身が拳を叩き込んだ。

鋼鉄の拳が直撃し、グイアの体が地面にめり込む。

ジェイルが追い打ちをかけて拳を連続で叩き込む。拳を受ける度にグイアの体が地面に埋まっていく。

そして完全に地面に埋まったグイアを見下ろすジェイルと道安。

「これで倒せたとは思えんな」

鉄獅子を顕現させたままジェイルが漏らす。隣に立つ道安も同様に『重撃』を解かない。上空では園原が滞空して警戒している。

『いきなり仕掛けてきて、酷いものだ。可能性世界の管理を徹底しなければ』

声が聞こえた次の瞬間、グイアが沈んだ穴の中心が盛り上がった。直後、地中から〝ナニか〟が飛び出した。

人間一人分はあるだろうそれは、槍だった。全体的に藍色のような暗い青色をしており、持ち手付近には薄紫色ような球体が内蔵されている。

飛び出した槍は一直線に園原に迫る。

「園原!」

道安が『重撃』を発動するが、槍は重力の影響を受けない。

園原が身を翻して槍を躱す。槍は園原の脇を翳めると、しばらく直進して旋回し、再び園原に襲い掛かった。

飛翔し距離を取った園原はサブマシンガンの照準を定めて引き金を引く。

撃ち出された銃弾は正面から槍と激突するが、槍の速度を落とすことも軌道を変えることも出来なかった。

急降下して躱し、さらに発砲。旋回してきた槍とは違う方向に銃弾が放たれる。

だが、銃弾は突如軌道を変えて槍に迫る。まるで銃弾が〝生きている様に〟。

追いついた銃弾は側面から槍に打ち込まれる。これが園原の『追撃』の能力。

側面からの衝撃に槍の軌道が変わった。

先程まで銃弾のように真っ直ぐ飛行していたのは何処へやら、ふらふらと揺れながら園原を追撃している。

だが、先程までの勢いが削がれたことによって反撃のチャンスが生まれた。

地上のジェイルが放った無数の鉄柱の内の数本が槍に直撃した。完全に勢いを殺された槍は落下、そのまま地面に突き刺さった。

『驚愕、だな。簡単にはいかないようだ』

地中からグイアが飛び出す。音もなく着地したグイアは衣服に付着した土を払うと、ジェイル達を見渡すと、右手を天に翳す。

直後、地面に突き刺さった槍が溶けるように消えたかと思えば、天に翳された右手に握られた。

『これは、ある世界の戦士から貰った。大人しく渡さなかったが、最後には分かってくれた』

槍を眺めながらそう呟くグイアを囲むようにジェイル達は展開し、徐々に距離を詰めていく。

「その世界はどうした?」

ジェイルが訊ねると、グイアは槍から視線を変えて答える。

『武器が手に入った以上、長居は無用。すぐに奔流へと出た』

先程から変わらない無表情で答えるグイアにジェイルは警戒を解くことなく質問を続ける。

「お前の目的はそれぞれの世界の武器を集めることなのか?」

『それが自分の存在する意義だ』

「…どういうことだ?」

『可能性世界を滅ぼしても、記録が残る。その記録となるのが―――』

「―――武器だと、言うのか…?」

グイアは槍を頭上で振り回した後、足元に突き刺すと、両手を天に広げて口を開いた。

『置き場所も問わず、管理も楽。自分達にとって都合がいい』

そう言って右手を園原に向ける。物を欲するように、手で招くように。

『女、それを渡せ。興味深い武器だ』

グイアが言っている武器は園原のサブマシンガンだった。園原は発砲をもって回答とした。

頭上から放たれた銃弾がグイアに降り注ぐが、グイアは後方に飛び退いて躱す。躱され、地面に打ち込まれた銃弾が数秒後、地面から突如飛び出した。

園原の『追撃』によって地中にて軌道変更した銃弾が、グイアに追い打ちをかけるべく迫る。

槍を一閃、眼前まで迫った銃弾を弾きながら後退するグイアにジェイルの鉄獅子が襲い掛かる。

鋼鉄の拳が真っ直ぐグイアを捉えるが、グイアと拳の間に巨大な盾が出現する。

人一人隠す程ではないが、通常『盾』と呼ばれるものとは一線を隔すほどの巨大な盾だった。

盾は拳からグイアを守るように浮遊し、鉄獅子の鋼鉄の拳の連打を防ぐ。

後退しようと後ずさったグイアの動きが止まる。道安が『重撃』をかけたのだ。

動きが鈍くなったグイアの体に無数の銃弾が命中する。

先程と同じように銃撃を絶やさない園原。直後、その視線の先でありえないことが起こった。

命中し、体内に飲み込まれた銃弾が、グイアの足元に落ちたのだ。

絶え間なく落ち続ける銃弾。足のふくらはぎに小さな穴が開き、そこから吐き出される様子はまるで〝排出〟するかのようだった。

『興味深い武器だが、原理は理解できた。別のモノにしよう』

園原のサブマシンガンから興味を鉄獅子に移したグイアは盾を消滅させる。無防備となったグイアに鉄獅子の拳が迫るが、グイアは左腕に篭手を出現させる。

指先から肘まである深紅の篭手。曲線だけでなく先端は所々鋭利になっており、手の甲にはエメラルドグリーンに輝く半水晶が埋め込まれている。

『受け止める』

自身に掛かる重力に抗い、握られた左拳を振りかぶると繰り出された鉄獅子の拳を受け止めた。

生じた衝撃波が周囲を包む。その中心点では拳の押し合いが続いている。だが、先にグイアの篭手に限界が来る。徐々に亀裂が生じてきたのだ。

『やはりこの武器は、使用者を選ぶのか』

亀裂が広がり、篭手の限界が刻一刻と迫る。

グイアは槍を横薙ぎに振るい、鉄獅子の拳を振り払うと距離を取るべく跳躍した。

放物線を描くように飛び退いた直後であった、突如グイアの頭上から眩い光が降り注いだ。

光の正体は雷だった。

無数の雷撃が収束して降り注ぐ。グイアは完全に奇襲を受ける形となり、落雷の直撃を受けた。

『また、世界を乱す者が…!』

受け身を取れず地面に激突するグイア。立ち上がり顔を上げた先、視線の先に―――

 

 

 

「すまないが、その武器は私の大切な者の武器だ」

上空から真っ直ぐに舞い降りる。

「何故お前が持っているのかは、この際どうでもいい」

漆黒の外套を纏い、フードから除く顔はアンデット特有の髑髏顔だ。

 

 

 

「おとなしく、…返してもらおうか!」

怒りに染まった声音でアインズがグイアを睨みつけていた。




お読みいただきありがとうございました。

繁忙期に入るため、投稿スピードが落ちると思いますが、今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。


それでは次回でお会いしましょう。
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