無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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社会人になって夏に憎悪を抱く今日このころ。
日々の仕事に忙殺されております。

エイティシックス世界での話はもう少し続きます。


ギアーデ連邦防衛戦⑩

蹂躙を続ける巨人を視界に捉え、リヒトーは斬り抜ける。

だが、巨人の首を狙った斬撃はその強固な皮膚によって弾かれる。

態勢を直して再び斬りかかる。今度は肩、しかし弾かれる。次に足、これも弾かれる。

「硬いな…。あの巨体じゃ『閃撃』も使えない、厄介だな…」

一度着地して巨人を観察する。

今のところ巨人はこちらに目もくれない。それ自体は好都合だとリヒトーは感じた。

(おそらく体のどこを狙っても同じだろう。エル達も下手に手を出せないのか)

リヒトーが視線を向けた先にはイカルガとツェンドルグがいた。

巨人から距離を置き、動向を観察している。

だが、真・魔王軍の残存戦力も少ない。敵幹部が倒れたこの現状で統率を保つことは出来るはずもなく、敗走すら出来ずに巨人に虐殺されていく。

リヒトーは真・魔王軍の兵士達に同情はしなかった。彼等は自分達にとって敵、魔王ローズバルトの命令だったとしても、自分達の大切な者達に危害を及ぼす敵なのだから。

(ミリーゼ大佐が言っていたように。真・魔王軍を全滅させたら、次の標的はボク達か)

巨人を躱してイカルガの肩に着地すると、鞘に納めた太刀でイカルガの頭部を小突く。

『リヒトーさん。どうされました?』

「一度ミリーゼ大佐達と合流しよう。真・魔王軍は壊滅状態だ、この隙を逃す手はないからね」

『分かりました』

エルネスティの返事を受けたリヒトーはイカルガの肩を蹴って飛び去る。

残されたイカルガとツェンドルグも巨人を迂回して躱しながら戦場を後にする。

 

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「無事だったか、ミリーゼ」

合流したアノスがレーナと握手を交わす。

アノス達を先導していた『ブリジンガメン』戦隊も合流すると、シデンが『キュクロプス』から降りてきてレーナに詰め寄った。

「おい、どういうことだ! 『ヴァナディース』で戦闘するって正気かよ!?」

鬼の剣幕で詰め寄るシデンを両手で制し、レーナは「結果として、大丈夫でした」と答える。

シデンは副長のシャナに引きずられるように連れて行かれた。

そこに他の戦隊やリヒトー達も合流する。

「随分無茶したもんだ」

「万が一、ってこともあるんだから自重してよね」

ライデンとセオからも諫められ、おまけにシンエイからも「前線に出ないでください」と言われたレーナは完全にしょんぼりとしてしまった。

そこにターニャ達に護衛された飛空城艦が到着し、ルーデウス達が降りてくる。

「お兄ちゃん!」

ルーデウスの姿を確認したアイシャは走り出す。突然の再開に驚きを隠せないでいるルーデウスにアイシャは勢いよく抱き付いた。

「アイシャ、無事だったんだな…。よかった!」

ルーデウスも抱き返す。2人の瞳には涙が浮かんでいた。

その後、この世界に来た顛末を聞いたルーデウスはリヒトーやレーナ達に礼を告げる。

そして、道安達と共にやって来たアインズを見たフレデリカが「死神じゃ!」と発狂し、シンエイが担いで行ってしまった。

「はじめましての者もいるようなので、挨拶させてもらおう。私はアインズ・ウール・ゴウン、アインズと呼んでくれ」

アノス達を見渡して言う。そこに着地してきたターニャ達も挨拶を済ませる。

「皆さんも、別の世界から来たのですか?」

「その通りだ、ミリーゼ大佐。私やターニャ達は訳あって面識があるが、それぞれ別の世界の出身だ」

「オルステッド達と来たようだが、これまでの経緯は教えてもらえるのだろうな?」

アノスの問いのアインズは頷くと、今に至る経緯を話し始めた。

 

事の始まりは、ナザリックに対しての襲撃であった。

アインズやアルベドの本拠地であるナザリック地下大墳墓を最初に襲撃したのは真・魔王軍幹部のシティックとその部下であった。

この襲撃は不在であったアインズがすぐに帰還したこともあり、撤退させることができた。

シティックとその部下が次元を超えて姿を消した後、アインズは自分達に対して敵対行動に出た勢力の掃討の為に自ら出征の決意を示した。

『守護者』や配下達からは反対の声も出たが、統治者としてのデスクワークや面倒事から逃げたいアインズはお得意の〝それっぽいこと〟を誇張して演説することで出征できた。

シティックは迎撃された際、焦って次元を超えたため、抜け穴が残ってしまったのだ。

アインズはアルベドを伴い、世界を渡り、千束達の世界にてリムル達と出会ったのだ。

だが、ナザリックへの襲撃はこれで終わらなかった。

いや、正確に言うならば〝真・魔王軍の襲撃は途絶えたが、それ以外の襲撃は終わっていなかった〟と言った方がいいだろう。

アインズ不在の状況で迎えた襲撃、襲撃者の人数は1人、グイアだった。

その時点では正体が不明であったこと。何よりアインズ自身が不在であったことで明確な対応が遅れたこと、『守護者』の迎撃をものともしなかったこと。これらの要因が重なり、敵の襲撃を許すこととなってしまったのだ。

最初に迎撃の任に就いた戦闘メイド『プレアデス』を戦闘不能にされたことで、留守中の指揮を任されたデミウルゴスは『守護者』の1人、シャルティア・ブラッドフォールンを迎撃に向かわせた。完全武装したシャルティアをだ。

シャルティアは〝最強の守護者〟として生を受けた存在。その戦闘力はナザリックでもトップと言っていい。

 

だが、結果としてシャルティアはグイアに敗れた。

 

見たこともない武器による攻撃に対応出来ず、戦闘不能となり。武器であるスポイトランスを奪われた。

武器を奪取したグイアは「用が済んだ」と撤退していった。

すぐさまこの事をアインズに知らせたいデミウルゴスであったが、世界を渡ったアインズに知らせる術はない。

『守護者』達は主の無事を祈ることしか出来なかった。

 

「先程、上位存在が使用していた槍は私の仲間の持ち物だ。アレを所持している以上、あれら上位存在は私の敵だ」

知りうる情報を話し終えて、共に戦う決意表明を示すアインズ。

「共に戦ってくれるということですか?」

レーナの問いに「無論だ」と返したアインズにアノスは握手を求める。

「よろしく頼む」

「こちらこそ」

握り返した白骨の手には、僅かに熱が籠っていた。

 

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「敵の攻勢が止まった…?」

東部戦線に残ったリムル達の目の前で、真・魔王軍の動きに変化が生じた。

先程まで前進し、ギアーデ連邦軍と戦闘していた前衛集団が突如、後退を開始したのだ。

飛空城艦からその様子を見ていたリムル達は、不可解な敵の行動にただ戸惑った。そして、その反応は別の場所でも起こっていた。

 

 

 

「どういうことだい?」

中央司令部でエルンストは前方のスクリーンから目を逸らさず訊ねる。ヴィレムが管制官に訊ねるも、要領を得ない。

皆、エルンスト同様に〝何が起こったか分からない〟のだ。

いや、分かっていることは1つだけある。

「敵が後退を開始したのは事実、この機を逃す手は無いと思いますが」

後に控える中将の進言を聞き入れることにしたエルンストは東部戦線全域に一斉攻勢を命じた。

ロンゴドルとガモッサ、ガイコツという3人の幹部と連絡が取れない現状では撤退するしかないと、東部戦線の指揮を執っていたブギョルは考えた。

「俺、戦闘、やめる。撤退、する」

ブギョルの号令に続いて撤退を開始する真・魔王軍。

しかし、ギアーデ連邦軍の猛追撃によって多くの戦力を失うことになった。

「ガイコツ、ロンゴドル、ガモッサ。俺、心配…」

撤退しつつブギョルは自分達の次元船に向かった。一時撤退し、態勢を立て直すためだ。

「よろしいのですか、ブギョル様?」

隣に控えていた副官に訊ねられたブギョルは足を止めて振り返る。

「ロンゴドル様達はまだ生きておられると思います。救援に向かうべきでは?」

その提案をブギョルは首を横に振って却下すると、再び歩き出した。

「…管理者、俺達、勝てない」

小さく漏れた呟きは、戦場の爆音に掻き消され、誰も聞くことはなかった。

 

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場所は変わって西部戦線。

レーナは指揮下の各戦隊に補給を指示した。ファイドを中心に順調に補給が終わっていく。

「ミリーゼ、ノウゼン達の補給はいつ終わる?」

アノスは地平線の彼方の巨人から目を離さずに訊ねる。

レーナは近くにいたシデンに訊ねる。「あと20分少々」と返って来た返事をそのままアノスに伝える。

「あの巨人、ククミラやエマの遠距離からの砲撃でも崩せまい」

「アノス陛下の魔法では、どうでしょうか?」

訊ねられたアノスは思案する。有効打になりうる魔法はあるが、それを使用することは躊躇われた。

「あるが。使用すれば、この世界が保たぬだろうな」

そう言うとアノスは宙に浮き、右掌を天に翳す。魔法陣が展開され、漆黒の太陽が顕現する。

「まずは小手調べだ」

振りかぶった右手を投擲の動作で振り下ろす。

撃ち出されたジオ・グレイズは一直線に巨人に迫る。真・魔王軍の蹂躙を終了した巨人が振り返る。その視線の先には肉薄する漆黒の太陽。

そして直撃した、顔面にである。獄炎が炸裂し、巨人の頭部を包む。

『驚いたぜ。いきなり仕掛けてくるなんてな』

声が響く。

巨人は手で炎を払い、アノス達を見据える。

明らかな敵対の意思の気配を纏い、真っ直ぐに身体を向ける。その肩にはグイアの姿も確認できる。

『なぜ世界の均衡を乱す?』

再び声が響く。今度は質問だ。

「自己防衛をしているだけだが?」

そう答えたアノスを指さした巨人から声が響く。

『流れに任せていればいいじゃねぇか。面倒事を増やしやがって、死にてぇのか?』

「生憎、死ぬ気はさらさら無いな」

余裕の笑みを崩さず答えるアノスに巨人は苛立ちを覚えたのか、『めんどくせぇ!』と雄叫びを上げる。

『イライラするな、お前。何つったか?』

「管理者を名乗る割には、知らぬ事が多いようだな」

『可能性世界の一つずつなんぞ、一々覚えてられっかよ。…まぁ、どうでもいいか』

そう言うと巨人は両腕を背に振りかぶり腰を落とす。

「暴虐の魔王、アノス・ヴォルディゴードだ。覚えておいて損は無いと思うぞ」

『だから、どうでもいいつっただろぉが!』

跳躍した巨人は空中で右拳を振りかぶり、降下しながらアノスに襲い掛かる。

それを目を逸らさず真正面から迎え撃つアノスであった。




お読みいただきありがとうございます。

皆さんも体調に気を付けてお過ごしください。



それでは次回でお会いしましょう。
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