無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。

これまでお読みいただいていた皆様、大変お待たせして申し訳ございませんでした。

仕事が落ち着いてきたので投稿ペースを上げられるよう頑張ってまいります。



ギアーデ連邦防衛戦⑪

巨人がみるみる内に迫るのを認識したレーナの行動は早かった。

「各位、衝撃に備えてください!」

周囲の独立機動打撃群に指示を飛ばす。『アンダーテイカー』と『キュクロプス』が盾になるように立ち塞がり、耐衝撃姿勢をとる。

その次の瞬間だった。

ジャイアントガモッサが着地した時の比ではない衝撃と轟音が一帯を包む。

砂埃を伴って巨大な衝撃が襲うが、シンエイ達が盾になった事と、ジェイルが鉄で壁を作り出して防御したことで被害は無かった。

アノス目掛けて繰り出された拳は、標的を仕留めることは出来なかった。それどころか掠りもしなかった。

ガトムで巨人の頭上に転移したアノスはジラスドを巨人の脳天に叩き込んだ。

黒き雷撃を受けた巨人は尚も余裕を見せている。そんな様子を見下ろしながら若干うんざりし始めていたアノスの横にアインズが姿を現す。

『上位転移―グレーター・テレポーテーション―』にてワープしてきたのだ。

「手伝おう」

短くそう言うと、アインズは第9位階魔法『万雷の撃滅―コール・グレーター・サンダー―』を詠唱する。

重なり合った雷撃が束となって巨人に落雷する。

だが、それでも巨人は平然としている。

「ならば、質量攻撃を試してみるか…」

アインズは再び魔法を詠唱する。

放つ魔法は『隕石落下―メテオフォール―』。巨大な隕石を召喚し、対象にぶつける第10位階魔法である。

それに並んでアノスも魔法陣を展開する。魔法は無数の魔石を降らせる『魔岩墜星弾―ギア・グレアス―』。奇しくも、似た系統の魔法を同時に放つこととなった。

そんな2人の攻撃に合わせるように来援したターニャ達203航空魔導大隊の面々が巨人の足元に自動小銃に照準を合わせる。

「各員、爆裂術式展開!」

ターニャの左右に並ぶヴァイス達も照準を巨人の足元に定める。

「主の導きよ、神の御業を発現し、我らに敵を打ち砕く力を与えたまえ」

〝神への祈り〟。ターニャにとってはこれ以上ない屈辱だが、生き残る為、目の前の敵を倒す為には止むをえなかった。

祈りの言葉に連鎖するように胸元の演算宝珠が虹色の輝きを放つ。

「総員、てぇー!」

アノス達の魔法に合わせて放たれた爆裂術式が巨人の足元に降り注ぎ、間下の地面を抉った。

いくつものクレーターによって生じた歪みは瞬く間に伝播すると、巨人の重量も合わさったことで崩れた。巨人は崩れた地面に足をとられ、僅かに態勢を崩す。

その頭上に降り注ぐ流星。

無数の魔石のシャワーに続く形で圧倒的質量が迫る。巨人は態勢を崩したことでそれに対応出来ず、直撃を受ける。

巨人が地面に倒れた衝撃と轟音が周囲を包み、遅れて土煙が舞う。

「助かったよ、ターニャ」

巨人から視線を移してアインズが謝辞を述べる。ターニャは自動小銃を肩に担ぐと「気にするな」と返す。

「まだ終わりではないようだぞ」

アノスの言葉に2人は身構える。その視線の先には膝を突きつつも立ち上がる巨人の姿があった。

「しぶといな。図体は伊達ではないか」

アインズが再び魔法を発動せんと構えた次の瞬間だった。巨人の右腕を何かが翳めた。遅れて何かの発射音が響く。

巨人の右腕は僅かに抉れており、巨人自身も何が起こったのか理解できないでいる。

アノス達は〝何か〟が飛来した方角に視線を向ける。

地上のルーデウス達も同様だった。例外としては、シンエイ達であった。

シンエイ達『スピアヘッド』戦隊の面々とフレデリカは皆同様に戦慄に表情で発射地点を見ていた。

「ッ、シン!」

ライデンがシンエイを振り返る。その表情は焦りを伴っていた。

「戦隊各位、警戒態勢に移行しろ!」

頷いたシンエイが再び『アンダーテイカー』に乗り込み、機体を起動させる。

そのままレーナとフレデリカ、ルーデウス達の盾になるようにレギンレイヴ群が展開する。

「何が起こったんですか!?」

ルーデウスの質問に答えたのはフレデリカだ。

「…敵が、この世界の〝怪物〟を手に入れてしまったのじゃ」

幼さを消した声音で答える。敵とはこの際、巨人を攻撃したことから真・魔王軍であろうとルーデウスは判断した。

ならば〝怪物〟とは何なのか?

その疑問は直後に判明した。

 

『殺してやる。殺してやるぞ!』

 

声が。憎悪を纏った雄叫びが響き渡る。そして姿を現す。巨大な影。

白銀に輝くその巨体はカブトガニにも見える。無数の鋭い脚を動かし、その巨体を誇示するかのように佇む。

上部には角を思わせる二対の砲身。先程巨人を狙撃した兵装である。

 

 

電磁加速砲〈レールガン〉

 

この兵装の威力をシンエイやレーナ達はよく知っている。嫌という程に。

「………フレデリカ」

シンエイが同調で呼びかける。それは確認のためでもあったが、同時にシンエイとフレデリカが納得するための問答でもあった。

『キリではない、おそらく敵の誰かじゃろう…』

返って来た答えはシンエイも予想していたものだった。

だが、腑に落ちないこともある。

『…あれは、真・魔王軍の兵士なのですか!?』

レーナからの問いにシンエイは「間違いないと思います」と答えた。

そこにターニャが部下を率いて降り立つ。

「あの新手に関してご存じなのですか?」

ターニャがレーナに訊ねると、レーナは一瞬口籠る。だが、ターニャの瞳を真っ直ぐ見据えて口を開いた。

「私達の、この世界の兵器です。名称はレギオン電磁加速砲型、通称モルフォ。あの上部の角のような兵装はレールガンです、先程の攻撃もそれによるものでしょう」

「レールガン…。接近戦での撃破は可能ですか?」

「近接迎撃兵装も豊富です。かなりの被害を覚悟しなければなりません」

そう言われ、ターニャは思案する。

空中から接近を試みても迎撃を受ければ被害は出るだろう。

それならば―――

「あのモルフォと巨人が潰し合うのを待った方が得策か……」

独り言のように零れた言葉だったが、レーナ自身もターニャと同意見だった。

「ならば、高見の見物でいいのか?」

テレポーテーションしてきたアインズにターニャは首肯する。

「アインズ様…」

歩み寄ったアルベドが声をかける。振り向いたアインズが見たのは、悔しさに表情を歪めたアルベドの美貌だった。

「シャルティアのランスの奪還は、もう少し先になりそうだな」

ターニャが並び立って声をかける。

その視線の先ではレギオン電磁加速砲型に巨人が襲い掛かっていた。

 

--------------------------------------------

 

 

 

―――憎い。

 

――――――部下も、ガモッサもやられてしまった。

 

―――――――――管理者つったな、話には聞いていたが無茶苦茶な存在だぜ

 

――――――――――――だが、このレギオンっつうのはいいモノだな。これなら

 

 

 

 

―――全員、殺せるぜ

 

 

時は少し遡る。

巨人によって戦闘不能にされたオルディエンス・イータから這い出たロンゴドル。横たわるジャイアントガモッサに視線を向けた後、自身の下半身を見る。

無論、下半身など無い。巨人にオルディエンス・イータが上下に引き千切られた時、ロンゴドルの身体も上下に分かれたのだ。

「あ、あぁ…」

声にならない悲鳴を上げたところで、失った下半身は戻らない。

「おい、ガモッサ…。どうしたよ。返事、しろ…、よ…」

問いかけても、横たわる仲間は答えない。

ピクリとも動かず、そこにいるだけだ。

視線を巨人に移したロンゴドルは絶句する。自分達を倒した巨人は、戦意を喪失して敗走する部下達を蹂躙していたのだ。

「なんでだよ…、どうしてッ…」

こんなつもりではなかった。この世界を征服して、真・魔王軍内での立場を絶対のものとしようとした。

その目的はガモッサとも同じであったし、それ故にロンゴドル自身の切り札であるオルディエンス・イータを持ち込んだのだ。

だが結果は、散々なものであった。

シンエイの駆る『アンダーテイカー』に敗北し、乱入してきた巨人には歯牙にも掛けられず戦闘不能にされた。

そして仲間を、部下を、目の前で失っている。

その時浮かんだ感情は〝絶望〟であった、最初は。その感情が〝憎悪〟に変わるのに、時間はかからなかった。

憎悪の感情はロンゴドルを支配する。腕で這いながら巨人に近づく。当の巨人はロンゴドルに気付いていない。

それはロンゴドルにとって屈辱であったが、同時に好機でもあった。

「『リオ・プレア・オルデ』」

ロンゴドルの身体が解け始める。自身の身体が朽ちていく様を感じながら、同時に意識に映像のように流れ込む記憶に馳せる。

 

―――殺してやる!

 

ああ、お前もか?

 

―――たとえ差し違えることになっても、全て殺し尽くす!

 

誰が憎いんだ?

 

ああ、そうか。

 

全てか…

 

そこでロンゴドルの意識は覚醒する。ふと思い出す、先程まで見ていた記憶。それは間違いなく、この世界に存在していた者の記憶だっただろう。ロンゴドルが発動した魔法は、自信の肉体を放棄して、その時点における発動者の感情に最も近い存在の姿を得るものだ。

ロンゴドルを支配した憎悪の感情に最も近い存在の体を得た今の姿が、生まれ変わったロンゴドルの姿なのだ。

その姿はシンエイ達にとって因縁浅からぬものであったが、ロンゴドルがそのことを知る由はない。

現在のロンゴドルは、再びこみ上げる感情を抑えることが出来ずに、巨人を視界に収める。

 

浮かぶ感情はただ1つ―――

 

 

 

「殺してやる。殺してやるぞ!」

 

 

 

―――憎悪と、そこから来る殺意であった。




お読みいただきありがとうございました。

これからもお付き合い頂ければ嬉しいです。


それでは次回でお会いしましょう。
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