無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部 作:かまぼこポテト
今回でエイティシックス世界の話にキリがつきます。
〈ノゥ・フェイスより広域ネットワーク。突如出現した個体の詳細を報告せよ〉
〈――――――〉
〈ノゥ・フェイスより広域ネットワーク。報告せよ〉
〈―――――――――〉
レギオン間に通信が飛び交う。無論、この事をシンエイ達は知る由もない。
突如出現した個体。モルフォの存在はレギオン間に緊張を走らせた。まず疑問、なぜ? どこから? なんのために? 無人戦闘兵器達は何ひとつ答えを出せないでいる。
その答えが導き出される前に、戦端は開かれる。
『殺してやるぞぉ!』
ロンゴドルが雄叫びを上げて巨体を駆動させる。
いまやこの巨体はロンゴドルそのものである。だが生身ではないため挙動に遅れが生じないか懸念したが、そんな懸念は何処へやら、一切の遅延なく自身の意思通りに動く巨体でもって、巨人への砲撃を仕掛けた。
本体上部に搭載されたレールガンの砲身から青白く放たれるアーク放電、次いで放たれた一撃が、今度は巨人の左足に命中する。
音速で放たれた砲弾は一切の弧を描くことなく。一直線に巨人に迫り、その図太い脚を抉り取った。
完全に態勢を崩された巨人は左手を突いて何とか転倒を回避する。
驚愕の表情から一転、モルフォを睨みつける。だが視線の先のモルフォの表情は分からない。
(仕舞だ!)
ロンゴドルは次弾発射の準備に入る。
再びモルフォの砲身が放電する。青白い光が周囲を照らし、まるでカウントダウンが如く、光が強くなる。
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「連射!?」
かつて戦ったモルフォでは出来なかった芸当を目の当たりにしたシンエイが驚愕の声を漏らす。
シンエイは再び放たれるレールガンの着弾による衝撃からレーナ達を庇うように割って入る。シデンやリト達も同じく、生身の者達の盾になるように前面に展開する。
耐衝撃姿勢をとり、脚部のパイルドライバーを地面に打ち込み、機体を固定する。
「皆さん、衝撃に備えてください!」
レーナが皆を見渡す。ターニャ達は盾となるレギンレイヴにしがみつき、衝撃に備えている。
そして放たれた、次弾。
次、直撃を食らえば巨人とてひとたまりもないだろうことは分かっている。シンエイ達としては強大な敵同士が潰し合ってくれたことは好都合だった。
だが、皆は忘れていた。この戦場には、巨人と共に乱入した者がいたことに。
グイアが巨人の肩から飛び降りる。
落下しながらもグイアの視線は迫る砲弾を捉えていた。左腕に盾を出現させると、真っ直ぐ迫る砲弾へと向ける。
目前まで迫った砲弾が何かに阻まれる。
透明の空気の盾のようなナニかが砲弾を防いでいるのだ。だが、勢いを完全に殺すことは出来ず、突破される。
しかし、砲弾は再び防がれる。先程と同様にである。
今度はかなり勢いを殺すことが出来た。グイアは巨大な剣を出現させ、勢いよく振りかぶり、まるで野球のバッターが如く打ち返した。
そんな神技に一同が驚愕の声を漏らしているこよに気付かず、グイアは着地すると、一振りの武器を出現させる。
先端に短い釜のような刀身を持つ武器。殴打も切断も可能に思えるその武器を刀身を背後に、柄を前方に向けて腰だめに構える。
柄を前方のモルフォに向けると、弾道線のように青白い砲塔が出現する。
『超過駆動』
一言グイアが放った次の瞬間。
砲塔から黒紫の手を思わせる無数の何かが重なり、まるで空間を〝掻きむしる〟ように撃ち出された。
一直線にモルフォに迫るそれは、迎撃のために発射されたレールガンの砲弾をも飲み込み、モルフォの二対の砲塔の片方を抉り取った。
砲塔を破壊されたモルフォは有効な攻撃方法を失い、戦闘続行が困難となった。
武器を収納したグイアは巨人の肩に飛び乗り、巨人の頬を軽く小突く。それに頷いた巨人は両手を地面に突くと、肘を曲げる、さながら腕立て伏せのような態勢をとった次の瞬間、勢いよく跳躍し、そのまま姿が見えなくなった。
「行ったか」
アインズが視線を巨人が飛び去った方向から戻す。他の者も同じ行動を取っていた。
「よかったのか、アインズ?」
ターニャの言葉に「構わないさ、今はな」と答える。勿論、グイアに奪われたスポイトランスのことである。
「巨人が撤退したということは…」
レーナが視線を向けた先、モルフォは静かに佇んでいる。
レールガンを破壊されたことで、こちらに対しての攻撃の意思も失くしたのだろう。
「仕掛けてくる気は無いようだな」
アノスの言葉が届いたのか定かではなかったが、モルフォは踵を返す。
直後、アノス達の頭上を3隻の次元船が通過する。
戦場に倒れる真・魔王軍兵士を回収しつつモルフォの頭上に滞空すると、2隻から放たれた鎖のような魔法によってモルフォが拘束され、吊り下げられる形で運ばれていく。
この世界での戦いは、終わった。
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『可能性世界間の物体の移動は想定外なのだ』
純白の玉座に腰を沈めたままピギュティアが言葉を発する。
ここは『議会』。可能性世界を管理する彼等『管理者』が方針を決議するための場所である。
各々の視線の先には無数の球体が浮かぶ。その中心、一際大きな透明の球体に映るのは、モルフォ。巨人の視界を録画のように再生しているのだ。
『あれは我等の傀儡であったはず。世界を乱す行動を許すのか?』
同じく球体に映るモルフォを凝視していたスぺビアが訊ねる。その問いにピギュティアは数秒思案を巡らせる。
『アイラさんの肉体を欠損させる程の代物ですよ、どうするかは決まっているようなものでしょう?』
スぺビアでもピギュティアでもない声が響く。2人は声の主を向く。視線の先、彼等と同様に純白の玉座に膝を抱えて座っている茶髪の青年は顔を上げてスぺビア達を見渡す。
『過ぎたものです。ローズバルト達は可能性のリソースに過ぎないんですから、貰っちゃいましょうよ?』
言い終えた直後、閃いたとばかりに人差し指を上げて再び言葉を発する。
『それが難しければ、壊しちゃえばいいんですよ。所詮〝燃料〟なんですから』
『お前はあのモルフォが欲しいだけではないのか?』
スぺビアの問いに青年は頷く。
『そりゃ、可能なら欲しいですよ。でもアイラさんの肉体を突破するんですよ? グイアさんでもない限り出来ませんよ、あんな芸当』
そう言って指し示した先、球体にはグイアがレールガンの砲弾を防ぎ反撃する様子が映っていた。
グイアは生身ではスぺビアやピギュティアより弱い。だが〝武器があれば〟スぺビアやピギュティアを超えることも可能だ。
各世界から入手した武器の強さを最大限発揮することが出来るグイアは、一言で言うなら「器用」なのだ。だが、それ故に武器の種類、形状などを考慮せず扱うことが出来る。
それは青年が言った通り、スぺビア達が出来ない芸当であった。
『捕獲が困難なら破壊、これでいいんじゃないですか?』
青年の言葉にスぺビア達も頷いたことで、モルフォとなったロンゴドルに対する管理者達の意思は固まった。
『そういえば、僕達に加わりたいって言ってた者がいましたね。どうするんですか?』
『あれの〝反発〟の力は強力だ。だが管理者となる条件を満たしていない』
『あれの身内の首でも持って来れば、考えてもいいと思うのだ』
『ほんとに持ってくるかもしれませんね。なんせ、あれは―――』
そこに、大小の人影が差す。巨人アイラとグイアの2人だ。
2人はそれぞれの玉座に歩いていき。スぺビア達と向かい合う形で座る。
『災難でしたねアイラさん、脚の具合はどうですか?』
身を乗り出して声を掛けてくる青年を巨人―――アイラは睨みながら口を開く。
『うるせぇぞアヴァーティア。もう治った。見てわからねぇかよ』
『心配してるのに…』
口を尖らせて拗ねるアヴァーティアから視線をスぺビア達に向けたアイラ。他の管理者がいないことを訊ねると、ピギュティアから『用事があって外している。じきに帰って来ると思うのだ』と返された。
『で、世界を乱す連中が徒党を組んでいることについてはどうする。〝選別〟するか?』
アイラからの提案に各人は頷かない。ただ一人、アヴァーティアを除いて。
『お前達の好戦的な性格は改めるべきだと思うのだ』
ため息交じりに漏らしたピギュティアを2人は睨む。
『世界を乱してる! 本来世界同士は交わってはいけないはずだ。それだけで理由になるだろうが!』
アイラがピギュティアを指さして声を荒げる。アヴァーティアも同意見なのか『そうですよ!』と同調している。
だが、それでもピギュティアは頷かない。その様子に溜め息を吐くと、アイラは議会を後にする。
『どこに行く気なのだ?』
背に声を受けたアイラの歩みが止まる。
『暴虐の魔王に借りを返してくるのさ』
振り返らずに答えると、そのまま議会を後にした。
お読みいただきありがとうございました。
次回から終章に向けての話が展開されます。
最後までお付き合いいただければ嬉しいです。