東方前進録   作:クラッカーV

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プロローグ

桜が満開になる季節

 

アスファルトの上に乱雑に並べられた桜の花弁を下目に見ながら俺は学校への道を歩いていた

 

「………もう二年目になるが、どうもこの坂は慣れないな」

 

俺が今歩いているのは学校の校門へと続く坂。うちの学校は何故かちょっと標高の高い所に建ててあるのでどうしても坂を上がらなければいけない。更にバスなんぞこの坂の下にバス停があるものだから例えバス通学の生徒だろうとこの坂を上がることを宿命づけられるわけだ

 

更に更に言えばこの坂、とても長いのだ。100m以上あんじゃね?やべえな。ボルトがこの坂走ったら何秒代叩き出すのかな、とか考えてしまう

 

自転車なんかで来てる奴は尚更キツイ。この坂を自転車こいで上がる奴なんか見たことない

 

「今日から学校の始まりかぁ………。帰ってアニメ見たい、ゲームしたい」

 

今日高校二年生になった俺、水無月 和哉《みなつき かずや》はそう溜息を吐いた

 

高校来からの帰宅部の俺にとってこの坂は少しばかりキツイ

 

中学の頃は野球を三年間しっかり続けていたのだが、ただ体力に自信があるだけで対して上手くもなかったので高校では帰宅部に所属していると言うわけだ

 

まあそんなことはどうでもいい

 

「あっははははは!うっそぉ、マジで!?(笑)」

 

「そうなのぉ(笑)。それでマジキモくてさぁww」

 

……………うるせえな

 

内心で舌打ちをする。相手は右斜め前方にいる約2名の名前も知らぬ、学年もクラスも存ぜぬ女子。その笑い声が俺の耳に届いて不愉快な気持ちになった

 

何故朝からそんなに元気なのだろうか。てかうるせえな、大声で笑ってんじゃねえよ

 

「ったく、これだから三次元ってのは………」

 

小声で誰にも聞こえないよう呟いた

 

三次元ってのは何でこうも二次元とは違うのだろうか

 

……………俺は、世間一般で言うオタクの部類に入るんだろう。その証拠にアニメは大好き、ゲームも大好き、読書なんて漫画かラノベか同人誌だ

 

そもそもそれ以外考えられない。俺の頭はそれらの存在を知り、見てしまった時からそれらに魅せられてしまっているのだから

 

まあ、だからと言って勉強しないわけでもなく引きこもりであるわけでもない。…………あ、俺は一人暮らしだから土日は引きこもりか。高校になってからの話だけど

 

「………………ふぁ」

 

坂を登り切り下駄箱で上履きに履き替えた俺は欠伸を漏らす。だがそれは周りの煩さに呑み込まれるかのように消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

「水無月。体育館行こうぜ」

 

「OK。筆記用具いるっけ?」

 

「始業式だぜ?いらねえよ」

 

朝のSHRが終わり、始業式の為に体育館に移動しなければならなくなった。ひじょうに面倒臭いことこの上ない

 

俺に話しかけてきたこいつ。吉川 道正《きっかわ みちただ》、通称みっちーは、言ってみれば俺と同類だ

 

こいつも相当なオタクで、一年の頃俺は別にこの学校で友達が欲しいわけでもなかったので自己紹介の時にネタでやらかしたら話しかけてくるようになった。今ではこの学校では数少ない友達だ

 

あ、と言っても俺は友達いないわけじゃないからな?中学の時は沢山いたし、嘘じゃないからな!?今でもLINEしてるし!土日も引きこもってない日は遊んでるから!

 

…………俺はいったい誰に弁解をしてるんだ

 

「どうしたよ。早く行こうぜ?」

 

「あ、ああ。ごめんごめん」

 

ただまあ、こいつと俺の違うところはこの学校で友達が多いところだ。よく女子とも話しているのを見掛ける

 

「…………うぇ、人多いな」

 

教室から廊下に出た俺達の目の前に広がるのは沢山の生徒達、よく見ると教師も混じっている

 

見ていてひじょうに邪魔だ。うざい

 

「これだから三次元は…………」

 

「またそれか。ま、気持ちはわからんでもないけど」

 

俺の呟きにみっちーは同意した

 

さっきも言ったが、なんで三次元と二次元はこうも違うのか…………

 

二次元の女の子達を見てみろ、見た目だけでもあんなに可愛らしく、優美な娘達じゃないか。それに比べ三次元はどうだ?世間一般で言えばこの娘は可愛いんだろうな…………いや、そこまでじゃね?と言う奴等しかいない

 

例えば萌え袖だ。冬になるとよく見るが、二次元の女子がやるとマジで可愛い。もう、めっちゃキュンキュンする

 

それと反対に三次元の女子がやってると「……………」的な感じでどうでもよくなる。ただ単に「あのブレザーデカイんじゃね?」ぐらいにしか思わない

 

更に中身までも二次元の方が完成されている。三次元での女子を見ているとなんともまあ………、何か言葉には言い表せれないが二次元と違うことは明白だ。二次元の方は料理は出来るし優しいし性格良いし、言うことなしだ。場合によるがな

 

……………ここまででは、ただ俺は三次元と二次元の女子の違いから三次元は駄目だ、と言う風に思っていると思われそうだが、それだけじゃない

 

「それじゃ、俺前の方だから」

 

「おう」

 

体育館に着き俺達は列ごとに並び座る。もう間も無く校長の話が始まるだろう

 

……………それだけじゃない。そう言ったのにはちゃんと理由がある

 

まず考えてみろ。三次元なんか『何も起こらない』じゃないか

 

魔法も無い、異能も無い、宇宙でモビルスーツを着て戦うことも無い、モンスターはいない、剣は銃刀法違反、感覚ごと入り込めるゲーム機も今は無い、テストの点に応じて召喚獣が強くなるというシステムすら無い、てか召喚獣すら無い、未来からの猫型ロボットも、SOS団やら隣人部やらそういった部活も、生徒会の権力でさえ普通はあんなに無い

 

無い無い無い無い無い、ぜーんぶ無い。少なくとも俺の目の前では起こり得ていない

 

「……………え〜、皆さんおはようございます」

 

校長の話が始まった。それに関係無く俺は思考に没頭する

 

ただ単に俺の周りでそう言ったことが起きないだけなのか?ただ単に俺にそんな力なぞ備わってないだけなのか

 

そうであるにしろ、ないにしろ、どちらにせよ俺がいる世界はひじょうにつまらなく、色の薄い世界だ。腐ってる

 

いっそそこら辺にいる奴等みたいに騒げたら幸せなのかもしれない。ただそれはしない、それは自分を裏切る行為に繋がるから

 

だったら自殺でもなんでもすれば良いんじゃないか?それも無理。俺にそんな覚悟なんてない、何より死ぬのは怖い

 

だから、俺はこの腐った世界で生き続ける。自分から適応出来ないなら、出来ないなりに足掻いてみせる

 

いつか、俺の周りで、アニメや漫画展開が起こってくれることを無理矢理信じながら

 

「実は、皆さんに今日はお話があります」

 

…………ん?なんだ?今の今まで心の中でカッコよくキメていた俺はその言葉に反応した

 

明らかに普段と違ったからだ。なんていうか、雰囲気的な何かが

 

「校長先生、それは私からお話しますわ」

 

校長の後ろから透き通るような声が聞こえて来た。うお、何この声、声優出来るんじゃねえの?

 

去年から見て額が少し後退したんじゃないかと思う校長の後ろから現れたのは不思議な帽子を被った、全体的に紫の服装をしている金髪の女性だった

 

「皆さん、おはようございます。新しくこの学校の理事長を務めさせてもらうことになりました。八雲 紫《やくも ゆかり》ですわ」

 

扇子を口元に当てながら言ったその言葉に、体育館中がざわついた

 

「え?新しい理事長?」「てかこの学校に理事長っていたの?」「そりゃいるんじゃない?私立だし」「綺麗だなぁ………」「ウホッ、いい女」

 

口々に話し始める生徒達。てか最後のてめえ、そこは「ウホッ、いい男」だろうが。男に使え男に

 

………………しかし、驚いた

 

普段なら周りの反応を見て「そうか……?」と首を傾げるはずなんだが、俺は思ってしまったのだ

 

綺麗だ………と

 

「……………不覚」

 

まさか三次元にそんなことを思ってしまうとは、これは喜ばしいことなのか?少なくとも俺にとってはそうじゃない様な気がする。何より敗北感が半端じゃない

 

俺はその後も敗北感に打ち拉がれ、それからの話は全く耳に入ってこなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、早速だけど。転校生が2人来ています」

 

『フゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウ!!!』

 

今年の俺の担任教師が急にそんなことを口走り、クラス中の男子が一斉に雄叫びを上げた

 

……………え、いやなにこれ。恐いんだけど

 

「おいみっちー、何だよこれ」

 

「お前理事長の話聞いてなかったのか?一クラスに二人、美少女転校生が来るって話だぜ。しかも親戚らしい」

 

何と、そんな話が出ていたのか。ひじょうにどうでもいい

 

しかし、俺に綺麗だと思わせる人が美少女と言う程なんだから、どれほど美少女なのか……………はっ!待て待て、俺は何を期待しているんだ。俺は二次元を愛すと決めたじゃないか、過度な期待をしても落胆するだけだ

 

「それでは入って来てください」

 

担任の合図でガラララ、と戸が開いて二人の女子が入ってくる

 

「どうも、東風谷 早苗《こちや さなえ》です。よろしくお願いします!」

 

「アリス・マーガトロイドです。よろしくお願いします」

 

二人の女子は自己紹介をする。それと同時にクラス中がまだ騒ぎ出す

 

「……………」

 

そんな中、俺はまたもや驚愕していた

 

まずは一つ、確かに二人の転校生は美少女だった。俺にそう思わせるほどの美少女だ。他のクラスは知らんが

 

そしてもう一つ、こちらが重要だ。こ………こち……なんたらと名乗った女子の髪色、それが緑なのだ。明らかにおかしい

 

外国人っぽい名前の方は金髪だ。まだそっちはわかる。しかし何故緑色なんだ!?おかしいだろ、なんで皆スルーしてるんだよ

 

…………転校生の一人は非行少女と言うことか。絶対あの髪染めてるな

 

まあ、俺にはどうでもいいことか

 

「それじゃあ席は………あいうえお順の方がいいから移動するか。女子移動してー」

 

いやいや、そんな面倒臭いことするなよ。早めに終わらせて帰らせてくれよ、これ終わったら帰れるんだろ?

 

俺の心の訴えも虚しく女子達は席を移動していく

 

そして……………

 

「隣ですね。よろしくお願いします」

 

明るく元気いっぱいな笑顔が、俺に向かって注がれた

 

………………何故、隣なんだ非行少女

 

「………………ああ、よろしく」

 

取り敢えずそう返しておこう。もちろんよろしくするつもりはないが

 

ていうかそもそも、理事長が変わってその親戚達が登校してくる。そんなシチュ、三次元であったのか、これは少しだけ考えを改めなければならないようだ

 

「だがまあ、相変わらず腐ってはいるがな」

 

誰にも聞こえぬよう、そんなことを呟きながら俺は担任の連絡事項に耳を傾けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日が沈むのも少し遅くなってきたな」

 

日が向こうの山へ隠れていっている中、ママチャリをこぎながら言う。そんな俺は今、買い物から帰宅中だ

 

「よっと」

 

公園の入り口へ向かってターン。この公園は無駄に外周が広い、だから外から回ると面倒なのだ

 

「ん?」

 

公園を突っ切っていると前方に青い服を着た少女が見えた

 

「髪が……青い?」

 

しかもその子は髪が青い。あの年で染めてるのだろうか、だとしたら親はどんな教育をしてるんだ

 

その子の親に対しての若干の怒りを感じながら俺はその子を避けて通る。通る時に見えたのだが背中に何か氷の様な羽があるのがわかった。どうやら幼きレイヤーちゃんらしい

 

「何のキャラクターだ?どちらにせよ、将来有望だな」

 

そんなことを言いながら公園の出口へと自転車を滑らせる

 

…………次の瞬間

 

ズガァァァァァン!

 

そんな大きな音と共に、俺の視界が反転した

 

「………………え?」

 

思考が追いつかない。何故空が下に見えているんだ?

 

更に次の瞬間、俺の体全体に衝撃が走った

 

「がっ…………!」

 

息が出来なくなる。体中が痛い。何が起こった?わけがわからない

 

次第に意識が薄れていく

 

そんな中、最後に見たのは赤と白、そして白と黒だった

 

 




最近マンネリ化が激しいのにね。よく書くよね

ゆっくりいきまっしょい
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