「つ、疲れたぁ………」
あれからずっと弾幕を放つ練習をしていた俺は殆ど霊力を使い切ったようで、立ってるのもやっとの状態になっていた
「あら、限界が来たのね」
肩で息をしていると理事長が俺の側にやって来る
「まあでも、いい感じの時間だし戻りましょうか」
「了解、です」
返事も途切れ途切れしか出来ない。これは相当疲れるぞ
俺が返事すると理事長はスキマを作り出して中に入って行く。それに続いて俺も入った
「なんですって!?お嬢様と妹様が!?」
俺と理事長がスキマから食堂へ出るとそんな声が響いた
食堂には見慣れた数の影、円みたいに一つに固まっている。端の方にしゃ、しゃ………写メ?………ああ、射命丸か。射命丸先輩と非行少女(仮)が見えたのでどうやら帰って来たらしい。どこに行ってたのかは知らんが
「それで、二人は今どこに!?」
真ん中にいるのは十六夜さんか。何やら慌てているようだ
お嬢様、妹様………?そう言えば十六夜さんはメイド服を着てたな
と言うことはそう言うことなのだろうか。リアルメイドとか、メイド喫茶へご出勤ください
「いったい何事なの?」
理事長が声を掛ける。すると皆が一斉にこっちを向いた
俺の顔を見て嫌そうな顔をした奴を一人見つけた。目が合ったからだろうが、あからさますぎる。まあ、無視を決め込めばいいだろう
「それが、霊夢と魔理沙がレミリア・スカーレットとフランドール・スカーレットを見つけたらしく。どちらもカードに取り憑かれてるようです」
っ!?狐の尻尾が九本もある人が理事長の問いに答える。なんだあれ、あの人も妖怪か?だとしたら九尾の狐か………
「………成る程ね」
何が成る程なのかわかりそうでわかり難いんだが………まあ、十六夜さんにとってそのレミリアとフランと言う人は大切な人なのだろう。それならあれだけ焦ってるのもわかる
「学校付近の並木道!?わかったわ!」
「咲夜さん!待ってください!」
その声を始めとして人垣が割れて十六夜さんと紅さんが出てくる。十六夜さんが札を取り出してスキマを開き、入って行った
「全く、咲夜はレミィとフランのことになると周りが見えなくなるわね」
割れた人垣の中から紫を基調とした服装の人が出てくる。誰だあれ………
「心配だし、私も行くわ」
ムラサキさんもスキマを開いて行ってしまった
残された面々はと言うと座って話し始める奴らもいれば食堂を出て行く奴らもいた
「…………何だ、別に仲間意識があるわけじゃ無いんだな」
俺は呟く。誰にも聞こえてなかったようだ
いや、聞こえてて無視してんのか?どうでもいいが
幻想郷の住人と言っても仲良しこよしと言うわけでは無いと言うわけか。まあ、ある程度の知り合いではあってもそこまで親しいというわけじゃ無いしな
しかし、だとしたら何故こんな所にいるのだろうか。それぞれ皆大切な人が行方不明ならわかるがな
「和哉君。今日は帰りなさい」
理事長が俺に言う
「はい、わかりました」
「くれぐれも外に出ないように、力を持つ者は持つ者を引き寄せますわ」
「持たない者が出くわす場合もありますがね」
俺は理事長の言葉を聞きながらスキマを開く
「それじゃ、今日はありがとうございました」
それだけ挨拶してスキマに入り、家へ向かった
「やけに素直ですね。自分も行くと言い出しそうなんですが………」
「…………藍。彼ね、結構言うことは素直に聞くのよ」
「へぇ、そうなんですか」
「返事もきちんとしてくれるしね。…………ただ」
「ただ?」
「彼、さっき私の注意に、返事を返して無いのよね…………」
「………………」
「行くわよ。藍」
「はぁ………はい」
「ただいま、っと」
靴を脱いでスキマから出た俺は誰にも返されないのに挨拶をした。最初の頃は虚しくなったもんだが、今はもう慣れた
「さぁて、学校の並木道だったな。って言うと………今は綺麗な桜が咲いてるはずだ。戦いであの綺麗な桜が散ってしまうのは忍びない…………と言うわけで行くか」
理事長には外に出るな、なんて言われたが問題無いよな。俺返事してないし
きっと今の俺は悪どい笑みを浮かべていることだろう。だってしょうがないさ、あんなの聞いて行かないわけにはいかない
「いざ行こう。どんな妖怪か楽しみだ」
家の扉を閉め鍵を掛ける。そして階段を飛ばしながら下りて道へ躍り出た
俺のスキマは家と夢幻荘にしか繋がらないしな。ここからは自力で行くしかない
「だがバハムート号は壊れてるし………しょうがない、走ろう」
未だ修理にも出してないバハムート号の姿を思い浮かべ感傷に浸りながら走り出す。サドルだけになったバハムート号はきちんと部屋の隅に保管してあるからいつか新しい体を買ってやろう。バハムート号の魂はきっと受け継がれる
「む、あれは………弾幕か!」
益体もないことを考えていると並木道の近くに来てたらしく、弾幕の綺麗な光が見える。それだけじゃなく爆発も起こったりしているが
「さっきまでの疲れもいつの間にか吹き飛んでるし、俺も参戦させてもらうぞ……!」
そして俺は桜が綺麗に咲き誇る並木道へと入った
「あっははははは!」
笑う声が聞こえた。並木道へ出た俺の前方には銀髪と金髪の少女が二人、十六夜さんと紅さんとムラサキさんの三人と戦っていた
後ろでは膝を着く霧雨とその横に立つ博麗
「戦況は五分五分か」
どちらも押して押されての状況だ
「行くぞ………」
スペルカードを取り出す
狙うはまず………片方の金髪少女!何やら突撃態勢に入っているが関係無い。突撃する対象との間に撃ち込む!
「願符【夢幻解放】!!」
俺が叫ぶと周りに大きな弾幕が現れる。目の前の敵を殴るかのように拳を撃ち出すと弾幕も一緒に金髪少女へ向かって放たれた
撃ってから後悔した。これ結構疲れる
「っ!」
金髪少女は突撃を辞めて後ろに飛び退く………て言うか、消えた
「お兄さん、だぁれ?」
「っ!?………お前、いつの間に目の前に来た」
気付くと俺の目の前に来て俺の顔を覗き込んでいた
「和哉!?どうしてここにいるんだ!」
霧雨が何か叫んでる。だがこっちは驚きでそれどころじゃない
「え〜?普通にここまで来たよ?」
「………そうか」
おいおい、それホントかよ。妖怪ってそんなに速く動けるのか
「それより、お兄さんも私達と遊んでくれるの?」
「遊ぶ………?」
遊ぶ、とはどう言うことだ?
………それよりも、確かカードに取り憑かれてるんだよな?とても心の闇が暴走してる状態には思えないんだが……
「お姉様〜、遊び相手が増えたよ?」
「そう、良かったわねフラン。それじゃあ………遊びを再開しましょうか!」
銀髪少女が弾幕を放つ。それを紅さんとムラサキさんは次々と避けている
「ねえお兄さん、咲夜とばっかりじゃ飽きちゃった。私と遊ぼ?」
金髪少女の方は俺の顔の前でその小さな右手を開いて見せる
「きゅっとして…………」
「っ!あんた!今すぐそこから飛び退きなさい!!」
博麗が俺に向かって叫んだ。その形相は必死そのものだ
「?何を言って…………「ドカーン」!」
その瞬間、俺の脇腹が爆発するかのように消し飛んだ
ドサッ
爆発の後、和哉は無様に転がる。その脇腹からは大量の血が流れていた
「あいつ……やりやがった。霊夢!」
「わかってるわよ!」
魔理沙と霊夢の二人は直様走り出した。いつも冷静な霊夢でさえ目に見えて焦っている
「あーあ、壊れちゃった。つまんないの」
倒れる和哉を見下ろし金髪の少女、フランドール・スカーレットはそう呟いた
「か、はっ………」
「………あれ?なんだ、まだ壊れてなかったんだ。良かった〜」
和哉が口から血を吐き出す。それを見てフランドールは嬉しそうに笑った
「お、前…………今、何し…た」
声も途切れ途切れで問い掛ける
「すごいね、喋れるんだ。普通の人間だったら壊れてると思うんだけどな〜」
「フラン!そいつから離れるんだぜ!!」
魔理沙がフランドールへ向かって弾幕を放った。その弾幕を炎の剣を作り出し掻き消す
「魔理沙と霊夢も遊んでくれるの?じゃあ皆で遊ぼうよ♪」
「そこまでよ」
フランドールが弾幕を放とうとしたところ、紫がそれを静止した。後ろには藍が控えている
「この子は退場。霊夢、魔理沙、後は頼んだわよ」
そして和哉を藍に保護させ、スキマを開いた
「逃がさないよっ!」
「させるわけないでしょ」
スキマに向かって放たれた弾幕を霊夢が相殺する。その隙にスキマの中に紫と藍は入り、閉じた
「随分とお早い退場だったわね。彼は何しに来たのかしら?それに、わざわざ妖怪の賢者が来るなんてね……」
弾幕の手を止め消えて行ったスキマを見つめるレミリア
「お嬢様、もうお辞めください!」
「あら咲夜、何を辞めると言うの?あなたは私のメイドでしょう?」
「ですが………メイドとして、主の間違いは正さねばなりません」
「間違い………?私は吸血鬼よ」
レミリアはその背中の羽を大きく広げ、月を背にする
「私は吸血鬼らしく人間を襲い、吸血鬼らしく血を吸う。吸血鬼らしく空に舞う。かつての吸血鬼の始祖達の名に恥じないように生きていかなければいけないの。なのに、前の私は………人間と、食糧と馴れ合いを持つなんて………なんて愚かだったのかしら!」
「お嬢様………」
「咲夜、人間のあなたはもういらないわ」
「っ!そ、そんな………」
冷たく言い放たれた言葉に咲夜は膝を着いた
「……………興が削がれたわね。フラン?お暇しましょうか」
レミリアはそんな咲夜を気にすることも無く霊夢と魔理沙の二人と戦っているフランドールへと言った
「えぇ〜…………お姉様、私まだ遊び足りないよ」
「また明日になれば遊べるわよ。きっとね」
「……………は〜い」
頬を膨らませるフランドールにレミリアは微笑む。そして二人は翼を広げて飛び立った
「レミィ!フラン!待っケホッケホッ!」
「パチュリー様!大丈夫ですか……?」
美鈴は咳き込んだ紫色の魔法使い、パチュリー・ノーレッジへと駆け寄った
「ケホッ、ケホッ………えぇ。それよりも、咲夜を……」
パチュリーは咳き込みながら、心配そうに咲夜を見る
「そんな………お嬢様、私は……お嬢様、なんで………私は、お嬢様のために……」
咲夜は虚ろな目でずっと呟いている
「咲夜さん………」
「……………取り敢えず帰りましょう」
霊夢はスキマを開く
「そうだな。咲夜のこともあるし、その方が良いだろ。和哉のことも心配だしな」
そしてまず霊夢と魔理沙の二人がスキマの中へと入って行く
「行きましょう。歩けますか?咲夜さん、パチュリー様」
「私は大丈夫…………ケホッ」
「…………」
次に美鈴が咲夜に肩を貸し、パチュリーと共に入って行った
「…………く、っ!………はぁっ………はぁっ………どこだここ」
目が覚めれば知らない天井。俺はさっきまで桜の並木道にいたはずなんだが………今は白いカーテンに囲まれたベッドの上で寝ている。どこか病院を彷彿とさせる場所だ
「っつ!」
脇腹に激痛が走った。確か脇腹はあの金髪少女に何かされた箇所だったな………よく生きてたもんだ
「あら、起きたわね」
カーテンが開き白い長髪を後ろで三つ編みにしている女性が入ってきた
「気分はどうかしら?自分勝手な少年君」
「…………誰ですか、あんた」
何かイラっと来たから少しキツく言う
「私は八意 永琳《やごころ えいりん》。一応今年からあなたの学校の養護教諭をやってるわ」
「養護教諭………保健室の先生ですか」
「そうよ。あなた、ひどい怪我でここに運び込まれて、丸一日は寝てたのよ」
「丸一日………今日何曜日ですか?」
「金曜日の朝7時ね」
朝7時か………しかし、金曜日とは。どうやら俺は学校を休んでしまったらしい。皆勤賞が消えてしまった………まあ、だからどうと言うことでもないが
俺は負傷した脇腹を見てみる。そこには包帯が巻かれていた
「薬が効いて良かったわ。あなた致命傷だったもの」
「マジかよ………。て言うか、そんな傷が丸一日でこんなに回復するんですか……」
「新しい薬だもの、失敗してなくて良かったわ」
「おい待て、それどう言うことだ」
な、なんだこの人………試作品の薬を俺に使ったのか?失敗してたらどうなってたんだ………
「大丈夫よ。失敗なんてまず無いから」
「あ、そうですか」
何その自信?逆に恐いんですが
しかし、成功したのならそれはそれで良かったのか?
多分理事長の親戚なんだろうな。だとしたら妖怪なんだろうか?薬に関係する妖怪なんていただろうか………?
それに、ここにいるってことはこの人も幻想郷の住人達を連れ戻しに来たわけで………
「?私の顔に何か付いてるかしら?」
ん?ああ、眺めてしまってたか
まあ、時間もあるし聞いてみようかな
そして俺は、とても素朴な疑問を聞くために口を開いた
レミリアとフランの元へ"向かう"
バハムート号が無い、ならば走ろう!
和哉、あっけなく"退場する"
ウエエエェェェェエエエイwww
素朴な疑問を"問う"
和哉「………や、や……やご……(この人名前なんだっけ)」