「俺のリアル、つくづく充実してると思う。つまり俺はリア充!」
「「「……………」」」
考え事をしながら昼飯を食っている昼休み、教室で急にみっちーがそんなことを言い出した。俺はその一言に考え事を中断し、前に座るみっちーを見る
「…………みっちー、今度ジュースでも奢ってやるよ」
俺の隣に座る田中 遊星《たなか ゆうせい》がそう言った。こいつもこの学校で俺の少ない友人だ。勿論アニメ漫画大好きだ
ふむ、俺も続こうか
「俺は飯を奢ってやろう。ラーメン、食いに行くか」
「そうだな。腹割って話そう」
「┓(゜∀゜)┏」
更にそこにみっちーの隣に座っていた里原 浩二《さとはら こうじ》がうざい顔をしている
「いや、奢ってくれるんなら有難くいただくけど…………俺、ガチで最近良い感じよ?」
この馬鹿は何を言ってるのだろうか
「おう、わかった。わかったから」
「俺達はちゃんとわかってる」
「━=┻┳(゜∀゜)」
里原がみっちーに弁当のゴムを撃った。顔がこれまたウザい、しかも威力強い
「いてっ、………まあ、わかってるならいいけど」
「俺達はお前の味方さ」
「いつだって、どこでだって」
「(゜∀゜ゞ)」
「え、うん………」
無駄な時間だったな。考え事の続きと行こう
考え事とは朝、八意先生に聞いた質問のことだ
「八意先生。先生も大切な人を捜しに現代に来たんですか?」
俺は疑問をぶつける。昨日、いや一昨日か………あの時、銀髪と金髪のあの少女達を助けに行ったのはあの二人と親しそうな三人と、博麗と霧雨だけ。他の奴らは行かなかった
大人数で行くと何かマズイことがあるのか、と言うと違うだろう。人払いの術と言う物があると言うのは聞いた
だとしたら、皆が皆大切な者がいなくなったから現代へと来た、としか考えれない。だってそうだろう?大切な者が消えていないのなら、こちらに来る必要は無いのだから
「……………えぇ、そうね。二人………いえ、三人かしら」
「そうですか」
やはりそうだ。俺が思っている以上に沢山消えているらしい
「その三人がもし明日に見つかったとしたら、先生は幻想郷に帰るんですか?」
「なに?帰って欲しくないの?」
八意先生は妖艶に笑う
「からかわないでください。ただ、一昨日のことで、十六夜さん達以外誰も動かなかったものですから」
「…………そうね。帰りはしないわ。全て見つけ終わるまでね」
「何故?」
「貸しがあるからよ。見つけてくれた人とか、それに紫にね」
「成る程」
理事長は色々と動いてるみたいだからな。その借りを返すために、ってことか
「あなたは、自分を変えるためだったわよね」
「……………」
ああそうか、あれって見られてたんだったか
「まあ、間違いではありませんね」
「どうしてなのかしら?」
「?どうして、とは?」
八意先生の質問の意味がわからなかった。見ていたのならわかるだろう、俺がずっと欲しかったモノだから、俺が望んでいたことだから、って
「どうしてあなたは、そうなってしまったのかしらね?」
「……………なに?」
「あなたが腐ってしまったのは、何でなの?」
………俺が、腐ってしまった理由
「簡単ですよ」
「…………へぇ?」
「この世界が俺には受け入れられなかった、ってだけです」
そうだ、こんなつまらない世界、受け入れられるわけが無い
「なんでこうも違うんでしょうね。俺の望む世界とここは………悲しいですよ」
何か胸に込み上げてくるものがあった。目頭が熱くなる
気付けば、頬には雫が伝っていた
「……………そう。そろそろ家に帰って学校へ行く準備をしなさい。傷は運動するのに支障は無いから、体育も参加して大丈夫よ」
「……はい、わかりました」
八意先生は部屋を出て行く。俺は顔を服で拭い、ベッドから降りてスキマを開き、家へと帰った
「…………なんで、あの時泣いたんだろ」
「なに?水無月泣いたの?」
みっちーに聞こえていたのか、驚いた表情で聞いてきた
「いや、泣いてないが」
「でも今「気のせいだ」え、だけど「気のせいだ」いや「気 の せ い だ」はい……」
全く、何度も言わせるもんじゃあ無い
「…………」
ふと、窓から空を見上げる。今日はお日様も顔を出すことが無く、白い雲が覆っていた。視界の隅には黒いのも見える
「今日の晩、雨が降るかもな……昨日も降ったし」
「(´・Д・)」」
田中が呟いた。それに里原が同意するようにウザい顔をする
いや、てかマジでウザいぞその顔。しかも意図がわからない
しかし雨か………
「………なあ、確か吸血鬼って流水が苦手だったな」
「ん?確かそんな設定あったな………」
「設定って言うか、うんまあ設定か」
みっちーと田中が答える
「他にも、十字架やにんにくとかだな」
…………………
「「「里原、お前喋れたのか!?」」」
「いやいや、当たり前だろ」
マジか………顔文字だけで会話するキャラかと思ってた………
まあいい、吸血鬼は流水が苦手と言う情報は間違いじゃなかった。と言うことは、今日は現れないかもな、あの二人…………
「っ………」
あの二人の姿を思い浮かべた途端、脇腹に痛みが走った
金髪少女、なんたら・スカーレットと言ったか。この傷の借りは返すぞ
「必ずな………」
俺は空を見上げ、呟いた
「(…………こいつ、急に何言ってんだ?)」
「(中二病拗らせたか)」
「┓(゜∀゜)┏」
「降らないじゃないか………」
全く降らない。現在時間は18時だが降る気配は全くない
「こんにちは」
夢幻荘のドアをガララ、と開き中に入る
「…………あら、あなた」
「…………」
うちのクラスに転校して来た金髪だ。確か名前は外国人っぽいのだったはず
確か、えっと………マ…
「よう、マーガリンナイト」
「しばき回すわよ」
むぅ、違ったか。しかし、あまり話したことが無いので大目に見て欲しいのだが………
「すまん、忘れた」
「はぁ………アリス・マーガトロイドよ」
「………俺、そう言わなかったか?」
「言わなかったわよ!」
そうだったか………?まあいい
「それよりも、今からパトロールか」
「まだ時間はあるけどね。今日のペアは……魔理沙だったかしら」
ペア入れ替わり制なのか……
「今日は、あの二人が現れると思うか?」
「あの二人?………レミリアとフランのこと?」
「いや、なんたら・スカーレットのことだ」
「だからレミリアとフランのことじゃない……」
なんだ、そうだったのか
「名前くらい覚えなさいよね。記憶能力が低いのかしら………?まあいいわ」
結構失礼じゃないか?
「二人なら、現れるんじゃないの?わからないけど」
「そうか………」
ならば俺も行かなければならないな。例え少女だろうが知ったことか、相手が格上なのはわかっている。だからやり返さなければいけないんだ
「なに?気になるの?」
「借りがあるんでな」
「そう」
マーガトロイドは興味無さそうに言う。聞いといてそれは無いと思うんだが
…………そうだ
「マーガトロイド」
「…………なに?」
「お前も誰かを連れ戻しに来たのか?」
マーガトロイドもここにいると言うことは誰かがいなくなったのだろう
「それを聞いてどうするのよ?」
「どうする……?さあ、どうするんだろうな。ちょっと気になっただけだ」
「ふーん………まあいいわ。いないわよ」
…………なに?
「いないのに現代に来たのか?何をしに来たんだ?」
これは驚いた。まさかこんな奴がいようとは
「ただ協力を頼まれたからよ」
「でも昨日、あんたは二人のとこへ参加しなかったよな」
「昨日?一昨日の間違いでしょ?」
そうだった………
「………私達にはね、ここに来る前に取り決めがあるの」
「取り決め?」
「自分の身内は自分で助ける………ただそれだけよ。別に、上辺だけだから協力したかったらしてもいいけど、そんな物好きそういないでしょ?」
へぇ、そんな取り決めがあったのか
「私も一昨日は行こうと思ったけど、少し上海の調子がおかしくてね。あ、この子のことね」
「シャンハーイ!」
「うおっ!?」
急にマーガトロイドの後ろから小さい人が出てきた
「シャンハーイ!」
俺の目の前まで飛んで来て挨拶……なのか?をしてくれる。なんだ、可愛いなこれ
「お前はマーガトロイドの使い魔か何かか?俺達とは言語が違うようだが………挨拶はそれなのか?…………シャンハーイ」
「シャンハーイ!」
「………ふふっ」
………ん?何故か急にマーガトロイドが笑い出した
「何を笑っている?」
「いえ、別に?その子人形よ。私の魔力で動いてるの」
「なにっ!?これが人形なのか!?」
「シャンハイ!?」
俺はがしぃ!と上海の体を掴みジロジロと見回す
ふむ、本当に人形かと思うくらい精巧な作りをしている。人形なぞ昔持ってた仮面ライダーの物ぐらいしか持ってなかったが………これはすごいな。しかも動くなんて………
「本物の人間みたいだ………」
「……………そ、そう?」
「すごいな、マーガトロイド。どうやったらここまでの物を作れるんだ?普通に尊敬する。これは普通の人間と見た目違わないぞ!」
素晴らしい。幻想郷にはこんなに高度な技術があるのか!もしかしたら現代より進んでるのではないか?
俺は思わずマーガトロイドの手を取っていた。そしてブンブンと上下に振る
「手先が器用なんだな!上海にはどんな素材を使ってるんだ?どうやったらここまで素晴らしい物が作れる。俺にも一つ作ってはくれないか?俺の霊力で動けるようなのがいい」
「え、えと……」
きっと今の俺は目が輝いているだろう。マーガトロイドがたじろいでいるが知ったことじゃあ無い。この人形がマジで欲しい
「駄目ならば無理は言わないが………せめてどういう構造なのか教えてはくれまいか?て言うか、そもそもこれはどうやって動いてるんだ?やはり人形だから糸か!もしかしてマーガトロイドは人形で戦うのか?すごいな!」
手を離して上海とマーガトロイドを見て言う。なんだこの夢の様な技術は、素晴らしすぎる。この技術を俺が使えたら、今頃物置にある仮面ライダー人形や、妹の大事なぬいぐるみも動かせるかもしれない。きっとあいつ喜ぶだろうな
「まあ、その……ありがと」
「それはこちらの台詞だ。初めての体験をありがとう」
「う、うん……」
マーガトロイドはそう言って俯いてしまった。………何か不快になることを言っただろうか?もしかして手を握っていたからか?
「すまない。熱くなってしまったな」
「いえ、いいのよ………そろそろ行かないと駄目だから、じゃあね」
「ああ。あの二人を見付けたら連絡してくれ、誰でもいい。すぐに駆け付ける」
「わかったわ」
そして、俺はマーガトロイドと別れて理事長の元へ向かった
誰もいない食堂、そこに和哉は一人佇む
「今日は特訓も何も無いなんて………暇だ」
早く目撃情報が来ないものかと椅子を揺らしながら待つ
連絡手段をどうしたものか、と悩んだのはつい数分前。紫に聞いたところ、食堂の電話で待っていれば来るとのことだ。その際和哉はまた無茶をすることを言いはしなかったのだが………既に気付かれているだろう
「しかし、何故黒電話………」
当の紫は従者の藍と共に何処かへ行ってしまった。なので和哉は暇を持て余しているのだ
prrrrrr!prrrrrr!
「っ!」
電話の音が静寂を打ち破る。急いで電話の前まで走り受話器を黒電話の上から掻っ攫う
「もしもし、こちら夢幻荘。どうぞ」
「その声、和哉か?」
電話の主は魔理沙だった
「ああ」
どうぞ、と最後に付けて欲しかったのか、和哉は少し顔を顰める
「咲夜達はそこにいるか?」
「いや、食堂には俺一人だ」
「そうか………二階の階段のすぐ近くの部屋に咲夜の部屋があるはずだ。中国とパチュリーもこっちに向かってる。来れるようなら呼んでくれないか?二人が現れた。場所はこの前と同じだ」
「…………霧雨」
「なんだ?」
「咲夜って、誰だ………」
ズコッ!と電話の向こうで音が聞こえる。和哉は聞き慣れない名前に首を傾げるばかりだった
「十六夜 咲夜だ!うちの学校の三年だろ!うちのクラスでも名前結構聞くぜ?」
「十六夜さん、先輩だったのか………。それで、連れて行けばいいんだな?」
「はぁ………無理に連れて来なくていい。て言うかお前は来るな。一昨日みたいになるぞ」
真剣な声持ちで言う魔理沙。和哉は眉を顰める
「だが断る」
そして言い放った
「は!?ちょ、おm(ガシャン!」
受話器を壊れないように強く置く
「二階の階段近くだったな」
和哉は呟いて食堂を跡にする。食堂から出るとちょっと急ぎ足で階段を上がり、取り敢えず目に入った部屋をノックした
コンコン
「………………」
返事は無い
「十六夜先輩、いますか?」
呼んでみる。だが声は聞こえない
いないのか、と一瞬考えるが諦めずにドアをノックする和哉
「だいたい何故先輩だけパトロールに行ってないんだ?何かあったのか?」
ノックを続けながら考えを巡らせる
「……………誰?」
声が聞こえた。咲夜だ
「水無月です。スカーレット達が見つかったと報告が来て、呼んでこいと言われたんで」
「………お嬢様と妹様が」
咲夜の声は暗く、沈んでいる
「そうです。行くなら行く、行かないなら行かないと早目に決めてもらえませんか?俺も行きたいんですが」
辛辣な言葉を掛ける和哉。別に意識しているわけでは無いのだが、何故か昨日はあんなにも必死になっていた咲夜が、今は正反対なのにイラついていた
「私は、もう必要とされてないから」
「…………はぁ?」
いきなりの言葉に訳がわからないと言うような顔をする
「どう言うことですか」
「………私は、お嬢様にもう必要とされてないの。あの方に仕えるのが、私の生き甲斐だったのに……」
「……………」
掠れ声に少しの嗚咽が混じっている
「………………くっだんねぇ」
「………え?」
「くだらないと言ったんすよ。あんたアホか?あいつらはカードに取り憑かれてるんだろ?あの言葉が本心だと思ってるのかよ」
和哉は苛立っていた。本人にもわからない、何か心の奥からフツフツと湧き上がる
「仕えるのが生き甲斐?つまり、それはあんたの願いだよな。望みだよな?あんたが自分でいられる"幸せ"って奴だ」
「…………」
「それを、たった一回の言葉で辞めるのか?諦めるのか?あんたにとってそんな程度のモノだったんだな。そのお嬢様に仕える、って言うのは」
ガチャッ!!
ドンッ!
勢い良くドアが開け放たれた。そして、和哉の体は壁に押し付けられる
「あなた、好き勝手言うのも大概にしなさいよ」
和哉を壁に押し付けたのは咲夜だった。胸ぐらを掴み、怒りの表情を浮かべている
「図星だったか?」
「あなたねぇ……!勝手知った風に言うんじゃないわよ!あなたみたいな人間にわかるはずないでしょう!?」
「当たり前だろ。俺はあんたじゃないんだから」
咲夜の怒号と殺気に当てられても平然とした顔を浮かべる和哉
「私は、お嬢様に仕えることが望みなの!それ以外の私なんて考えられないのよ!!」
「だったらなんで諦めてるんだ」
「なに………!?」
「聞こえてなかったのか?何故諦めるか、と聞いたんだが」
ゆっくりと咲夜の手を掴み、胸ぐらから外す
「望みなんだろ?何故諦める。それ以外考えられないんだろ?なら何故諦めた」
淡々と言い放つ和哉。その姿に咲夜は軽い恐怖を覚え、後ずさった
和哉は気にせず紡ぐ
「それが自分の"望み"なら、"願い"なら………何故諦める必要があるんだ?どうしても叶えたい望みなんだろう?だったら………」
和哉は咲夜を睨むように見つめる
目にはゆっくり、ユラユラと燃える炎が見えた。何時もの腐ってる目でもない、偶に見える生き生きとした目でもない、今までに見せたことのない輝きを持った瞳
「だったら!例え何度断られようが、何度見捨てられようが縋りつけよ!殴られようが、足で踏みつけられようが!腕が折れても、足が失くなっても、四肢がもぎ取られようが、足掻き続けろ!泣き喚いてもいい!子供の様に駄々を捏ねてもいい!!それほど叶えたいモノなら、そのためにはなんだってやれよ!!大切なモノのために、なんだってやればいいじゃないか!!何故それをしない!何故辞めてしまうんだ!!」
「なんだって、やれば…………」
「そうだ。周りの、ろくに自分のことを知らない奴等に何と言われても構いはしない。それ程、それすら気にさせない程、あんたのお嬢様はあんたにとって大切なんだろ?」
「えぇ、お嬢様も、妹様も私の…………大切な人」
「なら助け出してやろう、カードの呪縛から。たった一度のことがなんだ、そんなものクシャクシャにしてゴミ箱にでも捨ててしまえ」
和哉は咲夜へと手を差し伸べた
「そうね、私は、間違っていた。…………行きましょう」
咲夜はその手を取る。もうさっきまでの、ウジウジした咲夜ではない
和哉と同じ様に、その瞳に炎を燃やして
「…………了解しました。十六夜先輩」
そんな咲夜を見てフッ、と笑う
「さあ行きましょうか、大切な人を連れ戻しに。場所はこの前と同じらしいですよ」
「えぇ!」
咲夜がスキマを開く
そして二人は、スキマの中へと走り出した
"疑問"を投げかける
和哉「大切な人を、連れ戻しに来たんですか?」
上海"人形"と出会う
上海「シャンハーイ!」
和哉「シャンハーイ」
咲夜に"説教"
和哉「諦めるんじゃない!!」