『GUOOOOoooooOOOOO!!!』
アリスが和哉を連れ夢幻荘へと急ぐ頃、魔理沙達は蝙蝠と奮闘していた
「中国、反対側に回れ!」
「だから美鈴ですって………。了解しました」
魔理沙と美鈴が蝙蝠の両側へと走り出した。魔理沙は箒に乗り、そのまま空中へ猛スピードで駆け上がる
「魔符【スターダストレヴァリエ】!」
「彩符【彩雨】!」
両側から魔理沙と美鈴のスペカが蝙蝠に迫る
「はぁっ!幻符【殺人ドール】!」
そして蝙蝠の前方に無数のナイフが広がった。それらは蝙蝠の顔面へ向かって放たれている
三方向からのスペカでの攻撃。これは耐えられないだろうと、その場の全員は確信する
………しかし、その確信は脆く崩れ去った
『GURU………』
《紅符【不夜城レッド】》
蝙蝠の体が紅いオーラに包まれる
「なんですって!?」
一番に驚きの声をあげたのは咲夜だった
蝙蝠に襲い掛かる沢山の弾幕。それら全ては蝙蝠に当たった。確かに当たったのだが………
『GURUUUU…………』
蝙蝠には傷一つついていなかった
「マジか、これ………」
「お嬢様のスペルカードを使える、ってわけですか………?」
二人は唖然とする
そんな二人を嘲笑うかのように、蝙蝠は鼻を鳴らし羽ばたいた
「っ!飛ぼうとしてるわよ!」
「なに!?逃がすか!………うわっ!」
パチュリーが叫び、魔理沙が阻止を試みる。だがそれは失敗し魔理沙は風圧により吹き飛ばされ、蝙蝠は飛び上がりそのまま夜空へと羽ばたいた
『GUAAAA!!』
短い咆哮が響き渡る
すると空に夜空よりも黒い、あのカードから溢れ出た闇のような色をした空間への入口が開いた。どうやらその中へ向かっているようだ
「くっそ、逃がすわけにはいかないぜ!」
魔理沙は箒に再度跨り蝙蝠へと突進する
それに続き美鈴と咲夜も蝙蝠を追い掛けた
『あっれ、まだ逃げてなかったの蝙蝠くぅ〜ん。いや、女の子から生まれたから蝙蝠ちゃんかな?』
蝙蝠の頭の上に黒い人影が現れた。その腕にはフランが抱えられている
『手早く逃げるとしましょうぜ。期待の戦力、蝙蝠ちゃん』
人影は蝙蝠の頭をポンポンと叩き呑気に言った
「妹様!?」
「お前、その声は………さっきの!」
『いやぁはっは!君達もよくやるねぇ。蝙蝠ちゃんは何も罪の無い子なのですよ〜?…………ま、どうでもいいや。それじゃ、バイなら』
紅符【スカーレットシュート】
『俺も手助け♪そうだな、君ら風に言うと………増幅【減ることの無い悪】、かな?あっはは!俺ネーミングセンスねえなぁ!』
人影が言った瞬間、蝙蝠は大小様々な紅い弾幕を放ち三人を襲う
「なっ、速い!」
普段のレミリアのスペカなら難なく……とはいかないが避けれていただろう。だが放たれた弾幕は明らかに質もスピードも、全てがレミリアの弾幕を上回っている
「うわあぁぁぁ!」
「魔理沙!きゃあっ!」
「くぁっ!」
今までと違うスペカに三人は面食らい被弾してしまった
『おー、強えな。流石吸血鬼から生まれただけあるぜ!んじゃね〜』
「あ、待ちなさい!ケホッケホッ!」
そして蝙蝠に乗った人影は闇の中へと消えて行った
「くっ………」
「大丈夫ですか?咲夜さん」
「えぇ、大丈夫よ。…………逃げられたわね」
咲夜は悔しそうに歯噛みする
フランを連れ去った人影へ、蝙蝠への憎しみを込めて、夜空を睨みつけた
「がぁぁぁぁぁ!あ、あぁ!ぐ、ぁぁ!」
熱い………!痛い………!体の中で何かが暴れている!なんだ、なんだこれ!?
「これは………相当深刻な状態ね」
この声は、理事長?そうか、俺はマーガトロイドに連れられて…………
カッコ悪いな……女子に運んでもらうなんざ
「ぐぅ!あぁぁぁ!」
痛い………この痛み、博麗にボコボコにされた時以来か……いや、それよりも痛いかもしれない
だが痛いのに、何故か頭の中は信じられない程冷静なんだ。痛みが一周したのかもしれない、だとしたら相当だな………
「和哉君、私の声聞こえる?和哉君?」
この声は………八意先生だ。返事をしなければ……
「ぐぁぁ!………ぐ…は、い……」
「意識はちゃんとあるようね。麻酔を打つわ、それも特性の。ちょっと痛いわよ、我慢してね」
麻酔?ちょっと痛いって………そんな痛みなんて関係無いと思うのだが
「行くわよ………」
ズガンッ!
「がっ!」
俺の体に衝撃が走る
その衝撃で俺の意識は刈り取られた
「眠ったようね」
「麻酔と言うより殆ど物理だったような気がするのだけれど………」
「気にしたら負けよ」
「……………そう」
「くっそ!悔しいんだぜ!あいつ、次会ったら絶対ぶっ倒してやる!!」
夢幻荘のリビング、魔理沙が机をバン!と叩き叫んだ。周りからはなんだなんだと視線が寄せられるが音を出した本人を見ると、なんだ魔理沙か、といった感じにまた視線を外す
「さっきからそればっかりじゃない」
「目の前でフランが連れ去られたんだぜ?霊夢はなんとも思わないのかよ!」
「誰もそうは言ってないでしょ?ただ、悔しいとギャーギャー喚いたところで何も出来ないでしょうが。それよりも今日のことについてのことだけど………紫が戻ってきたら皆に話せるようにしときなさいよ」
「わかってるさ。それよりも和哉のことが心配だぜ…………」
魔理沙は食堂の扉を見て呟く
その時丁度扉が開き、紫と藍、永琳が入ってきた
「全員帰って来ているようね。…………報告を始めましょうか」
一声でその場の全員が静まり返った。その中、紫はゆっくりと中心まで歩く
「今日はパトロール中、問題が起こったわ。その報告をする前にまず、他の報告から。霊夢、お願い」
「なんで私なのよ…………」
霊夢はブツクサと文句を言いながらも立ち上がり、紫と同じように中心に立つ
「今日私と早苗の班はパトロール中、複数の黒い影に襲われたわ。形は犬から人間まで様々、一体一体の戦闘力は大したことないわ」
「あ、それ私達もです」
美鈴が手を挙げて言った。それを始めに周りも続々と手を挙げ出した
「全ての班が襲われたのか?」
藍が顔を驚愕に染める
全ての班、二人一組で十班近くある全ての班が襲われたのだ。狙ってやったとしか思えない
「倒しても倒しても出てくるので大変でしたよ……」
「私達はすぐに消えたわよ?」
「ゴキブリみたいに沸いてきて気持ち悪かったんだけど」
それぞれが口々に話し出す
「ゴリラがいた」「変な植物みたいなのもいたわね」「ふっとい丸太みたいな奴だったのう!」「バーン!って吹っ飛んだよね!」「周りも吹っ飛ぶからもう辞めてよ?」「豆腐のように斬り捨ててやりましたよ」「ちょ、こんな所で刀抜かないでよ」
「はいはい皆、静かに」
紫がそれを止める
「話はそこまでよ。ここからが今日一番の問題、魔理沙お願い」
「わかったんだぜ」
今度は霊夢と入れ替わるように魔理沙が中心に出た
その際霊夢とハイタッチしようとした魔理沙だったが普通に無視され、頭を掻く
「今日、私とアリスのペアはレミリアとフランに遭遇した。美鈴とパチュリーに連絡をとった後、咲夜………あ〜、詳しくは和哉にだけど、その六人で戦った」
「和哉?あの人間、懲りずにまた行ったのね」
「私も来るなって言ったんだがな………。アリスと和哉でフラン、他四人でレミリアと相対した。まずはレミリアを確実に元に戻すために四人で戦ったんだ。結果、レミリアに札を貼ることは成功しレミリアは元に戻せたんだが…………」
魔理沙は俯き手を強く握る
「そこに黒い人影が現れた」
真剣な魔理沙の表情に、場の全員が息を呑んだ
「レミリアから現れたカードは他のカードとは違っていた。1の数字が書かれてたんだ。その上、そのカードからデッカい蝙蝠の化け物まで現れやがった。しかもどうやら、レミリアのスペカを使えるみたいなんだ」
バキンッ!
何かの割れる音が響く
その音源の先を見ると、咲夜が硝子のコップを握り潰していた
「妹様を攫うだけじゃなく、お嬢様のスペカを使うなんて………!」
「落ち着いて下さい咲夜さん。血、出てますよ」
「……………んで、人影に蝙蝠ごとフランを連れ去られたってわけだ。私達のとこはこれぐらいだが、アリス!フランが連れ去られたってことは人影が来たんだよな」
魔理沙が奥に座るアリスへと声を掛けた
「……ええ。和哉と一緒にフランを追い詰めたのだけど、札を貼る前に人影に連れ去られたわ。その後和哉は苦しみだすし……」
頭を抱えるアリス。和哉を運んで来たり、想定外のことが沢山あったりと精神的に疲れているようだ
「あいつは和哉の能力がどうの言ってたわ。紫、あんたがそれを知っていることも」
俯いて髪に隠れた目がギラリと紫を睨んだ
「……………ええ。私は彼の能力について気付いていたわ」
「ちょっと、能力ってどう言うことよ」
霊夢が紫に聞く
「そうね、それも踏まえて話さなければいけないわね」
扇子を閉じる音が食堂に響いた
「何だあの物理的過ぎる麻酔は!!」
俺はベッドの上から跳ね起きた
何故こんなことを口走りながら起きたのかはわからないが………
「ここは……夢幻荘の治療室か」
そう言えば朝もここで目が覚めたような気がする
「痛みも熱さも無い………八意先生が治してくれたのか」
あの人影は俺の力が中で暴走していると言っていたが、それを治すなんて……あの先生何でも治せそうだな。もしかしたら理事長が治してくれたのかもしれないが。体中の傷は治るとまではいってないがキチンと治療されている。痛みすら残ってない、八意先生は凄い先生なんだな
しかし、俺に能力か
今まで自分にこんな能力があったら、とか沢山考えたことがあったが、本当に実現してしまうと何かと戸惑うものだ。いつもの俺ならばテンション上げ上げで踊り狂っているところだろうが何故かそんな気分になれない
嬉しい気持ちはあるのだが、それと同時に不安でもある
スカーレットと戦った時恐らく俺の能力が発動していたのだろう。あの時の俺は凄まじい力があった。だがそれと同時に、その力に呑み込まれそうになっていたのも一つの事実だろう。スカーレットに借りを返したいことと、スカーレットを連れ戻すことに躍起になっていたから自分でも自分の変化に気付かなかった
まったく、あの巫山戯た影野郎の言う通りだ
もう一度あの力を使ったら俺はどうなるんだろう。自分を見失って暴れ狂うのだろうか?そんなのは御免だ
だが、発動条件もわからない。能力の内容もわからない。自分で仮説を立てて見るとすれば、多分だが自己強化系の能力なのだろう
どうせならもっとカッコ良くて強い能力が良かった。あと使いやすい能力、暴走とかしない。そうすればあいつに逃げられることなくスカーレットを連れ戻せたんだ
『絶対に妹様を助けなさい。あと…………絶対に死なないこと、わかった?』
あの時の十六夜先輩の言葉を思い出す
十六夜先輩は俺に託してくれた。ポッと出の俺を信じて、大切な人の救出を俺に託した
………………だが、俺はそれを裏切ってしまった
約束を破ってしまった…………
「くそがっ…………!」
俺は、基本自分自身から他人に寄って行くことはしない。いや、しなくなった、と言う方が正しいのかもしれない
……………だが、例え他人であろうと約束は守る。今まで、どんな約束でも全て守ってきた。それはこれからも変わりはしない
俺が自分自身に誓ったこと
約束を守ること。そして、自分に嘘は吐かないこと
それが、俺が俺の為に決めたことだ
「なのに、俺は……」
十六夜先輩に顔向けが出来ない
「……………ちっ。一つ、追加だ」
スカーレットは、俺の手で救ってみせる!
化け物と人影を"取り逃がす"
影『んじゃ、バイなら』
『GURURURU………』
今夜の"報告"会議
紫「報告を始めましょうか」
和哉は"誓い"を立てる
和哉「一つ追加だ。必ず俺がスカーレットを救ってみせる!」