東方前進録   作:クラッカーV

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かみまみた→忘れ物

「ただいま帰りました〜」

 

「お邪魔します」

 

夢幻荘のドアを開け放ち言う東風谷に続き挨拶をする。そう言えば東風谷達は全員ここに住んでるのか、料理とか誰が作るんだろ?結構大変だろうに

 

「遅いですよ、早苗さん。今から捜しに行こうと思ってました」

 

益体もないことを考えていると前から白髪の少女がやって来る。オマケになんか白いフヨフヨもいる

 

思えば俺、玄関に入ったら毎回誰かに会ってないか?ここは出会いの玄関と名付けたら丁度良いんじゃないだろうか

 

………いや、やっぱりそんなことはどうでもいいから俺が抱えているこの虫使い少女をなんとかして欲しい。そろそろ腕がヤバ………はっ!?最初からおぶっとけば良かったんじゃないか!?

 

「あははは、ごめんなさい。敵に襲われちゃったものですから」

 

「敵に………その人は、確かリグル・ナイトバグさんでしたね。開放できたのですか」

 

「はい、和哉さんが」

 

「あなたが……」

 

む?なんだか見られてる?なんか意外そうな目で見られてる。なんだ、何が意外だ?俺がガラにもなくお姫様抱っこしてるからか?成り行きに決まってんだろ。普段はこんなことしない

 

「…………なんだ?」

 

と言ってやりたいがほぼ初対面の人にそこまで言うほど俺は卑屈な性格はしていないぞ

 

「いえ……それにしても、よく無事でしたね」

 

それはアレか?俺が弱いからすぐにリタイアすると思ってたってことでいいんだな?

 

それに

 

「残念だがそうでもないんだ、これが」

 

そう、見た目は平気そうかもしれないが無事ではない

 

「?」

 

俺は虫使い少女を床に優しく降ろし、ジャージの襟を掴んで白髪少女に向き直る

 

「見ろこのジャージ。実はこれ二番目にお気に入りのジャージなんだが、蛙のあんちくしょうが舌を使って攻撃して来るもんだから汚れてしまっている。さらに一番お気に入りのジャージは前回のスカーレットとの戦闘で丸焦げ&穴空きだぞ?これのどこが無事なんだ。笑えない、これは実に笑えないんだよ白髪少女」

 

「そ、そうですか……あと、私は魂魄 妖夢です」

 

「何故お気に入りのジャージが二着も………どちらも決して高いものではなかったが色は黒色だったし、良い感じの場所にラインとかが入ってて結構カッコよかったんだ」

 

「は、はぁ………」

 

「え、と……和哉さん?」

 

「さらに言えば一着目の方はラインが蛍光シールだから夜に出歩いても車や自転車の光を反射して場所を示してくれるという優れものだったんだぞ。………車や自転車と言えば最近ライトを点灯していない自転車が多すぎる!この前なんか当たりそうになった。しかも向こうが悪いのに気を付けろ!と怒鳴ってきたんだぞ?おかしいだろ。だったらライトくらい点けろって話だ!俺がどれだけ夜に出歩いてスマホを突いてたりライトを点けていない奴にぶつかりそうになったと思ってるんだ!!そして前を見ろ!!スマホを突きながら自転車を漕ぐんじゃあない!死にたいのか!?死にたいんだな!?それで人にぶつかって高い金払いたいんだな!?ならば良いだろう!そんな貴様ら駆逐してやる!!」

 

「お、落ち着いてください!!もうなんか全然脈絡のない話になってますよ!?」

 

…………く、なんとやるせないことだ

 

「すまない、騒ぎ立てて悪かったな。だがわかってほしい」

 

「あ、え〜と………はい」

 

「ところで白髪少女、君の名前は何かな?俺の名前は知ってるみたいだが」

 

「さっき自己紹介しましたよね!?」

 

そうだったか?

 

えっと…………!そうそう、確か淡白的な名前だったはずだ

 

ん?淡白的?淡白的ってなんだ?………まあいいか。取り敢えず淡白的な名前だったはずだ

 

「…………おお、思い出した」

 

「思い出しましたか………」

 

「淡白 ヨンム」

 

「この人斬って良いですか?」

 

物騒だなおい………て言うか違ったのか

 

「魂魄 妖夢ですよ、和哉さん」

 

「おぉ、そうだったか。これは失礼、わざとじゃないんだ。かんだんだよ」

 

「………怪しいです。わざとですよね」

 

「かみまみた」

 

「ふざけてるんですか?」

 

むぅ……やはり知らないか。みっちーなら返してくれるんだが

 

「取り敢えず上がっても良いか?流石に玄関にずっといるのもアレなんだが。それに理事長にも話がある」

 

虫使い少女も放置中だしな

 

「むぅ………そうですね。すみません」

 

「いやいや、こっちも長々と話してすまなかった」

 

きちんと律儀に謝ってくれた。これは好印象だ。やはりこうあるべきだな、うんうん

 

「虫使い少女はどこへ運ぼうか、ここまで来たのなら最後まで運ぼう。東風谷、空いてる部屋へ案内してくれ」

 

「わかりました。こっちです」

 

俺と東風谷は靴を脱いで玄関から階段へと向かう。今度は虫使い少女はキチンとおんぶしているぞ、俺は学習するのだ

 

「あ、和哉さん」

 

あんたも俺を名前で呼ぶか、魂魄

 

「どうした?」

 

「お昼ご飯はもう食べましたか?良ければ用意しますけど」

 

お昼ご飯?………あぁ、今はそんな時間帯か。なんだかわからんが時間の感覚が麻痺していたみたいだ。成る程成る程、今は昼飯時か

 

…………あ!ベンチにゴミ忘れて来た!なんと言う失態!!

 

「いや俺はいい、既に食べた。虫使い少女を置いたらまた少し出る用事ができた。理事長との話はその後と言うことで」

 

「そうですか。わかりました」

 

魂魄はそう返事をすると、恐らく食堂に向かったのか姿を消した。俺はそれを見ると階段を少し足早に上がり東風谷と共に空いている部屋へと虫使い少女を置く

 

「紫さんに話ってなんですか?」

 

東風谷が聞いてきた

 

「ん?………まあ、人払いのお札でも貰いにと思ってたな」

 

実際はこれだけではないがどうやら東風谷………いや、東風谷含め全員か。俺自身の能力のことを俺が知らないと思ってるようだ。あの時確かに俺は食堂の外にいたのだから、知らないと思ってても無理はないのかもしれないが

 

「あぁ、成る程。でも、勝手に私的用事で使っちゃ駄目ですよ?例えば行列のできてるケーキ屋さんに朝一番に入ってケーキを買うためにとか!」

 

「そんなことするわけないだろう。…………結構具体的だな。まさかやったのか?」

 

いや、まさか………まさかそんなはずはないだろう。流石にそこまではしないよな?

 

「えっ!?いや……も、もちろんしてもせんよ!?」

 

…………したんだな

 

「そんなジト目で見ないでくださいよ!してませんったらぁ!!」

 

「本当は?」

 

「………………ちょ、ちょっとだけ」

 

「…………」

 

「で、でもちょっとだけですよ?ホント、ちょっとだけです!」

 

………はぁ

 

「理事長には黙っといてやる」

 

「ホントですか!?ありがt「その代わりと言っちゃなんだが……」………なんです?」

 

まあまあ、そんな怪しむような目をするな。貞操の危機を感じて腕で体を抱えて身を引くな、俺は三次元に興味ないから

 

「そのケーキ屋、俺に教えろ。俺は甘い物も好きでな」

 

それに、行列ができると聞くと行ってみたくなるのが人間と言うものだろう?まあ、あまり人が多いところは好きじゃないんだがな

 

「そうなんですか!?なんだか意外ですね」

 

「別に目がない、と言うわけではないぞ。甘味は疲れた時には良いからな」

 

「わかりました。今度一緒に行きましょうね!」

 

「いや、それはいい」

 

「えぇ!?」

 

驚くほどのことか?場所さえ教えてもらえれば勝手に一人で行くんだが

 

「それじゃあ俺はさっきの場所に行ってゴミをとってくる。………そう言えば東風谷、お前のはどうした?」

 

「私の分はスキマで送ったから大丈夫です。まだ残ってますし」

 

そんなことが出来たのか………くそ、俺もやれば良かった

 

「私はお昼ご飯食べてきます。それでは!」

 

そう言うと東風谷はたったかと一階に降りて行った

 

…………あいつ、スイーツ結構食ってなかったか?別腹ですか、そうですか

 

俺も行くかとゆったりと階段を降り、玄関で靴を履く。靴紐がほどけていたので座って結ぶ

 

早くゴミを回収して理事長とゆっくりお茶でも飲みながら話をしよう。聞きたいこと言いたいこと貰いたいものがごまんと………いや、そこまではないが多少はある

 

例えば俺の能力の制御の仕方とか………

 

「…………」

 

ふと、思った

 

今回の、この事件の原因は俺にある。人影やカードの件については俺ではないとは思うが

 

そして、そのことを東風谷もさっきの魂魄も知っているのだ

俺が、自分達の大切な人達を奪ったのだと、知っているのだ

 

「なんでだ?」

 

なんであんなに普通に接することが出来るんだ?

 

なんで昼飯なんか振る舞おうとするんだ?

 

俺が知らないと思ってるからか?意識して起こしたことではないからか?

 

「…………優しすぎんだろ」

 

優しすぎる。もしかしたら影で何かを言ってるのかもしれないが、それでも優しすぎやしないか

普通ならば俺を嫌うだろう。近付こうとはしないだろう。数多の叱責をくらわしても俺は何も言えやしない

 

なのになんなんだそれは………!

 

まるでどこかの漫画のキャラクターのようだ。主人公達のようだ

 

………羨ましいな

 

「玄関になんか座って何をしているの?」

 

「?」

 

後ろから声を掛けられる。幼い子供の声だ

 

「レミリア・スカーレットに……十六夜先輩ですか」

 

座ったまま振り向くとそこには如何にもお嬢様、と言うような服を来たレミリア・スカーレットと、力を解放してはいないのだろうが、メイド服の十六夜先輩がいた

正直言って前回フランドール・スカーレットを連れ戻せなかったから、十六夜先輩とは会いにくかったんだがな……

 

「日本と言うのは面倒臭いわね。態々家にあがるのに靴を脱がないとダメなんて」

 

「お嬢様、郷に入っては郷に従え、とよく言いますでしょう?」

 

「わかってるわよそれくらい」

 

「…………まあ、ホテルとかには靴を脱がずに入れる場所もあるけどな」

 

いきなりの話題になんとか返す。この二人は一体何をしに来たのだろうか

 

「用件はなんでしょうか、十六夜先輩」

 

「私ではなくお嬢様よ」

 

「そうよ。玄関になんか座って何をしているの?とさっき質問したでしょう?」

 

レミリア・スカーレットが俺に用事か………長いな、吸血鬼でいいか

 

「ただ少し考え事をしていただけだ」

 

「ふ〜ん………考え事って、自分のこれからのことかしら?それとも、能力のこと?」

 

俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。座っているため顔が近い

 

だが目をそらさずその紅い目をじっと見つめ返す

 

「別に、お前には関係無いだろう」

 

「関係無いことないわよ。原因、あなたなんでしょう?」

 

原因、か。どうやらこいつ、既に話を聞いているようだ

 

「あぁ、そうみたいだな」

 

特に驚きもせずに返す俺を見て十六夜先輩は少し目を見開いた。それもそうだ。誰も俺が知ってるとは思っていないのだから

 

「…………じゃあ」

 

瞬間、眩しい光が目に飛び込んでくる。思わず目を瞑った

 

「あなたを殺せば全て解決かしら?」

 

次に、首筋に紅い槍を突き付けられた。若干チクリと刺さってて痛い。血出てないか?これ

 

「お嬢様!」

 

「邪魔しないで咲夜。…………ねぇ、確か名前は水無月 和哉だったかしら?」

 

「あぁ、そうだが?」

 

こんな状況でも普通に答える。心の中では正直ビックリだ。この前の戦いで恐怖を克服でもしたのか?

 

「あなたを殺せば解決するかもしれないとしたら、あなたを殺せばフランが帰ってくるとしたら、解決へと向かおうとするあなたは命を捧げる覚悟があるかしら?」

 

命を捧げる覚悟………か

 

「さぁ、答えなさい」

 

「まあそう急かすな」

 

俺は槍を掴む。邪魔だ

 

それに答えなんて決まっている。最初からな

 

「そんなもの、あるわけないだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の目の前では今、お嬢様が和哉に向けて槍を向けている

 

最初は止めようと思ったが、邪魔をするなと言われたし、お嬢様も本気で殺すつもりはないようなので介入はしなかった。本気で殺す気だったのならなんとしてでも止めなければならなかった。玄関が血塗れになるのは嫌だ。それに死体を片付けるのも面倒だ。そして何よりも、彼にはまだ死んでもらっては困るからだ

 

お嬢様を助け出したあの日、きっと私は彼がいなければお嬢様を救いに立ち上がることはなかっただろう。今思えば、あの時の私はそれ程精神ダメージが大きかったのだろう

 

私の中で彼の第一印象は良いものではなかった。過去形だからといって、今がとても良いのかと言うとそうではないのだが

 

最初彼が来た時、霊夢と魔理沙はまた面倒なモノを拾ってきたものだと思った。完全に野次馬状態で介入してきたからだ。二回目に来た時も同じだった

 

霊夢の説得と言う名のリンチの時なんかわけがわからなかった。俺の世界を変えるだの、腐った自分を変えるためだの、何が言いたいのかさっぱりだ。こっちに来て聞いた、ああ言うのを中二病やら高二病と言うらしい。どこから仕入れてきた知識なのか早苗が言っていた

 

碌に戦えもしないのに勝手に戦いの中に入ってきては即退場していく姿は無様以外のなんでもない

 

だけど、それが一瞬にして変わった

 

一人で部屋で落ち込んでいた私を訪ねてきて、少し苛立った風な口調でお嬢様達が出たのを知らせた

更に行かないと言った私に、和哉は言ったのだ

 

『くっだんねぇ』

 

言われた時は頭が真っ白になった。その後も続けて和哉は私に言葉を浴びせていった

気付けばドアを押しのけ、和哉の胸倉を掴み壁に押し付けていた

 

知った風な口ばかり叩いて、私の気も知らないで、勝手なことばかり

 

そんな私を見て、和哉が目に強い光を灯して言った言葉は絶対に忘れないだろう。あんなに力強い目は初めて見るものだった。これが本当にこの人間がしている目なのか、一瞬別人だと疑ったほどだ

 

大切なことを気付かせてくれた和哉には、まだ返しきれてない借りがある

 

…………だから、まだ死んでもらっては困るのよ

 

「さぁ、答えなさい」

 

「まあそう急かすな」

 

お嬢様の槍を掴んで邪魔だとでも言うように退かす。少し血が出ていた

…………お嬢様、ついちょっと突き刺しちゃったんですね

 

そして和哉は口を開く

 

「そんなもの、あるわけないだろう?」

 

あっけらかんと言い放つ

 

しかし次の瞬間

 

「……………だが」

 

目に、あの時のような力強さが宿った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………だが」

 

槍を握る手に力が入る

 

「俺は約束を守る人間だ」

 

更に力を込める

 

「必ずフランドール・スカーレットを連れ戻す。それが、十六夜先輩とした約束だからだ。そして、自身に課した約束だからだ」

 

ビキッ!

 

槍に亀裂が走る

 

「俺には、それを成し遂げる覚悟がある。何があろうと、絶対に破りはしない。その意志がある!」

 

バキャンッ!

 

槍が和哉の力によって砕かれ、粒子となって消えていった

 

「…………もう用は無いだろう。俺は少しばかり用事があるんでな」

 

和哉は背を向け、二人を一瞥するとスキマを開き中に消えた

 

 

 




水無月 和哉は"かみまみた"
和哉「いいか?かみまみた、って俺が言ったらわざとじゃない!?って返さなきゃ駄目なんだぞ」
妖夢「何故ですか?」
和哉「何故って………そういうものなんだ」

ベンチに"忘れ物"
和哉「ゴミ忘れた……」
早苗「意外と真面目ですね」
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