スキマを抜けるとここ一年住んでいた我が家へと到着する
………そう言えばあのスキマ、自宅と夢幻荘にしか繋がらないんだったな
今からゴミを取りに行くとなると面倒だが………ポイ捨て状態も良くない。仕方なく家をあとにし、さっきまで虫食い少女とカエル野郎と戦闘していた場所に向かう。ここから歩いて10分程だ、軽い散歩にはなるだろう
「しかしスカーレットの奴、首に突き刺しやがって。ちょっとだけだったとは言え、地味に痛かったぞ」
スカーレットに対しぶつくさ言いながらジャージのポケットに手を突っ込んで歩く。道路に沿うように植えてある木が太陽の光に照らされ、今の季節が春だと強調しているかのように暖かい。こうやって景色を見ながら歩くのが結構好きだったりする
家に篭ってアニメやゲームばかりじゃなく、偶にはこうやって外に出るのも良いものだ。今日の夜はパトロールに混ざろうと思っているが、その道中見晴らしの良い場所に行ってみるのも良いだろう。星や綺麗な景色に興味があるわけじゃないが、何事も挑戦だ。やってみなければ、してみなければわからない良さもある
あ……この桜、花びらが全然付いてないじゃないか
「こんにちは」
「…………?」
殆ど散っている桜の木を見上げていると、誰かに話し掛けられた。声からして女の人だろう。声のした方に顔を向けると、そこにはビンク色の傘を指した女性がいた
「……こんにちは」
俺は少し警戒しながら挨拶を返す。警戒している理由は髪の色だ。東風谷と同じ緑色の髪をしている
こんな髪の色はつい最近までしか見たことがない。つまり、こいつは妖怪だという可能性が出てくる。そして夢幻荘では見たことのない顔だ。覚えてないだけかもしれないが
「ここら辺で、綺麗な花畑が見られる場所を知ってるかしら?最近ここに来たばかりで、地理を把握していないの」
さっきまでの俺と同じように桜の木を見上げながら言う女性。妖怪かどうかは置いておくとして、こちらに敵意は無いようだが
しかし、綺麗な花畑か………ここら辺で花畑と言えば、うちのアパートの裏側にもう一つアパートがあるんだが、その更に向こう側に、川がある。そこらの周辺に、少なからず花の咲いている場所があったはずだ
手入れをされていたことから、恐らく誰かが育てているのだろう。地面が畑のように耕されていた感じだったからな
俺は川のある方向を指差す
「この方向に川があります。その川に沿って右に進むと、少なからずですが花が植えてあったと思います」
「そう、ありがとう」
女性はそう言うと俺が指差した方向を目指して歩き出す
「……………」
やはり、俺と戦う気はないようだ。妖怪と言うと、何かと襲ってくるイメージがここ最近で出来てしまったからな………もしかして妖怪じゃないのか?どうする、思い切って聞いてみるか?だが、それをキッカケに襲ってこられては………ここは車も通る。必ず周りを巻き込み、一般人を傷付けることになるかもしれない
だが本当に妖怪なのなら、誰かの知り合いか?だとしたら遅かれ早かれ連れ帰らなければいけない
どうする………!?奴は悩んでいる俺に構わず先に行ってしまっている。このまま見過ごすか?
「……………!」
そっと鼻に、桜の花びらが落ちて来た。少しビビったのは内緒だ。それに思わず上を見上げ、俺は目を見開いた
「なに……!?」
さっきまで全く花びらの付いていなかった桜の木が、満開になっていた
少し惚けた後、俺は顔を前へ戻し、叫ぶ
「待て!!」
確信した。奴は妖怪だ!いや、もしかしたら他の部類かもしれないが、人外であることに間違いはない!
でなければ、一瞬で桜が満開になるなどあってたまるものか
「なにかしら?」
俺の声を聞き、奴は顔だけをこちらに向ける。鋭い視線が俺を射抜く。スカーレットや博麗に睨まれた時と似ている
「出来ればここで戦闘はしたくない。穏便に済ませたいから話を聞いて欲しい。あんた人間じゃないな?」
「だとしたらなに?」
肯定ととっておこう
「着いて来てもらいたい。俺は幻想郷の住人と面識がある」
「へぇ」
よし、掴みはOKだろう。話が通じないわけじゃなさそうだ
「なんならそちらの用事が終わってからでも構わない。俺の目的は最終的にあんた達人外を幻想郷へと送り返すことだ」
「そう。でも、何か足りないんじゃないかしら?」
…………ん?
「何か足りない、とは?」
「人にものを頼んでいるのだから、それ相応の態度があるんじゃない?」
ふむ、つまり態度が良くなかったと言いたいのか?
しかし言わせてもらいたい。お前は人外だ
「これは失礼。貴女の用事が終わり次第で宜しいので、夢幻荘まで着いて来て貰えないでしょうか?」
これで良いだろうか?敬語なんぞ普通の高校生レベルだからな。合ってるのか合ってないのかわからない
まあ、どちらにしろきちんと対応したんだ。向こう側m「嫌よ」……………ふむ
「これh「嫌よ」失礼。「断るわ」たの用事が終w「却下」り次第で宜しいので…………」
顔が引きつってるのが自分でもわかる。今俺は声を大にして叫びたい
なんなんだこいつは!?
こちらが下手に出ていれば、この………!丁寧にもう一度言ってやったのにも関わらず、聞くのを待たないで三回も断っただと!?何がしたいんだ!!
「ふざけているのか………?」
目の前でニヤニヤしてやがる奴に向かって全力で叫び出したい心を必死に抑え聞いてみようと思う。これでくだらん理由だったら無理矢理にでも連れて行く………!!
「あら、別にふざけてるわけじゃないわよ。ただ、私が嫌だったから断っただけ。嫌なのに断らない理由はないでしょう?」
「くっ………!」
何気に正論で返された!反論が見つからない!!
いや、だがここは我慢だ。我慢しなければならない。向こうが少なからず正しいのだから、ここで無駄な口論をしても時間の無駄だ。それに何より、まず俺はゴミを拾いに行かなければならないんだった。奴が人外だと言うのなら、また会う機会はあるはずだ。ここはその可能性を信じ別れるか?…………よし、そうしよう
「そうですか。いやぁ、それは残念だ。ではまたの機会に」
「あらそう?それじゃあね」
今回は俺の負けだ、緑髪お姉さん(たった今命名した)。だが次会った時は同じように行くと思うなよ?覚えてろよ!
俺はそんな負け犬のような台詞を心の中で吐きながらそそくさとその場を離れる。出来るだけ早足でだ。生憎ゴミを忘れた場所は俺が教えた場所とは違う方向だ
なんだかわからないが悔しい。その悔しさを噛み締めながらさっきまで東風谷といたベンチにやって来た。ゴミはベンチの下側に落ちていた
それを拾い上げ、パンパンと払い、近くのコンビニに捨てに向かう
「さて、夢幻荘に戻るか」
夢幻荘に戻ったらやることが沢山あるぞ。まずは理事長に人払いの札を貰わなければいけない
次は俺の能力についてだな。コントロールの仕方を覚えるために特訓だ。誰かに頼んで特訓の相手になってもらうのも良いだろう。東風谷辺りに頼めばなんとかなるか?…………いや、もう理事長直々に相手してもらおうか。あの人暇そうだし
だがまあ、本人に了承も貰わないといけないので取り敢えず戻ろう
コンビニの裏側に周り、周りに人目のないことを確認する。偶然見られた、とかマジでヤバいと思うから物陰にササッと隠れてスキマを開いた
「相変わらず目玉キッモ」
ここを通るたび毎回思う。毎回口に出したりはしないが
言った瞬間こちらを見た気がしたので走って出口へと向かう
「よっ、と」
俺が飛び出るともう来んなと言わんばかりにスキマが閉じた。まさか意思があるわけじゃないよな………?まずスキマとは一体どういったもので構成されてるんだ?空間と空間の隙間、という感じなんだろうが、だとしたら理解出来る気がしないな。やめておこう
「お邪魔します」
一昔前の家のように、横にスライドさせるドアをガララと開き中へと入る。また誰かに会うかと思ったがそうでもなかった。まあ、毎回会うわけでもないだろう。そういう時もある、別に寂しくなんかない。そう、決して寂しくなんか…………
「あれ、和哉じゃないか。ゴミは捨て終わったか?」
「霧雨………!あぁ、ゴミはゴミ箱に捨てて来たぞ!」
「そ、そうか。何でそんなにテンションが高いんだ?」
「……………いや、別に?」
「よくわからん奴だぜ……」
よくわからないとはなんだ。失礼だろうが
心の中で霧雨に文句を言いながら靴を脱ぎ霧雨の横を歩く。…………なんだ?廊下がやけに長いぞ。さっきまではこんなに距離はなかったはずだ
「まあいい。理事長はどこだ?用があるんだ」
「理事長?あぁ、紫のことか。それなら今はここにはいないぜ」
「なに?…………ふむ、理事長だから仕事が忙しいのかもしれないな」
暇人じゃなかったのか
「そうなのかもしれんが、あいつは神出鬼没だからな。仕事がないにしろ、この時間帯は居場所なんて誰も知らないぜ。知ってるとしたら藍と橙だが、あいつも紫に着いてるからな」
「そうか、それは残念だ。人払いの札を貰いたかったんだがな」
その前に藍と橙って人は知らないんだが
「……………そうだ霧雨、聞きたいことがあるんだが」
「なんだ?」
「日傘を指した、緑色の髪の女性を知っているか?」
俺が言った瞬間、横にいる霧雨が歩くのを止めた
「あと聞かなくても良いと思ってたんだが、何でこの廊下こんなに長く………どうした?」
「お前、あいつに会ったのか!?」
何をそんなに驚いているんだ?ていうか、やっぱり知り合いだったのか
「あんたの言うあいつってのが、俺が会った奴ならばその質問にYESと答えることになる」
「変な言い回しは良いんだよ。それで、そいつはカードに取り憑かれた様子は?」
「見た感じでは何も」
普通に話しの通じそうな相手だった。…………いや微妙なところだな、うん
「そ、そうか、良かったぜ………まだ大丈夫だな」
「連れて来ようとしたが何度も断られた。場所が場所だったから戦闘は避けたかった。だからそのままゴミを拾って捨てて帰ってきたというわけだ」
「その選択は正解だったぜ。和哉お前、生きてて良かったな」
「そんなにヤバい相手なのか?」
そうは見えなかったが
「ま、今の和哉じゃ瞬殺だろうな」
「マジかよ……」
霧雨の言葉を聞いて本気で戦わなくて良かったと思った。一応一時だけだが、博麗と互角に戦えていた時もあるんだがな。あの時戦うとなれば確実に死んでいただろう
「特訓しなければいけないな」
「お、弾幕ごっこの特訓なら付き合ってやるぜ!」
「おぉ、それは有難い!丁度誰かに特訓相手を頼もうと思っていたところだ」
「そうかそうか!お前を私の弟子にしてやるぜ?」
「いや、それはいい」
特訓に付き合ってもらいこそすれ、弟子になるつもりはない。何より弟子になったらなんだか面倒臭そうだ
「まぁそういうなよ。弾幕はパワーだぜ!」
「パワー?この前マーガトロイドはブレインと言ってたぞ。………ちょ、やめろ肩組もうとするな。身長的に無理だろうが」
「ブレイン〜?わかってないぜ、和哉もアリスも。圧倒的パワーの前に作戦なんて無意味だぜ!」
えぇい鬱陶しい、酔っ払いかこいつは
「まあパワーだろうがブレインだろうがどっちでもいい。理事長が不在なら早速特訓へと入ろうじゃないか」
「おう!私の特訓は厳しいぞ。着いて来れるか?」
「着いて行けれなくてはこの先俺が死ぬだけだろうよ」
「違いないぜ。よし、行くぞ!」
「おう!」
霧雨がスキマを開きその中に飛び込む。俺もそれに続いて同じように飛び込んだ
特訓か。漫画とかによくある熱い展開じゃないか!今からとても楽しみになってきたぞ!!
今にも散りそうな"桜"が満開になる
和哉「これは………、人外の仕業に違いない!」
魔理沙と"特訓開始"
魔理沙「着いて来いよ!私の特訓は厳しいぜ!?」
和哉「望むところだ!」