…………突然だが、俺は今驚愕し感動している
何故なら………
「夜符【ナイトバード】!」
目の前で超常現象が起こってるからだ!
金髪の少女(食われそうになったから人食い少女にしよう)が赤毛ロングさん(長いから中国さんにしよう。さっき呼ばれてたし)に沢山の丸い球状の何かを放つ
それらを中国さんと銀髪さんは華麗に避けていく
ガシャァン!
何かに当たり壊れる音がした
「……………あ」
その発生源は、俺の自転車からだった
自転車は俺の目の前で無残に壊れ去る。サドルが俺の目の前に落ちて来た
「バ、バハムート号ぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は今日一番の叫びを上げた
「俺の、俺のバハムート号がっ!!」
膝を着きサドルを拾い上げる
くっ、なんてことだ。俺のバハムート号がこんな姿に!!
ああ……バハムート号との思い出が蘇ってくる
初めてうちに来た時のこと、初めて乗り回したこと、土砂降りの雨の中帰ったこと、沢山のことが………
「今までありがとう。お前のことは、忘れない………!」
ありがとう、バハムート号…………ついさっき付けた名前だけど
俺は、バハムート号のサドル……いや、魂をそっとその場に置いた
「危ないっ!」
え?
ズガァァァン!
「バ、バハムート号ぉぉぉぉぉ!!」
不意にやってきた光る球はバハムート号の魂へと襲来した
サドルは無残にも粉々になる
「そんな……こんなことってあるかよ!」
くそっ!くそっ!こんな………こんなことって!!
「……………あなた、さっきから何してるの?」
「テンション上がりすぎて遊んでおりました」
まあ壊れた自転車で遊ぶのもどうかと思うが
「イタイわよ」
「デスよね〜」
横から制止の声も掛かったからやめとくか
…………ん?横から?
「っていつの間に横に!?」
瞬間移動か!?いや、それにしてはそんな素振りなかったし、それに………
「はっ!やぁっ!………咲夜さぁん!私一人にしないでくださいよぉ!」
「一人で十分でしょう?」
「いや、何気強いですって!二人で協力しましょうよぉ!」
中国さんが叫んでる。の割りには余裕そうに光の球を避けてるが……人外ですかいやっほい!
てか、銀髪さんは俺がバハムート号の死を悲しんでる最中も戦ってたはずだ。チラチラ見てたからわかる。瞬間移動って額に二本指当てないと出来ないんじゃないの?俺が見逃しただけなのかな
「て、手助けしなくていいんすか?」
「さっきも言ったとおり中国一人で十分よ」
「そっすか……」
俺的にはバトルロイヤルを希望するんだが………まあ二人は仲間みたいなのでしょうがないか
それよりも、いきなりの超展開な上にバハムート号の紛失が相次いで考えるべきことを考えていなかった。目の前にいる銀髪さんと中国さんは夢で出てきた二人で間違い無いようだ。服装が違うけど
そして、夢に出てきた二人が言うことは……あれは夢では無かったと言うわけだ
「夢じゃ………無かった」
「?夢……?ああ、そう言うことね」
「え?」
銀髪さんは何か知ってるらしい。何故か目を合わせてくれないのが気になるが
いや待てよ。瞬間移動………銀髪さんは瞬間移動…………夢の最後の方では俺が瞬間移動
「もしかして、あの時瞬間移動したのってあんたの所為っすか?」
「……………」
「おい顔を逸らすんじゃあない」
まさかまさかのこの人の所為だったわけか
「だったら色々と聞かなければならないことがあるぞ」
「………何かしら?あなたに何が起きたかってこと?」
「っ!」
やっぱり、夢じゃなかったというわけだ
「話が早くて助かる。でもそれだけじゃあないんすよ」
銀髪さんに向き直り俺は戦っている中国さんの方へ指を指して興奮気味に言う
「まずあれはなんだ?あの光の球は?さっきあの人食い少女が技名叫んだら光の球が増えたり動きが変わったりしたよな、あれなんだ?まずあんたら何者だ?人外か?どうやってあの光の球を出している?てか理事長の親戚ってことでいいんだよな?何か目的があるのか?だったらそれはなんだ?秘密結社とか?」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。一度にそんなに聞かれても答えられないわ」
む、これは失敬。確かに質問攻めにしては駄目だな
「では一つ一つ答えて「華符【芳華絢爛】!!」おぉ!?」
技名来た!!
中国さんが技名を叫ぶと同時に俺は顔を90度回転させる
「おぉ!!」
見るとそこには光の球がめったやたらに光の球が飛び交う。その光景に俺は感嘆した
そして光の球達は見事人食い少女に命中する
「うあぁぁぁぁ……………!」
被弾した人食い少女は悲鳴を上げたかと思うと倒れた
「お勤めクリアー、ですね」
中国さんは人食い少女に近寄り何か札を取り出し貼る。すると人食い少女からはさっき見たカードが出現した。それを破り捨てる
「か、かっけえ………」
なんだ今の、マジかっけえ。「お勤めクリアー、ですね」だってよ。あんなのしてる奴見ても「あ、そっすか。お疲れ様っす」しか思わないけどこんな場面だと違うねやっぱり
中国さんはその後俺達の元へ歩いてきた。そして急に二人の服装が変わる
………っ!?まさか、変身してたのですか!
「それにしても、咲夜さんヒドいですよ。途中から私に任せるなんて……」
「結果的に終わったんだからいいでしょ?」
「それでもですねぇ…………はぁ、もういいですよ」
「…………あの、少しいいっすか?」
何やら置いてかれそうなので話に割って入る
「あ、無事でしたか?」
「おかげさまで。…………それで?色々と説明してもらいたいんですがね」
そろそろちゃんとした説明が欲しい。何が起こってるかさえわかれば首も突っ込みやすくなるからな
今日俺の回りで起きた超展開。夢じゃ無いことがわかったのならば次は何をする?無論、俺は意地でも関わる
きっと、これは俺の腐った世界を変えることに繋がる
「うーん………どうしましょう、咲夜さん」
「そうね。夢幻荘にでも連れて行きましょうか。説明ならそこでしてあげるわ」
むげん……そう?
「もしかして昨日の所っすか?」
「ええそうよ。私達はそこに住んでるの」
成る程、秘密結社本部と言うわけか。まさか昨日の場所がそんな所だったとは
「そうと決まれば帰りましょうか」
すると中国さんはまたもや札を取り出した。そしてそれをひょいっ、と投げる
「?……どわぁ!?」
そしたらなんと、空間にパッカリと隙間が開いたのだ!
「な、なんじゃこりゃあ!!……中身気持ち悪っ!」
どうやってるのかは知らないが隙間の端にはリボンが付いてるのに中身は目玉だらけだ。気持ち悪いな、ここを通るのか?
「これはスキマと言うものよ。あなた、その子連れてきてちょうだい」
「え?その子?」
不意にそんなことを言われて聞き返す。銀髪さんが「それ」と指差す方を見るとさっきの人食い少女が倒れている
「………あの子を運べと」
「そうよ。男の子なんだからあれくらい運べるでしょう?」
えぇ〜?………まあいいか。説明してもらう側なんだから仕方ないっちゃあ仕方ないのか
「よっ、と………軽いな」
人食い少女をお姫様抱っこの要領で持ち上げて、軽いことに驚いた。確か最初お腹が空いたと言ってたが……どれだけの間食べてなかったのだろうか?見た目はそうは見えないけどな
いや、女の子を持ち上げたことが無いからな。そう思うだけかもしれん
てかホント軽いなー、ちゃんと食わなきゃ大きくなれないぞ?
「あの………重ければ私が持ちましょうか?」
「いや、いいっすよ。軽いですし」
中国さんがそう言ってくれた。優しいな、俺に運べと言った銀髪さんとは違うね。俺の中で中国さんの株は上がりつつあるのが不思議だよ
はっ!まさかこれが恋!?ンナワケアルカッ
「ほら、グズグズせずに行くわよ」
「わかりました!」
「りょーかいでぇす」
銀髪さん、中国さん、俺&人食い少女の順で中に入っていく
中は暗闇に目玉模様。なんとも悪趣味な空間だ
「ここから少し歩きますが、大丈夫ですか?」
「ええ、問題無いっす」
どれくらい歩くのかは知らんが、野球を辞めて二年近くが経っている今でもこれくらいは容易い。しかし中国さんはホント優しいな。三次元にもこんな人がいるとは驚きだ
きっと二年前の俺だったら惚れていたかもしれん
「……………」
「?」
銀髪さんが一瞬俺の方を見たが何だろうか?…………まあ、どうでもいいか
「(いきなりの現象に恐がるどころかそれを追求、スキマに驚くも戸惑い無く入る……肝っ玉は及第点ね。ただ馬鹿なのか、それとも怖いもの知らずなのかはわからないけど)」
いやー、しかし目玉気持ち悪いな。ギョロ目、ギョロ目、ギョロギョロギョロギョロ♪
…………なんだこれ
「(それにしても、
「ほほう、出口は普通ですな」
俺はそう呟きながら出口を潜る
「…………おぉ」
出た場所は結構デカい、ちょっとした旅館くらいで三階建ての建物があった
…………ここが夢幻荘ってやつか?
「ただいま帰りましたー!」
「ただいま………なんだかまだ違和感があるわね」
戸をガララ、と開いて中に入る。中はなんと言うか……床は木で作られた普通の建物だな
「早かったのね。まだ他の皆は帰って無いわよ」
奥から理事長が歩いてきた。服装は変わらず紫だ
「…………あら?」
俺に気付いたようだ。挨拶せねばならないな
「どうも、また会いましたね理事長ェ……」
「え、ええ。またお会いしましたわね(目が笑ってないわ……)」
満面の笑み(のつもり)で理事長に挨拶すると何故か顔を引きつらせた。失敬じゃないか?
「ま、色々聞きたいことはあるんですけど。まずはこの子どうしましょうか?」
俺は理事長に人食い少女を見せて言う
「空いた部屋があるからそこに寝かせてあげて下さらない?二人共、どちらか案内をお願いしますわ」
「わかりました。では私が案内しますね、着いてきてください」
「りょーかいっす」
中国さんに先導されるがまま、俺は建物の奥へと進んだ
「あの子、随分と早く来たのね」
和哉の後ろ姿を見ながら呟く
「……まるでここに来るのがわかってたみたいな言い方ね」
「ええ、まあ」
生半可に答える紫に銀髪さん、もとい十六夜 咲夜《いざよい さくや》は眉を寄せる
「そう言えば、あなたの人祓いの札、あれ効力無いんじゃい?現に彼は人祓いの結界内に入って来たのよ?」
「…………なんですって?」
咲夜の言葉に紫は耳を疑った
「元々張った結界内に居たわけじゃなく?」
「私と中国は結界を張ってから見つけたターゲットの様子を伺っていたわ。カードが現れるまで待ったの。そこに彼が自転車で入って来たのよ………まるで結界をすり抜けるように」
咲夜は肩を竦めて言った
「………まさか、もう……」
「何か知ってるの?」
「いや……………皆が戻ったら彼に説明をしましょう。彼もそれを望んでるみたいだし」
そう言って紫は扇子を開き、天井を見上げた
「何も無いな」
紅さんに連れて来られた部屋はベッド以外何も無かった
ちなみに紅さんと言うのは中国さんのことで、本名は紅 美鈴《ふぉん めいりん》と言うらしい。ここ、二階の部屋に来る途中にお互い自己紹介をした
銀髪さんの名前は十六夜 咲夜と言うんだそうだ。名は体を表すと言うのは今まで迷信とばかり思っていたが、そうでもないことを今日知ったよ
「よっと」
人食い少女をベッドに寝かせると布団を被せる
「それじゃあ戻りましょうか」
「この子の様子、見とかなくていいんすか?」
「大丈夫ですよ」
大丈夫なのか……
「それなら、いいか」
そして俺達は部屋を跡にした
俺は紅さんと共に一階に下りる。理事長と十六夜さんはどこに行ったのかと迷ったが食堂の方からワイワイと騒ぐ声が聞こえたので食堂に向かった
聞くにどうやら食堂は皆で集まって話す場所でもあるらしい。前回はわからなかったが食堂の中を横に目を逸らして行けばリビングの様な場所があると紅さんが説明してくれた
そして今現在、食堂の前にいるわけだが
「どうしたんですか?」
「いやね、心の準備が「中国呼んでくるわね。………あら」タイミング悪過ぎでしょうよ!」
なんで!?心の準備してる途中だったのに!
「来たのね。皆帰って来てるわ」
十六夜さんはそう言って俺達を中に引き入れた
目の前に広がるは昨日と同じ様な光景。違うと言えば皆それぞれバラバラに椅子に座り談笑している
「今日も収穫は無かったな〜…………ん?あー!」
見渡していると霧雨と目が合った。霧雨は大声を上げる
それと同時にその場が静かになった
……またこの状況ですかい
「よお霧雨。初めましてじゃあないよな?俺の教科書返せ」
「あ………す、すまん。教室に忘れたんだぜ」
「んだとぉ?」
こいつ………まあいい、明日返してもらえれば
「そ、それよりも!お前……パチュリーが記憶を消したはずじゃあ」
「パチュリー?誰だそりゃ。てか記憶消したのか!?なんてことしやがる!」
嘘だろ!?記憶消されそうだったのかよ!よく残ってたな俺の記憶!
パンパン!
柏手が響いた
「はい、二人とも落ち着いて」
理事長だ。理事長は扇子を広げる
「それじゃあ、始めましょうか」
始めましょうか………説明のことか
俺は無言で頷いて近くの椅子に座る
「お願いします」
…………さあ、聞かせてくれ。あんたらのことを……!
バハムート号が"壊れる"。バ、バハムート号ぉぉぉぉぉ!!
咲夜と美鈴に夢幻荘まで"案内される"
全ての説明が"始まる"