「飛べ!飛べ!飛べ!」
只今空を飛ぶ修行中である、これがなかなか出来ない。腕をパタパタしても飛べないし………弾幕の衝撃で飛ぼうかなと考えたが何でか弾幕すら出ない
「く、くく………と、鳥じゃないんだから……」
「何笑ってんすか理事長ェ……。見てるくらいならコツぐらい教えてくだせぇ。いきなり飛べと言われて飛ぶなんてそれこそ鳥じゃないんですから」
「鳥も最初は飛べないと思うのだけれど………。それよりもあなた、言葉使いがブレてるわよ」
「理事長に言われたくないっす」
何なんだこの人。さっきから飛べない俺みて笑ってるだけじゃないか
あれか?俺はからかわれてるのか?もしくは放任主義なのか
「イメージよ、イメージが大切。あなたが一番イメージし易いモノを思い浮かべるの」
「イメージ………理事長は何をイメージしてるんすか?」
幻想郷にいる不思議な鳥とかかな。フェニックスとかいたりして…………余談だが、フェニックスと聞くとフェニックス!!って叫びたくなるよな。いや、まあホントに叫んだりはしないけど
「私は自然と飛べるようになってたから、特に無いわね」
「無いのかよ………何にするかなぁ…」
例えばドラゴンボールの舞空術。体に気を纏う感じでいいのか?
「いや、気ってどうやって出すんだ。スペルカードはやったら出来たみたいな感じだし」
ならばガンダム。ガンダムってどうやって飛んでるんだっけ?わからなかったら無理だな。俺はあまりロボットアニメは見てないしな………
飛行機は………乗ったことないからわからない。修学旅行で乗るんだろうけど
同じようにヘリコプターも無理、てかプロペラ回転してるから回転しそうだ
「………………」
「深く考えなくていいわ。空を飛ぶと言われて最初に思い浮かぶモノでいいの」
「やっぱり舞空術!」
「ぶ、ぶくぅじゅつ?」
よし、ならばやってみよう!
「理事長。気を纏うってどんな感じっすか?」
「気を?あなた気で飛ぶの?そもそも気を使えるの?」
………え?
「どういうことっすか」
「霊力を使うべきだと言ってるのよ」
霊力?………霊の力か?
「いや俺、霊じゃないですし」
「…………はぁ、まずそこからね」
何故溜息を吐かれなければならんのだ
「まず霊力と言うのは全ての人間に多かれ少なかれ宿っている力のことよ。他にも妖怪には妖力、魔法使いには魔力と言う風にそれぞれ力が宿っているの」
へぇ、生命エネルギーと言う解釈は間違ってはなかったか
「しかし、生まれつき霊力を扱える者はごく稀なの。生まれつき使えなくても、修行をすれば使えるようになったりするけど。そしてまたごく稀に魔力を宿した人間もいるの。魔理沙がその例ね」
「魔理沙………?」
「…………霧雨 魔理沙」
「ああ」
霧雨のことだったのか、忘れてた。あいつ魔力持ってるんだな羨ましい
と言うか、俺は霊力を使うことが出来るのか?
「大丈夫よ。あなた、スペルカードを発動出来たじゃない」
俺の顔から何かを感じ取ったのか、理事長は言った
ふむ、そうなのか
「あなたのスペルカードも霊力を使って放たれるのよ」
「へぇ、これが」
これは俺の霊力を使ってたのか。もう一度俺の記念すべき必殺技を見てみたいが……今は弾幕を撃てないみたいだし、何より飛ぶことを優先させねばならない
「霊力を操って放出してみなさい。それが出来たら次へ行きましょう」
「了解っす」
霊力を操る、ね
「すぅ………はぁ……」
足を肩幅に開いて目を瞑り、深呼吸をする
…………さて、やってみるか
「………才能はあるのね」
和哉の雰囲気を感じ取った紫。霊力が和哉の体に循環して行くのがわかる
「(朝の彼を見るに、自分の勝手知ったる風に動くのかと思ったのだけれど………意外と言うことを聞くのね)」
朝、和哉に仲間だと言った際、彼の反応は拒絶にも似たモノだった。まるで一匹狼、それを演じている様な印象だったのだ
「(わからないわね。私達は彼にとって………自分で言ってはなんだけど、夢の様な存在。彼の願望を具現化した様な存在。なのに彼は私達を拒絶している………その理由は何なのかしら?ただの同じ学校である、と言うだけなら未だしも……)」
紫は和哉のことを調べてみた。理事長の力を使い、教師達に彼の印象等を聞いていた
調べた結果としては………普通、と言わざるを得ない
いや、どちらかと言うと普通では無いのかもしれない。ただ、そうだとしても紫は何の変哲もない人間にしか見えなかった
教師達に彼のことを言うと真面目な生徒、と誰もが口を揃えて言った
成績は上の下、提出物は基本期日内に出している。授業態度も素晴らしく、ノートもきちんととっている。遅刻も無し、ついでに言うと休みも無く皆勤賞。掃除もサボることなくやることを終わらせたら即帰宅。部活は入ってない
一人暮らしをしているらしく、料理も人並みには出来るらしい
…………ただ、問題があるとすれば目付きが悪く、授業中教師を睨んでいる様に見えるとこれまた教師達が声を揃えて言った
そして、特定の人間以外に自ら話しかけるような事はしない。用があれば別らしいが
実際紫も彼のことを観察してみた。確かに教師達の言う通りだと、そう思った。流石にプライベートは見ていないが
「(最初はコミュニケーション障害なだけだと思ったのだけれど………昨日の彼と、朝の彼を見て違うとわかったわ)」
「と、飛べた!!」
「っ!?」
不意に聞こえた言葉に耳を疑った
「理事長!飛べましたよ!何これ楽し恐い!」
嬉しそうに両手をパタパタとしながら上空10m程度で旋回している和哉。それを見て紫は少し滑稽に思って吹き出しそうになったが、それよりも驚きの方が勝っていた
「(ま、まさかこの数分で飛べる様になったの!?才能はあると見たけど………これは流石に予想外だわ。少なく見積もって3日は掛かると思っていたのだけれど………)」
「は……はっはっはっはっ!あっはっはっはぁっ!?」
馬鹿笑いしながら飛んでいた和哉が急にバランスを崩して落ちた
「っ!!集中力切らすから!」
「やっべ!これやばい!」
紫は和哉の下にスキマを出現させ、自分の目の前に出口を作った
「どわっ!?………つぅ〜……」
「大丈夫?」
自分の監督が不行き届きだった為、少し申し訳なく思い腰を摩る和哉に右手を伸ばす
「………はい、なんとか」
だが和哉は手を着いて自分で立ち上がった
「……………」
「どうかしましたか?……それよりも、俺飛べましたよ。次、行きましょうか」
無意識なのか、意識してなのかはわからない。紫は自分の手を少し見つめた後引っ込める
「ええ、そうね。次は弾幕を放ってみましょうか。一つじゃ駄目よ、沢山出すの」
「わかりました」
紫が言うと和哉は走って離れ弾幕の練習を始めた
「……………」
その光景を見て紫はもう一度自分の右手を見た
「(今の彼の目は、話に聞いていたのと違い生き生きとしている。けど、私達のことは拒絶する。人間に拒絶されたからと言ってどうということは無いけど、気になるわね)」
紫はどうしても気になってしまった
何故拒絶するのか
「今この瞬間はそんなに楽しそうなのに………」
何故毎日をつまらなさそうに過ごしているの?
「流石に弾幕は難しいな。それに疲れる」
弾幕の練習を始めて30分程度経っただろうか。よくわからないがそれくらい経っているだろうな
「……………でも、すごく楽しいな」
顔がニヤけているのがわかる。アニメを観てる時や、ゲームをしている時、ラノベを読んでいる時に勝るとも劣らない楽しさだ
あぁ、最高すぎる。こんな漫画的展開に俺が関われるなんて、最高すぎる
「…………でも、人間関係……妖怪関係?は少し難しいな」
俺は後方にいる理事長をチラ見する
スキマに悠々と座りこちらを見ている理事長。俺が見ると手を振ってきた
「再開しよ」
目の前に弾幕を放つ。まだ足りないな、紅さんと人食い少女の戦いはもっと激しかった
「やれやれだな」
…………幻想郷の住人達と関係を持つ。俺がこの件に関わるとなると必要になるものだろう
しかし、出来るだけそれは要らないな
幻想郷とはこことは違う場所。事件が解決すれば皆幻想郷に帰ってしまう。そうなれば会うことも無いだろう
だったら必要無い。失ってしまう友情なら必要無い
それに、俺はただ自分の為に動くわけであって幻想郷の住人達の為に動くわけじゃない。そんな俺と仲良くなっても良いことなんて何もない
人生はパズルと同じだ。一つ一つのピースで構成されている
家族も、数少ない友達も俺のピース。俺を構成する全て、俺が俺である為の全て
一つでも欠けたら完成しなくなる
ピースを増やすことは出来るが、減らすことは出来ない
俺は、自分でピースを増やすことを辞めた
だって、欠けた時俺が悲しいじゃないか
和哉が"飛ぶ"!!
弾幕を"撃つ"!
二人は"考える"