エスパータイプは“ヒト”にはいらねぇっ!   作:初心者マーク付き社会人

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【我が名はスレ民】ポケモントレーナーになろう45【手加減は実家に置いてきた!】

1:名無しのポケモントレーナー 

・家出中のワイがポケモントレーナーになってポケモンリーグに挑むスレです。

・雑談・考察は良識の範囲内なら自由にどうぞ。

・荒らしはスルー。

・安価より命大事に。

 

過去スレ

1~10スレ目はこちら

11~20スレ目はこちら

21~30スレ目はこちら

31~40スレ目はこちら

【さらばセキチク】ポケモントレーナーになろう41【征くぞ武者修行】

【実は今って】ポケモントレーナーになろう42【凸待ちチャンス!?】

【入れ食い入れ食い】ポケモントレーナーになろう43【むっほっほ】

【強い奴は】ポケモントレーナーになろう44【向こうからやってくる】

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

778:名無しのポケモントレーナー 

「――で、あの時は加速で突っ込んでくるんじゃないかなって思ってたから追撃せずに待ってたんだよ」

「うん。ボクもその後の二段構えを特に警戒してた。リザードンだし、一発貰うのもメタングじゃ危険だから」

「そうそう。だからこっちも牽制目的で“エアスラッシュ”は考えてたよ」

「そっちだったんだ。ボクは“フレアドライブ”を警戒してた」

「それは決め技かなぁ。リスクが怖いし」

 

779:名無しのポケモントレーナー ID:5bxFVFQTZ

ほうほう 

 

780:名無しのポケモントレーナー ID:PMxUpefpR

お互い結構読み合いは当たってたのか  

 

781:名無しのポケモントレーナー ID:CGYw+SCaB

みたいやな  

 

782:名無しのポケモントレーナー ID:G+Z6URQIP

んで、ここで一手予想を外しにきたのがイッチと 

 

783:名無しのポケモントレーナー ID:mrpROfr8n

地面を叩いて即席の土壁作ったのはgood

 

784:名無しのポケモントレーナー ID:lJyJUBnoM

ええ判断

 

785:名無しのポケモントレーナー ID:xZvJIUF3H

それなら一発程度はリザードンの“ねっぷう”を防げるしな

 

786:名無しのポケモントレーナー ID:rmanvs0IQ

そして高熱の土壁を殴りつけて牽制と

 

787:名無しのポケモントレーナー ID:m5ehfin3V

“エアスラッシュ”準備中だったお相手にはびっくりだったろうなぁ

 

788:名無しのポケモントレーナー ID:IaRsmVk2x

というかそんな馬鹿力あったのか、メタングって

 

789:名無しのポケモントレーナー ID:7UV+7WLGh

元々メタングは種族的に物理攻撃力高いぞ 

 

790:名無しのポケモントレーナー ID:MsiMIl+xE

それに合わせてここ最近の武者修行でレベル上がったんやろ 

 

791:名無しのポケモントレーナー ID:W+QYwaOFn

なるほど 

 

792:名無しのポケモントレーナー ID:WANHX/wVt

そりゃ、ほぼ格上相手だから上がるだろうなぁ

 

793:名無しのポケモントレーナー ID:f8qCQQ0ob

というか、イッチもイッチでかなり読みの精度上がってきてない?

 

794:名無しのポケモントレーナー ID:azZKc7Iox

わかる。会話内容が具体的になってきてる 

 

795:名無しのポケモントレーナー ID:jmIm+GmFh

最初の頃ってどう考えてた? だけだったしな

 

796:名無しのポケモントレーナー ID:TeNvWckcH

読んで、読まれて。その上でどうするか、っていう難しい部分を徹底的に伸ばしてるからな。そりゃ精度は上がるよ

 

797:名無しのポケモントレーナー ID:+nKuDFLpo

問題はそれを上手く説明できる、かつ強いトレーナーとやり続ける必要があるってことなんだけどな??

 

798:名無しのポケモントレーナー ID:3Ui88oTH+

対戦相手ならここ2週間くらい困ったことないじゃん

 

799:名無しのポケモントレーナー ID:A89BRuPkD

>>798 そりゃそうなんだけどさぁ!

 

800:名無しのポケモントレーナー ID:hAkzbT7Cd

期間限定でスレ民の凸OKってなったら普通に人が集まってきたからなぁ。ある意味すげぇよ

 

801:名無しのポケモントレーナー ID:HRVPILF2c

なお、凸するスレ民はこのイッチと最低限善戦できる実力、かつ感想戦で上手く説明できるだけの言語化能力がある者とする

 

802:名無しのポケモントレーナー ID:CFbZ9x/Wt

>>801 その条件クリアした面子がこれだけ集まるのがすげぇんだよww

 

803:名無しのポケモントレーナー ID:AQQXUhd4O

どこにいたんだこんな人数ww

 

804:名無しのポケモントレーナー ID:sUii0FVeR

これ、年齢的に絶対に引退した元強者も混じってるんだよなぁ

 

805:名無しのポケモントレーナー ID:iMC+p1pap

昨日の配信で参加してた漁師の人、引退した元ジムトレーナーだぞ。(ちな知り合い)

 

806:名無しのポケモントレーナー ID:MV9IHob1f

おい 

 

807:名無しのポケモントレーナー ID:EJ6AxZDcY

うぉい

 

808:名無しのポケモントレーナー ID:etHGwEgFI

何故そんな人がここに来ている……?

 

809:名無しのポケモントレーナー ID:GYDybrJgX

この社会、過去に注目されてた選手とか意外といるぞ

 

810:名無しのポケモントレーナー ID:Fm7q2KgPj

たまに野良バトルで明らかにやべぇポケモン使ってくる社畜サラリーマンとかいるけど、そういうことなんか

 

811:名無しのポケモントレーナー ID:CE4FCsGEW

過去の栄光は未来の栄達には直接関与しないから……

 

812:名無しのポケモントレーナー ID:nKHWtfCxC

社畜ニキは是非とも強く生きてクレメンス

 

813:名無しのポケモントレーナー ID:rGdXlHFcS

そんで、そんな強敵もといスレ民とひたすら戦いまくってるイッチの戦績は……

 

814:名無しのポケモントレーナー ID:RSG3X0Vp8

まだ勝率2割いかないくらいかぁ?

 

815:名無しのポケモントレーナー ID:L9IpbdegZ

そんなもん

 

816:名無しのポケモントレーナー ID:Zl2n2SPzj

一日1勝が安定してきたくらいだからな 

 

817:名無しのポケモントレーナー ID:fPeaHYVFE

でも、始めた頃よりは上がってる

 

818:名無しのポケモントレーナー ID:uvJ6WHMcK

それ 

 

819:名無しのポケモントレーナー ID:G2ORN6/+8

最初1週間は全敗だったから…… 

 

820:名無しのポケモントレーナー ID:At7F0xfL7

読んで読まれて、その上でどうするか、を理解して実践できるようになってきてからは少しずつ勝てるようになってきた

 

821:名無しのポケモントレーナー ID:qWoyUBkrB

むしろこの短期間で勝てるように仕上げてるのが怖いんですけど

 

822:名無しのポケモントレーナー ID:YbhzhiqhQ

ワイ、この時期はバトルが怖くて自主トレばっかりやってたぞ……

 

823:名無しのポケモントレーナー ID:T4MbagKLl

昨日通用した戦法が次の日には通じなくて疑心暗鬼になったワイが通りますよっと  

 

824:名無しのポケモントレーナー ID:MZ4BN4CNl

バトルが怖くなって手持ちに慰められたワイの話する?

 

825:名無しのポケモントレーナー ID:Chj0obkqs

>>822 - 824 トラウマ組が湧いてきてて草

 

826:名無しのポケモントレーナー ID:l41nzGwhc

上振れと下振れが酷い時期だから許してやってくれ 

 

827:名無しのポケモントレーナー ID:IWTZSvFgs

勝利の歓喜に発狂して、敗北の絶望に発狂する期間やぞ 

 

828:名無しのポケモントレーナー ID:tiN2mNIxr

>>827 総じて毎回発狂してて草 

 

829:名無しのポケモントレーナー ID:+HQFDUKFR

喉枯れるだろそれ

 

830:名無しのポケモントレーナー ID:/4urkMcQS

そしてそんな期間中に毎日10戦以上してるイッチ……

 

831:名無しのポケモントレーナー ID:T8mLylno5

トラウマ覚える暇なんてありゃしねぇww

 

832:名無しのポケモントレーナー ID:5mPx9vanN

実はでも何でもないが、とんでもないパワーレベリング敢行してんぞこれ

 

833:名無しのポケモントレーナー ID:4JW814tJf

メンタルを犠牲に最速レベルアップ!

 

834:名無しのポケモントレーナー ID:kWEnmGSa4

これで君も上級者へ仲間入り!

 

835:名無しのポケモントレーナー ID:K6omJt44f

何その怪しい広告の謳い文句……

 

836:名無しのポケモントレーナー ID:Zo80cXx1z

おれ知ってる。絶対にポスター中央の人の目が死んでるやつだ

 

837:名無しのポケモントレーナー ID:d+ZYo5BTK

ブラック企業の求人広告やん

 

838:名無しのポケモントレーナー ID:g1CU3o/TT

でも実際にやってることは似たようなもん

 

839:名無しのポケモントレーナー ID:cvrTP8MRi

それにしてもよかったよな。近くにポケモンセンターがあって

 

840:名無しのポケモントレーナー ID:50+zBTDl9

それな。あれだけ名残惜しんだセキチクシティに逆戻り、なんてダサいことにならなくて済んだ

 

841:名無しのポケモントレーナー ID:5Hkbb/rul

でもこんな15番道路の途中にあるのが謎 

 

842:名無しのポケモントレーナー ID:fBA4LSOoJ

おそらく裏手にあるホテルのオーナーが出資して建てたやつと思われる

 

843:名無しのポケモントレーナー ID:tqr53a0ZI

街にあるものは自治体とポケモンリーグが一部負担して建てたもの

それ以外は希望する団体とか企業が出資して建てたものだぞ

 

844:名無しのポケモントレーナー ID:NKgcp4iS/

その関係で街にあるポケセンは設備がしっかりしてるけど、外のポケセンは最低限の設備な所は結構多いんやで 

 

845:名無しのポケモントレーナー ID:Ii1gntR73

出費ケチったの? 

 

846:名無しのポケモントレーナー ID:VT5EnU3VA

そんなところ 

 

847:名無しのポケモントレーナー ID:JPMOZ2d2T

まぁ、建てるのにも結構なお金掛かるからケチりたくなる気持ちはわからんでもない……

 

848:名無しのポケモントレーナー ID:q+hDrAlIk

でもそれなら、わざわざ建てる必要ある? 

 

849:名無しのポケモントレーナー ID:BeTFCGljX

あるやろ。ポケセンの併設されたホテルとそうじゃないホテルなんて、トレーナーだったら一択だわ

 

850:名無しのポケモントレーナー ID:zx0SPAnaY

バトルやらなにやらでポケモンも疲れてるだろうから、ポケセンのあるなしはかなり重要な要素 

 

851:名無しのポケモントレーナー ID:yipw3xAs5

ポケセンだけなら無料で利用できるし、あるだけでもすげえありがたいんだぞ

 

852:名無しのポケモントレーナー ID:+CgILJx2Y

因みにこの手のホテルは、昼間はレストランをカフェとして開けておいて、ポケセン利用客に使わせてお金を落とさせる腹積もりなんやで

 

853:名無しのポケモントレーナー ID:10LlZH5fa

うわ商魂たくましい……

 

854:名無しのポケモントレーナー ID:/aCOqgzIA

なお、そのホテルは現在ワンドリンク無料のサービス中だったりする

 

855:名無しのポケモントレーナー ID:aLXnWimua

マジで!?

 

856:名無しのポケモントレーナー ID:2iBWPwd6c

へぇ。太っ腹

 

857:名無しのポケモントレーナー ID:655auBhey

大盤振る舞いやん

 

858:名無しのポケモントレーナー ID:E+LYg6XxW

特にサイコソーダがオススメやぞ

 

859:名無しのポケモントレーナー ID:1oXHXiUFG

馬鹿が。モーモーミルクの方に決まってるだろ。濃さが他と全然違うわ

 

860:名無しのポケモントレーナー ID:xnjARgR5a

いや、ミックスオレでええやん。飲みやすいぞ

 

861:名無しのポケモントレーナー ID:FogbZH2PA

……んん?

 

862:名無しのポケモントレーナー ID:Md0KlMJko

??

 

863:名無しのポケモントレーナー ID:mjgy5dIdK

何故飲んだ感想が書き込まれている……?

 

864:名無しのポケモントレーナー ID:xtbXnMnt/

おいお前らまさかww

 

865:名無しのニョロボン使い

バレてしまったかぁ

 

866:名無しのライチュウ使い

ちなみに

 

867:名無しのガルーラ使い

レストランでスレ見てるぞ

 

868:名無しのポケモントレーナー ID:8dOP6DjjI

くっそww

 

869:名無しのポケモントレーナー ID:P+TVQD7/u

現地民かぁ

 

870:名無しのポケモントレーナー ID:+dszVAYy4

っていうかコテハンで誰だか一瞬でわかるぞww

 

871:名無しのピジョット使い

あ、因みにあのサンダース使ってたお嬢様がここのホテルのオーナーの娘さんだぞ

 

872:名無しのポケモントレーナー ID:3ZC0FXRng

マジかよ

 

873:名無しのポケモントレーナー ID:mxajjJ1P7

あ、そういう繋がりだったの!?

 

874:名無しのポケモントレーナー ID:er9Jfv6nT

道理であの場に駆けつけられるわけだ……

 

875:名無しのポケモントレーナー ID:htd7cPBrc

んで、スレ民来ること見越してワンドリンク無料キャンペーンやってんのか。やり手だわぁ

 

876:名無しのサンダース使い

因みに皆さん、ドリンクついでに食事されているので売り上げは黒字ですわね

正直ウハウハですわ

 

877:名無しのポケモントレーナー ID:qVRpHofX5

ホントやり手だねぇ、このお嬢様!?

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 ヨルノズクの鳴き声が響く夜の森。アインは一人、そんな森の中を走っていた。

 只ひたすらに、何も考えないように。

 肺活量を鍛えるだの、体力を高めるだの。走る理由はいくらでもあるが、そんなものは今の彼女には言い訳でしかなかった。

 今はただ、何も考えたくない。止まればすぐに背中を掴むナニかから逃げるように。一心不乱に走っている。

 

 セキチクシティを出て、既に一週間が経った。善意から応援に駆けつけてくれたスレ民たち。その全てと対戦したものの、しかし戦績は芳しくない。

 ポケモンはこうしたい、相手はこうしたい。自分の優位を得るために、相手の出方を見越して二手三手と対策を講じる指示の応酬。

 取っ掛かりは掴めてきた。やり方は間違っていない。処理能力は着実に上がっている。

 

 けれど、勝てない。

 

「はぁっ……はぁっ……はぁっ…………ッ!」

 

 ついに息が上がり、膝に手を置きながら肩で息をする。そしてガンッ、と。木の幹に拳をぶつける。

 もやもやとした黒い感情が、自分の心の中に渦巻いている。

 今の彼女を追い詰めているものの正体は、焦燥感。それも、これまでとは比べ物にならないほどのもの。

 

 これまでは比較的、とんとん拍子に事を運んできたという自覚は彼女にはある。その裏にはアブソルによる効率的なトレーニングとそれに食らいつくための努力があるのだが、それでも順調にレベルアップしてきた。それがここに来て、急激にブレーキが掛かった。

 これまでが順調だったが故に、この失速が酷くもどかしい。周囲が善意で手を差し伸べてくれているのに対し、自分が成果を示せないことへの負い目が、彼女の精神をゴリゴリと削っていた。

 

(……アイン、大丈夫?)

 

 ふと、テレパスに何かが反応する。その心の声の方向を向いてみれば、そこには木陰から心配そうに顔を覗かせるラティアスの姿があった。

 

「大丈夫だよ。ごめん、心配かけた」

 

 ふるふる、と。小さく首を振るラティアス。

 気にしていない、ということらしい。

 けれどその仕草に対して、顔には心配の色がありありと浮かんでいる。

 気丈に振舞ったところで、ラティアスもまたテレパス持ち。心の声はどうしても聴かれてしまう。このぐつぐつとした感情も、きっと筒抜けなのだろう。

 

 自然に。ふっ、と薄く笑みがこぼれる

 

「……って言っても、ラティアスには全部筒抜けだもんね。取り繕っても意味ないか」

 

 ちょいちょい、と手招きして、ラティアスを隣に呼び寄せる。

 肩が触れ合う近さで、一人と一匹が夜の森で腰かける。

 

「……ボクにはね、最初は何もなかった。そして何もないところに、一人ぼっち。けど、それでも生きたいと思ったから、こうして旅をしている」

 

 生まれは最悪で、最初から生きる希望なんて欠片もなくて。それでも望外の奇跡を掴み取って、檻の中から飛び出した。

 けれど檻の中しか知らなかった彼女には、何もなかった。あるのはただ、忌み嫌っていた異能と盗み出したタブレット端末だけ。

 

「最初は生き方もわからなくてスレ民()に全部丸投げしてたんだけど……なんだかんだで、今はスレ民()と旅をする生活を気に入っている」

 

 安価を出せば平然とネタを出してくるし、妙なものを引き当ててればゲラゲラと笑う。

 人間の畜生な部分を開けっ広げに晒しているくせして、ピンチになれば本気で助けてくれる。

 良くも悪くも正直な人間しかいないスレと一緒に過ごしていれば、少しずつ愛着も芽生えてくるもの。

 彼女にとって掲示板(それ)は、いつしかただの道具ではなくなっていた。

 

「その過程で、手持ちのポケモンもゲットした。アブソル、メタング、ヒトデマン、ハッサム……それに、ラティアス」

 

 スパルタなアブソルに、寡黙で仕事人のハッサム。お節介焼きのヒトデマンに、生真面目なメタング。そして、よくよく皆に甘えるラティアス。

 少しずつ仲間が増えて、一緒に過ごすようになり、バトルも食事も全て一緒。それは彼女にはいなかった家族のようで。とても居心地の良いものだった。

 

 

 何もなかった彼女の手は、いつの間にか大事なもので一杯だった。

 

 

「みんな、ボクにとって大事な家族。だからやっぱり……なくすのは、()だなぁ」

 

 彼女には今まで、失うものは何もなかった。

 全てを捨てて、命を取るために。がむしゃらに頑張ってきた。

 けどその過程で、彼女はたくさんのものを手にした。

 大切な(失いたくない)ものを、たくさん手にした。

 

 今の彼女には、それを失う恐怖がある。

 

 その恐怖が、焦りを助長している。

 

(……アイン)

 

 ラティアスが心配そうに見つめる。けれど、その不安を解消する術は今のアインにはない。

 全てが決まるのは二週間後の、大会本番。そこで成績を残せるかどうか。全てはそこに掛かっている。

 

「うん。だから――」

 

 パシンッ、と。アインは頬を強く叩く。

 何事かとビクつくラティアスの視線の先には、先ほどまで弱音を吐いていたアインはいない。

 

「ボクは強くなるよ。君を、ちゃんと手持ち(家族)として迎えるために」

 

 弱い自分を受け入れて、その上で目標のために強くなると宣言する、凛々しい表情(かお)

 全てを受け入れて、覚悟を決めた、強い人の表情(かお)が、そこにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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