エスパータイプは“ヒト”にはいらねぇっ! 作:初心者マーク付き社会人
2‐1。手持ちは残り1体。
フィールドはヒトデマンにも有利な水。天候は雨。更にヒトデマンは“こうそくいどう”を積んだ状態。
戦況はカスミが不利。ここでヒトデマンを倒し、更に温存された最後の一体を倒さなくてはならない。
けれど、カスミの瞳に怯えはない。勝ち切れるだけのポテンシャルと、信頼を置くポケモンしか、ここには連れてきていない。
カスミが選んだ最後のポケモン。
ボールから飛び出したのは、竜を思わせる青い姿。羽衣のように風に靡く背びれに、流線型の美しいフォルム。
海に生きる美しいながらも、“雨”下では凶悪な性能を誇るポケモン。
『ジムリーダーカスミ、3体目に選出したのは“キングドラ”だ!!』
『ヒトデマンと同じ高機動アタッカーやな。最後の最後で同じ土俵で勝負って訳や。相変わらず負けず嫌いなやっちゃなぁ』
「今日のアタシのエースよ! みず使いのトレーナーとして、この子で貴方を倒すわ!」
「負けないよ。この子だって、ボクのエースなんだから!」
互いにここは負けられない。それはカスミも、そして
心を燃やし、想いを叫び。負けたくない心を奮わせる。
その両者の想いが、ついにぶつかる。
『それでは試合、開始ィ!!』
「「“れいとうビーム”!!」」
開幕早々、“れいとうビーム”一閃。水面に氷の軌跡を描きながら、水上で極低温の冷気がぶつかり合う。
空気が凍り、水が凍り。冷気の霧を纏った氷の孤島がフィールドの中央に出現する。
足場の形成と同時に互いの死角を生み出す。お互いの姿が氷に消えたその瞬間に、両者は一斉に動き出す。
「ヒトデマン、“スピードスター”!!」
「キングドラ、“りゅうのはどう”!!」
放物線を描き、氷の孤島の周辺に降り注ぐ“スピードスター”。雨あられと降り注ぐ流星群。キングドラ諸共呑み込もうとするその中を、ドゴッ、と水を押し退けたキングドラが駆け抜ける。
特性“すいすい”。“雨”はキングドラに味方する。左右に振り、時には水中に潜り。降り注ぐ“スピードスター”の悉くを躱し、射程に捉えたヒトデマンに“りゅうのはどう”を放つ。
ここで初めてわかる、キングドラの
物理・特殊両方に秀でたキングドラは、攻撃されるまでどちらの型か判別するのは難しい。それもまたキングドラの強みの一つだ。
そしてここで判別した型は、特殊型。つまりこのマッチアップは、高機動特殊アタッカー同士の真っ向勝負という形になっているのである。その選出に、トレーナーであるカスミの性格が滲み出ている。
「“サイケこうせん”で迎え撃って!!」
“こうそくいどう”を積んだヒトデマンは“りゅうのはどう”をひらりと回避、“サイケこうせん”で迎撃する。
ただし“すいすい”の恩恵を受けたキングドラは悠々と攻撃を躱し、反撃に“りゅうのはどう”を放ってくる。
互いが高い機動力を活かし、動き動かされの駆け引きを行いながら、高速でビームが飛び交う砲撃戦を繰り広げる。位置を変え、態勢を変え、目まぐるしく動く撃ち合いは見るものを魅了する。
『開幕から激しい砲撃戦! 互いに入り乱れる高速戦です!』
『お互い同型。退くに退けない、意地の張り合いやな』
「撃ち合いじゃウチのエースは負けないわよ!」
「それは百も承知だよ。 ヒトデマン!!」
互いに自分の土俵。自分の強みだからこそ負けられない想いがある。
気合は両者とも同じ。そこに差が生まれるとしたら、それまでの経験の差。
ジムリーダーの下でトレーナーとの戦闘経験を積んだキングドラ。
野生ポケモンとしてルール無用の環境で生き続けたヒトデマン。
その場にある物を全て使うという柔軟な思考は、やはり後者の方が培われる。
「“スピードスター”!!」
突如として、水中から飛び出した“スピードスター”。ヒトデマン本体から出す素振りがなかっただけに、完全に不意をつかれたキングドラが被弾する。
「っ、氷の下に隠して……!」
「良いお手本が近くに居てね!」
牽制技を躱されても消さず、そのまま視界から消して伏兵とする戦術。
特に遮蔽物のあるフィールドや天井のないフィールドにおいて、死角から強襲し相手のリズムを崩すのに重宝する技。幾度となく受け続けた技を、弟子はしっかりとモノにしていた。
「畳みかけるよ! “サイケこうせん”!」
「仕切り直しよ!“たつまき”!」
不意打ちで崩れた隙を突いた“サイケこうせん”。けれどキングドラはすぐさま体勢を立て直し、身体を傾けるだけで“サイケこうせん”を回避する。不意を突かれても動じない精神力と、復帰能力は流石の一言。そのままキングドラの周囲を覆うようにして展開された“たつまき”。天に聳える風の柱が、ヒトデマンをその場から吹き飛ばす。“ドラゴン”タイプに属するその技はそれに相応しい十分な威圧感を放っているが、しかし実際は周囲の敵を吹き飛ばす程度で、一撃で大ダメージを負わせる威力はない。
だが、この“吹き飛ばす”というのが厄介なところで。仕切り直しと簡易的な防壁としては優秀な性能を持っている。
そして、さらにもう一つ……。
「“れいとうビーム”! ……くっ」
視界を遮断する、というメリットがある。
一時的とはいえ、ポケモンとトレーナーの両方の視界から消えることができるこの技は、トレーナーの“もう一押し”を強引に断ち切ることができる。追い打ちに放ったヒトデマンの“れいとうビーム”は不発。ただ竜巻の向こう側の水が凍るのみ。視線を遮った僅かな隙で、キングドラは姿を完全に晦ませていた。
『ヒトデマン、ここでキングドラの行方を見失う!!』
『物理的に視界を塞げる“たつまき”の便利さが出たな。威力どうこうであんま採用されとらんが、肝は“どう使うか”やからな。こういう使い方もできるんやで』
威力の低い技でも、使い方次第でいくらでも化けられる。そのお手本とも言える使い方に、同じジムリーダーとしてアカネが答える。その言葉に会場の一部では呻くような声が。身に覚えのあるトレーナーこそ、その反応は顕著だった。
「左右、居ない。水中も。なら後は――」
そんなただ中でも、バトルの渦中にいる二人は思考を回し続けている。
次の相手の手を予想し、一手でも相手の作戦の上を行くように。その後のバトルを有利に進められるように。
そして、アインの顔が弾かれたように空に向く。
「上ッ!」
「正解! だけどちょっと遅かったわね!」
天に聳える竜巻を泳ぐように上るキングドラ。雨雲を背にヒトデマンを見下ろす姿は、まるで獲物を見定めた竜のよう。
「さぁ、どーんと行くわよ! “ふぶき”!!」
天に咆え、空から降り注ぐ凍てつく風。気温によってはただの冷風となり、技として当たる確率は低い技だが、しかし水を氷に変貌させるには十分な冷気を秘めている。つまり空中に存在する水分……雨粒はその冷気にあてられ氷となり、冷気を纏った氷の針となる。
幾百幾千と降り注ぐ雨粒は全てが氷針となり、見上げるヒトデマンへ一斉に牙を剥く。
「切り抜けるよ! “うずしお”、“れいとうビーム”!!」
物理ダメージも追加された必中“ふぶき”。防ぐだけでは押される一方。故に、ここは強引に突破する。
“うずしお”と“れいとうビーム”で作り上げた氷の槍。ヒトデマンをすっぽり覆い隠せるだけの巨大な槍は、同時に盾としての機能も持つ。その巨大な質量を以て、幾千の氷の針を迎え撃つ。
『ここでヒトデマン、氷の槍を形成! “ふぶき”を迎え撃つ構え!』
『盾と槍で防御と反撃を一気にする算段か。一手で反撃まで持っていくのに慣れとるな』
「突撃!!」
「あ、はっ! 貴方もなかなかどうしてお転婆じゃない!」
「これでもやんちゃが売りでね!」
氷の針が降り注ぐ中を、氷の槍は我が物顔で突き進む。如何に物理ダメージがあると言えど、その実態は小さな針。物々しい大槍の前では、虚しく散るしかない。
「いい槍ね! けどそれなら砕くまでよ! “ハイドロポンプ”!」
空高く舞うキングドラが、大きく息を吸い込む。突撃槍を前に無防備な姿を晒すリスクを負ってでも得たこの数瞬は、更に大きなリターンとなってキングドラに味方する。
次の瞬間、吐き出された “ハイドロポンプ”は射出だけで ドッ と大気を震わせ、迫り来る突撃槍を一瞬で罅だらけにする。
『い、一瞬でっ!?』
『圧縮しよったな。“雨”下で威力底上げされてるいうのに更に圧縮までやるたぁ、ここで有利を取りに来たか 』
如何な強度を誇ろうとも、罅が入れば脆いもの。鋭利な槍は一瞬で鈍らとなり、その氷はボロボロと崩れていく。
“雨”下の恩恵を受けた“ハイドロポンプ”に圧縮に圧縮を重ね、貫通力を付与された技。命中率と隙を代償に支払うものの、その恩恵は絶大。氷の槍と正面から撃ちあっても、それを上回るだけの貫通力を持った“ハイドロポンプ”は、一発たりとも受けられないほどの威力を誇る。
その圧縮砲により先端から入った罅は氷槍を内部から砕き、ただの氷塊へと変貌させる。
飛び散った氷の陰に、しかしヒトデマンの姿はない。
「ぃい゛ッ!?」
「そこッ!!」
キングドラの死角。
氷槍は囮。本命は“たつまき”からの不意打ち。大技の直後という隙だらけの瞬間を狙った一手は見事に嵌り、無防備なキングドラに“れいとうビーム”が放たれる。
振り向き様に咄嗟に回避行動をとるキングドラ。しかし如何に強くなろうとも可動域を外れて動くことはできない。それを見越して照準を合わせたヒトデマンと、それを察したキングドラ。咄嗟に最小最速の動きで、速射力を高めた“りゅうのはどう”で反撃。両者の攻撃はすれ違い、それぞれの攻撃が直撃する。ダメージ量で言えばヒトデマン優勢。ただし、体力残量は五分五分。
『キングドラに“れいとうビーム”がクリーンヒット!! しかしキングドラも咄嗟に反撃!!』
『自傷覚悟で“たつまき”に突っ込みよったんか。前のラグラージに体力を削られとるのに……えぇガッツしとる!』
体力面で不利な状況で、決死の覚悟の突撃。その勝利への執念に、実況は声を大にして褒め称える。
明確な格上相手に勝つための大前提は、メンタルで負けないこと。相手の戦術に呑まれず、勝利に執着し、数少ない勝ち筋を決して逃さないこと。そうやってポケモンとトレーナー双方の心が一致して、初めて成立する可能性が生まれる格上殺し。その執念と爆発力は、見る者の心を燃え上がらせる。
「ふ、ふふっ。あはははは!!」
その中には勿論、対戦相手も含まれる。
「いいわね!
貴方に勝ちたい。
まるでそう叫んでいるようなバトル展開。その心に抱いた想いは、向かい合っている対戦相手に一番響くのだ。
ジムリーダーだとか、先輩トレーナーだとか。そういう肩書は抜きにして、全力で応えてやりたいというのが、トレーナーの本能というもの。
「吹き飛ばしなさい、“たつまき”!!」
ゴウッ、と天を衝く一際大きな風の柱が、ヒトデマンの攻撃を掻き消す。その風圧は空中にいるヒトデマンを吹き飛ばし、最初に発生させた“たつまき”の中へ。荒れ狂う竜の力の一旦に再び晒されるヒトデマン。ただし、今回はそれだけではない。
『ヒトデマンが再び“たつまき”の中へ! そこに襲い掛かる氷の針!!』
『水面に浮かんでたやつが巻き上げられたな。“たつまき”と氷の針の二重ダメージ。こりゃ前の試合の意趣返しやな』
先ほど降り注いだ氷の針。ヒトデマンの氷槍によって砕かれなかった分は全て水中へと落ちていた。それを“たつまき”が回収し、そこに吹き飛ばされたヒトデマンにダメージが入ったのだ。
奇しくも前の試合と似た状況。フィールドに残っているものを最大限に利用する手法。良い手を自分のものにするのは、ジムリーダーもまた同じ。
状況は再びリセット。互いに距離が空き、二度目の仕切り直し。
ここで、戦意が滾ったカスミが動いた。
「キングドラ、舞いなさい!!」
巨大な竜が蜷局を巻くように、螺旋を描いて空を昇るキングドラ。“たつまき”に吹き飛ばされて落ちていくヒトデマンと対照的に、羽衣のような背びれを揺らして悠々と空へ昇っていく。その威容を前に、竜であることを疑う者はどこにもいない。
カイリュー、フライゴン、チルタリス、ボーマンダ。ドラゴンタイプらしさを持つ彼らに隠れがちだが、キングドラもまた確かにドラゴンタイプである。その威光を、ここで知らしめる。
「さぁ、ド派手にいくわよ! “りゅうせいぐん”!!」
雨雲の更に上。天空から降り、雲を裂いて現れたのは巨大な隕石群。かつては凶兆とも呼ばれた、人の手の届かない天の災い。そして今では、竜を竜たらしめる力の権化。“スピードスター”の華やかさなど欠片もない、純粋な暴力の塊が降りかかってきていた。
「逃げ場なんてないよヒトデマン、ここで迎え撃つよ!」
回避か迎撃か。逡巡していたヒトデマンにアインが指示を出す。逃げてもその後には必中“ふぶき”が待っているだけ。
逃げても道は一つだけ。勝てば道はいくつもある。例え困難な道だろうと、彼女は前に進むと決めていた。
だからヒトデマンは、後ろに立つ
「“うずしお”、“れいとうビーム”、“スピードスター”!!」
水面からいくつも突き上がる“うずしお”を“れいとうビーム”で氷槍に。更には“スピードスター”でコーティング。星の煌めく槍が、力の権化たる“りゅうせいぐん”を迎え撃つ。
『ここでヒトデマン、勝負に出る!!』
『ええな。気持ちで負けとらん。それに“こおり”タイプは“ドラゴン”タイプに相性がええ。勝負は簡単にはつかんで』
「綺麗な攻撃ね。でも、それだけじゃ勝てないわよ!!」
「なら、見掛け倒しじゃないって証明してあげる! 行くよ、ヒトデマン!!」
アインの合図と共に、星槍が一斉に射出される。
降りしきる雨の中、雲を突き破って落ちてくる流星群と、それを迎え撃つ星槍がぶつかり合う。ドンッ、と空気を揺らし、その度に星が空に煌めき、そして次々と星屑となって落ちていく。
『両者互角のぶつかり合い!! 互いに一歩も譲りません!!』
その煌めきに多くの観客は目を奪われ、その力強さに多くのトレーナーは心を打たれる。
“力”とは、積み重ねた研鑽が最も出るもの。
“力”とは、心血を注いだ努力の結晶。
大技を覚えるのにも、小技を大技の如き威力を出すにも修練が要る。フィールドから観客席まで届く
『最大火力のぶつかり合い。ここが勝負処や。次の選択次第で一気に動くで』
互いに残り体力も少ない状態。キングドラは一発貰えば危険で、ヒトデマンはダメージの蓄積でミリダメすら受けられない。
力と力の勝負は互角。しかし両者の振り絞った最大限の大技のぶつかり合い故に、両者ともそこに付け入る余裕がない。
フィールドではそこかしこで技同士の衝突が起こり、迂闊に一手を加えて自傷ダメージを受けることもままならない。
しかし、ポケモンたちは戦意旺盛。このモチベーションのままに一手を後押ししたい。
互いのトレーナーが最良手を打つために思考を巡らしている最中。一気に飛び出す影があった。
「え、待っ。ヒトデマン!?」
一瞬の判断に迷ったアイン。その制止を振り払うように、ヒトデマンが決死の突撃を掛けた。
アインのバトルは根本に“味方が無事なままに勝つ”ことが前提にある。無体なことはせず、ポケモンの実力で勝ち切らせることを最終目標に据えている。ポケモンを信じ、想い遣りのある采配は、ポケモン側からしても信頼のおけるトレーナーである。
けれど今、それだけでは勝てない相手が目の前にいる。
きっと後で自分は怒られるのだろう。無茶をするなと、自分の身体を粗末にするなと。
何だかんだで優しい主人である。そんな未来は、容易に想像ができる。
けれど、そんな未来が待っていようとも、やらなければならない時がある。
例え差し違えてでも、ここで勝たなければ
氷槍を生成し、最大火力がぶつかる空中を一気に翔け上がる。自傷は覚悟の上。ただし最小限に。
“たつまき”の中、ゆっくりと降下するキングドラは、星の煌めきに紛れるヒトデマンを捕捉しきれていない。彼我の体力残量から考えて、ここで突貫はしてこないと、そう当たりを付けていた。けれどその判断が、仇となる。
「ッ! キングドラ! 突っ切ってくるわよ!!」
カスミの指示と、ヒトデマンが“たつまき”を氷槍で貫いたのはほぼ同時。
見上げるキングドラと、氷槍に乗り込んだヒトデマンの視線が交錯する。
互いの思惑は一致した。“ここで、決める”。
「“りゅうのはどう”!!」
キングドラは“りゅうのはどう”。ヒトデマンは“サイケこうせん”。
それぞれが技を構え、発射できる体勢に移行する。ただし、ヒトデマンは足場の氷を蹴って“りゅうのはどう”を構えているキングドラに肉薄。ここは空中。素早さが上がっていたとしても動き回れるわけではない。近づく分だけ当たる可能性は高くなるが、それは織り込み済み。当たるなら、できるだけ至近距離で。“りゅうのはどう”の爆発がキングドラを巻き込む距離まで。
お互いの距離は目と鼻の先。もうここから回避するのは難しい。射出寸前までエネルギーが溜まっているなら、キャンセルすることはできないだろう。
彼我の距離は十分。さぁ、一緒に逝こうか……!
“りゅうのはどう”と“サイケこうせん”。限界まで溜められたエネルギーに“サイケこうせん”がぶつかり、逃げ場を失ったエネルギーは堪えきれずにその場で暴発する。
キングドラとヒトデマン。両者を巻き込んだ爆発は天に聳える竜巻を中程から吹き飛ばし、隠されていた二体の姿を露にする。
「あっ……」
そんな観客の声が漏れ聞こえるように、会場はしん……と静まり返っていた。誰もが固唾を飲んで行く末を見守っている。
そんな中で声を上げられたのは、やはり二人のトレーナーだった。
「キングドラ!?」
「ヒトデマン!?」
最後に撃ち合いになったのを把握している二人は自分の手持ちの名前を呼ぶ。けれど、互いに声掛けに応じる余力もなく、力なく氷の孤島に落ちていくのみ。
着地の際に打ち据えられるも起き上がる素振りも見せず、力尽きた二体は成すがままに氷に身体を預けていた。
『キングドラ、ヒトデマン。両者戦闘不能!! 勝利数3ー2。よってこの勝負、アイン選手の勝利!!』
『『『うおおおおおおおおお!!!!』』』
審判の判定が下った途端、会場を歓喜と興奮の歓声が包み込む。白熱したバトルに。ジムリーダーを倒すという偉業に。そして、その光景を目撃した幸運に。
新たなルーキーの誕生を祝福するように、
つよつよトレーナー杯 二回戦第十六試合 勝者 アイン
「……っ」
密かにグッと握り締めた拳。その手には、確かな勝利が握られていた。
これにてカスミ戦は終了。次は掲示板回の予定です。