エスパータイプは“ヒト”にはいらねぇっ!   作:初心者マーク付き社会人

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お久しぶりです(五体投地)

はい、息抜きでポケモンSVランクマッチに復帰したらそっちにのめり込んだ間抜けがここにおります……
レギュHは神でした(断言)

今話は久しぶりの投稿なので他者視点での状況確認+リハビリでの幕間回です。
決勝戦は次話の予定です。

では、どうぞ。


幕間 座して見遣る強者たち

 

 

「あら、ここに居たのね」

「む、君か」

 

 会場の熱気が肌を焼き、歓声が大気を揺らすアリーナ。今現在の熱狂の中心地。一世一代の大勝負を目の当たりにしている衆人はその興奮を声に乗せ、あらん限りに叫び声を上げている。観客は既に総立ち。その興奮の度合いはここ数年をして最高潮にまで達しようとしていた。

 

 その客席の近く。比較的人がおらず穴場になっていたスポットで、氷のように透き通る声が投げかけられた。

 ラフなノースリーブに、タイトスカートという身体のスタイルがよく出る服装を着こなす麗人。その素顔を目にして、すぐに素性を思い出せないモグリはこの場にはいない。

 

 カントー・ジョウトポケモンリーグ 元四天王、カンナ

 

 “こおり”タイプのエキスパートであり、四天王戦の最初の関門として数多くのトレーナーを返り討ちにしてきた歴戦の猛者である。

 現在彼女は四天王の座を退き、ポケモンリーグ公認の環境保全団体のトップとしてその辣腕を振るっている。

 そんな彼女が半ば使い走りのように来させられた理由が、この場所にいる“彼”である。

 

「勝手に抜け出されると困るのよ。そこのところわかってるのかしら、チャンピオン(・・・・・・)?」

 

 サングラスとマスク。その不審者のような出で立ちながらも、溢れ出る覇気がただ者ではないと訴えかけてくる。燃えるような逆立った赤髪、黒と紺のスーツに黒いマント。その服装を着こなす人物こそ、彼女のかつての同僚であり、現在のカントー・ジョウト地方の頂点に君臨する男。

 

 カントー・ジョウトポケモンリーグ チャンピオン、ワタル

 

 最強のドラゴン軍団を従える、この地方最強のドラゴン使いである。

 

「しかしだな。こんな心躍るバトルを目にしては、居ても立っても居られないだろう?」

「だからと言って無断で、というのがマズいのよ。秘書さんがキレてたわよ」

「むぅ……。今日は泊まり込みになりそうだ」

「自業自得ね」

 

 そんなチャンピオンに対しても物怖じせず物申せるのが彼女の強みであり、この役に抜擢された理由でもある。

 かつての四天王は繰り上げや年齢による現役引退、部署移動などで散り散りとなった今。現在その中で手が空いており、尚且つワタルを躊躇いなく連れ戻せると判断されたのが彼女であった。

 

「それで、あなたが気にしてるあの娘。チャンピオンとしてどう見るのかしら?」

 

 

 尚、連れ戻しが実行されるかどうかは別問題である。

 

 

「見どころは多々ある。斬新な戦術もそうだが、何より彼女は目が良い(・・・・)

「それは俯瞰視かしら? それとも戦術眼?」

「両方だ」

 

 トレーナーはポケモンの第三の目。それはトレーナーといてレベルが上がっていけば身をもって実感する言葉だ。

 自分と相手のポケモンの立ち位置や行動を把握するためには、広い視野で俯瞰的に状況を見る必要がある。ポケモンには見えない視点で情報を得て指示を出し、状況を有利に進め、そして戦術眼で勝負処を見極め勝負を決める。

 どちらかだけでは物足りない。両方あってこそ、初めてその強さを発揮するのだ。

 

「カスミと戦った時も、メタングにヒトデマンと、相性不利にも関わらず戦えたのはその面が強い」

「“立方体(キューブ)”、だったかしら? それに“うずしお”を使った範囲攻撃。……確かに、“目”があればいくらでもやりようはあるわね」

 

 見慣れない戦術への警戒心。動き出しの僅かな遅れ。そういった要素を含みつつも、カスミ相手に勝利に持ち込めたのは状況がしっかり見えていたのと、勝負処をしっかり見極められていたからだ。

 練度が高いのは勿論なのだが、そういった理詰めによる勝利をワタルは高く評価していた。

 

「そういう君はどうだ? 君はあの娘をどう評価する?」

 

 ワタルの視線が、カンナに向く。聞いたからには答えて貰おう、と。言外にその瞳が訴えかける。

 

「そうね……ポケモンと信頼を置き合う良いトレーナー、かしら」

「ほぅ? しかしそれはトレーナー皆がやっていることだと思うが?」

「確かにそうね。だけど全幅の信頼を置ける、っていうのは意外と難しいものよ」

 

 シジマ戦の最後。ハッサムとカイリキーの戦い。“エアカッター”の弾幕もそう、“かげぶんしん”による奇襲もそう。あくまでハッサムが主体として動いていて、アインはここぞという勝負処で指示を出すだけ。

 ポケモンが主体のバトルスタイル、トレーナーはあくまでサポート。アインはポケモンの能力を信頼してバトルを任せ、ポケモンはアインの能力を信頼して指示を聞く。両者の間に揺るぎない信頼があるからこそ成り立つバトルスタイルだ。

 それをこの年齢で成立させることが、如何に難しいことか。カンナはそのトレーナーとしての手腕を高く評価していた。

 

「信頼し合っているが故の、既存の戦術に嵌らない自由さ、か。それもまた強さだな」

「そう。そして、だからこそ気になるの。その強さは、果たして彼に通用するのか」

「さてな、それは俺でもわからんよ」

 

 眼下を見遣れば、そこには不敵に笑うグリーンの姿。

 かつて、彼がまだ幼さを残す年頃だった時。二人は四天王として対峙し、そしてあの笑みの前に敗れた。

 

「グリーンは紛れもない天才だ。それは俺がよく知っている。……しかし、成長期の子供の爆発力は決して侮れるものではない」

「今の戦況がまさにそうね。互いに無傷のポケモンが一体ずつ。勝敗はいくらでも変わるわ」

 

『さぁ、お互いに最後の一体! アイン選手が繰り出したのはメタング、対するグリーン選手のポケモンはエレキブルだ!!』

『ここに来て初出しのポケモンか。……最後の最後まできっちりアドバンテージ確保してきよったな』

 

 そんなやり取りをする二人の前で、ついに互いの最後の一体が繰り出された。

 メタングとエレキブル。大一番の最後を任されたエース同士。

 タイプ相性はエレキブルがやや有利。けれど事前情報という点では、メタングが圧倒的不利。

 

「グリーン君はエレキブル。随分とメタを張ったわね」

「メタングからエレキブルへの打点がないからな。その点をどう乗り越えるのかが、アイン君にとっての鍵になる」

「あの子の“立方体(キューブ)”の使い方次第、といったところかしら。でも、あれは……」

「うむ。君の予感は概ねその通りだ」

 

 周囲の観客は大一番の序幕に歓声を叫ぶ。

 けれどその中で、頂きに座す者たちは冷静に展開に思考を巡らせる。

 

「あの“立方体(キューブ)”は原理としては両壁だ。つまりエレキブルが―――を使えれば……」

 

 その呟きは会場の喧噪に掻き消され、誰に聞こえることなく霧散する。

 その推察が現実になるのは、ほんの少し先の事だった。

 

 




次話は本日、18:00に投稿予定です。
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