ハーメルン・ノベルティック・ライダーズ   作:夢野飛羽真

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初めましての方は初めまして、企画主の夢野飛翔真でございます。
この度当合同企画ハーメルン・ノベルティック・ライダーズを無事始動できたことを嬉しく思います。
早速ですが当企画のトップバッターを務めるルクシアさんからメッセージが届いております。


今回、ハーメルン ノベルティック ライダーズに参加させて頂きました。ルクシアと申します!久しぶりに書くライダー小説ですが、何卒よろしくお願いします!





ダークドライブの章
仮面ライダーダークドライブ─FIRST DRIVING─


今から凡そ二十年近く前、ロイミュードと呼ばれる機械生命体による人類との生存競争が行われた。

 

ある狂気の科学者によって人間の悪意を植え付けられたロイミュードたちは、人類の悪意によって進化、発展していき力を手に入れていった。

 

…しかし、彼らはある戦士によって一人残らず倒されて世界から姿を消した。その戦士の名は仮面ライダー。

 

これは、ロイミュードを倒した仮面ライダーの新たなる物語…なんて、ものじゃない。そんな仮面ライダーなんて有名人を親に持ってしまった俺、泊エイジの物語だ。

 

☆☆☆

 

仮面ライダーとロイミュードの戦いが終わって、世界はそれなりに平穏になった。技術の発展で、犯罪が起こったとしても一瞬で警察に見つかる。そんな世界になった。そこまで技術が発展した世界で大きな戦争を起こすほど人類は愚かじゃなかったらしく、第三次世界大戦は起こらずに平穏に暮らしている。

 

「ねむい…」

 

そんな時代でも学校というものはあるもので、俺は退屈な高校の授業をのんびりと受けていた。今の時間は物理なのだが、今更学校の教師から教えてもらうようなことは無い。

 

「はぁ~あ…」

 

なんというか、この世の全てにやる気が起きない。なんて、そんなことを言えば、昔の父そっくりだなんて言われるから口にはしないのだが。

 

「よっ、相変わらず暇そうだな!」

 

背中を叩いてきたのは、生まれた時からの腐れ縁である追田源助。父と母の知り合いの息子であり、幼なじみと言うやつだ。

 

「これでも真面目に授業受けてるんだが」

 

「そんな退屈そうな顔してるのによく言うよ」

 

「お前が言うな」

 

お前こそ、心底退屈そうなしてた癖に…なんて、目を向けるとうっ…と言葉に詰まる源助。

 

「さすが、ノーベル賞受賞者の息子だな」

 

「うるせーよ仮面ライダーの息子」

 

源助の母親──追田りんな…旧名沢神りんなは電子物理学の権威であり、ノーベル賞受賞者なのだ。昔から、いわゆる有名人の息子どうし気が合うところがあった。まあ、俺もこいつも両親のことが嫌いな訳じゃない。名前のせいで悪目立ちするから疲れると言うだけだ。

 

「…で?今日はなんの用?」

 

「ふふーん、聞いて驚け?…最近、とある場所で重加速反応があったらしい」

 

「今の世の中で重加速ぅ?どこから聞いたんだよそんな嘘。ありえないって」

 

「そう、ありえないんだよ。お前の親父さんが全てのロイミュードを倒したはずだろ?なのに、重加速が起こった。なーんか、おもしろ…もとい、怪しくねーか?」

 

「隠せて無いが?」

 

ニヤニヤしている源助に肘打ちしつつ、顔を顰める。重加速が起こったということは、面倒事が起こる可能性が高まった…特に、俺や源助は巻き込まれる可能性がだいぶ高い。

 

「で?どこで重加速が起こったって?」

 

「…まさかの、光ヶ森高校だってよ」

 

「は?」

 

光ヶ森高校…つまり、今俺たちが通っている高校だ。そんなピンポイントで俺たちがいる学校で重加速が起こるか?

 

「どっから聞いたんだそれ?」

 

「お袋。…内緒だぜ?」

 

「…りんなさんがそんな嘘はつかないよな」

 

めんどくさい事になって来た気がする。いや、気がするなんてもんじゃない、絶対めんどくさい事になる。確信を持ってそう言える。

 

「…だけどなぁ、源助。俺たちはもう高三だぜ?そんなこと考えてる暇ないっての」

 

「かー!相変わらずギアが入らねーなー!親父さん譲りの脳細胞だってのに」

 

「はぁ…あのな。俺や親父のギアが入らない方が平和ってことなんだよ」

 

溜息をつきながらぐったりと机に体を預ける。あ~あ、やっぱり学校は眠いなぁ…。

 

「あら、なんの話し?」

 

「ん?」

 

「お、よっす生徒会長」

 

ぐったりと体を机に預けていると、聞きなれた凛とした女の声が聞こえた。体を起こすと、花の匂いと共に黒い綺麗な髪がさらりと揺れる。黒い髪に氷の様な蒼い瞳がこちらを見詰めていた。

 

「なんの用だ、霜月」

 

「なんの用だ、なんて酷い。なんだか面白そうな会話をしていたから混ざりに来ただけよ?」

 

こいつの名前は霜月凛。ここ、光ヶ森高校の生徒会長であり、大抵の事を完璧にこなす誰からも慕われる生徒会長ってやつだ。というか、結構離れてた癖に聞こえてやがったのか…。

 

「で、あんたも知ってるのか?」

 

「重加速の事でしょう?一応聞いてはいるけれど…半信半疑ってところ」

 

やっぱり、こいつはある程度の情報を聞かされていたらしい。教師からの信頼も厚いから裏で教えて貰っていたらしい。

 

「ま、俺は関わる気は無いからな」

 

「まあ、危険に自分から突っ込むのは推奨しないわね」

 

「わ、わかってるって!」

 

霜月にジロリと睨まれて目を逸らす源助。そんな二人の様子を尻目に顔を机につけて目を閉じる。願わくば、こんな平穏がずっと続きますように。

 

…まあ、そんな願いが叶うはずも無く。学校終わりに源助と一緒に帰っている俺たちの前には、黒いフードを着た何者かが静かに俺たちの前に立っていた。

 

「なんだ、お前」

 

「泊エイジを発見──削除する」

 

黒いフードの被った男に大量のノイズが走る。人間の見た目をした、機械の肉体に胸元には製造番号を示すナンバープレート。かつて、とある科学者によって産み出された存在と同一の見た目をしたその存在の名はロイミュード。俺の父、泊進ノ介によって打ち倒された存在が今、俺と源助の前に佇んでいた。

 

「ロイミュード!?」

 

【N103】

 

だが、かつてのロイミュードとは違う点があるとすれば、ナンバーの前にNEXT(ミライ)の文字が刻まれていることだろうか。

 

「我々の名は、ネクストロイミュード。ある御方によって復活したロイミュード」

 

「我々ってことは、他にもロイミュードが復活してるって訳か!」

 

「いかにも。001から始まる全てのロイミュードが新たな存在として復活している」

 

淡々と機械らしく要点だけを語る。淡々と語るロイミュードの言葉に異様な違和感を覚えるが、そんなことを考えてる暇は無い。

 

「俺を排除するって言ったな…俺を殺すって事か?」

 

「その通りだ。それが、彼の命令だ」

 

「…全く、最悪だ…!」

 

生まれてこの方これ程までに最悪な日は無かっただろう。兎にも角にも戦って勝てる相手では無いので混乱したせいで固まっている源助の手を取って走る。

 

「いつまで固まってんだ!」

 

「わ、悪い…ホントにいるとは思わなくて…」

 

「良いから逃げるぞ!」

 

なりふり構わず走って、とにかく遠く、出来るだけ早くロイミュードから逃げるべく走るが──

 

「無意味だ」

 

ぐんっと体が重くなるような感覚に襲われる。これは、父さんや源助から話に聞いていたあれか…!

 

「重加速…!」

 

「動けねぇ…!」

 

「泊エイジを削除」

 

ゆっくりと俺の前に歩いてきて、ぐっと拳を握るロイミュードを見つめる。重加速で体が動かないせいで、避けることも逃げることも出来ない。絶体絶命としか言えない状態でも、なにか奇妙な予感があった。この状況を覆すナニカがあると。動かない体を無理やり動かして手を伸ばす。

 

(こい…こいっ!)

 

ロイミュードの握った拳が俺に叩き込まれる前に、ロイミュードをなにかが吹き飛ばす。ゆっくりとそちらに目線を向けると、こちらを見つめるミニカー。黄色と黒で形成されたそれを、ぐっと掴み取る。途端に、体が軽くなって動きやすくなる。俺が動けるようになった時、同時に源助も動けるようになったらしく困惑したように周りを見ていた。

 

「…っ!動ける!」

 

「うおお!?俺もか!」

 

「馬鹿な!なぜ動ける!?」

 

掴み取ったミニカーを見る。これが、俺の予想通りのものならここから逃げる切り札になる。…だが、これを使うにはどうすれば…!

 

「エイジ!」

 

「ん?…うおっ!?」

 

ポイッと源助がカバンから何かを取り出してこちらに放り投げてくる。慌てて掴み取るが、それは形や大きさから想定していた以上の重さを持っており、取り落としそうになる。何とかしっかりとそれを掴んでよく見てみる。

 

「源助!なんでこれが!?」

 

「何かあった時ようにこっそり」

 

イタズラ小僧のようにニヤッと笑ってみせる源助に呆れたようなため息が漏れる。問題ばかり持ってくる癖に、その問題に対しての対策をしっかりしてる辺りが憎めないところだ。

 

「怒られる時は一緒だぞ!」

 

「わかってるって!」

 

投げ渡されたソレ──マッハドライバー炎を腰に押し当てると、帯が飛び出して腰にマッハドライバーを固定する。そして、シグナルランディングパネルを上げて、手にしたシフトカーを差し込む。

 

【シフトカー!】

 

調子のいい待機音が周囲に響く。待機音を聴きながら、シグナルランディングパネルを下げて叫ぶ。

 

「変身ッ!」

 

【ライダー!ネクスト!】

 

黒と青紫の電撃が俺の周囲を舞い、大量のノイズと共に姿が変わる。黒と青で彩られた鎧につり上がった蒼く鋭いヘッドライトを模している複眼。背中に取り付けられたタイヤには斜めったNミライの紋章。

 

「へぇ、ネクストか…。なら、仮面ライダーネクストってところか?」

 

腰を落とし、右手首に左手を当てて右手を軽く握ったり開いたりしてロイミュードをじっと見つめる。

 

「バカな…貴様、仮面ライダー!?」

 

「悪いが初乗りでね。ひとまず試運転と行こうか!」

 

足に力を込めて、全力でロイミュードに向かって駆け出す。人間の限界をはるかに超えた速度でロイミュードに接近した俺は青紫のエネルギーを纏った右拳を叩き込む。

 

「ぐぁぁ!?」

 

「…良いね、悪くない!」

 

目の前にいるロイミュードよりも、俺の方がスペックが上らしい。俺の攻撃を受ける度に、ロイミュードの装甲がひび割れ、砕けていく。ネクストに搭載されたAIがネクストに搭載されているあらゆるシステムの使用法や、最適な行動を伝えてくれる。

 

「ふっ!はぁ!」

 

「ぬぅ…!小癪なぁ!」

 

ロイミュードも負けじと殴りかかってくるが、それを父さんや現さん、母さんや叔父さんに鍛えられたように軽く受け流していく。ネクストのシステム全てをここで全ては理解出来ないが、最適な行動は示されている。なら後は!

 

「フィーリングとノリで──振り切るぜ!」

 

「がぁぁぁぁぁぁ!?」

 

回し蹴りを叩き込むと、踵部分に取り付けられた小型のタイヤが高速回転してロイミュードの装甲を抉りとっていく。大きく吹き飛ばされるがままに距離を取ったロイミュードに対してからかうように語りかけながら、ベルトを撫でる。

 

「こんなのもあるぜ?」

 

かつて見せてもらった仮面ライダーの映像の中で叔父がやっていたようにベルトのブーストイグナイトを全力で何度も叩く。体から大量の青紫の電撃が放出され、背中のタイヤが高速で回転を始める。

 

【ズーット!ネクスト!】

 

テンションの高い音声と共に、エネルギーが放出されて先程よりも更に早い速度でロイミュードに接近する。そのままの、高速で大量のパンチを叩き込んでいく。

 

「うおおおおおおお!!」

 

「ぬぁああああああああ!?」

 

何十発も拳を叩き込まれたロイミュードはその体に大量のヒビが入っていた。そのヒビが交差する一点に向けて最後の一撃を叩き込む!

 

「オラァ!」

 

「ごはぁ!」

 

その一撃で数メートル吹き飛ばされたロイミュードを見て、シグナルランディングパネルを上げて、ブーストイグナイトを全力で叩く。

 

【ヒッサツ!】

 

また新たな待機音が響く。その待機音をBGMにかけ出すと、全力で飛び上がる。飛び上がった勢いのままシグナルランディングパネルを下げる。

 

【フルスロットル!ネクスト!】

 

青紫のエネルギーが右足に収束し、背中のタイヤが高速回転することで生み出された推力によって更に加速して紫の弾丸となった俺は、ロイミュードに右足を叩き込む。

 

「ぐぅああああああああ!」

 

その蹴りは確かにロイミュードを貫き、中枢のコアを打ち砕いた感触を覚える。

 

「う…あ…」

 

ロイミュードのコアが空中で弾け飛び、爆炎がの中で1人の男が倒れるのが見えた。駆け寄ると、ボロボロの服を着た男が苦痛に呻くような表情で倒れていた。

 

「おいあんた、大丈夫か!」

 

「か、仮面ライダー…?」

 

「あ、あー!そんなことより、なんでロイミュードから人間が?」

 

ロイミュードから排出されるように現れた謎の男に首を傾げていると、男が何かを語ろうと話しかけてくる。

 

「た、助けてくれ仮面ライダー!じ、実は──」

 

そこまで言った瞬間、パキリと軽い音を立てて男が凍りつくように固まる。そう、文字通り凍りついたのだ。

 

「な、なに!?」

 

「おいエイジ!あそこ!」

 

物陰に隠れている源助の指さす方向を見てみると、そこには黒いフードを被った何者かが人差し指を男に向けていた。そして、その指からは白い煙が風に揺られていた。

 

「誰だお前!!」

 

何者かに叫ぶが、何者かは何も言うことなく静かにそこから立ち去る。追いかけようとするが、凍りついた男を見捨てては置けずに変身を解いてから救急車に連絡を入れた。

 

「一体なにが起こってるんだ…?」

 

【オツカーレ】

 

俺の知らないところで、なにかが動き始めているようなそんな異様な違和感が脳裏を焦がす。それに、この男を凍りつかせた氷の弾丸…なんか 変だな。

 

「エイジ」

 

「ん?なんだよ」

 

「出来れば仮面ライダーに変身したのは秘密にしてくれないか?」

 

「は?なんでだよ、面白がってるなら──」

 

「違う。面白がってるわけじゃないんだ!頼む」

 

いやに真剣な表情で語る源助の姿に調子が狂う。絶対に話すべきだと思うんだが…仕方ない。

 

「わかったよ。通りがかったらこうなってたって言おう。それでいいな?」

 

「ああ!」

 

なんでそんなことを頼んでくるのか疑問に思っていると、数台のパトカーと救急車が見える。そこから人が降りてくる前に、足元に落ちていた氷の一部を袋の中に入れてポケットの中に入れる。なにか、大きな手がかりになる気がする。

 

「エイジ!源助!」

 

「父さん…」

 

「何があった!?」

 

「いや、分からないんだ。帰ろうとしたら急に重加速が起こって…」

 

気がついたらこうなってた、と伝えると。頭が痛むのか軽く頭を抱えて父さんが周囲を見渡す。しかし、凍りついた男のところでピタリと視点が固まる。

 

「まさか…そんな馬鹿な…!」

 

「父さん?」

 

「この氷は…フリーズ…?」

 

少し震えた声で何かの名前を呟く父さんの様子に源助と顔を合わせる。なにか、俺の知らない大きな因縁が訪れようとしている気がした。

 

…その日は軽い事情聴取だけやって、俺は父さんの、源助は現さんの車に乗って一旦家へと帰ることになった。

 

「それで?本当は何があったんだ?」

 

「話した通りだよ。重加速が終わったらああなってた」

 

「…まあいい。とにかく、この件にはあまり踏み込むな。俺の見立てが正しかったら、男を凍らした存在はあまりに危険だ」

 

父さんは多くを語ることは無かったが、その瞳に灯る怒りの炎が力強く燃えていた。…しかし、その奥には隠しきれない怯えの色が見え隠れしていた。

 

☆☆☆

 

次の日の朝、父さんからは学校に行かなくてもいいと言われたが、源助と話したいこともあったので、学校へ行くことにした。源助から誰もいない早朝に昨日の事について情報交換したいと言われたのでいつもよりも早く登校する。

 

「おはよう源助」

 

「お、おはよー」

 

源助と合流した俺は、向かい合わせに座る。そした、声を小さくして昨日の件について話す。

 

「昨日、親に何か言われたか?」

 

「いや、特に何も。…でも、やっぱり疑われてたぜ。やっぱり話した方が良いんじゃねぇのか?」

 

「…いや、それはもうちょっと待ってくれ。頼む!」

 

「…はぁ、なんか理由があるんだな?」

 

「ああ、信じてくれ」

 

言っても聞かなさそうだから、とやかく言うのはやめた。どうせ、1度隠した時点で俺も共犯だしな。

 

「おはよう、二人とも」

 

「おー、おはよう霜月」

 

「ういーす生徒会長!」

 

ぐだぐた話していると、まだ授業の時間までにあと一時間くらいあるのだが、霜月のことだからこれくらいに来てもおかしくない気もする。

 

「相変わらず真面目だな、霜月」

 

「あら、そうかしら?今日はあなた達の方が早かったけど…」

 

「俺らは遊び出来ただけだって!生徒会長はいっつもこの時間帯に来てんのか?」

 

「ええ。生徒会の仕事もあるし…」

 

どこか疲れたように笑う霜月。疲れるなら辞めればいいのに。俺ならとっくにやめてるぞ。…というか、周りのやつもコイツに頼りすぎなんだよ。

 

「はぁ…もう少し休めばいいのに」

 

「あなたは休みすぎなんじゃない?」

 

「やることはやってるからいーんだよ」

 

霜月の言葉を鼻で笑って机に体を預けて力を抜く。あ~無駄に早く起きたから眠い~!

 

「…そういえば、泊くん」

 

「あん?」

 

「昨日は大変だったみたいね」

 

「あー…まあな」

 

もうこいつが何を知っていても何も驚かない自信がある。どこから聞いてくるのかは分からないが、教師から聞いてるのか?にしては知りすぎてる気もするが…。

 

「なあ、どっからそういうのを聞いてんだ?」

 

「…まあ、そういえツテがあるってところかしらね」

 

「ツテ、ねぇ…」

 

そういえば、霜月の家は名家と呼ばれるような大きな家だったはずだ。その方面から情報を得ていてもおかしくは無い…のか?なーんか、引っかかるぜ。

 

「泊くん、どうかした?」

 

「うおわ!?ちけぇよ!…たくっ、なんでもない。ただ、モヤモヤしてるだけだ」

 

何となくギアが入らず、ため息と共に更にぐったりしていると、花の香りが鼻をつく。目を開くと至近距離でブルーの瞳が覗き込んでいたため慌てて起き上がって顔を遠ざける。びっくりした…。

 

「もう、そんなにびっくりしなくていいのに」

 

「するに決まってるだろ!?…って、これ…」

 

先程、俺が慌てて起き上がった衝撃で落ちたのであろう紙を拾い上げる。そこに書かれてるのは…香水のメーカーへの感想か?なんでこんなのが?

 

「なんだこれ?」

 

「あら…それは隣のクラスの青木さんに渡すモノだわ」

 

「なんでこんなもんを?」

 

「青木さんがこの香水を使ってるメーカーの開発部の方の娘さんなの。そこで、私に試作品の香水を使って欲しいって言われてね」

 

「ふぅん…なら、今つけてる香水が?」

 

「ええ、その香水よ。いい匂いでしょう?」

 

ふわりと髪を揺らすと、甘い花の匂いがする。なるほど、確かにいい匂いがするな。これが出るなら母さんに買っても良いかもな。

 

「確かに、いい匂いだな」

 

「でしょう?まあ、私には甘すぎる気もするけれど…」

 

「甘い?…確かにもうちょい涼し気なのが良いかもな」

 

確かに霜月がつけるには匂いが甘すぎるかもしれない。ミントとかの匂いの方が良いかも…?

 

「エイジって案外そういうの詳しいよな」

 

「ん?ああ、叔父さんの影響でな。あの人、こういうのは詳しいから」

 

叔父──詩島剛はオシャレに気を使う人で、色々な知識を刷り込まれた。まあオシャレ以外の余計なことも色々吹き込まれた気もするけどな。

 

「これ、なんて名前の店の香水なんだ?」

 

「BlueFIowerって店よ。結構有名なんだけど知らないの?」

 

「ふぅん…ありがとよ」

 

BlueFIower…あまり香水などに詳しくない俺でも聞いたことのあるメーカーだった。しっかし、調べた感じ結構いい値段するな。

 

「…あら、もうこんな時間。そろそろ生徒会室へ行ってくるわ」

 

「ああ、頑張れよ」

 

「頑張れ生徒会長ー!」

 

まあそんな話をした日から数日が経ったある日。今日は源助が用事があると言っていたため、俺が一人で帰っていると唐突に後ろから嫌な予感がして慌てて後ろを振り向く。そこに立っていたのは、黒いフードの存在。前に見た、ロイミュードと融合していた男を凍りつかせた謎の存在だった。

 

「お前は…」

 

「泊エイジ…泊…やはり泊か…全く忌々しい一族だ」

 

「はぁ?」

 

ブツブツと何かをつぶやくそいつが、ゆらりと手を開くと手に何かが集まっていく。あれは…雪の結晶?

 

「…っ!?」

 

「この世界から消えろ!泊エイジィ!!」

 

集まった氷の結晶が地面を、空気を、あらゆるものを凍てつかせる風となって突き進む。それをにあたる直前に、マッハドライバーにシフトネクストを入れて叫ぶ。

 

「──変身ッ!」

 

【ライダー!ネクスト!】

 

シフトネクストからマッハドライバーによって抽出されたデータがノイズと共に鎧となって体を守る装甲と成る。生み出されたタイヤ型のデータや装甲によってやつの放ったエネルギー弾は弾け飛ぶ。だが、装甲が弾いてなお防ぎ切れなかったのか、少し凍った装甲を軽く叩いて氷を引き剥がす。そのまま、奴を見つめて拳を力強く握る。

 

「ハッ、仮面ライダーになったか。だが、その程度のシステムでは私には勝てんよ」

 

奴の体からバチリと黄金の閃光が弾ける。段々と強くなる黄金の閃光は、やがてロイミュードの肉体へと変化し、人の手には余る進化を遂げる。その身に宿された力は、あまりに大きく存在するだけで後ずさりしたくなるほどの威圧感が放たれていた。

 

「なんだ…それ…!?」

 

「これは超進化…お前らのような下等種族では辿り着けない領域だ!」

 

凄まじいエネルギーがロイミュードの右腕に集まって行く。黄金と青の混ざったような色合いのエネルギーが周囲を凍てつかせながら集まり…突如としてロイミュードの動きが固まる。

 

「ぬっ…ぐっ…まだ抗うかァ…!」

 

「なんだ…?」

 

「チィッ…まだ抗うのか、人間がぁ!」

 

「人間?…まさか!お前も人間を取り込んでるのか!?」

 

ロイミュード103を倒した時に弾き出された男を思い出して叫ぶ。目の前にいるこいつも、あの男と同じように誰かを取り込んでいるのか?

 

「…ふん、そんなことを知ってどうする?今から私に殺されるお前に!」

 

「いいや!殺される訳には行かない!まだやるべきことがあるんでね!」

 

「…黙れ!下等種族がぁ!」

 

苛立ったように拳を叩き込んでくるロイミュード。だが、俺にはまだ切り札が残ってる。シフトネクストが一瞬輝いたのが見えた。ようやく作れるようになったみたいだな!

 

「来い!シンゴウアックス!」

 

【シンゴウアックス!】

 

「何!?…ぬぐぁ!?」

 

背中のタイヤが高速で回転すると、回転したタイヤから紫色のデータが放出され、シフトネクストに取り込まれていく。そして、ロイミュードの拳がぶつかる寸前でシフトネクストから青と黄色の電流が放たれ、その電流は特徴的な見た目をした斧を形成する。俺はそれをすぐさま掴み取ってロイミュードを切り裂いて吹き飛ばす。

 

「お前の本来の持ち主はチェイスって言ったよな…叔父さんのダチの。悪ぃな叔父さん、チェイス。ちょっと借りるぜ!」

 

「貴様ごときが吠えるなぁ!」

 

怒りを込めた拳を振るってくるロイミュードに対して、シンゴウアックスを叩き込む。ガァン!と金属と金属がぶつかる音と共に俺とロイミュードに同時に拳と斧がぶつかり合って両者とも吹き飛ぶ。互角…いや、あっちの方が上か!

 

「くそっ…お前の中にいるやつが抗っててこれか…!」

 

「おのれ下等種族が!」

 

ロイミュードが冷気を放ちながら立ち上がるのを見て、シンゴウアックスを力強く握る。しかし、その瞬間に18時を告げる鐘の音が鳴り響く。その音を聞いた途端、ロイミュードは動きを止める。それどころか、攻撃する意思も見せずに、冷気すらも収める。

 

「…ちっ、時間か。ここは見逃してやる。私の名はフリーズ。覚えておけ、貴様を殺す者の名を!」

 

「時間…?おい!待てっ!」

 

ふわりと浮かび上がったフリーズと名乗るロイミュードは大量の冷気を発生させる。反射的に顔を守り、冷気の放出が止まったタイミングで先程までフリーズがいた場所を見るがそこには何もいない。残ったのは、俺と、凍りついた市街地だけだった。

 

「逃げられた…いや、見逃された?」

 

【オツカーレ】

 

シフトカーを引き抜いて変身を解く。遠くからパトカーのサイレンが聞こえて来るが、ここにいるのはさすがに不味いか。

 

「悪いな、父さん」

 

源助の言葉が無ければ、さっさとマッハドライバーとこのシフトカーを父さんに渡して何とかしてもらうんだが…。

 

「なーんかモヤモヤするぜ」

 

ネクタイを弛めて呟く。ぼんやりしてる暇もない、パトカーがあと二分もあれば到着するだろう。さっさと立ち去ろうとした時、カチャリと何かを踏んだ音がした。

 

「ん?…これは…ガラス?」

 

踏みつけたのは、ガラスで作られた容器の破片らしきもの。いつもなら疑問にも思わないが、何もかもが凍った場所でこの容器だけ無事なんて有り得るのか…?

 

「待てよ、これってまさか…」

 

そのガラス片を拾って、ポケットに入れる。そして、パトカーが辿り着く前に現場から離れて、家に戻ってからそのガラス片を観察してみる。すると、思っていた通りの事に気がついて全てのピースが頭の中でカチリとハマったような気がした。

 

「繋がった…!」

 

ネクタイをギュッと締める。そして、携帯を取り出すと源助に電話を掛ける。数回のコール音と共に、源助が電話に出る。

 

「もしもし、源助か?ちょっと頼みたいことがある──」

 

源助にあることを頼むと、源助がほんの少しだけ驚いたように笑った後、楽しげに話しかけてくる。

 

「ギア、入ったみたいだな」

 

「ああ…脳細胞がトップギアだぜ!」

 

ニヤッと笑って見せると、それを感じとったのか源助も楽しげに笑ったあと、俺の頼みを了承してくれる。そんな俺たちのことを、シフトネクストがじっと見つめていた。

 

☆☆☆

全てが繋がったあの日からまた数日が経った頃。俺の考えを裏付けるような証拠がいくつも出てきたためネクストを締めてしっかりとギアを入れ直す。そして、校門の近くで待っていた源助の元へと向かう。

 

「よお、源助」

 

「…ほんとにギアが入ってら。なんか分かったんだな?」

 

「まあな。…なあ、ほんとにいいのか?」

 

俺が頼んでおいてなんなんだが、俺たちがやろうとしてることはどうしても危険が伴う。仮面ライダーに変身できる俺はまだしも、生身の人間である源助には命に関わる可能性がある。

 

「おう。危険とか言いたいんだろうが、お前も大概だからな?」

 

「…頼むぜ、親友」

 

「ああ、任せとけ!」

 

軽いグータッチをして笑い合う。そうして、時間は過ぎて放課後になった。今は、テスト期間が近いため生徒たちはバラバラと帰り始めている。そんな中、源助が屋上に行っているのが見えた。それに静かについて行くと、屋上には既に源助ともう一人誰かが立っていた。

 

「よお──生徒会長。待たせたか?」

 

「今来たところ…って、言うべきかしら?」

 

からかうような笑みを浮かべる霜月。だが、その目は笑ってなんか居ない。冷たい、氷のような瞳だった。

 

「それで?なんの用かしら?まさか告白?」

 

「いやいや、違うって。それに、本当に用事があるのは俺じゃない」

 

「お前に用があるのは俺だ」

 

源助の目配せに頷きながら物陰から出る。突然現れた俺に対して驚いたように目を見開く霜月に向かって歩いていく。

 

「…なんの用かしら、泊くん」

 

「もう分かってんだろ?霜月…いや、()()()()()()()()()()()!!」

 

霜月…いや、フリーズに向けて指を突きつけると、一瞬困惑したような表情を見せたあと…忌々しそうにこちらを睨みつけてくる霜月。

 

「なんの事?」

 

「すっとぼけんなよ。俺がお前を初めに怪しいと思ったのは、こいつを見つけた時だ」

 

ポケットから取り出すのは男を凍りつかせていた氷の一部。それを袋から取り出して転がしながら空にかざす。

 

「この氷、なーんか花の匂いがするなと思ってたんだよな」

 

そう、俺があの時に氷から感じた違和感。そう、氷から何故かほんの少しだが花の匂いがしていたのだ。それがどうしても頭に引っかかっていた。

 

「次に、このガラス片。別の日にほかのガラス片を集めてみると──」

 

シフトネクストから映像が投影される。ガラス片が集まったあとは、花を模したようなガラスの容器。そして、表面にはBlueFIowerの刻印。

 

「三年生の青木に聞きに行ってみれば、この形の容器の香水はたった一つしかないって言われたよ」

 

青木に貰った紙を取り出して見せつける。そこには、()()()と銘打たれた香水。

 

「その上青木に調べてもらった結果、この氷から試作品の香水と同じ成分が検出された。この試作品を貰ったやつはたった一人しか居ない。お前だけなんだよ、霜月凛!」

 

「…ふっ、ははは…フハハハハハ!さすがは泊進ノ介の息子と言ったところか!」

 

俺に指をさされた霜月は凶暴な笑みを浮かべると、霜月の声を上から塗りつぶすようなフリーズの声が響く。

 

「やれやれ、いつもいつも貴様らは邪魔な奴らだ…」

 

「御託はいい!さっさと霜月を解放しろ!」

 

「解放?ハハハッ!面白いことを言う。この小娘は望んで私と融合している」

 

嗤いながら大仰な動作で話すフリーズ。それにしても…霜月がフリーズの力を望んだ?

 

「この娘の一族は実力主義でね。実力の無いものは常に蹴落とされ、見下されていた」

 

「それは…」

 

なんというか、厳しい家系ということだけは分かる。うちの家は、母さんは過保護な感じだが、父さんや叔父さんは放任主義なところがあるのでそういうのは分からない。

 

「だが、この娘には才能があってなぁ…。将来を有望視はされていたのだ」

 

「…有望視は?」

 

「そう、されているだけ!何せ、この娘の姉の方がこの娘よりも遥かに優秀だったからだ!」

 

姉…?そういえば、霜月の家族の話は聞いたことが無いかもしれない。姉がいたんだな…。

 

「それがどうしたんだよ」

 

「分からないかね?実力主義の家系で、いくら自分が優秀でもそれを遥かに凌ぐほどに優秀で、自分よりも遥かに人望のある姉がいる…その絶望を!」

 

「それは…確かに苦しい環境かもな」

 

「そう!この娘は常に姉への劣等感に苦しみ、絶望し──そして、常に屈辱感を覚えていた!その屈辱が!絶望が!私と引き合い…完全なる融合を果たした!」

 

狂気的な笑みを浮かべたフリーズが黄金の光と共に超進化体へと姿を変える。暴風とも言えるような冷気が吹き荒れ、悠然とフリーズが浮かび上がる。

 

「見よ!この美しき姿を!人間との完全なる融合による超進化の輝きを!」

 

「知るか!どうでもいいから霜月を返しやがれ!」

 

【シフトカー!】

 

「変身!」

 

【ライダー!ネクスト!】

 

変身した俺は、フリーズに殴り掛かる。全力で振るった拳は確実にフリーズに叩き込まれ…一切のダメージを与えることなく停止した。

 

「なっ…!?」

 

「ふっ、愚かな。お前が倒した、103は進化すらしていない下級ロイミュード…超進化した私と比べることすら烏滸がましい!」

 

フリーズの放った冷気の波動によって俺は屋上のフェンスを突き破って屋上から叩き落とされ、そのままの勢いで地面に叩きつけられる。

 

「がっ…あっ…!」

 

「弱いなぁ…仮面ライダー!」

 

あまりの衝撃に、立ち上がれずにいるところを蹴り飛ばされる。たったそれだけで10数メートルほど離れていたはずの校舎に叩きつけられる。強すぎる…!

 

「ガハッ…グッ…」

 

【オツカーレ】

 

弾かれた衝撃でベルトからシフトネクストがはじき出されて変身が解ける。それどころか、腰に巻き付けられたマッハドライバーは大きなヒビが入っており、もはや機能すらしていなかった。

 

「これで終わりだなぁ?泊エイジ!」

 

「ま…だ…だ…!」

 

だが、まだ諦める訳には行かない。歯を食いしばって軋む身体を鞭打ち無理やり立ち上がる。地面に転がったシフトネクストを拾い上げて、力強く握る。

 

「そんな死にかけた体で何が出来る?」

 

嘲るように話しかけてくるフリーズ。そんなフリーズを力強く睨み付けながらゆっくりとフリーズに向かって歩いていく。

 

「分かったぜ、お前の弱点」

 

「なんだと?」

 

「お前、霜月が居ないとその"超進化体"ってやつを維持出来ないんじゃ無いのか?」

 

俺がそういうと押し黙るフリーズ。図星だったらしい。こいつは、"人間と完全に融合することで超進化へと至った"とかなんとか言ってやがったからな。

 

「だが、それがわかったところでどうにもなるまい」

 

「いいや、なるさ…なあ霜月!」

 

歯を食いしばって、腹の底から霜月に呼びかける。朝の時点から、霜月の意識はずっとフリーズに乗っ取られた状態なんだろう。だったら、無理矢理でも叩き起す!

 

「お前の家の事なんて俺には分からねぇ!どれだけお前が苦しい思いをしてきたのかも知らねぇ!けどなッ!」

 

シフトネクストを握った右手でフリーズのことを殴る。ダメージどころか攻撃として認定されてすらいないのか避けることすらしないフリーズ。

 

「お前が姉に勝てなかった理由が一つだけ分かるぜ…!」

 

「なに…?」

 

「お前は人に、頼らなさすぎるんだよ!」

 

再度殴り付けた瞬間、フリーズが狼狽えるように一歩下がる。ふらつく体に鞭打って、一歩ずつフリーズに向かって歩いていく。

 

「そ、その目をやめろ!」

 

「なあ、聞こえてんだろ霜月ィ!いい加減その金メッキの中から出て来やがれッ!」

 

ガン!と今までで一番大きな音が響いたと共に──フリーズの胸元が割れ始め、その中から霜月の手が見える。そして、その奥には助けを求めるようにこちらを見る霜月の姿。

 

「霜月…っ!」

 

何とか霜月の手を取る直前で、フリーズがバン!と後ろに下がった事で手は掴み取れずにすり抜ける。何も掴めなかった手は空を切り、またもフリーズの中に取り込まれる。

 

「くそっ…!」

 

「ハハハ!残念だったな、泊エイジィ!これで終わりだぁ!」

 

フリーズの手に集まる冷気を見て、万事休すかと…目を閉じそうになるが──昔、父さんと話した記憶が蘇る。

 

『エイジ、仮面ライダーに必要なのは力じゃない。どんなことがあっても、挫けない熱いハートなんだよ』

 

そう言って、俺の心臓部を強く叩いた父の拳の熱がじんわりと体に伝わり、閉じかけていた目を大きく開く。そして、シフトネクストを全力で天に掲げてただ全力で叫んだ。

 

「START!YOUR!ENGINE!!!」

 

「死ねッ!仮面ライダー!」

 

それと同時に冷気の塊が俺目掛けて飛んできて…飛んできた冷気を俺の手から離れたシフトネクストが貫いて消し飛ばす。

 

「何っ!?」

 

シフトネクストはそれだけでは止まらない。黄金の光を発生させながらシフトネクストは天へと登っていき、ある地点を超えた瞬間、空に大きな穴が空く。

 

「なっ!?」

 

「なんだあれ…」

 

その穴から現れたのは、輝くシフトネクスト。そして、そのシフトネクストに誘導されるように現れた漆黒のスポーツカーだった。青いラインの入ったボディを輝かせながら現れたスポーツカーは高速で落下してきては、フリーズのことを吹き飛ばして俺の後ろに停車する。

 

「こ、これはまさか…!」

 

「トライドロン!?いや、なんか黒いな」

 

後ろに停車した黒いトライドロンらしき車に触れると、大量のディスプレイが現れる。そこに記されたこの車の名前はネクストライドロン。そして、ディスプレイに表示された機能を見て思わず笑みが零れる。

 

「ふっ…ははは!」

 

「何がおかしい!」

 

「おかしいさ…なにせ、ようやくお前を倒す手立てが出てきたんだからな!」

 

ネクストライドロンの上に壊れたマッハドライバーを置くと、ネクストライドロンがマッハドライバーを取り込み、解析を始める。大量のデータが表示されているディスプレイに再構築しますか?という選択肢が現れる。選択肢のOKボタンを全力でタップすると、俺の腰と左手首に青黒いデータが集まり、ソレを作り出す。

 

「バ、バカな…!ドライブドライバーだと!?」

 

「ふっ…見せてやるよ、未来のドライブをなッ!」

 

ドライブドライバーのイグニッションキーを回すと、エンジンがかかる音と共に待機音が響く。そのタイミングで飛翔してきたシフトネクストを左手首のシフトブレスに近づけて笑う。

 

「START OUR MISSION!」

 

【OK…!】

 

「変身ッ!」

 

俺が叫ぶように言うと、新たに生み出されたドライブドライバーに組み込まれているAIが低い声で答える。その声に導かれるように俺はシフトネクストをシフトブレスに装填。すると、マッハドライバーの時とは比べ物にならない量のデータが吹き荒れる。マッハドライバーとはそもそも作られた年代が違うせいか、データに齟齬が生まれていたが、そのデータの齟齬は完璧に調整され、さらに洗練されたスーツと鎧を生み出す。

 

DRIVE!TYPE NEXT!

 

ドライバーがミライの名を告げると共に完全にスーツと鎧が俺に適応する。軽く手を握って見ると、それだけの動作でマッハドライバーを使っていた時よりも遥かに出力が高いのが分かる。これが、ドライブ…!

 

「な、なんだと…!?新たなドライブ!?」

 

「俺は…ダークドライブ。仮面ライダーダークドライブ!」

 

フリーズに向けて全力で啖呵を切ってみせる。そして、腰を落として何時でもかけ出せるような体制にして叫ぶ。

 

「さあ、ひとっ走り付き合えよ!」

 

その言葉と共に、俺もフリーズは同時に駆けだす。同時に放たれた拳は、僅かに俺の方が早く届いた。青黒いエネルギーを纏った拳はフリーズを吹き飛ばして、ダメージを与える。

 

「バカな…バカなバカなバカなァ!」

 

「まだだ!」

 

タイヤから抽出されたデータが、俺に最も適した形の武装を生み出す。グリップ型の銃と剣が融合したような形のブレードが俺の手に収まる。

 

「いいね。ブレードガンナーって名前にするか!」

 

青く煌めく刃をフリーズに叩き込んで切り裂いていく。フリーズの体をブレードガンナーが切り裂く度に火花が飛び散り、フリーズの体を削り取っていく。

 

「ぐぅぅぅぅ…舐めるなァ!」

 

フリーズは怒号と共に冷気の弾丸を放ってくる。その弾丸は俺に直撃して、俺の周囲ごと凍てつかせる。

 

「ふ…はははは!凍らせてしまえば私には手出し出来まい!」

 

「無駄だ」

 

俺は周囲に貼った青いデータで出来たバリアを内側からブレードガンナーで撃ち壊しながら告げる。青いヘッドランプのような複眼がフリーズの弱点などを淡々と調べていく。

 

「行くぞ?」

 

「おのれ泊エイジィ!」

 

ヤケになったのか、乱雑な動作で殴りかかってくるフリーズだったが、その拳や蹴りを軽く受け流しつつカウンターで拳を叩き込んでいく。

 

「霜月!今助けてやるよ!」

 

イグニッションキーを再度回し、シフトブレスのボタンを全力で叩く。

 

【NEXT!】

 

ミライの名のもとにブレードガンナーへと膨大なエネルギーが供給される。もはやエネルギーの塊とも呼べる状態となったブレードガンナーをフリーズに叩き込み、全力で切り裂いた。

 

「ぬぅおおおおああああああ!?!?」

 

「出てこい!霜月!」

 

切り裂かれた傷から伸びてきた霜月の手を──今度こそ完全に掴み取った。掴んだ手を力強く引いて、フリーズの中から霜月を引きずり出す。

 

「霜月!」

 

「ありがとう…泊…くん…」

 

ほんの少しだけ微笑んで、霜月は静かに目を閉じる。ダークドライブのシステムが、ただ気絶しただけであることや、衰弱状態にあることを教えてくれる。霜月を抱き上げて、いつの間にか降りてきていた源助に預ける。

 

「親父さんと一緒だな、エイジ」

 

「ふっ、なかなか似合ってるだろ?」

 

「ああ、バッチリだ!」

 

そんな軽口を叩いて、切り裂かれた傷を抱えて膝をついているフリーズの元へと歩いていく。

 

「ぐっ…超進化体を保てない…!?」

 

「お前、人間の事を下等種族とか言ってたよな?」

 

「ああそうだ!人間は愚かで、惨めな、下等種族だぁぁぁぁ!」

 

そう言って叫びながら突撃してくるフリーズを軽く避けて、ブレードガンナーから青色の弾丸を放って吹き飛ばす。すると、辛うじて黄金の肉体を保っていたフリーズの肉体から金が消え、青白い肉体へと退化する。これが、進化体って奴か。

 

「その愚かで惨めな下等種族に頼らないと進化出来ないお前は、どれだけ下等なんだ?」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ふらふらと立ち上がったフリーズに向けて再度発砲。吹き飛ばされたのを見て、イグニッションキーを捻る。そして、シフトブレスのボタンを押し込んで腰を落とす。

 

【NEXT!】

 

ベルトがミライの名を告げると、背後で待機していたネクストライドロンが起動。フリーズの周囲を高速で回転しながらフリーズに向けて大量の弾丸をぶち込んでいく。そんなネクストライドロンが回転している中に飛び込んだ俺は、ネクストライドロンを足場に何度も何度も蹴りをフリーズに叩き込んで行く。

 

「ぐっ…あああああああ!?」

 

「これで終わりだ!フリーズッ!」

 

最高速まで加速した俺は、青黒いエネルギーと共にフリーズの胸元を蹴り抜く。すると、俺の蹴りはフリーズのボディを簡単に貫いて、コアにまで蹴りが叩き込まれた。

 

「これで終わると思うなよ、泊エイジィ…!まだ全ては始まったばかりだぞ…!」

 

「そうかよ。なら、俺はその全てを乗り越えてやる!」

 

「ふっはははは…ぐああああああああああ!!」

 

大爆発と共にフリーズのコアは砕け散って消滅する。あとに残るのは、ダークドライブに返信した俺だけ。そのまま数秒佇んでいると、大量のパトカーが校門前に止まり、そこからたくさんの警察官が現れる。

 

「ドライブ!?」

 

「なんでドライブが!?」

 

警察官たちが俺の姿を見てザワつく。その様子を見て、ゆっくりと踵を返して立ち去ろうとする。すると、一人の刑事がゆっくりと警察官の波を割って出てくる。

 

「お前は…まさかそんな!ダークドライブは消えたはずだ!」

 

先頭に出てきて困惑したようにこちらを見てくるのは父さんだった。困惑しつつもしっかりと銃を向けている当たりエースと呼ばれるだけはあるなと口元に笑みを浮かべてしまう。

 

「お前はエイジなのか!?答えろッ!」

 

父さんが叫ぶ言葉には答えることなく踵を返して指を鳴らす。瞬間、ネクストライドロンが俺と警察官たちの間に割って入り、ネクストライドロンが俺の周囲を回転する。凄まじい風と砂埃に刑事たちが顔を覆っている間に俺はネクストライドロンを使ってその場から立ち去る。刑事たちが顔を上げた頃には、既に俺はいなくなった後だった。

 

☆☆☆

 

俺がダークドライブとなってから、はや一週間が経った。俺と源助は帰宅後にお互いの両親に今まで行っていた事を全て白状した。父さんたちに黙っていた理由も源助は警察内部に敵がいると怖かったと言っており、俺は父さんたちに迷惑をかけたくなかったと話した。

 

俺は父さんには死ぬほど怒られ、母さんには死ぬほど泣かれた。源助の方は現さんにゲンコツを入れられ、りんなさんに耳を引っ張られていた。

 

「しっかしまあ、エイジがダークドライブになるとはなぁ」

 

「因果なものよねぇ…」

 

呆れたような現さんとりんなさんの言葉に、ネクストライドロンによって提示されたデータの中にこんな話があったな、なんて軽く納得する。

 

「それって、別の次元の泊エイジのことだろ?」

 

「お、おい!なんでそれを!?」

 

「全部見たよ、ネクストライドロンに全部記録されてたし…その、別次元の俺が死ぬところも」

 

見たまま全てを話すと、痛ましげにこちらを見つめてくる大人たち。でも、俺としてはそんなにダメージは無かった。

 

「正直、別次元の俺とかよく分かんなかったけどさ。映像で見ただけだから、なんか実感わかないし…それに、あんまり関係ないだろ?俺は俺、別次元の俺は別次元の俺だしな」

 

軽く肩を竦めて見ると、呆れたように笑った後に父さんが力強く抱きしめてくる。

 

「なんにせよ、お前が無事で良かった」

 

そんな、俺たちの家を遠くから眺める謎の影。赤いロングコートに身を包んだ男は、近くの手すりに体を預けながら微笑む。

 

「あれが、泊エイジ…泊進ノ介の息子、か。なかなかガッツがあるじゃないか」

 

赤いロングコートの男はニヤリと獰猛に笑うと、体から蒸気を発生させながら心臓部に手を当てる。

 

「俺と最高の戦いをしてくれると良いんだがな…」

 

男はくるりと踵を返してその場から立ち去る。男の求めるものは純粋なる決闘。心の底から認めた最高の相手との戦い。ただ、それだけなのだから。

 

「楽しませてくれよ、泊エイジ」

 

男の名はハート。ハート・ロイミュード。新たなる脅威が静かに腰を上げた。

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