龍の魔女と呼ばれる人物と、その契約獣の来訪から一時間後。
ソファに座っているルカは、これまでに見た事のない程に落ち込んでいた。
「それで、メタって、一体誰なんだ?」
「それは、そのさっき言った通り、最悪の魔女だよ」
そう言いながら、ルカはゆっくりと話してくれた。
「性格は傍若無人でかなり口が悪くて、どんな手も使う卑怯な子だよ」
「聞いていた通り、最悪な人物のようだね」
「そうっね。
けど、私にとっては、本音で話し合えるただ1人の親友だから」
「それが、助けたい理由か?」
「うん」
ルカは無言で頷く。
「ごめんね、嘘を言っちゃって。
それでも、そのお願い!
私の親友の為に、一緒に戦って」
「良いよ」
「えっ?」
「何だよ、不思議そうな顔をして」
「だって、断るかと思って」
そんなに信用されてなかったのか。
俺がやる事なんて単純なものなのに、それに命まで賭けると言っているんだ。
それなら、当然答える言葉は決まっている。
俺は立ち上がりルカの前に立つ。
「なんで」
「別に。
ただ、親友を助けたいと思ったルカを助けたい。
俺はそう思っただけだ」
ルカの目には涙が溜まっていた。
きっとこの子は今まで色んなものと戦ってきたはずだ。
その戦いの中で、多くの物を失って来たに違いない。
そして今、友達を助ける為に覚悟を決めたんだろう。
だったら、それを全力で応援したい。
「ふふっ、レン君って、ただの陰キャだと思っていたけど結構いい男かもね」
「茶化すな。
こっちは真剣なんだぞ」
「そうだよね。
ごめんなさい」
ルカは深々と頭を下げる。
本当に律儀な奴だ。
そんな事をしなくても、協力すると言った時点でもう決まっていた事なのに。
ルカも顔を上げて立ち上がる。
「それじゃ、最後の鳥の外道魔女。
その契約獣を倒さないとね」
「あぁ」
俺は力強く返事をした。
「これは」
「もしかして、契約獣?」
「えぇ、けど、たぶん違うと思うけど」
「とにかく、急ぐとするか」
俺はそのままクモバイクを呼び出し、そのまま向かって言った。
「変身!」
『レーキン! 土で出来た頼れる奴! ゴーレム! コネクト!』
鳴り響く音と共に、俺はレーキンへと変身する。
目の前にいるブルドックの契約獣は、その巨体から繰り出される拳。
それは、土の鎧を身に纏っている俺でも完全に受けるのは危険だと思わせる程の威力だった。
「ぐっ」
放たれた拳をなんとか受け流し、そのまま後ろに跳ぶ。
同時に、ブルドックの契約獣の拳は地面に突き刺さった。
たった一撃で、簡単にアスファルトが砕け散る。
まともに食らえば、それこそ命はないかもしれない。
だが、俺もただ黙って攻撃を受けている訳ではない。
ブルドックの契約獣が拳を放つと同時に、こちらからも距離を詰めていたのだ。
そして、相手の懐まで潜り込んだ俺は、迷う事なく拳を振り上げた。
土で形成された腕は、自在に長さを変える事ができ、ブルドックの契約獣に一撃を簡単に叩き込む事が出来た。
だが、それでも相手を倒すには至らない。
ダメージはあるだろうが、致命傷にはならないのだ。
やはり、契約獣としての経験の差か、相手は攻撃を喰らう事に躊躇いがない。
このまま攻撃を続ければいつか倒せるとは思うのだが、そうすればあの契約獣にも隙を見せてしまう事になる。
そうしている時だった。
「そんなので、勝てると思っているかぁ!」
「あっ!」
聞こえてきた声と共に、ブルドックの契約獣の上空にいた誰かが一撃を叩き込む。
その叩き込んだのは、間違いなく、龍の契約獣ことバンだった。
契約獣としての姿は、まるでカンフー映画をモチーフしたような中華服にドラゴンを思わせる仮面。
俺と似たような人型であるが、俺が仮面ライダーを思わせる姿だとすると、バンはスーパー戦隊を思わせる姿だった。
その手には武器だと思われるヌンチャクを握りしめ、バンはそのヌンチャクを縦横無尽に振るっていく。
「おい、錬金の契約獣」
「俺には仮面ライダーレーキンという名前があるんだが」
「どうでも良いよ。
まったく、こんな雑魚に手間取りやがって」
そう俺を馬鹿にするように言った後に、バンは再びヌンチャクを振るう。
先程よりも早く振られたヌンチャクは、確実にブルドックの契約獣を吹き飛ばすように直撃させる。
そうして吹き飛ばされたブルドックの契約獣を見た後、俺は思わずバンの方を見てしまう。
これまで、1人で戦ってきた事もあって、バンとどうやって連携を取ればいいのか解らなかったからだ。
しかし、そんな心配は一瞬で消し飛ぶ事になった。
何故なら、目の前にいたはずのバンがいなくなっていたのだ。
一体何処に行ったのかと思い辺りを見渡せば、それはすぐに見つかった。
バンは素早く移動すると同時に、既に攻撃に入っていたのだ。
その手に握られているのは、棍棒のような物であり、それを勢いよく振り下ろす。
だが、ブルドックの契約獣は地面に倒れながらも腕を構えて防御しようとする。
当然の行動だろう、なんせ殴られたら痛いし下手したら死ぬかもしれないしな。
だからこそ、それを読んでいたかのようにバンの動きが変化する。
両腕を大きく広げた状態で、バンは腰を落としながら動き出す。
そして、まるでその場で一回転するようにしながらヌンチャクを振り回し始めたのだ。
その姿はあたかも竜巻のようにも見える中、ヌンチャクの鎖部分が蛇腹剣のように伸びていく。
そして、ヌンチャクの先端部分はそのまま真っ直ぐブルドックの契約獣へと向かっていった。
鞭のように伸びたヌンチャクが、一直線に向かっていくという事はつまり、それだけ威力が高いという事でもあるのだ。
しかも、ブルドックの契約獣はまだガードの姿勢のまま動かないのだから尚更である。
そして、ヌンチャクはそのままブルドックの契約獣の腕に巻きつき、締め上げ始めた。
腕を封じられてしまった事に驚きの声を上げるブルドックの契約獣だったが、そんな彼に構わずバンは更に動く。
今度は右腕だけではなく左腕も同じように拘束する。
「さぁ、これで終わらせるぜぇ!」
バンは叫びながらヌンチャクを引っ張った。
それによってブルドックの契約獣の体勢が崩れそうになった瞬間、再びバンダナは回転する。
そして、また勢いをつけてからヌンチャクを引っ張り始めると、そのままブルドックの契約獣を投げ飛ばしたのだ。
投げ飛ばされたブルドックの契約獣を見て、少しだけ驚く。
だが
「なっ」
バンは驚きの声を漏らす。
それは拘束していたブルドックの契約獣が、あろうことかバンの手から逃れていたからだ。
あれだけの力で引っ張っていたにも関わらず、抜け出されてしまった事に驚いているようだ。
そんな決定的な隙を見せた事で、バンの目の前でブルドックの契約獣が拳を振り下ろす。
「なっがぁあぁ!」
咄嵯の判断だったのか、バンはその攻撃を受け止めようと両手を前に突き出した。
しかし、勢いを完全に殺せずに地面を踏みしめてしまい、その場に足を止めてしまう。
だが、それでも彼は前に出る事を躊躇わなかった。
すぐさま体勢を整えて、逆に前に出る。
そして、攻撃された手とは逆の手で、ブルドッグの契約獣の腕を掴むと力任せに投げ飛ばした。
その一連の流れの中で、確かにバンの攻撃は命中していたはずだ。
しかし、ダメージを受けている様子はない。
「まったく、少しは考えろよな!」
『タイガー! ニンジャ! マゼラレール』
俺は瞬時に二つのソザイダマをレンキンドライバーに入れ、そのまま走る。
『レーキン! 獰猛なアサシン! ジンコー!』
同時に、俺は忍者を思わせるアーマーを身に纏うと同時に、ブルドックの契約獣を蹴り上げる。
「ぐっ!!」
ブルドックの契約獣は、その攻撃を受けて、すぐに後ろへと仰け反る。
「まったく、少しは考えろよな」
「うるせぇ! あのメタを釈放させようとしている魔女の契約獣の手なんて」
「今は、あいつを倒すのが先決だろ」
そう、俺はブルドックの契約獣を指差す。
「ちっ、今だけだぞっ!」
その言葉と共に、バンの奴もまた手元に戻ってきたヌンチャクを構える。
同時に俺も、このジンコーに備わっていた忍者刀を手に取り、構える。
お互いに武器を構えてから、ジリジリと睨み合う。
そんな状態で数秒ほど経つと、やはり向こうの方が先に動いた。
先程と同じように、殴りかかってきたのだ。
俺はその攻撃を横に飛んで避け、奴の身体を足場にして
空中に飛び上がる。
そして、今度は上から攻撃を仕掛けてくる。
それに対しては、忍者刀を使い防いだのだが。
どうやら、さっきまでのパンチとは違って、力が籠っていないようだった。
こちらの攻撃を防ぐ事に関しては問題がないらしいが、明らかに威力が下がっていた。
「さっきのダメージが効いているようだな」
そう、バンはニヤッとした顔を浮かべながら言ってくる。
実際そうなんだと思うが、認めたくない。
だけど、だからと言ってこのまま黙っている訳にもいかないだろう。
「さっさと決めるとするか!」
『レーキンフルオープン! ジンコーストライク!』
その音声と共に、忍者刀に稲妻を流し込み、全身を虎のエフェクトに変換する。
同時に目にも止まらぬ速さでまるで分身しながら、ブルドックの契約獣に向かって行く。
「まったくよ! 手が早いんだよ! ドラゴクラッシュ」
『ドラゴンクラッシュ!』
鳴り響く音声と共に、バンのその手に持つヌンチャクから巨大な龍のエネルギーが真っ直ぐとブルドックの契約獣に襲い掛かる。
その一撃はまさに竜の様な形をしており、とてもじゃないけど避けられるようなものではない。
しかし、それが直撃する前にブルドックの契約獣はその巨体を浮かび上がらせ、大きくジャンプする。
あれだけの大きさであるにもかかわらず、その速度はかなりのモノであり、正直反応できなかった。
そんなブルドックの契約獣に追撃するように、俺と、その分身達は次々と噛み付いていく。
それはもはや、攻撃というよりも捕食に近い行為であった。
そうして、全ての攻撃を受け、耐えきれず、爆散する。
「ふぅ、なんとか倒せたか」
「ちっ」
それと共にバンはそのままヌンチャクをこちらに向ける。
「さて、次は」
「悪いけど、あんたとは戦うつもりはないんだよ。
それに、目的は鳥の契約獣だからな」
「外道魔女のか」
「それでメタを助ける」
「あいつが解放されたら、どうなるのか分かっているのか?」
「さぁな。
けど」
俺はそのままバンを見つめる。
「友達が助けたい親友だ。
だったら、助けてやるのに、何の迷いがあるんだ」
「お前」
「それじゃ、ここでな」
同時に俺はそのまま走り出す。
「なっちっ」
後ろでバンの声を無視しながら、俺はそのまま逃げていく。