「このままじゃ、駄目だよなぁ」
そう言いながら、俺はこの前の戦いを思い出す。
ホムンクルスの契約獣との戦いにおいて、俺は苦戦しながらも、なんとか勝利する事はできた。
しかし、それは本当に奇跡的な勝利であり、これからも通用するとは限らない。
「それで、どうするつもりなの?」
「……それが思いつかないからねぇ」
そんな考えで、首を傾げる。
「……なぁ、レーキンでこれまで素材にしてきたのは、ほとんどは玩具とか、危険の少ない奴なんだよね」
「それは、そうだよ。
危険な物は、それ相当のリスクがあるから。
あのクレーンやヘリコプターも、元は玩具だったからね」
前回使った奴を含めて、ソザイダマの多くは危険が少ない物ばかりだ。
だからこそ、力は安定して使えた。
「だったら、危険な物だったら「駄目だよ」っ」
俺がそう言うと、彼女は詰め寄る。
「錬金術は失敗する危険性もある。
未だにレーキンでの変身がどれほど危険なのか、分からない以上、リスクは背負うべきじゃない」
「だとしても、これからの戦いには、そのリスクを背負って戦わなければいけないだろ」
「それは、そうだけど」
「まぁ、どちらにしても、そんな都合の良いのは」
そう言いながら、俺がソザイダマを弄っていると、地面に転がる。
そこは丁度、電池がある所だった。
俺はすぐにソザイダマを取ると。
「んっ何か入って、えっ」
ソザイダマに入っていたのは、水銀だった。
ふと見ると、どうやら電池の一部が熔けていたらしい。
なぜ、その状況に。
「どうしたの?」
「いや、なんでもっ」
同時に感じた違和感。
それは、何時もの契約獣が暴れた時にある感覚。
「悪い、契約獣が出たみたい!!」
「えっちょっ、レン!!!」
俺は、彼女の言葉を無視して、すぐに向かった。
向かった先には、既に契約獣が、街を暴れていた。
その身体は
「ぐっ!」
俺はすぐに仮面ライダーへと変身すると同時に、その手を地面に置く。
瞬時に地面にある土は大きな拳となって、真っ直ぐと目の前にいる鋼の契約獣に向かって攻撃する。
怒濤の土の拳によって、何度も攻撃を叩き込む。
叩き込まれた攻撃に対して、鋼の契約獣は確かに当たった。
しかし
「おいおい、マジかよ」
その身体には、傷一つついていなかった。
同時に、その怪しく光ると同時に、真っ直ぐと俺に襲い掛かる。
すぐに土で腕周辺に集めて、即設の盾を作り出し、受け止める。
「ぐっ!」
だが、土の盾は簡単に砕け散り俺を吹き飛ばす。
そのまま地面に転がった。
すぐに体勢を立て直す。
全身から血が流れる。
まずいな。
あの一撃だけで分かった事がある。
それは奴の方が、俺よりも確実に強い事だ。
自在に土を操る事ができるこの姿。
だが、向こうの鋼の契約獣はその名の通り、まさしく鋼を自在に操る事ができる。
操れる範囲はそれ程多くないが、見れば奴は自分の腕を鋭い剣へと変える。
そしてそれを飛ばせばそれだけで簡単に強固な岩さえも切り裂く事が出来る。
更にはその鋼鉄も自由に形を変えてまるで生きているかのように動かせる事も出来るようだ。
そう、見ている間にも、鋼の契約獣はその腕を真っ直ぐと俺に向けて伸ばす。
瞬間的に後ろに飛ぶ。
次の瞬間には先ほどまでいた場所が大きな音を響かせる。
地面は大きく割れていた。
それだけでも、その剣の威力が分かるというものだ。
だが同時に思う。
確かにこいつは強敵かもしれないが勝機がない訳ではない。
「だとしたら、何を選ぶかだ」
俺はそう言いながら、周りの物を見る。
手元にある物と組み合わせるのに最も相性が良いもの。
それは何かを考える。
今の状況では相手の攻撃を防ぐ手段はない。
ならばどうするか?
考える時間はそこまでない。
既に相手はこちらに攻撃を仕掛けてきているからだ。
だがそれでも考え続ける。
その時だった。
「あれは?」
視界の端に見えた物に目を向ける。
「もしかしたら、あれとこれを組み合わせた姿ならばっ!」
そうと決まれば、すぐに取りに行く必要がある。
しかし、それを阻止するように、目の前にいる鋼の契約獣は立ち塞がる。
「邪魔をするなっ! お前の攻撃なんてもう当たらないんだよっ!!」
叫びと共に土の拳を作り出す。それをまっすぐと向けて放つ。
一直線に向かってくる拳に対して、相手はすぐに剣に変えるとその攻撃を受け止める。
当然のように吹き飛ばされるが、それでいい。
俺はその間に目的の物を拾い上げる。
手の中にある物は蜥蜴。
どこにでもいる普通の蜥蜴だ。
しかしこれが俺にとっては非常に重要な物となる。
俺はそのまま蜥蜴をソザイダマに入れると共に、そのままもう一つのソザイダマと一緒にレンキンドライバーに装填する。
『蜥蜴! 水銀! マゼラレール!』
「よっと!」
俺はその音声を確認すると共に、そのまま操作を行う。
『錬丹の竜! 黄竜!』
鳴り響く音声と共に、俺の全身は熔ける水銀の鎧を身に纏う。
相手が、鋼ならば、こちらは水銀で対抗する。
そう思った時だった。
「ぐっ!」
水銀の影響なのか、酷く頭痛がする。
これは一体どういうことだ。
自分の身に起きている事に戸惑っている間にも敵の攻撃は続く。
先程と同じように腕を剣に変えて連続で斬撃を放って来る。
それに対してこちらも同じように水銀の壁を作る事で防いだが、その度に激しい痛みに襲われる。
思わず膝を着く。
「お前っ邪魔なんだよぉ!!」
同時に、身体から流れ出た水銀を、円形に固めると共に、そのまま鋼の契約獣に向けて放つ。
放たれたそれに対して、鋼の契約獣はすぐに避ける。
僅かに当たった箇所は、水銀によって、鋭く斬られていた。
それにはさすがに鋼の契約獣も焦りが見えた。
しかし、俺はそのまま防御に使っていた水銀の壁に手を触れる。
すると、先程までの巨大な壁となっていた水銀の壁は巨大な剣へと変わる。
大きさ的には相手の身の丈を超える程の大太刀といったところだろう。
俺はそれを握り締めると一気に振り下ろす。
対する相手は即座に避けると同時に剣を構える。
だが俺は気にせずに叩きつける。
叩きつけられた事によって、鋼の契約獣はその身体を真っ二つに斬られる。
既に戦闘は行えない状態である。
だが
「あっああぁ!!」
衝動が抑えられない。
目の前にある敵を徹底的に攻撃しなければいけないという衝動である。
そんな状態のまま、俺はもう一度水銀の壁を作りだすと、それを叩きつけていく。
既に何も言わない。いや、喋る事ができないのだ。
ただひたすら目の前にいる敵に対して攻撃をしていくだけだ。
「レン」
聞こえた声、それと共に俺は手が止まる。
それと共にベルトからソザイダマが落ちる。
「ルカ、俺は一体」
「水銀の毒にやられたんだよ。
他のよりも危険性があるからね」
そう言いながら、水銀が入ったソザイダマを回収する。
それにより水銀による副作用は消えたようだ。
「それより大丈夫?」
そう言われて初めて気付いた。
自分が涙を流している。
「俺は、結局はこうなるんだな」
「どうしたの急に」
「この姿になってから、自分の意志に反して体が動く事が多かった。
感情的になって行動していた事もあった。
でも今回だけは違ったんだ……力に振り回されて」
水銀の毒のせいとはいえ、俺はここまで残酷な事を平然と行えるようになっていたのかと思うと恐怖しかなかった。
「仕方がないよ。
これは本当に危険だった」
「だけどこんな俺には」
「確かに今回の件で君は色々とショックだったかもしれないだったら、安全に使えるようにすれば良いんだよ」
「安全にだと?」
その言葉に俺は首を傾げる。
「錬金術は不完全な物質からより完全な物質を生み出すそうとする。
だったら、この水銀の力だって、危険な物から有益なものに変えれば問題はないと思うんだけどね」
「…………」
「君のアイディアだけでは駄目かもしれない。
私だけの知識だけでも無理かもしれない。
けど、二人が合わされば、それは可能かもしれない、かも」
そう呟いたルカは少し恥ずかしげにしているようであった。
「まあ、何だかんだ言っても、君にしかできない事だから」
「そうだな……」
もうこれ以上悩む必要はないようだ。
そして俺は改めて思う。
(俺はまだ弱い)
だからこそ強くならないといけない。
これまでにない組み合わせを。
水銀の力を十全に、危険じゃない方法を探る為に。
「さぁ、続きを始めましょうか」
「ああ」
そうして、俺達はそれと共に、新たな力の使い方を開拓していく事にした。