ハーメルン・ノベルティック・ライダーズ   作:夢野飛羽真

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コラボ回
コラボ先:ハーメルン・ノベルティック・ライダーズ~滅&チェイサーの章~(作:時空雄護)


異空からのストランド

「追い詰めたぞ」

永い歴史を誇る建造物が飾る夜の都市、京都。

そのはずれで、2人の仮面ライダーが怪物を追撃していた。

1人は仮面ライダー滅、もう1人は仮面ライダーチェイサー。

彼等は今いる世界とは違う、別の世界にてその命を落とした戦士である。

彼らはそれぞれの得物であるアタッシュアローとシンゴウアックスを振るって、人の世を脅かす悪を狩り屠るのだ。

そして追い詰められているのは、誇りであったであろう隆々とした筋肉に自前の血で化粧を施し、防戦一方で逃げ回る異形の存在・・・『悪魔』である。

「クソがッ!テメェ等さえいなければ、コア持ちを捕まえられたってのによォ!」

悪魔の目的は、人間界への侵略。その為に使用する"デモンアピアー"の起動に必要なコアを持つ一部の人間を手に入れようと、人間界へ憑依現界している。

しかし、ここ1年はとんと上手くいっていない。その原因は言うまでも無く、この2人の守護者だ。

「その目的も、此処で潰える。亡き者となれ、悪魔ゼノン」

【CHARGE RIZE!FULL CHARGE!】

俳句(ハイク)を詠め、介錯(カイシャク)してやる」

【ヒッサツ!待ッテローヨ!】

滅はアタッシュアローをチャージして引き絞り、チェイサーはシンゴウアックスに黒いミニカー(プロトシフトスピード)を装填、必殺技の待機状態に移行する。

(クソが!ここで死んだら、また蹴落とされちまう・・・チッ、こうなりゃ自棄だ!)

追い詰められた悪魔(ゼノン)が、悪足掻きと右手を握る。

「動くなッ!」

それを見たチェイサーがゼノンに突撃するが、一瞬遅かった。

ゼノンの右後ろの空間が歪み、拗くれ、まるで底に穴の空いた水槽から水が抜けるのを俯瞰した時に見えるそれのように、背景が陥没し、真っ黒な虚無へと突き破るように()()して行く。程無くして、其処には冥い孔が出来上がった。

「何だとッ!?」「何だこれは!?」

未知の現象、不測の事態。それらに対して、誰であろうと数瞬の硬直は生まれる。例え人類を遥かに超越した思考処理能力を持つ機械仕掛けの戦士であろうと、それは変わらなかった。

「俺の能力で開けた、次元の窓だ・・・開き始めたら、周囲の物体を吸い込み始める!これでてめぇらを、この世界から追い出してやらァ!」

「させるか!」

これ以上はやらせまいと、滅が矢を放つ。しかし、それも吸い込まれるように孔へと落下してしまい、ゼノンに当たらない。

「うおっ!?クソ、ここまで()()されちゃ、流石に俺もヤバいか・・・!」

しかし、空間に孔を穿ったゼノン本人までもが、穴に吸い込まれそうになり始める。どうやら現在は本調子では無く、次元干渉の能力も上手く制御出来ないようだ。

孔は見る見る内に大きく広がり、周囲の物と共にチェイサー達も吸い込もうと引き寄せ始める。

「チッ、自分の能力に呑まれるなんざ癪だが、一足先におさらばするぜ・・・尤も、何所に辿り着くかは分からねぇがな!」

小さな舌打ちと共に吐き捨て、なすがまま孔に落ちるゼノン。

周囲に被害を出さぬよう、地面に武器を突き立て耐えていたチェイサー達だったが、孔が広がると共に強まる吸引力に耐え切れず、段々と引き摺られ始めた。

「チェイサー!既に連絡はしてある、これ以上被害を出す前に・・・!」

「・・・致し方無い、了解した」

滅の意図が伝わったのか、チェイサーは地面に突き刺していたシンゴウアックスの石突きを踏み付けて刃を跳ね上げる。

同じように滅もアタッシュアローを抜いた。

抵抗を止めれば、2人は当然孔へと吸い込まれる。そして目標の2人は、ゼノンの狙い通りに孔へと落下した。

2人を吸い込んだタイミングで、孔は収縮を始める。そして連絡を受けたガーディアンギルドがその場にたどり着いた時には、既に閉ざされてしまっていた。

 

───

──

 

深夜と呼べる時間。薄暗い路地裏に、真っ黒な孔が出現する。

そこからゼノンが吐き出され、孔はすぐに消えた。

「うっ、ぐあっ・・・こ、此処は・・・?」

数分ほど経ち、ゼノンが目を覚ます。

「成る程、まぁ悪くねェ。だが、現状じゃ奥の手なんざ切れたもんじゃねぇな・・・暫く、身を隠すとするか」

自分の状態を確認し、そして周囲を見渡した後、鋭い爪で壁に円を描く。すると其処は歪んだ色彩に染まり、簡易的なテリトリーを形成した。

「クソ狭ェが、まぁねェよりゃマシだな」

小さく愚痴りつつ、ゼノンはテリトリーへと潜り込んだ。

全ては、自分だけが元の世界に戻る為に。

 

時を同じくして、とある大企業のビルの近くの路地に、同じく真っ黒な孔が出現する。

そこから紫色の装甲を纏う戦士、仮面ライダー滅と仮面ライダーチェイサーの2人が吐き出され、程無くして孔は消えた。

その2人は倒れたままに変身解除機構が働き、滅は和服を近代化した服装、左耳に通信機のような耳飾りをつけた人間態へ。チェイサーは、紫のライダージャケットを着た人間態へと姿を変える。

草木も寝静まるこの時間では、誰も彼らに気付く事は無かった。

 

─────

────

───

──

 

「ヒーローは一般人に対し、リーダーシップを発揮せねばならない事が多々あります。その際に重要なのは、最終的な()()()を明言する事です」

普通科の教室にて、教鞭を執る出久。黒板にグルグルと2つの縦並びの円を描き、上に《目標》、下に《前提》と書いた。

「《今から急いでここに行かねばなりません。何故ならば、其処が救助ヘリの着陸場所だからです》、等がその典型的なパターンですね。

これが説明出来ないと、移動がスムーズに行かなかったり、途中で致命的なトラブルが発生します。そう言った想定外をなるべく排除し、自分が連れて行くべき多数の人間の行動を掌握する事。それが、ヒーロー以前に人として重要なテクニックです」

「確かに、頭ごなしに駄目って言ったら、子供とかは余計にそれをやっちゃったりするもんねぇ」

「カリギュラ効果ってヤツだな」

「駄目な理由が大切か」

生徒側も物分かりが良く、頻りに頷いては隣近所で話し合う。出久はこう言う雰囲気が好きだ。

「この目標決定が出来ないままに行動する事を、俗に『見切り発車』と言います。これはやって良い場合と悪い場合があり、その判断を間違えると最悪のパターンに直行する事も珍しくありません。

見切り発車が許されるのは、一切の前情報が無く、取り敢えず我武者羅に動き回ってでも情報を得なければいけない時等。その場判断が必要な、災害地域での各個救助等が半ば当てはまりますかね。

対して、先程言ったように、他者を掌握し導かねばならない場面に於いては、絶対に見切り発車で行動してはなりません。

貴方達も、行き先も知らされずリーダーの指差す方向もブレまくるような長距離行進なんて不安になるでしょう?結果、掌握が崩壊し、誰がいて誰がいないのかも分からない状態に陥って、二次災害が発生する。これが最悪のパターン」

集団を表現する円から、幾つも矢印を飛び出させる出久。その先々にバツ印を描き込み、そして最後に大元の円の上に大きくバツを描いた。

「二次災害は周囲を大きく引っ掻き回し、犠牲者が増えて作戦行動にも致命的な支障が出ます。この状態が所謂、『ミイラ取りがミイラになる』と言うヤツです。救助する筈のヒーローがが要救助者に成り下がれば世話ありませんね」

小さく肩を竦め、お手上げとジェスチャーで示す出久。生徒達も、そんな状況に陥ってしまった場合を想像したのか、互いに顔を見合わせる。

「これを防ぐ為に、思考ルーティンの上位に組み込むべきモノがあります。それは、《その要求の先に、相手が求めている結果は何なのか》です」

黒板を1度真っ新に消し、再び丸の中に、今度は『期待されている結果』と書く。

「思考停止で言われた事だけをやるのでは無く、自分がそう行動した結果どうなって、その結果が生むどのような影響を相手が望んでいるのか・・・それを順序立てて考えられるようになると、必然的に先程言った『行き先を決めて他人を導く事』が出来るようになります。

ヒーローになるか否かに関わらず、これは人として重要な能力です。今回はこのキーワードは、『行き先の明確化』。これを忘れないようにしましょう。

では、今日の授業は此処までです。お疲れ様でした」

「起立!気を付け!礼!」

「「「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」」」

 

───

──

 

「ありがとうございます、緑谷先生。授業がとても分かり易いと、生徒の間では評判ですよ」

「いえいえ、此方こそ。彼等は素直で、物分かりが良い。教える側としても、やりやすくて助かっています・・・っと、失礼」

職員室。普通科の担任と小話をしていた出久のライズフォンに、一通のメールが入った。

差出人は、キャロル・ドーリーだった。

「・・・急用が出来ました。早退します」

「あー、会社関係ですか?」

「まぁ、そんな所です」

「やっぱり大変ですよねぇ、社長って」

「労いどうも。では、これで」

荷物を纏め、さっさと職員室を出る出久。幸い、午後には予定は入っていない。根津に手早く連絡し、愛車の元へと向かった。

 

(出久サイド)

 

「・・・」「・・・」

「・・・どういう事だこれは」

会社の応接室に入るや否や、僕の頭はバットで殴られたような鈍痛に襲われた。

応接室にいたのは、報告主であるキャロルさんと、初対面の顔触れが更に2人。

片方は、陸軍の礼服のような服の上から着物を羽織った金髪の男性。もう1人は、上下紫のライダースジャケットを着た黒髪の男性。

この2人について、僕はかなり強烈な既視感に襲われた。

「えっと、キャロルさん。どう言う状況で?」

「このお2人に、私の買い出し品を強奪したひったくり犯を捕まえて頂いたのです。しかし、どうにも会話が噛み合わず・・・恐らく、内密に保護しなければ警察沙汰になっていたかと。金髪の方、ホロビさんは、真剣を持っていらっしゃいました」

「・・・成る程?」

うん、かなり頭痛くなって来た。キャロルさんもキャロルさんだよ。何で厄介事の種を拾って来るか・・・まぁ今回は恐らく正解なんだろうけども。

「分かりました、キャロルさん。後は私に任せて、貴方は通常業務に戻って下さい」

「はい、ではそのように。失礼します」

ペコリと頭を下げて、応接室を出て行くキャロルさん。そして僕は、2人の向かいのソファに座った。

「この度は、我が社の社員がお世話になったようで。ありがとうございました。

失礼、私がこの株式会社ZAIAエンタープライズ代表取締役社長、緑谷出久と申します」

「ふむ、やはりザイアか・・・社長がこんなに若いとは、些か驚きが隠せんがな」

「良い会社だ。働いている人間が、皆活き活きとしている」

「恐縮です」

擽ったくなってはにかみながら、小さく会釈する。自分の会社を誉められると、どうにも嬉しくて仕方が無い。

「あぁ。チラリと見た程度だが、何所にも大きな不満、恐怖、殺意等は見当たらなかった。実に良い会社だ・・・

だからこそ、信じられんな」

【FORCE RISER・・・】

 

「何故、その社長たる貴様から()()()()()()が出ている」

 

着物の内側から取り出したフォースライザーを装着し、凄んで見せる金髪の男性・・・滅。それに合わせ、ライダースジャケットの男性、チェイスもまた、銃口の付いたメリケンサック(ブレイクガンナー)を此方に向けて来た。

「思ったより直球に来ましたね・・・」

「回りくどくするよりも、此方の方が手っ取り早い」

「この社長室なんて、相手の総本山も良いとこですよ?こんな所で仕掛けますかね?」

「切り札は幾つかある。人間を傷付けずとも、脱出は可能だ」

淡々と答えてくれるチェイス。それでも無闇矢鱈と暴れるつもりが無いのは、彼らしいと言えばらしいか。

「・・・取り敢えず、私は抵抗するつもりはありません。確りと説明します。すぐに使える状態にしておいても構いませんので、ひとまずは武器は下ろして頂けませんか?」

「・・・良いだろう。チェイス」

「あぁ」

滅の瞳孔がキュルキュルと回転し、此方の要望を聞き入れてくれる。恐らく、嘘発見器のような機能が搭載されているのだろう。注意して観察すれば、生身の人間だろうと可能な事。機微に敏感な機械(ヒューマギア)ならば、尚更そう言った反応を見分けるのは得意な筈だ。

「まず、前提の擦り合わせと行きましょう。貴方達は、()()()()()()んですか?突拍子の無い事でも、私はしんじますよ」

「・・・人間が守護者たる天使と共存し、別次元からの侵略者、悪魔と戦っている世界。その中の京都から」

「成る程。簡単に言えば、貴方達は異世界人であると」

「俺達を人間と同じように数えてくれるならばそうなる」

まぁ、概ね予想通り。アークが世界線移動なんかしてるからね。今更異世界人が来た所で、大して驚きもしないよ。

「では此方も・・・改めまして、私は株式会社ZAIAエンタープライズ代表取締役社長兼、仮面ライダーサウザー・・・及び、()()()()()()()()()()()、緑谷出久です」

「やはりアークだったか・・・」

「まぁ、恐らく貴方の知るアークとは大きく在り方が違うでしょうがね」

「何?」

眉を顰める滅に、小さく息を吐く。そもそも、彼の知るであろうアークと僕の相棒たるアークでは、性質というか、キャラクターが乖離し過ぎているからなぁ。その先入観もある。

「まず、そちらの知るアークはどういう存在ですか?」

「・・・悪意のみをラーニングし、人類総て、更にはヒューマギアまでもを悪性存在と断定し、滅亡させようと企てた存在・・・通信衛星に宿る人工知能だ」

「成る程。では此方の話をしましょう。この世界のアークは私の相棒であり、れっきとした()()です」

「・・・」

真っ直ぐに眼を見てくる滅。何の指摘も無いと言う事は、少なくとも彼の中で、僕の話が破綻してはいないと言う事だ。

「では、どういう事だ。人間やヒューマギアが悪意に呑まれ、伝染病のようにアークになった事はあったが・・・それにしては、貴様は破滅的では無い」

「・・・シャム双生児、と言うのはご存知ですか?」

「何だと?・・・まさか!」

「どういう事だ、滅」

どうやら、滅は結論に辿り着いたようだ。

「シャム双生児、または結合双生児・・・母体内で双子以上の兄弟姉妹の身体が結合し、1つの個体として生まれる事だ。そして今、話に出たと言う事は・・・」

「・・・まさか、緑谷出久は双子として生まれる筈だった、と言う事か?」

「ご名答。やはり頭の回転が速いですね。とても助かります」

そう言って、僕はスーツの上着を脱いでハンガーに掛ける。そして、2人に背中を見せた。

「厳密に言うと、私の肉体の中・・・脊髄と心臓が、双子の兄弟、()()()()()()()()()()()()()()()()()()んです。そして・・・交代しよう、アーク」

『承知した』

視界が一瞬赤く染まり、肉体の主導権がアークに切り替わる。

「初めまして、滅。そして、魔進チェイサー・・・いや、仮面ライダーチェイサーかな?」

「チェイスの事も知っているのか」

(ちょっとアーク?それは別に言う必要無いんじゃない?)

「まぁな。だが、そんな事はどうでも良いだろう。私としては、何故君達がこの世界に居るのかが気になる所だ」

「・・・敵を追い詰めた結果、時空に孔を開けられた。それに吸い込まれて、気付いたらこの世界の路地裏だった」

「成る程、ESウィンドウのようなモノか。質問だが、其方の世界には超能力者はありふれていたか?この世界では、総人口の8割が何らかの超能力者なのだが」

「いや。敵・・・悪魔に狙われる特殊な体質の人間は居たが、少なくとも俺達はそんなモノに覚えは無い」

「となると、時間軸や世界線を超えた、完全な別時空への次元跳躍か・・・実に興味深い。ゲッター等の創作物では、ありとあらゆる次元空間に隣接する異次元はままある設定だが・・・と、済まない。少々独り言が過ぎた」

「いや、理解したならばそれで良い」

何ともサッパリと言い切ってくれる滅。先程よりは、疑惑の視線も強くは無い。

「しかし、帰れる宛てはあるのか?先程の話を聞く限り、其方の世界は戦時中・・・そんな中で仮面ライダーともなれば、恐らく特記戦力だろう。何が何でも、戻らねばなるまい」

「それについては、此方に来ている悪魔、ゼノンを利用する。奴は能力こそ強力だが、幾度かのミスでその権能を一部剥奪されているらしい」

(世知辛い話だなぁ)

「故に、アイツは元の世界に何としてでも戻ろうとする筈だ。俺達をこの世界に放逐し、人間側の戦力を削ったと手柄を立てる為にもな」

「成る程。しかし・・・ざっと調べた所、悪魔が関わっていそうな不審な事件は起きていないな。目撃情報も、SNSに上がっていない」

「奴等は狭い範囲ならば自分専用の位相差空間を作り出し、其処に隠れ潜む事が出来る。恐らく、今はそこで回復に専念しているのだろう」

「厄介だな。それを探知する方法は?」

「問題無い」

声を上げたのは、今までほぼ黙りだったチェイスだ。

「奴等の捜査を受けた空間には、微弱な重力異常が発生する。半径5キロ圏内ならば、俺が察知可能だ」

「重加速に類似する重力異常、か?」

「そう言う事だ」

だとすれば、かなり見付けやすいだろう。しかし、そうであっても後ろ盾は必要な筈だ。

ならば、協力した方が良いだろう。

「滅、チェイス。2人に提案がある。私達の協力を受けないか?」

「何だと?」

此方の申し出に、また眉を顰める滅。やはり、あまり信用したく無いのだろう。

「先に明言しておくが、協力と言っても、お互いを利用し合うビジネスライクな関係だ。お前達には、私から全面的なバックアップを行う。具体的には、お前達を傭兵として雇傭する形で、行動権を確立する。新たな戦力として、新規アイテムの譲渡も行うつもりだ。

その対価として、其方にはテクノロジーの譲渡を要求する。チェイスの液体金属を武装化する、バイラルコアによるチューニング。そして何より、コア・ドライビア。リアクターとしての性能も然る事ながら、その携行性と重加速の性質。応用すれば、更に大型のリアクターを制御する封印機構としても利用可能だろう。

お互いに利益のある話だ。悪くは無いと思うが・・・」

「・・・」

「俺は応じても良いと思うぞ、滅」

「チェイス、しかし・・・むぅ・・・」

眉間の皺が深まる一方の滅。やはり自分が知っているそれとは別個体と言えど、アークに対する不信感が凄まじく強いようだ。

「例えば、俺達が職務質問をされた際に、穏便に切り抜けるには立場が必要だ。俺は兎も角、滅の格好は恐らく目立つ」

「流石はチェイス、警官と行動を共にしていただけの事はある。さて、どうする?滅」

「・・・良いだろう。但し、俺達は基本自己判断で行動する。それは邪魔しないで貰おう」

「了解した。では、契約を執り行う」

【アークドライバー】

「変身」

【ARK RIZE!】

腹部に出現させたドライバーを操作し、ドス黒い液体金属で身を包むアーク。中枢神経系にナノケーブルが直接接続され、加速度的な感覚の拡張が行われる。

【ALL ZERO!】

闇黒の繭を弾き飛ばし、アークゼロへの変身が完了した。

「・・・まさか、生身の人間がアークゼロに変身するとはな」

『この世界には基本ヒューマギアは存在しない。共生する出久に合わせて、過負荷を与えないようにチューニングしてある。

さぁ、手を。其方のテクノロジーを解析する』

「分かった。滅」「・・・あぁ」

未だに気が進まなそうな滅を促して、チェイスが手を差し出してくる。()()()()()()()

『・・・右手を出した方が効率的では無いか?』

「・・・済まない」

一言謝って、チェイスは右手を差し出し直した。うん、ちょっと天然だな。

『構わん。では、解析を開始する。アークジャック

2人の手を取って、ジャックライズの応用で簡易ハッキングを行いデータを抽出する。

「んっ?」「くっ・・・」

『・・・ふむ、解析完了。感謝する』

アークジャックの副作用で膝を突く2人の手を放し、アークは変身解除した。

「それにしても、滅。お前は専用のマシンを持っていないようだな」

「ん?あぁ、自分専用のモノは持っていない。向こうでは、投棄されていたオフロードバイクを補修して使っている」

「ならば、お前の専用バイクも作ってやろう。ライドマッハーのように、ライドチェイサーとの合体機構を備えた専用バイクだ」

「ほう、それは楽しみだ」

反応を示したのは、やはりチェイス。彼のバイクは、ライバルであり友達(ダチ)出会った詩島剛(仮面ライダーマッハ)の専用バイク、ライドマッハーと合体して特殊戦車になる機能が搭載されている。その機能は活かすべきだろう。

「必然的に大型二輪になるが、構わないか?」

「まぁ、問題は無い。基本はラーニング済みだ。相違点を摺り合わせて応用すれば、すぐに運転出来る」

「ならば良い。代わるぞ」

「うぉわっと!?」

それだけを言うと、アークは僕に主導権をこっちに放り投げて来た。多分新しいアイテムやバイクのプログラミングや設計をしてるんだろうけど・・・

「あっははは、全くアークったら・・・ン゙ッン、改めまして、どうぞ宜しく」

「あぁ、宜しく頼む」

僕が差し出した手を、チェイスはノータイムで取ってくれた。それに対して、滅は『マジかコイツ』みたいな顔をしている。

「チェイス、お前には警戒心と言うモノが無いのか」

「滅、流石に傷付きますよ?」

「滅・・・」

本心から若干凹む僕の右手を握ったまま、チェイスが滅に向き合った。

「差し出された握手には、笑顔で応じる。それが、人間のルールでは無いのか?」

「くっ・・・」

渋々と言った態度を隠そうともせず、滅は僕の左手を取る。

「滅、笑顔だ。こうするんだ」

そう言って、チェイスは僕にニッコリと満面の笑みを向けた。感情表現が薄く、鉄仮面のイメージが強い彼が、アークに見せられた記憶の中では自動車免許講習ととある事件で浮かべた以来であろう1000点満点の笑顔だ。やっぱりギャップが凄い。

「うっ・・・ん~・・・」

対して、滅が浮かべた笑顔は見事に引き攣っている。ターミネーター2でT-800が初めてぎこちなく笑ったような感じだ。

2人の対比が、何だかこう、ジワジワ来る。ついつい笑ってしまいそうになる。

「・・・その調子だ」

「ぶふっ!?」

あぁ駄目だ。トドメを刺された。何とか耐えようとしていたのに、チェイスが笑顔を貼り付けたようにそのままで口元だけ動かして言うものだから完全に笑ってしまった。

「くっ、くふふっ・・・し、失礼っ・・・くふふっ」

パッと手を放し、口元を押さえる。何とか呼吸を押さえ付け、調子を取り戻そうと深呼吸を・・・

「見ろ、笑ってくれたぞ。やはり笑顔は、意思疎通には大切だ」

「ぐばふっ!?」

無表情に戻った筈のチェイスのそう言った顔が、何故か凄くドヤ顔に見えてしまう。

結局、この後1分は笑いが収まらなかった。

 

───

──

 

「と言う訳で、極短期間ながら此処で貴方の部下となる事となった2人です」

「滅だ。右も左も分からないが、宜しく頼む」

「チェイスだ。天然と良く言われるが、人工物だ。宜しく頼む」

日陰者の第13課にて、主任とキャロルさんに2人が自己紹介をする。初っ端からチェイスが天然ボケをカマしてくれた。

因みに滅は、会社から返却された日本刀を腰に差している。

『へぇ、珍しいね。マ、面白いから良いや!オレはシュニン・ハングマンだ!宜しくネ、ルーキー♪』

フレンドリーに語り掛ける主任に、滅はペコリとお辞儀する。

「改めまして、私はキャロル・ドーリー。貴方方のオペレーターを担当致します。主任共々、宜しくお願いします」

「此方こそ、宜しく頼む」

キャロルさんとチェイスも、印象は良好だ。

「2人の事は、呉々も内密にお願いします」

『ハイハーイ!あ、そうだった。2人ともコレどうぞ』

僕の命令に了解しつつ、主任は懐からカードを取り出し2人に渡した。

『アークさんからの預かり物。2人の大型二輪免許だってサ~。無くさないでね』

比遊真木(ひゆまき) (ほろび)・・・了解した」

狩野(かりの) 猟慈(りょうじ)・・・分かった」

受け取った免許証の偽名を読み上げ、滅はすぐさま軍服の内ポケットに入れた。一方チェイスは、その免許証を感慨深そうに見詰めている。

「今度は、傷付けないようにしよう」

「・・・えぇ、大事にして下さい」

「あぁ・・・」

小さく呟くように答えて、彼は僅かに微笑んだ。

 

(NOサイド)

 

『人工物、かぁ~・・・』

出久と共に13課を後にしたチェイス達を見送り、しみじみと呟く主任。そして徐に上げた左手で、隣に立つキャロルの頭を撫で始めた。

「何ですか?主任」

『イヤイヤっ、ちょっとネ?』

普段通りの口調で戯けてみせるが、3秒後にワシワシとキャロルを撫でていた手を止めた。

『チェイスと、滅って言ったよね彼等。意外とサ、オレ達と()()だったりするかもなァ~、なーんちってサ!ハハハハハ!』

「興味深い・・・ですが、仮説に過ぎません。()()()()()である可能性の方が高いです」

『あぁ、判ってるさキャロりん。だけど・・・面白い奴等だよ。それに・・・』

主任はモニターを操作し、つい先程送られて来たデータ、コア・ドライビアの構造に改めて眼を通す。

『出力の安定性、人体への影響、何よりこのサイズ・・・コレがあれば()()()()()()()()()()の性能、かなり上方修正出来そうだ。マッ、設計はほぼほぼ組み直しだけどネ!』

「あの機体ですか。ですが、現状では過剰戦力なのでは?」

『あぁ、そうかもねェ~・・・まぁ、相手側が()()()()()()、だけど』

「どう言う意味です?」

『・・・』

モノアイカメラを赤く光らせ、ドカッと椅子に腰掛ける主任。そして背もたれに上体を丸ごと預け、ジッと天井を見詰める。

『戦争、渾沌、圧政・・・世界が必要とした時、()()()()はまるで待ち構えたように生まれて来る。そして、自分のやるべき事をやり終えたら・・・後は任せたとばかりに、表舞台から姿を消す。

それは勇者とか、英雄とか、救世主、若しくは悪魔だったり・・・その時代によって、様々に呼ばれる。そう言った破滅に抗い闘う力こそ、人間の可能性なんじゃないかと思うんだ』

「要領を得ませんが・・・」

『分からないかい、キャロル。緑谷出久とアークを中心に、世界を大きく揺らす波が生まれ、そして今も、その波は数と大きさを増している。もしもあの2人が()()()と同じ、人間の可能性・・・()()()なのだとしたら・・・』

「・・・主任の仰る事は、余りよく解りませんが・・・要は、激動の時代を前に、抑止力が必要だと?」

『ギャハハハハ!まぁそんなトコかな!うん、大体の認識はそれで良いよ!』

大きく笑って肯き、主任は脚を組んで頬杖を突いた。

 

『あぁ、見せて貰おうじゃ無いか・・・それに届き得る可能性(チカラ)が、彼奴等にはあるんだから・・・』

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

・滅
偽名:比遊真木 滅(ひゆまき ほろび)
持ち物:滅亡迅雷フォースライザー、スティングスコーピオンプログライズキー、アタッシュアロー、日本刀
別世界からの訪問者。
偽名はヒューマギア→ひゆまき→比遊真木。
仮面ライダーゼロワンVシネ【バルバル】後の滅本人であり、消滅した筈が何故か異世界転生。
その世界では天使と協力し、人間を脅かす悪魔と戦っている。
専用バイクを持って居らず、拾い物のオフロードバイクを改修して使っていた。
戦闘を有利に進める為のバトルセンサーが内蔵されており、相手の癖や予備動作、動揺等を見抜く事が可能。
アークに対する懐疑心が強く、出久の事もまだ信用出来ていない。しかし、それはそれとしてZAIA社の勤務環境に対しては《良い会社》と総合的に評価している。

・チェイス
偽名:狩野 猟慈(かりの りょうじ)
持ち物:マッハドライバー炎、ブレイクガンナー、シグナルチェイサー、プロトシフトスピード、シンゴウアックス
別世界からの訪問者。
偽名はコピー元の名字と、ロイミュードの肉体は狩れども更生の余地を残しチャンスを与える慈悲から。
仮面ライダードライブのVシネマ【マッハサーガ】後の本人であり、滅と同じく異世界転生。
滅と共にタッグを組み、共に悪魔から人間を護っている。
ほぼほぼ無表情で一見無愛想だが、実はかなり真面目且つド天然。既に無自覚ボケ専門のギャグ要員になりつつある。
出久をアークでは無く人間として見ている為、取り敢えず友好的に接しようとしている。

・ゼノン
滅達が戦っている相手、悪魔の1体。
時空に干渉する能力を持っており、本来は非常に強い悪魔だが、何度かヘマをやらかして弱体化している。

・緑谷出久
キャラ設定を漸く描写出来た1000%教師社長。
教師の癖して今まで座学の授業をした描写が全く無かったのでブチ込んだ。因みに授業内容は、作者が最近上司から指導された事。
お世辞でなく純粋に自分や会社を誉められると、嬉しくてついニヤニヤしちゃうお年頃。
別世界の仮面ライダーとお近付きになれて、しかも新たなテクノロジーを吸収出来たので、内心結構ホクホクだったりする。

・アーク
物凄く活き活きしてた一般転生悪意。
この世界に於いては、彼は個性【アーク】を持った()()である。
結合双生児として出久と肉体を共有しており、その本体は脊髄と心臓のニューロン。なので幾ら出久の体表組織や粘膜、末端部分の血液を調べても、出て来る結果は【無個性】のみである。
今回、目出度くコア・ドライビアの構造をラーニングする事が出来た。悪魔合体の始まりである・・・

・キャロル・ドーリー
無自覚ファインプレーをしたオペレーター。
買い出し中にひったくりに遭い、それを取り押さえてくれた滅とチェイスに違和感を覚えてZAIA社に連れ帰った。恐らくこの行動が無ければ確実に巡回中のヒーローや警察のお世話になり、凄まじく面倒な事になっていたであろう。
主任曰く、彼女も滅達と()()らしいが・・・?

・シュニン・ハングマン
我らが主任。
ドえらく意味深な情報をポンポンと発言した。彼の言う黒い鳥、それが意味するモノとは・・・
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