「斯波さん…」
「どうやら君達も無事だったようだね…」
足利の指示で基地から脱出できた者達はアルティメイタムの非常時用の支部に集まっていた。
ここは元々河川調査用の設備であったが、使われなくなった後にアルティメイタムの基地に改装されていたのだ。川の上にあるこの施設にも臨時用の設備は数多く供えられており、隊員用の食料や電力もそろっている。
この場には足利、斯波、オーウェン、理桜、三浦隼人、和田、畠山、そして治療中の颯馬が辿り着いていた。
颯馬は身体に包帯を巻かれた状態でベッドの上で身体を横たわらせている。
「颯馬…大丈夫かな?」
その颯馬の方を見て隼人らは心配そうな目で見つめている。
「あのッ…!足利指令に一つ聞いておきたいことが…」
そんな重い空気の中で理桜が口を開いた。
「颯馬さんの…マーベルドライバーのことについてもっと詳しく聞かせてください!」
「それについては黙秘する…」
足利は理桜からの問いかけに対して口を開かない。
ベリアルが語ったマーベルドライバー等のケルベロスドライバーの試作機であるベルトやそれを手にした者達について理桜は心の中でモヤモヤしていた。
「教えてやれよ、指令」
「しかし…オーウェン……」
「彼らには知る権利があるだろう、マーベルの仲間達にも、理桜にも…」
だが問いかけに応えない足利に対してオーウェンと斯波が良心からか話をするように説く。
「我々も聞いた方がよい内容なのですか…?」
「ああ、今は眠るマーベルの彼の代わりに聞いて欲しい。」
畠山らに対しても斯波は説明を聞くように促している。
仲間だからこそアルティメイタムの事情を聞いて欲しいという思いである。
「ならば話さざるをえないようだな…」
2人の部下の真剣な眼差しに足利は重い口を開いた。
「"ディスクドライダー計画"我らのアルティメイタム創設当初からある計画だ。」
ヒーローディスクを使う仮面ライダーのシステム、それがディスクドライダーである。
元々技術者であった足利は、並行世界について研究しヒーローディスクの開発に成功した。
その後、足利はアルティメイタムを創設し、ディスクドライダーシステムの開発と活用による並行世界の防衛をし始めた。
「その計画の最終形態がこのケルベロスドライバーだ。並行世界の仮面ライダー達の力で仮面ライダーに変身することができ、この計画の完成形である。」
そう言って、足利はケルベロスドライバーを懐から取り出し、机の上に置く。
「その過程で作られたディスクの試作品がこのアベンジャーズ達のディスクでベルトの試作品がこのマーベルドライバーだ。」
そしてその隣にベリアルの攻撃によって破損してしまったマーベルドライバーと颯馬が所持していたアベンジャーズのヒーロー達のディスクが置かれている。
「で、なんでそのベルトが颯馬の手に渡ったんですか?」
隼人は立ち上がって机の上に置かれたマーベルドライバーに視線を向けている。
「その件だが…隠して話すわけにはいかないな…」
このような事態を招いてしまった責任は足利らアルティメイタムにあると言える。
それ故に言い訳を言うこともなく包み隠さず真実を話し始めた。
「ベルトの試作品を試すには実戦のデータが必要だった。この世界だけではデータ不足であったから戦争中の並行世界で暮らす健康な男子を対象にベルトの試験運用を行なうことにした。」
「それで選ばれたのが…颯馬…?」
「その通りだ。マーベルドライバーの使用者に選ばれたのがバダンとの戦争中の世界に暮らす北条颯馬君だった…幻影を見せたりして戦士になるように仕向けもした…さっきの検査も、新たなデータを得るためだった…」
「じゃあ、アンタは!」
隼人が机を強く叩き、その鈍い音にこの場で話を聞いていた者たち以外の者も思わず隼人たちの方に目を向ける。
「自分の都合で!颯馬のことを利用したっていうのかよ!」
「その辺にしておけ!」
足利に掴みかかろうとする隼人を後ろから畠山が抑えて止める。
「君の言う通りだ。弁明の余地もない。彼には申し訳ないことをしてしまったと思ってる。」
そんな彼らを前に足利は申し訳なさそうに顔を俯かせる。
颯馬を、と言うよりも彼らの世界を利用してしまったのだから彼らに対しては申し訳なさを感じてしまっている。
「そのことに関しては私も憤りを感じている…だが、今は争うべき時ではない…」
畠山としてもアルティメイタムの行動に関しては怒りを覚えている。
彼まで怒りに身を任せてしまえば隣にいる和田も暴れだしてしまう。
それ故に、このような事態でも畠山自身は何とか気持ちを抑えて冷静に振舞っていた。
「だがしかし、利用してしまったことに変わりはない。それに…私たちのやり方が原因で今回のような事態を招いてしまった…」
「もしかして、あのベリアルの…」
「ああ、そうだとも」
足利が斯波の方を見ると彼がタブレットに一つのベルトと1人のライダーのデータを提示する。
「これはプロトケルベロスドライバー、マーベルドライバーよりも後にできたベルトだ。そしてこの変身者が…」
「楠木楓…」
オーウェンがベリアルの名乗った名前を口に出す。
「ああ、そうだとも。彼は元々クライシス帝国に支配された世界の人間だった。我々の策によってプロトケルベロスドライバーが彼の手に渡り、楠木楓は仮面ライダーサイドとして戦った。」
タブレットに映し出されたそのライダーはプロトケルベロスドライバーと仮面ライダーW、仮面ライダーエグゼイド、仮面ライダービルドの3枚のディスクを使って変身する戦士である。
2つのサイドを使い分けて戦う変幻自在な戦士であり、その変身者がかつてのベリアルであった。
「だがこの力を使いこなすことは難しかった。当時はまだ理桜達が持っているようなIDカードを開発していなくてだな…」
理桜、オーウェン、斯波の3人がそれぞれのIDカードを見つめている。
「3人のライダーの力を彼は使いこなすことができなかった。」
「つまり我々のカードは彼の残したデータから作られたということだ…」
「ああ、そして彼は力を使いこなせず敗北したが…戦に負けて仲間を失ってしまった彼の心の闇は大きかった。闇の力が彼のベルトを覚醒させた!闇の力が仮面ライダーベリアルを生み出した…」
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「へ~IDカードか~俺様の失敗を糧にこんなモン作ってたとはなァ…」
一方のアルティメイタム指令室では本部を占領したベリアルが配下の者たちを集めてモニターを眺めていた。
「ベリアル様、大方の部屋は制圧しました。」
「ご苦労ご苦労、休んでいいぞ。」
ベリアルの部下であるドープ、バグル、そして工業機械のような意匠のある怪人スマーズがベリアルの前に跪いている。
(こんなクソみてェなデータ見たら思い出しちまうだろ…)
ベリアルは自身のトライダーキュラーを眺め、とある日の戦いのことを追憶していた…
「宇佐美!須藤!しっかりしろ!」
クライシス帝国との戦いの中でベリアル…いや、楓は仮面ライダーサイドとして戦っていたが敵幹部たちからの急襲を受けて彼の仲間達は命を落としてしまっていた。
「グランザイラス!こいつもやってしまえ!」
力を使いこなせず膝を突く仮面ライダーサイドの前にジャーク将軍とグランザイラスが立ちはだかり、グランザイラスは彼にトドメを刺そうと歩み寄ってきていた。
(クソッ…!俺にもっと力があれば…俺がもっと強ければ!こんな力じゃだめだ…!もっと俺に力を!!)
仲間を殺された恨み、使い物にならなかったライダーシステムへの憤怒、そして自分の実力不足に対する絶望は彼の心に闇を生み出した。
その闇に反応し、汚染されるようにしてプロトケルベロスドライバーも空色から黒色に変質しトライダーキュラーへと変化する。
『仮面ライダーエターナル!仮面ライダーゲンム!仮面ライダーエボル!』
W、エグゼイド、ビルドのディスクもかつて彼らと戦った闇の戦士の者に変貌する。
『ダークライズ!ダークライダーズ!』
仮面ライダーベリアルの誕生
そして彼はあっという間にクライシス帝国の幹部達を次々と葬り去っていった。だが…
(これがこのベルトの正体か…)
だがベリアルは覚醒したことにより自身の下にプロトケルベロスドライバーが来た経緯を知ってしまった。
(アルティメイタム…アイツらが俺を利用しなければ…アイツらが自分達でこの世界に来れば…こんなことには!)
そしてその怒りが彼を飲み込み、アルティメイタムへの侵攻という行動に移すことになったのだった。
「さて、この後の改革も進めていくとしようか…」
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「そいつが颯馬を倒した仮面ライダー…」
「アイツを倒しちまうなんて相当強いんだな。」
「それにマーベルドライバーまで…」
颯馬の仲間である3人はベリアルの真相に愕然とするしかなかった。
彼を敗北させた強力な仮面ライダーの存在に重い空気が流れる。
「あれ?颯馬さんは!?」
その時ふと、理桜が颯馬の寝転ぶベッドの方を見ると、そこには彼の姿がなかった。
「颯馬!」
3人が突如いなくなった颯馬を探そうと走り出した。
「私も行きます!」
そして理桜も彼らと共に走り出した。
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僕はただ…利用されていただけだったんだ…
僕はケルベロスドライバーの試作機の使用者に選ばれ、戦っていただけだったんだ…
自分の力でも何でもない…
「ベリアル…」
そして僕は同じ運命を背負った人間に負けてしまった…
力も無い、できることもない、そんな僕に生きる意味なんて…
「クソっ…どうせ僕は……」
この場でうずくまって泣きじゃくるぐらいしか出来ることはない…
乾いたコンクリートが落ちた涙で湿っていく…
やがてその落ちていく涙の粒の量が増えていく。
「颯馬さん…」
そんな時だった、後ろから理桜さんが僕に声をかけてきた。
「ゴメン…今は放っておいて欲しい…」
けど今は誰とも話したくない…
こんな僕に構ってたって時間の無駄だ…
「颯馬さん!」
突然僕は暖かい感触に包まれた。
「私はまだ…あなたのことを全然知りません…けどッ…」
「やめて…僕なんかに……」
「これだけは分かります!あなたはとっても優しい人だって…」
後ろからぎゅっと抱きしめてくれる彼女のことを僕は振りほどこうとは思わなかった。
それはきっと、今の僕に気力がないからじゃない…
「私がベリアルにやられた時ッ…颯馬さんは私の前に立って守ってくれましたよね?」
「うん…」
「出会ってすぐの人を守ってくれた時、感じました。あなたは私のヒーローかも知れないなって…」
ヒーロー…
僕がアルティメイタムに見せられていた夢に出てきたスタークさん達のことか…
「そんなの僕達を利用するための言葉だ…君達はそうやって僕を焚きつけて!利用してたんだろ!」
所詮彼女もアルティメイタムの人間だ。
きっと僕をまた利用するために焚きつけに来たんだろう…
「アンタ達は僕に夢を見せて…戦う気にさせて…ベルト渡して試験運用に使ったんだろ!?」
「はい…私達はそうしてきました…」
「だったら君も!」
「けど私は違います!」
立ち上がって声を荒げた瞬間、彼女が正面から僕を抱きしめた。
「心の底から颯馬さんのこと尊敬しています!3年間も戦い続けてたって聞いた時…私にはできないって思いました…」
「うん…」
「本当は戦うとき…怖いんです…ベリアルとの戦いでも、恐怖でうまく動けない時もありました…けど、颯馬さんはずっと相手に立ち向かってて…すごいなって思いました。」
「けどそれも利用されてたからで……」
「でも戦ったのも…!私を守ってくれたのも…!颯馬さんの意思じゃないんですか…?」
僕の気持ち…
「私を守ったのも…隼人さん達のために戦ってきたのも…颯馬さんの気持ちじゃないんですか…?」
「そうだよ、颯馬」
「隼人…」
僕達の話声が聞こえていたのだろうか?隼人と和田さん、畠山さんも僕達2人のところにやってきた。
「覚えてる?颯馬が初めて仮面ライダーになった後、任務に失敗した僕たちのことをカバーしようと1人でショッカーのいるところに突っ込んでいったの…」
「そういえば、そんなこともありましたね。」
「うん、覚えてるよ…」
3年前にバダン傘下組織のショッカーと戦った時の激闘、今でも鮮明に覚えている…
「あの時、果敢に立ち向かったのは颯馬の意思だよね…」
「けど…」
「僕たちの前に出て戦ってくれたのは颯馬の優しさだって分かってるよ。僕達に傷ついて欲しくなかったから率先して戦場に赴いてくれた…そのお陰で僕達は今も生きている。」
あの時はショッカーが僕達レジスタンスに総攻撃を仕掛けようとしていたんだった。
攻撃を仕掛けられて皆が殺されてしまうのはいやだったから僕はショッカーの本拠地に単身乗り込んで戦ったんだった…
「けど、それも全部あの人達が力を与えたからで…」
「関係ないよ!だって、颯馬は自分が仮面ライダーなんかじゃなくても僕達のことを守ろうとしてくれたり…困ってるときは助けてくれる…ちょっと突っ走っちゃうとこもあるけどカッコいい僕の親友で憧れの人なんだよ!」
大粒の涙を地面に落としながら言葉を発する隼人の姿に、僕の頬を更に出てきた涙が伝う。
「そうだぜ、お前は仮面ライダーになる前から頼り甲斐のある俺らの大事な仲間だったんだぜ!」
「それに、強力な力を得てもその力に溺れることなく正義のために戦えたのは颯馬だからこそできたことだと思うぞ。」
和田さんと畠山さんからの励ましの言葉にいつの間にか僕は声を上げて泣いていた。
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「あの~もう大丈夫ですか…?」
「うん…大丈夫…」
仲間達3人の励ましと理桜の言葉を受けて大泣きした颯馬は彼らに慰めてもらいつつ、ようやく冷静さを取り戻していた。
しかし颯馬は、自分より年下の女性の前で泣きじゃくっていたという事実を思い出してしまい恥ずかしさからか顔を手で覆い隠してしまっている。
「けど改めて颯馬さんってすごいんだなって思いました!仲間の人たちからこんなに慕われて!」
「わかった…わかったから……」
彼が恥ずかしがってるとは露知らず理桜は颯馬に何度も声をかけている。
「颯馬と理桜さん、結構似合ってるんじゃないかな?」
「だなw」
そんな2人のことを隼人達3人は微笑ましそうに見つめている。
だがその笑顔の奥には颯馬が元気になってよかったという安堵の気持ちもあったのだった。
「おっと、皆ここにいたのか。そろそろ飯食っとけよ。腹が減ってたら何もできねえからな。」
とその場にオーウェンもやってきて、炊き出しの準備ができたことを彼らに伝える。
「俺たちがやったことは申し訳ない。けど、飯ぐらいは食ってってくれ。」
ふと、オーウェンが颯馬の存在に気付くと申し訳ないというような表情を見せつつ頭を下げる。
彼らなりにも颯馬やベリアルに対して後ろめたさはある。だからこそ、腹ぐらい満たさせてやりたいというのが一部のアルティメイタムの者たちの気持ちだ。
「はい、ありがとうございます。」
そのオーウェンらの誘いに颯馬も快く答えて立ち上がる。
「そうだね、昼から何も食べてないしお腹ペコペコだよ~」
「おう!俺肉食いてえ!」
「あるかどうかは分かりませんけどね…」
元気を取り戻した颯馬に続く様に先に3人もアルティメイタムの支部にある食堂へ向かう。
「あの、オーウェンさん。」
「どうした?」
「ベルトの件とか僕はもう気にしていません。だから、オーウェンさん達もあまり気にしないでください。」
「お、おう」
既に立ち直った様子の颯馬も仲間達と共に食堂の方に向かう。
「私も行ってきま~す」
そこに理桜もついていく。
(北条颯馬…良い仲間を持ったな。)
去っていく5人の背中を見つめながらオーウェンは少し彼らのことを羨ましく思いつつ、仕事に戻るのであった。
そしてその夜…
皆が寝静まる中、颯馬はアベンジャーズのメンバー達のヒーローディスクを見つめていた。
「どうしたんですか?眠らないんですか?」
「うん、ちょっとね。」
誰もいないはずの基地の屋上で颯馬と理桜はベンチに腰掛け夜空を眺める。
「僕、夢を見るのが怖くなっちゃったんだ…」
「どうしてですか…?」
「僕は夢の中でこの人たちの戦いや物語をずっと見てきたんだ…」
颯馬は自身の手の中にあるディスクを理桜に見せる。
アイアンマンやソー、ドクター・ストレンジ等のアベンジャーズのヒーロー達のディスクが颯馬の手の中にある。
「けどその夢がベリアルに否定されて、本当はアルティメイタムの人に見せられた夢だってわかって…」
「騙されてたから…怒ってるんですか……?」
「ううん、違う。怖いんだよ…このヒーロー達も僕が見てきた夢も作られた虚構の存在なんじゃないかって思って…僕は彼らのことを信じたいから…怖いんだ…本当は皆いないんじゃないかって……」
ずっと信じ続けてきたヒーロー達の存在。
その彼らが本当は存在しないのではないかと考えてしまうと、颯馬は眠りにつくことに不安を覚えていた。眠りについてもしアベンジャーズの夢を見れなかったら、本当に彼らの存在が偽りなのではないかと思ってしまいそうで恐れていた。
「大丈夫、そんなことないですよ。」
だが、更にネガティブな言葉を発しようとした颯馬の手に理桜は自身の人差し指を当てて、彼の言葉を止める。
「これ、仮面ライダーセイバーさんのディスクです。私も最初は知らなかったんですが、このセイバーさんにも、自分の世界と物語があるんです。」
「仮面ライダーセイバーの物語…?」
「そうです。ディスクの元になったのは並行世界のヒーロー達で彼らは他の世界で戦っていたんです。そこでみんな自分の物語を紡いでいるんです。」
セイバーだけでなく、理桜の持つディスクであるウィザードや龍騎にもそれぞれの戦いの歴史や物語がある。他のライダーたちのディスクもそうだ。
仮面ライダー…ヒーロー達にはそれぞれの物語があるのだ。
「だから颯馬さんも信じてみてください。彼らの物語を…」
「彼らの世界か…」
自分の手の中にあるディスクを見つめて手で優しく包み込むと、理桜の方を見て優しく微笑む。
「ありがとう、今日はよく眠れそうだよ。」
そして立ち上がって屋上から立ち去ろうとする。
「ええ、いっぱい寝て元気になってくださいね…颯馬さん…」
To be continued…
キャラ解説
スマーズ
工作機械を模した見た目の怪人
スマッシュの様にボトルの力を使う。