コントラストにグラデーションを   作:zennoo

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名無しの兵一郎様
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本編どうぞ!


5page:恐怖と向き合い続けて

「ねえ陽頼君……どう…したの…?」

 

「ごめんなさい……ごめん…っ…!」

 

「陽頼君!大丈夫!?」

 

「花音は……こんなに勇気を振り絞ったのに……っ…俺は…俺は……!」

 

「…っ」

 

「ああああああああああああああ!」

 

「陽頼君…」

 

「あああ……ひっ…ああ……。」

 

 

このときの陽頼の顔はいつもの平静を装っている感じなどどこにもなかった。いつもは感情を表に出さない彼だからこそ、今の陽頼が一層目に焼き付いて記憶から離れない。完全に取り乱していた。

 

だけど花音は取り乱しつつも、陽頼の震える右手に優しく圧をかけていった。

 

 

「私でよければ……話してほしいな。」

 

「……えっ?」

 

「陽頼君に、何があったのか。」

 

「………なんでだよ。なんで俺なんかに!」

 

「私だって!陽頼君の力になりたいの!」

 

「俺の………?」

 

「うん。陽頼君が…私を守ってくれたように…私も陽頼君の力になりたいの!君に勇気をもらったんだから……。」

 

 

花音の目が慈愛と勇気で満ち溢れていた。もし私が花音の立場にいたなら……私は、花音と同じように手を差しのべることが出来るのだろうか。きっと私は…陽頼を拒絶してしまうのだろう。

 

 

「……誰にも言わないでほしい。」

 

「うん。…誰にも言わないから。私達だけの秘密だよ?」

 

 

花音は陽頼の手を優しく、ぎゅっと握りしめた。

すると陽頼はポツリ、ポツリと言葉を呟いていった。

 

 

「花音を助けたあの数週間後……俺は、ある一人の女に呼び出された。」

 

「…うん。そうだったんだ。その人はどんな人だったの?」

 

「当時俺と同じクラスだった奴だ。そいつとはそこそこ交流があってな……。一緒にいて悪い気はしなかった。」

 

「……」

 

「襲撃を受けた俺は数週間入院しててな……その女が俺のことを見まいに来た。俺は嬉し涙を流してたと思う。」

 

「陽頼君……」

 

「その時に言われたんだよ。屋上で二人きりで話したいことがあるって。何言われるんだかワクワクして屋上に向かった。するとな……」

 

「うん…。」

 

「俺を襲撃してきた男達が待ち構えていたんだよ。花音を取り囲んだ、あいつらがな。」

 

「……えっ?」

 

 

盗み聞きしていた私も「えっ?」という反応しか出来なかった。どういうことか私にも分からないけど当の本人が一番混乱していたのだろう。

 

 

「そこであの女は話してくれたよ。俺に勉強面で劣ってたからその仕返しがしたかったってな。今まで俺に優しく接していたのもこのためだったと…。それで……」

 

「……それで…?」

 

「俺はまた血まみれになるまでボコボコにされた。完治しかかってた右足は完全に機能不全になったんだ……。」

 

「……うん。」

 

「身体障害も負った。もう俺の身体はこれ以上成長しない。」

 

「……」 

 

「俺は……この出来事から女の怖さってのを学んだ。もう女には裏があるんじゃないかって……怖くて…怖くてよぉ……っ!」

 

「……」

 

「花音がそんな人じゃないことは分かってる……分かってるのに……っ……花音が怖くて…!だから……ごめんなさい……!」

 

 

私からも「慰めてあげたい」って感情が湧きつつある。でもそのトラウマが乗り越えられないから…陽頼は辛かったんだって。飛び出したかった。陽頼に手を差し伸べたい。

でもそれは……私がやるべきじゃないんだから。それは……花音にしか出来ないんだから。

 

 

「怖かったね……辛かったね……っ!」

 

「……ああ…。」

 

「私のこと、今でも怖いんだよね……。いつか裏切るんじゃないかって……今でも怖いんだよね…!頭で分かってても…そうなっちゃうんだから……。辛いよね……っ!」

 

「……ああ…あああ!」

 

「だったら…私が陽頼君のこと……笑顔にしてあげるから……!だから……もう謝らないで…っ……!」

 

「……っ!」

 

「ここなら人は来ないよ。今までの分…泣いていいから。」

 

「え……?」

 

「私が……受け止めるから。」

 

 

陽頼はしばらく花音の胸の中で泣いていた。顔をぐちゃぐちゃにして……声をあらげて……。

二人とも、もう平常心ではなかったはずだ。トラウマを乗り越えることが出来なかった陽頼に舞い降りた女神が、花音だったのかもしれない。

 

曇天に、晴れ間が差し込んできた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日の帰り道、花音は陽頼と正式に付き合うことに喜びを感じながら陽頼に、あることを提案した。

 

 

「ねえ、陽頼君。」

 

「おう、なんだ?」

 

「明日1日、一緒にデートしよ!」

 

「え…?デート…?」

 

「だめ……?」

 

 

自分より背が低い陽頼に対して少し屈んでからの上から目線。効果は抜群のようだった。

 

 

「ああ……いいぞ……。」

 

「ほんとに!?エヘヘ……嬉しいな……。」

 

「デートって言ってもどこに行くんだ…?」

 

「うーん…遊園地とかにしようかなって思ったんだけど……やっぱりまだ近場がいいかな。」

 

「え?なんでだ?」

 

「私……すごい方向音痴だから……」

 

「あ、実は俺も……。」

 

「そうなんだね……ふふふっ♪」

 

「ちょっと……笑うなって……。」

 

「違うの。似た者同士で嬉しいなぁって……。」

 

「ふっ。そうかよ。」

 

 

めでたしめでたし……。そう書いていいのかしら。私には分からないわ。

それにしても方向音痴二人がデートって……どうなることかしら。




短いですが、次回でこの小説は最終回となります。
「短ッ」って思ったでしょう。私にはまだ長編小説は書けないので……。

ここまできたら最後までお付き合いください。

読了、ありがとうございました!
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