TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第11話

 

 

 

 

 

 「本当か…?……わかった」

 

 

 「ヘリが奴らに落とされたそうだ」

 

 

 

教会広場での死闘を生き残り合流した全員に、司令部との通信を終えたレオンが無情な事実を報告した。

 

迎えに来るはずだったヘリが突然の墜落、間違いなくサドラーに命じられた者達の仕業だ。

 

通信機を仕舞うレオン、どれだけ受け入れがたくとも実際に起きたこと故に仲間達には伝えねばならない。

 

 

 

 

 「ふぅん…」

 

 「あぁ…そう…」

 

 

 「元から期待を持ってないから残念だとも思わない」

 

 

 

衝撃的な事実を伝えたはずが、鬼龍のみならず警官達からもあんまりな言い草にレオンは面食らう。

 

 

 「そ、そうか」

 

 

 「地元じゃ皆、アメリカのヘリはしょうもないオンボロだって言うとるわっ」

 

 「ヘリなんてもんよく落ちるもんでしょうが、何を脱出方法に選んどんねん」

 

 

 (コイツら、脱出ヘリが来ると知って喜んでいなかったか…?)

 

 

それを見たアシュリーもレオン達に声を掛ける、不安にさせてはいけないとあえて聞かせていなかった。

 

 

 「ねぇ、どうしたの?何があったの?私にも聞かせてよ」

 

 

 「迎えのヘリが墜落したんだっ」

 

 「恐らく村の者に撃ち落とされたと思われるが…」

 

 

 「……ふぅん、あぁそう…」

 

 

ともかく希望が絶たれたと嘆く者はいなかった、墜落したヘリの話題からすぐにこれからどうするかの話し合いが始まった。

 

 

 「それで?お嬢様は助け出したがこの後はどうすんだ」

 

 「サドラー…奴がいる限り簡単には脱出も出来ないだろう」

 

 

 「じゃあ殺せばええやん」

 

 「何だかこの状況にも慣れてきたんだよね」

 

 

 「そう簡単に人は適応できはしない 一時的に感覚が麻痺してるだけだ、せいぜい強くなったと勘違いをして無様にくたばらないことだ」

 

 「だが、あのサドラーとかいうジジイを殺すというのは同意見だな ヤツは生理的に気に入らん」

 

 

 「待てよ、サドラーの奴は高慢ちきだが用心深いぜ もう村にはいないんじゃねぇかな」

 

 

 「ん?サドラーはこの村を拠点としているんじゃないのか、ここから離れてどこに行くっていうんだ」

 

 

 「城だよ、大昔にこの村を統治してた貴族の城がある」

 

 「もしくは…あの島か…」

 

 

 「どういうことだ、ルイスよ」

 

 

 「ウム…この村はあくまでサドラーが後から来て支配したに過ぎないんだなァ…」

 

 「奴を崇める信徒達が集まるのが村を超えた先にある城だ、サドラーの教団、ロス・イルミナドスの本拠地だ」

 

 「そして真にサドラーが拠点とする孤島…駒となる怪物共はその島で作られる、奴の馬鹿げた計画の為の兵士達が島を警護しているのさ」

 

 「用心深いサドラーのことだ、きっと城か島に身を隠しながら手下を差し向けて俺達を始末する気だろうぜ」

 

 

 「うぅん、どういうことだ」

 

 「……犬?」

 

 

 「この村は所詮、サドラーが持つ戦力のほんの一部 まだまだ駒となる化け物共は大勢いる」

 

 「奴にとって村長が死のうが、村が壊滅しようがどうでも良いのさ…」

 

 

明らかになる恐ろしい真実、この村に蔓延る底知れぬ狂気すらもサドラーという男の恐ろしさの一角に過ぎないという事実。それを聞いたレオン達の顔は険しい、あと2つ、拠点を設けているのならそこにどれ程の戦力が潜んでいるのか想像もつかない。

 

ルイスの口振りから察するにそれはこの村よりも強大な戦力らしい。

 

 

得も言われぬ緊張と焦燥が漂うその場で、一人不敵に嗤う者、それはやはり鬼龍!

 

 

 「ククク、そうか 無様に逃げ回るクズを追いかけ回すだけでも愉快だと言うのに」

 

 「化け物を使った無意味な抵抗を続けるつもりなのか、まだまだ楽しめそうで安心したぞ」

 

 

鬼龍からすればこの村も怪物もサドラーも、全ては己を高ぶらせ、楽しませる遊び場と玩具のようなもの。それが増えたとて喜びこそすれ、恐怖し悲観するなどあり得ない

 

 

 「おいっ調子に乗るなよ、アンタが倒したデルラゴもエルヒガンテも分類で言えば失敗作なんだからな」

 

 「支配種の寄生体や実験の成功作ども…奴らの強さは別次元だ」

 

 「いくらアンタでも殴り合いで勝てるわけがねぇ」

 

 

 

サドラーの保有するプラーガを使用した生物兵器の戦闘力をルイスは知っていた。なにせその怪物達の制作に関わっていた張本人だからだ、しかしながら鬼龍へ怪物達の脅威をどれ程説明しようが意味はない。

 

 

 「そうだぞ鬼龍、これから先は何が来るかわからん」

 

 「ふん、お前達は自分の心配だけしていればいい」

 

 

 

言葉を交わしながらも6人は移動を開始する、アシュリーを囲むような陣形で注意深く進む。当然のように先頭を行くは鬼龍、左右をレオンとルイス、背後を警官達。

 

かたまりになり過ぎない適度な距離を保った陣形で、教会前の墓場を抜けて、村中央へ続く林を歩く。

 

 

林の奥の村に続く洞窟に入る為の隠されたハシゴまでたどり着けば、まずは鬼龍が飛び降りて敵性の有無を確認した。安全だとわかれば一人づつハシゴを降りていく、レオン、ルイスと続き、アシュリーが飛び降りるとレオンがそれを受け止めた。

 

最後に降りた警官の一人が手を滑らせハシゴから落ちて地面に背中を打ち付ける、誰も見向きしなかった。

 

 

全員が洞窟内を照らす青白い光の光源とそこに立つ人物に視線を向けていた。

 

黒ずくめのフード付きコート、口元のマスクに背中のバッグ、コートを広げれば中には大量の弾丸と銃火器が。

 

 

レオン達に武器を売却した武器商人が青の炎に照らされて、洞窟の横に空いたスペースに陣取っていた。

 

 

 

 「ヴヘヘヘ、どうもお久しぶりです 武器商人です」

 

 

 「だ、誰なの…この…人?」

 

 「あー…少なくとも敵ではない、そうだよな?」

 

 

 「武器商人はね、凶暴で邪悪なんて言われてるけど、客になると解ってる人間は襲わないの」

 

 「それよりもエルヒガンテだけでなく四大怪人すらも倒すなんて流石なのね」

 

 

 「貴様…何処かから見ていたのか」

 

 

 

鬼龍から警戒のこもった鋭い視線を向けられる武器商人、常人ならばその威圧だけで恐怖に慄いてもおかしくないが、武器商人はまるでなんともないように平常だった。

 

 

 「ムフフフ、君達なら本当にサドラーを何とか出来るかもしれないんだ」

 

 「でも村から脱出するのは無理です」

 

 「マトモな出口は既に封じられ、残るは他ならぬサドラーの第二の支配地である城へと続く道しかない」

 

 「そしてそれすらもサドラーと、死んだ村長のみがその道を通れるんだよね」

 

 

淡々とレオン達を取り巻く危機的な状況について語る武器商人、全員が黙ってそれを聞いていた。

 

 

 「でもね、この村にマトモな戦力がもう残ってない事は事実なのね だから今頃は……」

 

 

 「“城”からの増援がこの村に向かっているハズ」

 

 

 「城からの…増援?」

 

 「……教団の信徒達か…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 〈ア、アワワ…〉  〈ハヒーッ〉  〈アウウッ〉

 

 

村の奥のとある場所、崖のような細い道と数軒の小屋、付近には渓谷で阻まれた向こう岸とこちらを繋ぐ上りのリフト乗り場が存在する。

 

その場所に村の残った村人達が集められていた。

 

皆が一様に緊張の面持ちで、眼前に立つ集団の様子を伺う。

 

 

それは漆黒のローブに見を包んだ集団、その肌は青白く、顔には戦化粧にも似た不気味な模様が描かれ、手に持った武装はどれも村人のものより殺傷能力に優れた物ばかり。

 

 

鎖で持ち手と繋がれた棘鉄球、矢じりが発火する仕組みのクロスボウ、刃渡りが人の胴体ほどもある大鎌。無数の棘が装飾代わりに取り付けられた木盾。

 

その集団の異様な出で立ちを更に不気味で恐ろしく見せる。

 

 

村人に襲いかかられるどころか、逆に村人に畏怖されるこの者達は勿論プラーガの感染体だ。

 

黒尽くめの集団の中から一つの影が現れた。

 

 

 

 〈私ハ憂イテイマス、貴方達ノ脆弱サヲ〉

 

 〈サドラー様ノ期待ニ答エラレナイ無能サヲ〉

 

 

 

その者は集団と対象的な深紅のローブで見を包み、頭部をヤギの頭骨を模した仮面で隠し、胸元には何処か暗い光を放つルビーの様な宝玉のネックレスが煌めく。

 

 

赤ローブに続いて歩み出るのは紫ローブの者達、やはり皆がフードや髑髏の仮面で素顔を隠している。

 

それぞれの色のローブを来た集団、その人数を比べるに、ローブの色と装飾が集団内での地位を表しているのだろう。

 

 

 

 〈デスガ…我ラ、サドラー様ノ真ナル崇拝者ガ来タカラニハ主ノ失意モ消エ去ルコトデショウ〉

 

 

 

赤ローブが手を上げて、紫ローブの者達に合図を送る。その紫ローブ達が更に黒尽くめの者達に指示を飛ばして命令を下す。

 

 

集団が左右に別れて割れ、その奥から重苦しい異様な足音を響かせて歩む何かを見た瞬間、村人達の緊張は恐怖と絶望に変わった。

 

 

 

 〈ソウデス…我ラサエイルナラ……〉

 

 〈他ハイリマセンヨネ〉

 

 

 

赤ローブが上げていた手を下ろした、するとその左右からまた異様な足音が響く。それも複数、金属同士のこすれ合う、まるで全身に鉄の鎧を装着した者達の足音の様な。

 

 

 

 

 〈ウ ギ ア ア ア ア ア ア ア ! 〉

 

 

 

村人の悲鳴が巻き起こり、次第にガシャガシャという音に混じって何かを斬り付けた不快な音や液体が飛び散る音、何かが崩れ落ちて倒れる音などが次々と起きて、やがて何の音もしなくなった。

 

 

 〈村人ナンテ俺達ノ玩具ナンデス〉

 

 

たった今、村人を虐殺してみせたこの男。同族だろうと慮る情緒は微塵もないが、部下を率いて惨劇を起こす事に関しては天才的。 

 

 

赤ローブの髑髏仮面、ロス・イルミナドス教団の幹部の一人は、もう抑えられないと言わんばかりに高らかと笑い出した。

 

 

 〈サァ、背教者狩リヲ始メマス〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洞窟を抜けて村中央へと戻ってきたレオン達、辺りを警戒しながら確認するが村人の姿も気配もまるで無い。

 

 

 「敵性は無し、また何処かに集まっているのか?」

 

 

 「警戒する必要は無いよ、もう村の戦力は壊滅したと言っていいのん」

 

 「正確にはもう一体、エルヒガンテが封印から解き放たれたがそれくらいなんだよね、ルイス?」

 

 

 「あ、あぁ…確かに村に封印されたエルヒガンテは2体だ」

 

 

 「そうか…なぁ、本当にお前もついてくるのか?」

 

 

 

振り向いたレオンの顔には困惑の表情が浮かび、釣られて振り向いた面々の視線の先にいるのはあの怪しい武器商人。

 

先程、弾薬類の補充を済ませた後、何を思ったか自分もついていくと言い始めたのだ。

 

 

 「ムフフフ、言いなりのふりをするのは脱出の目処が立つまで それからは反逆者となって支配からも脱出するの」

 

 

 「その言い方だと…やっぱりお前もプラーガに…」

 

 

 「おいおい、襲ってきたらマズイでしょうが」

 

 「しゃあけど…コイツがくれたアーマーが無かったら何度かヤバかったわっ」

 

 

 「本当に奇妙な野郎だな…何故自我を保っている?」

 

 

 「で、でも今は…安全…なのよね?」

 

 「安心しろ、妙な真似をした瞬間に俺がぶちのめす」

 

 

 

 「ムフッ、俺の事よりこれからの事を考えたほうが身の為なんだよね」

 

 

武器商人が村の西方を指差した、その先には確か農場があったはずだとレオンは首を傾げる。

 

 

 「向こうは農場だったがどうした」

 

 

 「青コイン……いや、あそこの高い門から村の出口に迎えるの」

 

 「でももう城の奴らは村についてるはず、行けば間違いなく襲ってくるのん」

 

 

 「気を付けろよ、教団の信徒共は装備も残虐さも村人より上だぜ」

 

「ただでさえプラーガで凶暴化するってのに、洗脳やら薬物やらでわざと正気を失わせてるんだからな」

 

 

 「ふん、あの下衆の考えそうな事だ やはり気に入らんな」

 

 

 

武器商人を新たに含めたレオン達は農場へと到着した、農場西方の門へと歩く最中、アシュリーが疑問を口にする。

 

 

 

 「ねぇ、そういえば…村の出口についても村長以外は通れないんじゃなかった?」

 

 

 「そやなっ」

 

 「すみません、脳死でした」

 

 

 「ククク、安心するのね…武器商人マジックよ、仕掛け扉を無力化して通過する術がいくつかある」

 

 

 「へぇそんなものがね、ぜひ知りたいもんだ」

 

 「嫌でも見せてやりますよククク」

 

 

武器商人がコートを開いて中から銀色に光るアタッシュケースを取り出した。それを開けて中の折りたたまれた筒状の何かを取り出す。

 

 

 「ばぁーっ」

 

 

 「そ、それが手段…なの?」

 

 「マジックって……ロケットランチャーかよ…」

 

 

 

呆れ返るレオン達の後方で不意に振り向いて立ち止まる鬼龍、その顔は今来た道の方へと向けられている。

 

 

 「どうした鬼龍」

 

 「……ソイツの使い時かもな」

 

 

 

鬼龍が言い終わる頃には他の者達も事態に気が付いた。地面を疾走する音が高速で接近してくる、それも人間の二足歩行のリズムでは無い。

 

不規則かつ、何やら地面を抉るような音まで聞こえてくる。

 

段々と音が近づき、ついに疾走する影が急停止した。

 

そうしてレオン達の目の前に現れる赤黒いソレ、ソレが齎した縦に長く揺れ動く影がレオン達にかかる。

 

 

 

 「出口を通過出来るのはサドラーと村長だけと言ったな」

 

 「秘密の鍵という線もあるが恐らくは指紋認証の様な本人の情報を使った仕掛けだろう」

 

 「武器商人よ…ソイツはまだ仕舞っておけ」

 

 

 「精神が死すとも肉体は死なず…か、良いだろう、貴様への評価を少しだけ改めてやる 村長」

 

 

 

レオン達の前に現れたのは滝の水路で鬼龍に敗れ、死んだ筈の村長だった。眼球は片方は潰れて空洞となり、もう片方は奥に押し込まれた様だ、その口元からは涎がこぼれ落ちる。

 

 

特筆すべきは何よりも変異したその肉体、爪が刃物の様に硬化して鋭く変質、脊髄と一体化したプラーガの変異により、長く伸びた脊髄が村長の全長を大きく底上げしている。

 

その脊髄からプラーガの短い触手が昆虫の手足のように蠢いて、まるで上半身と下半身を一匹の巨大な百足が繋いでいるかのような歪さだ。

 

最後にその背から飛び出した2つの鉤爪、村人が出す鉤爪触手とは大きさも力も、当然殺傷能力も比べ物にならない。

 

 

 

 〈キリュウウッ ウーッ ウーッ 殺ラセロッ」

 

 

 

村長がうわ言の様に呟いた、意味のある言葉だが他ならぬ本人自身がその言葉の意味を理解できていない。

 

ただ一つ残った復讐心のみがその口を動かしていた。

 

 

 

 「支配種の暴走か…ヤバいな」

 

 「アシュリー!下がってろ!」

 

 

 「う、うん!」

 

 「うえーっ 怖いよーっ」

 

 「お、俺達も下がっていいよなっ」

 

 

 「何を早まっている貴様ら 聞いたろう、奴のご指名は俺だ」

 

 「いくらなんでもこんなのと一人で戦っちゃダメダメ〜、はっきり言ってこうなった今の村長はメチャクチャ強いのね」

 

 

 

 

 〈ハアーッッ キリュウ ヨ! 死ネェ!」

 

 

 

変異体の村長の振り下ろした背の鉤爪が地面を抉り取る。

 

 

鬼龍とその周りにいた者達も巻き込む範囲の攻撃を、既の所で全員避ける。

 

 

村長は執念の為せる技なのか、自我が消失したにも関わらずその空洞となった両目はずっと鬼龍に向けられていた。

 

鬼龍に向き合う村長、その場に残った鬼龍、レオン、ルイス、武器商人で偶然にも四方を囲むような形となった。

 

 

不敵に嗤い両腕を構える鬼龍、それぞれの銃を油断なく構えるレオンとルイス、コートから2つのナイフを抜き放ち両手に持つ武器商人。

 

 

 

 「ダメだろ村長、死に損なって暴れたりなんてしたら」

 

 「今度こそ殺してやるからせいぜいそれまで楽しませろ」

 

 

 

 

村長が狂気の咆哮を上げて鉤爪を振り下ろした!その狙いはやはり 鬼 龍 ! 

 

 

 

 

 




◇恐ろしい能力…!
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