TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第14話

 

 

 

 

 

 〈オラーッ チンチンマデ勃タン様二シタンドッ!〉

 

 

怒号を放ち暴れ回るガラドール、その鉤爪を何とか躱すレオン。他の者達が救援に行こうにも、道の前方から来る鎧の騎士と出鱈目に振り回される鉤爪がそれを許さない。

 

レオンは最初に突撃してきたガラドールを引き付けて後退する、これにより前方から来る騎士は他の3人に、後方のガラドールの対処はレオンが対処する。

 

 

そして前方、騎士の集団と対峙する鬼龍、ルイス、武器商人。鬼龍の蹴りで胴体を凹ませた騎士も今だ健在、その数は6体から減っていない。

 

 

だが鬼龍はもう勝利を確信している、武術家として人体の知識、動きへの洞察力、相手から立ち昇る気の反応、そしてIQ200の冷徹にして論理的な推察、その全てを持って速くも騎士の正体に辿り着いた。

 

 

 「クソっ コイツら、銃が効かねぇ!」

 

 「ねーっなんなの弱点って、ねぇ!」

 

 

正確無比な銃撃も堅牢な鉄鎧に阻まれて弾かれる。急所に当てても何度目かのソレで僅かに怯ませ後退させるのが関の山。

 

当然、武器商人の振るうナイフも同様で、しかもナイフよりリーチに優れる長剣や斧槍の攻撃を前に苦戦していた。

 

 

 「よく真似てはいるが俺の目は誤魔化せない」

 

 「気が付かないか?つまりこういう事だ!」

 

 

横薙ぎに振るわれる斧槍を前に躱さずに無防備で待つ鬼龍、その刃が体に食い込むと思われたその時、鬼龍の体が液体のように溶けたと錯覚するほどの脱力と受け流しで刃が流された。

 

エルヒガンテの戦いで見せた灘神影流“弾滑り”である。

 

 

そのエネルギーを自分の動きに乗せて高速で半回転、強靭な右脚の回し蹴りを騎士の顔面にぶち当てる!

 

 

騎士の鋼鉄のヘルムが凹むどころか破裂したかのように破損して飛び散った。騎士は大きくよろめいて跪く、甚大なダメージを負ったと思われる騎士のヘルムの中の頭部、しかし露わになった頭部は人体のそれではなかった。

 

 

 

 「!!…そういう事か」

 

 「そうか!コイツらは…」

 

 

 

現れたのは虫の様に細かい触腕を不快に蠢かせ伸びる、プラーガの本体。鉤爪のついた触手でこそ無いが、太く逞しいその本体には獲物を噛み砕く捕食口があった、人一人の頭を簡単に丸呑みし分断出来るだろう。

 

 

 「つまりこの虫けらが触手を伸ばし、鎧内で筋肉の代わりとしていたというわけだ」

 

 「人間に寄生出来ぬと見るや、せめてその姿を卑しくも真似て動き出すなど…いや、知性のない下等な虫けらにしては良くやっている」

 

 「だが認めない 何をしようとお前等クソムシが不快な化け物でしか無い事に変わりはない」

 

 

 

鎧の騎士、プラーガの予期せぬ行動により偶発的に生まれた生物兵器アルマデューラは己の正体が看破されたことにも一切の感情を見せない。それもそのはず、本質は寄生体そのものであるアルマデューラには感情など無い。

 

よろめきから立ち直った寄生体を露出させたアルマデューラ、そして他5体のアルマデューラも悠々と剣を取り戦闘を再開した。

 

 

 

 「そうと分かれば…ムフッ、さっさと倒しちゃおうねぇ、ルイス!」

 

 

しかし好機と見た武器商人が懐から鈍く銀色に光る何かを取り出しルイスへと投げ渡した。慌ててそれを取ったルイスはすぐにそれの正体に気付く。

 

 

 「とっておきなのね」

 

 「これは、リボルバーか!」

 

 

鈍い光を放つその拳銃は、常よりも口径の大きな回転式のマグナムだった。専用の弾丸を使って放つ銃撃は反動、破壊力共にただの拳銃とは比べ物にならず、強敵相手のとっておきとして武器商人のお墨付きを頂いていた。

 

込められる弾丸の数は六つ、既に全て込められている。

 

 

 「ソイツなら鎧のヘルムを破壊できる、いけーっ!」

 

 「おおおおおおっ」

 

 

雄叫びと共にルイスが6連続で引き金を引けば、大気を切り裂く雷鳴の様な発砲音が鳴り響き、打ち出された弾丸は武器商人の言葉通りにアルマデューラのヘルムを破壊してその本体をあらわにしていく。

 

最後の一発は既に本体を見せた黒鎧のアルマデューラに、そのライフルにも並び得る破壊力の前に、屈強そうな寄生体も粉々になって吹き飛んだ。

 

黒鎧のアルマデューラの体が文字通り崩れ落ちた。

 

 

 

 「こうなればもはや木偶にも劣るっ」

 

 「今度はサクッと殺してやりますよ!」

 

 

 

その気を逃すはずもなく、鬼龍と武器商人が瞬く間によろめきから立ち直れていないアルマデューラに接近する。

 

そして言うまでもなく勝敗は既に決していた。

 

鬼龍の貫手が露出した寄生体をまるごと抉り取り、触手を振るわれれば掴み取って引き千切る。そして龍腿による一撃で屠りさった、その速さは常人には殴ったのか蹴ったのかすらの判断さえも不可能!

 

武器商人が手足の如く振るう二振りのナイフが迫りくる触手を切り飛ばす、そして最小限の動きで振り下ろされるナイフを避けることはできずアルマデューラの寄生体に深く突き刺さり鬼龍同様、一撃でその命を断つ。

 

 

全てが終わった後、地面には中身のない鎧と使い手を失った武器が無残に散乱するだけであった。

 

 

 

 「ムフフフ、殺したのは俺が三体…鬼龍より上なのね」

 

 「あん?おいコラ武器商人、俺と張り合う気か」

 

 

 「いっ痛うーっ、肩が外れそうだ…調子に乗って連発なんてするもんじゃねぇな」

 

 「ふん、また生魚を齧って回復したらどうだ」

 

 「それは結構、というかお前も食ってただろうが」

 

 

 

 

 

 

崖下の道前方、鬼龍達とアルマデューラとの戦いは決着した。そしてその後方、鉤爪を振り回しながら追い掛けるガラドールを誘導し、巻き込まれる者のいなくなった地点でレオンの戦いも始まっていた。

 

 

戦うに当たってレオンは横目で一瞬後方に意識を向けて確認する。

 

 

 「アイツら、アシュリーを連れて上手く離れてくれたようだな」

 

 

警護対象者であるアシュリーが戦いに巻き込まれるなどあってはならない。ましてやそれが尋常の精神と肉体を持ち合わせない異形、狂人の輩なら尚の事。

 

 

 〈余所見回シテンジャネェーーッ!〉

 

 

一瞬の意識の移りも見逃さない鉤爪の狂人、ガラドールがその咆哮さえも置き去りにせんばかりの速度で駆け抜けて鉄爪を突き出した。

 

 

ガラドールの脳内に飛び散る愛しき鮮血と鉤爪から伝わる死を与える快感という歓喜の光景が浮かんだ。

 

しかし風切り音が鳴り、ガラドールの爪は空振り。

 

すぐさま銃撃が響き、鮮血を飛び散らせたのはガラドールの方。

 

 

ギリギリまで攻撃を引き付けたレオンは、胴体めがけて迫りくる突きにバク転を合わせて回避する。胸元の服の生地に僅かに掠るかどうかの紙一重の回避。

 

これにより相手は命中を確信し、しかし遅れて脳に送り込まれる現実という名の不都合な情報の前に動揺し動きを止める。

 

その隙にガラドールの胸に意趣返しの様に叩き込まれた数発の銃撃。弾丸が食い込むもガラドールの胸筋に阻まれ臓器までは届かない。

 

 

 「鬼龍のアレ程では無いが…まぁ、お前程度ならこんなものだ」

 

 

だが小さなダメージのそれも小馬鹿にするような挑発と合わせれば相手を怒りで平静を失わせることも可能。

 

 

〈ウガアアアアアッ!〉

 

 

マトモな言葉すら半ば忘れてガラドールはまた駆ける、デタラメに鉤爪を振り回しまくっている。もとより凶暴すぎて普段は拘束されていたガラドール。

 

その殺戮欲求を怒りで刺激されれば、もはや戦闘に置ける段取りや戦術など考えることは出来ない。

 

鬼龍の戦いを間近で見、己もまたプラーガの寄生体と戦ったレオンもまた、プラーガに寄生された者特有の感情の制御が困難故に精神的な揺さぶり、特に挑発の類いに弱いという弱点を見つけていた。

 

 

そしてそれだけではない、ガラドールにはもう一つ弱点があることにレオンは気付いていた。

 

振り回される鉤爪を躱しながらもガラドールの動きを見れば確かな違和感を覚える。

 

レオンが反撃の構えを見せた時、或いは攻撃後の僅かな隙にほんの一瞬不自然な硬直や何かを庇うような動きを見せる。

 

それは知性ではなく肉体に備わる本能がそうさせる。

 

レオンはこの動きの理由に覚えがあった、6年前のラクーンシティ、地獄の只中で会敵した一際恐ろしい怪物達。

 

 

アンブレラの傑作たる人造の魔人、神の領域に踏み入った狂気の天才。ソレらに共通した弱点、つまり体外に露出した主要な臓器。

 

人が作りし怪物達に込められた人間の忌むべき業の現れかの様に共通した目に見える弱点、その歪な在り方。

 

 

 

 〈ココデハ俺ガ処刑人ナンダヨ、罪人野郎ーッ!〉

 

 

咆哮と共にまた鉤爪を突きだす、もはやそれはレオンには当たるはずもない。引き付けたそれをスライディングで潜って躱す。

 

同時に背後へと回り込み、滑り込んだ体制のまま片手だけ向けて拳銃を発泡した。

 

感覚のみで撃たれた弾丸はしかし、研ぎ澄まされた神経がノールック・ショットを可能とする。

 

 

 〈ウ、ウバァッ!〉

 

 

この戦闘においてガラドールが初めて苦痛から来る叫びを上げた。レオンのノールックで撃ち出した弾丸はガラドールの背後から命中した。

 

 

 「やはりそうか」

 

 

振り向いたレオンの前には背を庇いもだえ苦しむガラドールの姿、ショットガンですら怯みもしない強靭さを持つガラドールがたった一発の拳銃での銃撃で大ダメージを受けている。

 

 

 「弱点は背中か、大方剥き出しの寄生体でも付いているんだろ?」

 

 

レオンの推察は当たっていた、ガラドールの庇われた背後は肉がこそぎ落とされましたかの様に抉れ、内部の脊髄とそれに寄生したプラーガが露出していた。そしてそれは今、レオンの銃撃を受けて傷つき血を流している。

 

 

 〈ハウウッ…グウウ……〉

 

 

唸るような声を上げて狼狽するガラドール、受けたダメージが理性を呼び戻しその闘気が減少した。しかしそれも一瞬。

 

 

 〈ウガーッ!ダカラナンダッテンダ アーッ!?〉

 

 

一瞬で殺戮のボルテージを上げ直したガラドールが再度、爪を振り回して前進する。またデタラメのように見えて以前より隙は減少していた。高密度で振るわれるそれはまさに迫りくる斬撃の壁。

 

 

 〈一本道デコウスレバオ前ハ何モ出来ナインダヨ!オラーッマタ滑リ込ンデミロッ〉

 

 

高速展開される斬撃を前にレオンは至って冷静、作戦立てをしてもやはり暴走した脳では肉体のスペックを十全に活かすことは出来ない。

 

 

レオンが取り出した手榴弾のピンを抜きしばらく待って投擲する。上方に放り投げるのではなく、すくい上げるフォームで下方に転がる様に投げられた手榴弾。

 

それは振り回されるガラドールの爪に弾かれることなく股下を潜り背後へと。

 

 

 〈サッサット死…ン!?ナンダ…?〉

 

 

その直後、破片と灼熱を全方位に展開する大爆発がもたらせれる。当然その爆発に背を向けたガラドール、その背後の露出した脊髄に破壊のエネルギーが叩き付けられる。

 

 

 〈 ウ ア ア ア ア ア ア ア ! 〉

 

 

 

絶叫してのたうち回るガラドール、一発の銃撃ですら大ダメージを受ける弱点に手榴弾の破壊力。その背は黒く焼け焦げ、宿主の死を感じたプラーガがへし折れた脊髄の付近でのたうつ。

 

 

息を荒らげて這いつくばるガラドールにはもはや戦意は無かった。自分に近づく足音に顔を上げれば、そこにはガラドールを見下ろすレオン、太陽の光を背にして影のかかった表情は見えず。

 

 

 〈ハ、ハヒッ…ハヒィ……ヒィエエエ!〉

 

 

死を強く認識したガラドールが恐怖に支配された、無我夢中でダメージも忘れて立ち上がり、向かってきた逆方向へと駆け出した。

 

 

 「何処へ行くつもりだ?決着はまだだろう」

 

 

その眼前に鬼龍!アルマデューラを蹴散らして前方から戻って来た鬼龍、漆黒のコートをはためかせ冷徹な両目でガラドールを見据える。

 

 

 〈アウウッ…〉

 

 

生存本能から冷静な思考を取り戻したのが返って災いする。視覚を引き換えに得た気配の感知力が、並外れた強者の生命を眼前に感知した。

 

駆けていた両足を止めて立ち止まってしまう。その背後からガチャリという金属音、そしてジャキンという何かの構造が作動する音。

 

銃口を向けた音、そして弾を込めた音。

 

背後に追いついたレオンが散弾銃を突き付けていた、その距離、ガラドールの背の寄生体から50cm。

 

 

 「じゃあな」

 

 

ガラドールが何かを言おうとした、そしてそれより速くレオンが散弾銃の引き金を引く。超至近距離で放たれた散弾はほぼ全てがガラドールの弱点に殺到し、内部の寄生体を完全に破壊した。

 

 

 〈…フニッ………〉

 

 

消え入りそうな断末魔を残してガラドールはうつ伏せに倒れ伏す、縫い合わされた眉の中では両目の瞳孔が開いている事だろう。

 

戦いが終わり、鬼龍がレオンへと歩み寄って話しかける。

 

 

 

 

 

 「ほう、無傷か そうでなくてはな、あれ以上このマヌケに手間取るようでは俺が代わりに終わらせてやろうとも思ったが…」

 

 

 「それはご親切にどうも、二人も無事か?」 

 

 「あぁ問題は無い」

 

 「よし、アシュリー達を呼びに行こう」

 

 「……レオンよ、一つ聞きたい」

 

 「ん?なんだ」

 

 

 「お前はあのラクーンシティを生き延びた…つまり化け物と殺し合うのは今回が初めてでは無い」

 

 「この俺もそうだ、クソみたいなテロリストのアジトで飼われている化け物共を何度か見た」

 

 「その中で面白いデータを見つけてな…」

 

 

鬼龍が静かに囁くような声で話す、その口角は釣り上がり、どこか不穏な気配を発する。レオンは鬼龍の考えは不明だが恐らく真っ当な理由の問いでは無いのだろうと直感する。

 

 

 「今は無きアンブレラの残した生物兵器…お目にかかった事は無いが、俺が見たデータが事実ならば興味深い」

 

 「“暴君”の名を冠した生物兵器だ、心当たりはあるか」

 

 

レオンは俯いてしばし押し黙る、その様子から鬼龍には答えが解っていた。だが口を挟まずレオンの答えを待った。

 

 

 「…あるな、断言は出来ないが恐らく…」

 

 「あの街で俺はソイツと会った、そして戦った」

 

 「鬼龍、お前が何の目的でそれを知りたいのか知らんが…いや、想像が出来ないわけでは無いがとにかく」

 

 「俺にとっては忘れたい話さ、もう二度と出会いたく無い相手だ」

 

 「…そうか、充分な答えだ」

 

 

それきり鬼龍は口を閉じてレオンと一緒に他の者達と合流した。表情には微かにしか出さないが、その心情は僅かに上機嫌なものだった。

 

合流した鬼龍達は崖下の道を超え、村の終点へと向かっていった。

 

 

 

 




◇奥には何が…?
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