TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第16話

 

 

 

 

村と城を繋ぐ架け橋の先、一軒の倉庫のような建物がある屋外の広場、先刻まで邪教徒とアルマデューラが陣取っていた場所に今は鬼龍を含めたレオン達7人の姿があった。

 

 

 「それで、今からあの城へと忍び込む訳だが…」

 

 「まぁ間違いなく奴らが入り口を守ってるだろうな」

 

 「ここから行けばまず監視塔と城門の広場、その先には詰め所、それを超えれば城への入り口だ」

 

 「そのどちらでも戦闘が予想されるな」

 

 「あぁ、潜む場所の多い城門広場、兵の駐留場所となる詰め所、あと広場には投石機なんかもあったけな」

 

 「イカレ野郎共が暴れるにはうってつけだぜ」

 

 

 

城への潜入作戦を議論するレオンとルイス、出来得る限りのリスクを回避しなければ自分達への危険が高まるのだ。

 

 

 「鬼龍、お前の意見を聞かせてくれよ」

 

 「下らん、コソコソとネズミの様に忍び込む必要などあるか 邪魔な連中をブチのめして堂々と入ればいい」

 

 「おいおい、ムチャクチャ言うなよ こっちはお前みたいに化物のパンチを素手で受け流すなんて出来ないんだぜ」

 

 「俺一人なら連中を気づく間もなく皆殺しにしてやるよ、何ならお前らはここでゆっくり震えて待ってれば良い」

 

 「サドラーもその他のクズも全員俺が始末してやる、お前達に変わってな」

 

 「ケッ、嫌味なヤツだぜ」

 

 

 「はいっ俺達はそれでも良いですよ」

 

 「もうついて行っても役に立てないだろうしな」

 

 「確かに投石機があるなら大人数での移動は危険だよねパパ、アシュリーが危ないのね」

 

 「(パパ…?)え、えぇ…守って貰っておいてこんな事言うのは厚かましいかもだけど…確かに安全な方が良いわね」

 

 

 「……よし、じゃあこうしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

石材が積み上がり出来た監視塔、その上の通路を巡回する信徒達が広場に踏み入る人影を認識した。

 

 

 〈ナニッ 未寄生蛆虫ダッ〉

 

 〈アカンヤン、ハヨ殺サナキャ〉

 

 〈人数ハ幾ツナンジャア〉

 

 〈二人ダアッ〉

 

 

 

その人影は2つ、警官服の上にジャケットを羽織った金髪の男、もう片方はオールバックの黒髪でロングコートに見を包む筋骨隆々の大男。

 

鬼龍とレオンが広場に踏み入り、堂々とその場を練り歩いていた。

 

 

 「まず俺と鬼龍が先行し、脅威となる敵を排除する…二人なら人数が足を引っ張ることもない」

 

 「それにお前ならこの程度、危険は無いだろうしな」

 

 「ふん、好きにしろ…言っておくが助けを求めれば俺が答えるなどと愚かな期待は持たぬ事だ」

 

 

 

その時、広場を見下ろす形で取り囲む幾つかの高台から炎の光が照らされる。見ればそれは轟々と燃え盛る火に包まれた巨岩が投石機に込められていた。

 

 

 〈殺セーッ〉

 

 

掛け声と共に投石機の装置が起動して燃える岩石が宙へと高速で放たれた!

 

 

 「来たぞ!」

 

 

地面へと着弾し轟音と炎を撒いて砕け散る巨岩、勿論その下には鬼龍もレオンも居ない、既に脅威の排除に向けて物陰を通り、駆け抜けているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ほう、これが城門か…俺一人なら超えられんことも無いが……」

 

 

投石機により降り注ぐ岩石を躱し、信徒達の目を容易く掻い潜った鬼龍。巨大な城門の前に立つ、当然のことかんぬきで封じらており城門が開くことはない。

 

見上げる鬼龍の後方の何処かでは投石機の着弾音に混じってライフルの甲高い銃声が鳴る。レオンの撃つ反撃の銃撃が、投石機を起動させる信徒達を撃ち抜いて広場の脅威を迅速に排除していく。

 

 

振り向いた鬼龍、それは奮戦するレオンの様子を見るためではない。あたりを見渡し、ふと視線を一箇所に定めた。

 

 

 「ククク、少し派手なやり方も悪くない」

 

 

不敵な笑いを見せながら、視線を向けた場所に移動を開始する。投石機の着弾により火の手がそこら中から上がる中、まるで散歩のような気軽さでその場を練り歩く。

 

その肉体が炎に照らされ、風でコートがはためいた。

 

揺れる炎の中に潜んだ敵が奇襲を仕掛けた時ですら、悪魔を超えた悪魔は嗤っていた。

 

 

 〈ウオーッオレヲバカニスルナアッ!〉

 

 

 「邪魔だ、クソゴミ」

 

 

 

大鎌を振り上げて奇襲を仕掛ける紫ローブの信徒、不意をついて首筋を搔き切ろうとした刃は鬼龍が上半身を右に逸らす事により呆気なく回避される。

 

反撃とばかりに鬼龍が信徒の片足を蹴り上げる、人体の骨を枯れ枝の様にへし折る鬼龍の蹴撃、最適のタイミングとヒットポイントに命中したその蹴りは信徒の足を一撃で折り曲げて使い物にならなくした。

 

 

 〈ハウッ〉

 

 

うつ伏せに倒れた信徒の首筋を踏み砕く鬼龍。脊椎を砕かれた信徒はそのダメージから体内のプラーガも活動を停止、死亡した。

 

 

そしてその先へと進んだ鬼龍は目当ての場所へと辿り着いた。

 

 

 

 

 

 

その頃─

 

 

 「よしっこれで高台の投石機は全て無力化した」

 

 

投石機による岩石の砲撃を物陰を利用し躱しながら、狙撃銃の反撃で着実に信徒の数を減らしていったレオン。

 

ついに最後の高台に陣取る信徒達を倒し、広場の安全を確保する。

 

辺りを警戒して一先ずは危険がないことを知る、そして広場奥の城門に視線を向けた。

 

 

 

 「問題はアレをどう超えるか…こんな時は大抵近くに鍵か、抜け道なんかがあったりするもんだが…」

 

 

とりあえず城門の様子を見てみようと、その場所に向けて一歩を踏み出したその時、

 

 

投石機の物とはまた違う、より重たい炸裂音が響いた。そして一秒にも満たない一瞬後、今向かおうとしていた城門が大爆発を起こして吹き飛んだ。

 

 

何が起きたか解らず、最初に音のした方角を向けば答えはそこにあった。

 

城門が眺められる監視塔の付近に立つ鬼龍!その横には備え付けられた古い大砲が煙を吐いて鎮座していた。まだ砲弾が込められていたソレを鬼龍が利用したのだ。

 

堅牢かつ巨大な城門は見る影もなく破片となって飛び散った。

 

 

 「……なるほど、スマートなやり方だな」

 

 

鬼龍が監視塔付近の階段を降りて来るのが見える、相変わらず傲岸な笑みを浮かべている。

 

 

 「驚かしてしまったか?悪かった」

 

 「まさか俺に当てる気だった訳じゃないよな」

 

 「ククク、頼りになる仲間に俺がそんな事をするハズが無いだろう」

 

 「どうだか……なぁ鬼龍よ」

 

 「なんだ」

 

 

 

周囲から脅威が消え去り、先への道も開かれて、広場に静寂が訪れる。この際にレオンは兼ねてより疑問に思っていた考えを鬼龍にぶつける事にした。

 

 

 

 「お前の目的は、教団を相手に武術の腕試しをしたい…本当にそれだけなのか?」

 

 「疑問に思うか、さっきも言ったが飼い慣らされた化物と戦うのは初めてでは無い」

 

 「確かに教団の存在と、教団が何かしらの生物兵器を使用しているという情報は初めから知っていた」

 

 「やっぱりか、何故それを黙っていた?」

 

 「教える義理も無かったんでな」

 

 「さっきもアンブレラの生物兵器の事を聞いたな、鬼龍、まさかお前は…」

 

 

 「いいや、それは無い」

 

 

 

鬼龍はレオンの問い掛けの真意を読み、先んじてソレをハッキリと否定した。

 

 

 

 「断言するが、俺が生物兵器を利用することなどあり得ない」

 

 「確かに奴らの持つ戦闘力は戦いに身を置く者として、殺り合いたい衝動に駆られる魅力があるのは確かだ」

 

 「だがそれは生物兵器を認めた訳じゃない」

 

 

 「人間の目的の為だけに生み出された生命…ましてやそれが人ではない怪物ならば尚の事」

 

 「俺は認めない、愛も絆も伴わなず、欲望と薬品塗れの冷たい試験管の中で生み出された生命など」

 

 「そしてそんなものを手にして粋がるクズ共もな」

 

 

 

普段の鬼龍は他人の問いに対してははぐらかすなどして真摯に答えることは稀だが、今の鬼龍が言い放った言葉に込められた怒りにも似た強い思いが、この発言が嘘ではないとレオンに感じさせた。

 

 

事前に知らされていた鬼龍の情報、経歴、思想、性格。

 

悪逆無道ながら己以外の悪人にも時としてその魔手を伸ばす、その中で鬼龍の中に何かしかの信念が、許容出来ぬボーダーラインが存在し、生物兵器を使用した犯罪がそれに触れると考えても不自然は無かった。

 

 

 「そうか…まぁ、敵では無いなら今はいいさ」

 

 「今、お前達をぶちのめすつもりは無い…しかしだからといって俺が善意で手を貸している等と不愉快な勘違いはするなよ、レオン」

 

 「俺にとってはアシュリーさえ守ればそれでいいんだからな」

 

 「女は殴るものでは無く愛でるもの…男には試練を、女は愛を……か? 意外だが情報通りだな」

 

 「ふん…さっさっと残りの奴らも連れてくるがいい…もう広場に敵はいない」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして暫くした後、城門広場を超えた詰め所にてレオン達は集合していた。周囲には複数の小屋、中には椅子と長テーブル、立て掛けられた武具や火薬樽等が見られる。

 

そしてあちらこちらに倒れ伏した信徒達と戦闘の形跡が。

 

 

 

 「詰め所にもやはり敵が控えていたな」

 

 「あれだけデカい音が聞こえてくればそりゃ気付かれるか」

 

 「ムフフフ、雑魚キャラ信徒なんて相手にならないのね」

 

 

 「あの偉そうな赤ローブも手下の黒服も皆倒してきたしな」

 

 「まぁ俺達は後ろで立ってただけやがなブヘヘ」

 

 「でも…中に入ればまだアイツらは居るんでしょ?」

 

 「ウム…いい加減俺達はヤバいかもしれないんだなァ…」

 

 「このままでは避けられない死を何処か予感する、それがボクです」

 

 「ククク怯えることはないよ、それについては考えていた提案があるのね」

 

 

 「手速く片付けられたのは幸運だったな、それに向こうの小屋で鍵の様な物を見つけた 恐らく城への扉を開く為の物だろう」

 

 「ようやく乗り込む訳だな、敵の本拠地に」

 

 「このまま隠れていたって事態は好転しないだろうからな、危険だろうがしょうが無いんだ」

 

 

 

装飾の入った城の大扉の前に立つレオン、手にした鍵を使えば、想像通りガチャリという音と共に扉の封が解ける。

 

そのまま扉を慎重に開けて内部へと侵入した。

 

 

最初に目に飛び込んだのは小ぶりのテーブルに椅子、壁につけられた絵画、そして2階へと上がる階段。

 

登った階段の奥に見えるのは壁に備え付けられた辺りを照らすトーチ、そして棚に置かれた武装の数々。

 

 

 (兵舎…ってとこか)

 

 

レオンは辺りの気配から生物の気配を感じ取る、それは己の頭上、即ち階段を登った二階から漂っていた。

 

 

振り返って城へと入ってくる他の者達に声を出さず合図をする、まず人差し指を立てて口元の前へ、その後に階段と二階を指差した。

 

後続の者達はその仕草で言わんとしている事を理解する、そして同じく声を上げずに、極力静かに兵舎へと踏み入った。

 

 

レオンに続きルイスが、そしてルイスに続いて鬼龍が踏み入る。鬼龍は既に漂う気を感知し、2階に控えた敵の数を把握していた。

 

 

 「3人か」

 

 

音も無く駆ける、階段の中腹まで一瞬で移動し、その場所から背後にターンをしながら軽やかに跳躍した。

 

階段を四角に包む取っ手に降り立つ、そのほんの横幅数センチの足場からまたもや音も無く続けて跳躍。

 

 

 〈…ン?〉

 

 

2階には長テーブルと椅子、そしてそこに座る3人の信徒。

 

まず階段から最も近く、かつ跳躍した鬼龍に背を向ける位置にいた信徒が餌食となる。

 

気配を感じて振り向こうとしたその頭部を蹴り飛ばされる、パァンという小気味よい破裂音と鮮血を撒いて頭部が四散する。

 

 

 〈クソボケガーッ〉

 

 

そして二番目に近い位置にいた信徒、椅子から立ち上がり、腰に備えたフレイルを手に持った。

 

そこで長テーブルを足場とした鬼龍に急所を蹴り砕かれて絶命。

 

最後に最も遠い位置にいた三番目の信徒、幸運にも他の二人と違い、武器を取り出して立ち上がるだけの時間があった。

 

 

 〈コラーッエエカゲンナコトスルトギョククラワスゾーッ〉

 

 

矢の装填されたクロスボウを鬼龍に向ける、その矢には先端に火薬が仕込まれており、矢じりが発火して殺傷能力が強化されている。

 

信徒が引き金を引けば風を切る音と共に矢が放たれる、しかし鬼龍はそれより速くに動き出していた。

 

足場とする長テーブルを踵落としで叩き割る、横に真っ二つになった長テーブルが反動で鬼龍の前方に跳ね上がった。

 

一瞬にして目の前に木製の盾を展開した鬼龍、クロスボウの矢はその長テーブルに阻まれて鬼龍には届かない。

 

両断された長テーブルが床へと落下する、しかしもうその後ろに鬼龍は居ない。

 

 

右、左と慌てて辺りを見渡す信徒、すると突然首元に力が加わり視界が切り替わる。そしてその眼の前には鬼龍!

 

見つけたぞ!と声を上げようとして気付く、自分の体が動かない。自分の視界があり得ない方向を向いていることに。

 

信徒の背後に瞬時に回った鬼龍は信徒の首を一瞬にして180°捻り曲げていた。そのことに遅れて気づいた信徒はゆっくりと崩れ落ちて絶命した。

 

 

 「味方が戦ってる間、楽しくお喋りでもしていたか?」

 

 

その後、階段を駆け上る音が聞こえた、レオン達が駆け付けて銃を構えて周囲の様子を探る。安全になったと理解すれば手にした銃を下げた。

 

 

 「鬼龍、敵はそれで最後か」

 

 「つまらん質問をするな、こんな連中、数が揃わん限り楽しむほどの価値もない」

 

 「それにしてもこんなところで揃ってサボりなんて怠け者なのね」

 

 「自我はとっくに失ってるが生前の習慣を模倣する性質があるからな…元になった個人の性質が出たという所か」

 

 

 「何はともあれ無事に侵入成功だ、それでこの後だが…」

 

 「あぁ城に入ったら商人から提案があるんだったな」

 

 

 

やがてレオン達は全員が2階へと移動し集合する、先へと続く出口のロックされたドアの仕掛けを解きながら、今後の方針について語り合う。最初に声を上げるのは武器商人だった。

 

 

 「そう、実はね…」

 

 

 「共に戦うのは村を超えるまで…この城からは別行動を取る協力者に変身するの」

 

 

 




◇その真意は…?
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