TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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新年開けてのタフ小説投下だあっ


第19話

 

 

 

 「我ガ名ハ ヴェルデューゴ」

 

 

素顔を晒した赤ローブの護衛、ヴェルデューゴ。それと同時に今までローブの袖の中に隠していた両腕の掌もあらわにする。

 

鬼龍が先程垣間見た通り、その手の五指は異様に長く、そして研ぎ澄ました刃物の様に鋭い形状で光を反射している。

 

艶のある漆黒に金属の様な光沢を放つヴェルデューゴの表皮、その強度は見た目の印象以上に高い。

 

 

 「硬質化した細胞甲殻とでも呼ぶべきか…恐らく並の銃撃では突破は不可能」

 

 

 「タダノ銃弾ダケデハ無イ、機関銃、手榴弾、果テハ火炎放射器ニ至ルマデ」

 

 「コノ肉体ハ戦闘時ニ想定サレルアラユル攻撃ヲ無効果出来ル様ニ作ラレテイル」

 

 「言ウマデモナク人間ノ、シカモ素手ニヨル殴打ナド全クノ無駄デシカナイ」

 

 

 「デカい口を叩くな、結局は貴様も与えられた力に増長する愚図でしか無い、まるで玩具を買い与えられた子供かなにかだ」

 

 

 「ククク、酷イ言ワレ様ダナ マァ事実ダカラショウガナイケド」

 

 

 

 「鬼龍のオッサン!待たせたな!」

 

 

鬼龍とヴェルデューゴ、睨み合う両者の間で殺意がまた増大していく、戦闘が再開されるかと思われたその時、階段下での戦闘を終わらせたレオン達が駆け寄ってくる。

 

上で戦闘が起きてることは承知しているレオン達は、階段を登り切るとすぐさま銃器を構え、標的めがけて撃つ姿勢を整える。

 

 

 「なんだあっ コイツは!?」

 

 「その昆虫見てぇな面は、やっぱりノビスタドールの派生だったか…!」

 

 「軽々しく手を出すな、銃弾なぞコイツには通用せんぞ」

 

 

乱入者の登場にも動じず、ヴェルデューゴは暗視カメラに写る野生動物の目の如く発行する両目をレオン達にも向けた。

 

 

 「オ前ガ米国ノエージェント、レオン カ……加勢ノ前ニアシュリーヲ隠レサセタ慎重サハ褒メテヤル」

 

 「ソシテ裏切リ者ルイス…ソウダ、正解ダ、私ハ ノビスタドール ノ改良種ニシテ完成形」

 

 「教団ヲ抜ケル直前マデ生物兵器開発ニ携ワッテイタオ前ノコトダ…私ノ能力ノホドハ理解出来ルダロウ」

 

 

 

不遜に言い放つヴェルデューゴから立ち昇る気の奔流、鬼龍のみならずレオンとルイスにもそれが目で見えたと錯覚するほど感じられた。

 

滞留する冷気の様な無色の殺意がヴェルデューゴの肉体から発散し渦を巻いている。

 

 

 「ルイス、コイツに弱点はあると思うか」

 

 「恐らくは、無い…元来人間が素体となった遺伝子操作実験の検体は成功例であっても殆どが欠陥を抱えていた」

 

 「それは知性の消失による制御の困難さであったり、寄生したプラーガが急所となる事による弱点の出現などだが」

 

 「ノビスタドールはそのどちらも見られなかった、代わりに他の弱点が存在したが…完成体というからにはきっとそれも」

 

 

 

 「ソウダ、私ニソノヨウナ弱点ナド無イ」

 

 「知性ハ改造前ト据エ置キ、骨格ト外殻ヲ遥カニ強靱ニ作リ変エタ」

 

 「飛行中ハ耐久性ガ激シク低下スルトイウ弱点モ、飛行能力ヲ失クス代ワリニ克服シテイル」

 

 

 「支配種ヲ宿ス幹部トサドラー様ヲ除イテ…」

 

 「生物兵器トシテ、一生命体トシテ最モ優レテイルノガコノ私ダ」

 

 

 「サァ御託ハモウ終ワリダ、処刑者ヴェルデューゴ ガゴミ処理ヲシテヤル」

 

 

ヴェルデューゴがとうとう会話を打ち切り、戦闘を再開させんと五本の刃物と化した手を構える。鬼龍との打撃戦の時とは違い、袖の外で開かれたその掌は人間の骨肉など画用紙を千切る様に切り裂くだろう。

 

 

 「私ハ命令トアラバ、自分デ自分ガ恐ロシクナルホド残酷ニナレルンダ!」

 

 「笑イナガラ子供ヲ切リ分ケテ、親ノ口ニ肉片ヲ突ッ込ムコトダッテデキル」

 

 「ソノ精神ヲ評価サレ、改造実験ニ選バレタノダ!コノ私ガ!!」

 

 「サァ血ヲ流スガイイ!教団ニ仇ナス者ニ神罰ヲ!」

 

 「一闡提ニ血ノ粛清ヲ!!」

 

 

 

両手の鋭爪を振り回しヴェルデューゴが突貫する、その速度は比類なく、正しく赤に染まる疾風そのもの。

 

 

そして真正面からそれを迎え撃つ対象的な漆黒の突風、同じく高速で踏み込み接近する鬼龍だ!

 

 

 「やってみるがいい、血を流してくたばるのは貴様の方だ!」

 

 

今までのどれよりも大きく大気を震わせる空を打つ音が水の間に響き渡り震わせる。真正面からぶつかりあった鬼龍とヴェルデューゴの振り抜いた右腕が交差する、互いが互いの攻撃をぶつけることで止めていた。

 

 

その際に生じた衝撃は轟音を鳴らすだけに留まらず、周囲に強い疾風の波動を生み出した。たった一撃交えただけだというのに、辺りの床に敷かれた絨毯が弾け飛ぶ。

 

両者を囲んでリングの形で円形状に床が浮かび上がる、それは気の結界、両者の有り余る気の濁流がぶつかり合い、達人の御業である気の結界を作り出した。

 

 

 「完成されたその肉体とやらを俺が完全に破壊してやるよっ」

 

 「不心得者ガ…笑ワセルナッ」

 

 

 

拮抗し合う両者の力、交差してぶつかり合った右腕が刀剣による鍔迫り合いの如くギリギリと音を立てて力が込められる。

 

やがて両者同時にその手を払い除ける、一瞬にして体制を立て直した両者の攻防が再開される。

 

 

ヴェルデューゴの振るう両手の鉤爪、ガラドールのそれと違い、一切の無駄な動きも無く急所目掛けて最短の動作で振るわれる鋭爪。

 

それは鬼龍の急所を捉えることはない、紙一重の直前に回避する。しかしそれと同時に鬼龍の攻撃もまた命中することはない。

 

ヴェルデューゴが人外の動体視力を持って躱し、或いは捌いて無効化する。両者の打ち合いは激化する。

 

 

 

 「見ろ!あの床にできた円の中に入ったまま打ち合ってるぜ!」

 

 「鬼龍とヤツの戦闘力が完全に拮抗しているんだ!故にどちらかが退く事は無い!」

 

 

 

何の前触れも無く突然、強烈な鞭打ちの音が鳴る、それは鬼龍が謎の攻撃で体制を崩した時と同じ音だった。

 

 

 「ばぁーっ」

 

 「ナニッ」

 

 

しかし鬼龍は両足で少しのふらつきもなく床を踏みしている。力を込めて踏み抜かれた龍腿の硬化した筋肉は来ると解っている攻撃では怯むことがない。

 

 

足払いの攻撃を仕掛けていたのはヴェルデューゴのローブの足元から伸びる触手のような何か、ヴェルデューゴの表皮と同じく硬化細胞に包まれ、先端に爪よりも大きく鋭利な刃を携えた触手。

 

それはヴェルデューゴの尾だった、サソリの尾を何倍も凶悪にした様な形状の刃尾だった。

 

 

 「二度も同じ攻撃が通用するかあっ」

 

 

鬼龍が高く跳躍する!足を払われたというのに少しのダメージも無くヴェルデューゴの身長を遥かに越して飛び上がった。

 

不意をつかれて上空から来る攻撃にヴェルデューゴの対応が遅れる。その顔面に悪魔を超えた悪魔の一撃がもう一度叩き込まれる。

 

 

 「灘神影流 “鷹鎌脚”」

 

 

横薙ぎの鋭い蹴撃が風を巻き立ててヴェルデューゴの頭部を強く打ち付ける。かつて鬼龍と同じく灘神影流を収めたある男が得意としたその技、その男の手に掛かればそれはもう打撃では無く斬撃、日本刀のような切れ味でスイカを軽々両断する。

 

その男の鷹鎌脚が日本刀ならば鬼龍のそれは鉈、より重く荒々しい斬撃となって獲物を切り裂く。

 

ヴェルデューゴが大きく後退し、円を超えて後ずさった。

 

 

 

 「ガヌウッ…キ、貴様…!……ボウッ!?」

 

 

手で抑えて俯いていた顔を上げる、その両目には強い憎悪の色で支配されていた。そしてその瞬間、ヴェルデューゴの眉間に更に深く鋭い衝撃が走る。

 

 

 

 「黙って見てるだけのギャラリーだとでも思ったか?」

 

 

甲高い銃声はライフル、そして撃ったのはレオン。ヴェルデューゴが意識を鬼龍のみに向けた一瞬を逃すことなく即座に射撃、ライフル特有の一点集中の破壊をもたらす弾丸がヴェルデューゴの眉間を打つ。

 

その箇所は鬼龍の斧旋脚と鷹鎌脚が命中した箇所だった。

 

 

 

 「やったぜ!鬼龍の蹴りとレオンのライフル、ダメージの蓄積で硬化細胞を貫いた!」

 

 「迂闊だったな、銃弾が効かないからと言って俺達から気を逸らすなんて」

 

 

 「……いや、どうやら勝ち誇るのは早いらしい」

 

 

 

予想外のダメージで動揺しふらつきながらもヴェルデューゴは倒れない、それどころか仰け反りから回復したその頭部からは一適の血液すら流れていなかった。

 

 

 「貴様ラ…」

 

 

ライフルの銃弾は確かに髑髏の様なヴェルデューゴの顔面、着弾地点にヒビを入れて突き刺さっていた。だが貫通はおろか内部の血管や大脳にまでも届いていない。

 

ヴェルデューゴの強固な装甲で止められていた。

 

 

 

 「でえーっ!どこまで頑丈なんだコイツ!」

 

 「これがプラーガ兵器の完成体か、凶悪さはアンブレラの生物兵器と比肩する…」

 

 「まだ死んでないのならさっさと来い、それとも今さら臆したか」

 

 

 「………ククク」

 

 

ダメージから完全に復帰したヴェルデューゴ、眉間に刺さる弾丸を摘んで引き抜き捨てる。その様子を見るに今までの感染体に見られたダメージを受けて怒りと殺意に支配された兆候は無い。

 

 

 「認メテヤル…オ前等ヲ対等ノ敵トシテ認メテヤル」

 

 

 「なんだと?どういう意味だコイツ」

 

 「気を付けろ、様子がおかしいぞ」

 

 

 「対等だと?貴様と俺がか?どうやら貴様の思い上がりはその不出来な脳味噌を撒き散らさなければ治らないようだな」

 

 

 

 「コノ城ハ広イ…ソシテ私ハ処刑ヲ楽シム事ニ決メタゾ」

 

 「今ハ見逃シテヤル、ダガイズレマタオ前等ヲ処刑シニ現レルゾ」

 

 「イツトモ知レヌソノ時ヲ恐怖シテ待ツガイイ、先ヘト進ムホドソノ恐怖ハ大キクナル…」

 

 

ヴェルデューゴが突然両足に力を込めて後ろ向きに跳躍、一息で水の間のレオン達から見て出口、己がサラザールと一緒に入ってきた扉の所まで瞬時に移動してみせた。

 

 

 

 「野郎、逃げる気か?」

 

 「もう間に合わない、下手に追い掛けるべきじゃ無いな」

 

 

 「素直に言ったらどうだ、思っていたより手こずったので負けがよぎって怖くなりましたとなあ」

 

 

 「ナントデモ抜カセ…」

 

 

ヴェルデューゴが不意に二つに割れる口を開いて奇っ怪な叫びを上げる、人の声と昆虫の鳴き声が混ざった様なそれが広場に木霊し、数秒後、水の間の抜け道から続々と新たな敵影が躍り出てくる。

 

その影は姿を現すと同時にそれぞれが跳躍、しかし一向に着地せず、なんと飛び上がった空中に留まっている。

 

周囲に続々と増えて響き渡る不気味な羽音の合唱。

 

 

 「コイツらはノビスタドール!」

 

 「そうか!完成体なら同じ系統の生物兵器に命令を下せてもおかしく無い!」

 

 

 「昆虫人間か…一段と醜い姿だ、見るに耐えん」

 

 

 

四肢と骨格などは人体に近い、だが灰色の滑りがある表皮、手足の爪と融合し伸びた指、頭から突き出る二本の触覚、背中から生えて今なお羽ばたく羽、横に並んだ複数の眼球、二つに分かれた捕食口、そこから垂れる唾液は床に落ちればその箇所を溶かして煙を上げる。

 

正しく昆虫人間と形容する他に無い外見の怪物が群れを為して襲い掛かった!

 

 

 「撃ち落とせーッ」

 

 「羽ばたく今なら楽に殺せるッ!空中にいる間は透明化も使えない!」

 

 

レオンとルイスが拳銃を抜いてすぐさま応戦、飛来するノビスタドールを次々と撃ち落としていく。ルイスの話し通りに空中で撃たれたノビスタドールは落下して絶命する。

 

比較的威力の低いハンドガンだというのにほぼ一撃で絶命させている。

 

バランスの取れない空中からか、とにかくそれがノビスタドールの弱点であった。

 

 

 「ふん…」

 

 

突如、鬼龍がルイスの前に躍り出たかと思えばその剛脚で何も無い空を蹴り上げる。

 

ルイスが疑問に思う間も無くその真意が判明する、断末魔の声を上げて頭部を潰されたノビスタドールの死体が何も無い空間から現れて吹き飛ばされた。

 

 

 「なにっ」

 

 「透明化して近づいていたのか!」

 

 「す、すまねぇ、助かった」

 

 「自分が作り出した怪物に殺されるなど笑い話しにもならんぞ、だが確かに大した擬態能力だ…」

 

 「しかし所詮は理性なき怪物、姿は消せても気配を消す術は知らん、集中し気を探れば透明化していても解るはずだ」

 

 

 「んなこと言ったってよ、出来る訳ねぇだろ」

 

 「……………」

 

 

レオンが目を瞑り集中を研ぎ澄ます、レオンには鬼龍の言うところの気を感じるという技術に覚えがあった。

 

それは自分自身、地獄の体現と化したあの街で何度か体験した現象。

 

極限究極の死地に立たされた時、相手の動きが先んじて読める、物陰に潜む敵の気配を感じる。

 

背後から襲い来る敵の見えぬ攻撃を見えぬままに避ける。

 

隠れた敵の息遣いを聞こえぬままに察知する。

 

殺意を辿って、見えぬその敵の明確な輪郭までもが脳裏に浮かぶその現象。

 

 

 「そこだ」

 

 

見開いたレオンの目には、透明化したノビスタドールの姿が視えていた。その空間だけ、ノビスタドールの輪郭を持ってぼやける様に見えている。

 

 

その場所に狙いを付けて発砲すれば、想像通り頭部を撃ち抜かれて倒れ伏すノビスタドールが虚空から現れる。

 

 

 「マジかよ…!お前も化物か?」

 

 「ほう、既に知っていたか…あの街を生還したと言うなら是非も無しか」

 

 

 「よしっ これなら戦えるぞ!」

 

 

 

残る広場のノビスタドールの数はおおよそ二十、だが残ったものは殆どが地に降り立ち、拳銃だけで対処するのは困難となっていた。

 

拳銃を仕舞い、代わりに散弾銃を取り出すレオン、鬼龍も一切の隙無く構えて迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水の間のとある場所、レオン達が入ってきた側の広場から階段を下った先にある一室。

 

奥の噴水の広場と繋ぐ上がり階段を下ろす為のレバー、それを出現させるためのスイッチが床に備え付けられていた部屋、一対のテーブルと椅子だけがあるその部屋にアシュリーは居た。

 

 

 〈グギャッ〉

 

 「ひっ…あ、あううっ」

 

 

 

ドシャリと音を立ててアシュリーの前でノビスタドールが崩れ落ちる、戦闘が終わるまでこの部屋で隠れていたアシュリー、しかしこの部屋に隠し通路を通ってノビスタドールが現れたのだ。

 

ここまでかと絶望しかけたが、そのノビスタドールも今目の前で事切れた、勿論、それをやったのはアシュリーでは無い。

 

 

 

 「身を隠させるのは結構だけど、少し警戒が足りないんじゃなくて?」

 

 「ましてやここは敵の本拠地、何が起きてもおかしく無い、そうでしょう?」

 

 「あ、貴方は…?」

 

 

 

突然現れてアシュリーを連れ去ろうとするノビスタドールを始末したのは一人の女性。まだ煙を上げる拳銃を仕舞い、アシュリーに向けて軽く微笑んで見せる。

 

艶のある黒髪の女性、鮮やかな真紅のチャイナドレスとハイヒールを身に着けて、しかしその眼光は何処か危うい冷たさの様なものを感じさせた。

 

 

 「安心して良いわ、アシュリー 貴方に危害を加える気は無いもの」

 

 

その言葉に嘘は無いとアシュリーは感じた、だが同時にこの場にいる人間が少なくとも常人では無い事も解り切っていた。

 

 

 

 




◇この女は…?
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