TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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はーっ飽き性蛆虫のワシが20話まで書けるなんてなんか気持ちええなあ


第20話

 

 

 

 

 

 

 「敵でないなら…あ、貴方は何者なの…?」

 

 

水の間の下階にある一部屋、アシュリーは真紅のチャイナドレスの女と二人きりでそこにいた。

 

その女は今、目の前でアシュリーを助けた、だからといってこの状況で警戒をすぐに解くのは出来なかった。

 

 

 「貴女を守る者達とは別の理由でこの場所に用がある人間とだけ言っておくわ」

 

 

 「もしかして…ルイスが言ってた協力者…!?」

 

 

 「あら、感が良いのね」

 

 「そう…ルイスは全て話したの、彼は警戒心が強そうに思えたのだけれど…まぁ、この状況では仕方の無い事かもしれないわね」

 

 「残念だけどお喋りはここまで…また会いましょう」

 

 「私にとっても予想外の出来事が起きている…全ての元凶はあの武術家さんね…」

 

 

 「あっ!待って!」

 

 「ルイスに伝えてちょうだい、サンプルが手に入れば貴方以外もサービスで脱出を手助けしてあげるってね」

 

 

 

アシュリーの静止を気に留めず、部屋の扉を開いて退出する黒髪の女性。慌ててアシュリーが扉を開けて呼び止めようとするも、その姿は付近にはもう見えなかった。

 

扉を開ければよりハッキリと銃声が聞こえる、水の間の階段を下った一本の通路、その中央にあるこの部屋の丁度真上で今、レオン達と怪物の群れが死闘を演じていた。

 

 

 

 

 

 

水の間 噴水広場─

 

 

 

 「組み付かれるんじゃねぇッ 酸で溶かされるぞっ!」

 

 「なぁ聞きたいんだが、こんなに悍ましい怪物の設計をどうやって思いつくんだルイス?」

 

 「嫌味な言い方すんじゃねぇ!研究してたってのも半ば強制的だ!」

 

 

水の間に現れたノビスタドールとの戦闘から数分が経過、その数は健在なれどかなりの数が減少していた。油断こそないが冗談めいた会話が飛び交うのがその証拠。

 

 

そしてまた一体、地上へと降り立つ一瞬の隙を付く鬼龍の瞬間移動の如き接近からの蹴り上げで頭を砕かれ絶命する。

 

 

 「コイツらも十分に醜いがアンブレラの作った昆虫人間には及ばん、テロリスト共が飼っていたハエ人間とそのデータ…ルイスよ、お前にも見せてやりたかったぞ」

 

 

 「良かったじゃないか、本当の外道が作ったものに比べたらマシみたいだぞ」

 

 「慰めにならねぇよ、小馬鹿にしやがって…」

 

 

 

飛び交うノビスタドールはレオンとルイスに撃ち落とされ、地に降り立てば鬼龍の破滅的な拳打が見舞われる。

 

透明化を破られ、大広間で壁を駆ける変則的な攻撃もできず、連携により数の利も機能せず、ノビスタドールの群れはその強みを発揮しきれずとうとう元の数の5分の1にまでその数を減らした。

 

そこでようやく不利を悟ったか、或いは撤退の命令が支配種か成功例から下ったのか、ノビスタドールの群れは姿を表した隠し通路へと消えていった。

 

銃声が止み、広場が静まり返る。レオン達の防衛が成功したことを意味している。

 

 

 

 「ふーっ…やっと終わったか」

 

 「広間で戦えたのは幸運だったな、狭い通路なんかで姿を隠して奇襲されればどうなっていたか分からない」

 

 「あぁ、それがノビスタドール本来の運用だからな」

 

 

 「今のが全てじゃないんだろうな、厄介だ…それよりも今は…」

 

 「そうだ!お嬢ちゃんを迎えに行かなきゃな、ん?鬼龍のオッサンは何処だ」

 

 「もうアシュリーの元に向かったよ」

 

 「ほーそうかい、女相手だと妙に気を利かすオッサンだな、お楽しみの相手に困ってる様には見えねぇけどな」

 

 「そういった台詞は鬼龍の前では言わないほうがいいぞ」

 

 

 

 

 

水の間の入口側の広間の地下廊下、アシュリーがいる部屋の扉が開かれる。開けたのは鬼龍、いつものように荒々しく蹴破る様な真似はせずにゆっくりと開けた。

 

 

 「無事か、アシュリー」

 

 「鬼龍!もう戦いは終わったのね…それでね、伝えたい事があるの」

 

 「あぁ、そうだろうな」

 

 

 

鬼龍の目には常人には見えぬものが見えている、神経を研ぎ澄ませればその場に残された人間の発散された気を辿ってその者達の過去の行動を観測できる。

 

まるで監視カメラに写った映像を再生して見るかのようにその場で起きた事象を知る術があるのだ。

 

 

 「残気…だが薄い、意図的に気配を抑えている」

 

 「何者がここに現れたのだな…アシュリーよ、お前に接触したのはどんな人間だ」

 

 「女の人…敵じゃ無いって、私を助けてくれたのよ」

 

 「…そのようだな、しかし女か、もしやそれは」

 

 「えぇ、ルイスの言ってた協力者よ、サンプルがあれば私達に協力してくれるって」

 

 「ほう‥」

 

 

 

 「アシュリー、無事みたいだな」

 

 「悪いなお嬢ちゃん、正直守りながら戦うのはマズい敵だったんだぜ」

 

 

 

鬼龍の背後からレオンとルイスも合流する、少しの安堵と共に緊張が僅かに緩むが振り向いた鬼龍の発言でまた緊迫したかのような空気が戻ってくる。

 

 

 「先程、アシュリーがルイスの言う組織の者と接触したそうだ 曰く、サンプルと引き換えに全員の脱出に協力すると」

 

 「なにっ」

 

 「なんだと?それでソイツは?何もされなかったか?」

 

 

 「えぇ、私を助けてくれたわ…多分だけど、村から出る時に私達を助けてくれたのもその人じゃないかな」

 

 「あの機関銃での援護か…しかし姿を現さない所を見ると、そう簡単に信用して良いのかどうか…」

 

 「助けを求めた俺が言うのもアレだが、サンプルを欲しがる時点で真っ当な連中じゃあねぇだろうな」

 

 

 「思惑の知れぬ者に期待をするなどあり得ないが、どのみち俺のやることは変わらん」

 

 

 「…そうだな、今は先に進むしかない」

 

 

 

鬼龍を除いた3人の心中には先の見えぬ一抹の不安が残る、だがもはや退却の選択肢は無い以上、進む決意を固める。

 

 

水の間の出口を通るには仕掛けを作動させて水没した道を引き上げなくてはならない。しかし敵に邪魔もされぬのでその工程は何の問題もなく終了した。

 

仮にこれが鬼龍が参戦しない当初予定された作戦通りだったのなら、アシュリーを守りながら敵を排除し、同時進行でその仕掛けを作動させ無ければならなかっただろう。

 

 

水の中から浮かぶ切り離された床を飛び乗って進む、届かずに水濡れになるものは流石にいなかった。

 

 

 

 「ここは…聖堂か」

 

 「集う信者共が狂人ばかりなのが残念なほど立派だな」

 

 

 

水の間の先にあったのは吹き抜けとなって一階と二階がある大広間、天井からは巨大なシャンデリアがぶら下がり、石の彫刻がまばらに配置されている。

 

 

敵影は見当たらず、辺りを探索しようとすれば見覚えのある色が視界に飛び込んでくる。冷たい雰囲気の光を放つ青の炎、そしてそのトーチに照らされた人物。

 

聖堂の隅にある階段の上、二階の踊り場で降りた鉄格子を背にして立つ男。

 

 

 「むっ…ひとまず合流と行くか」

 

 「アイツか…」

 

レオン達はその人物の元まで歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「会いたかったのねぇ!レオン!」

 

 

 「相変わらず喧しい奴だな…」

 

 

フードとコートで全身を包み、マスクで顔を隠したバッグを背負う不審人物。その正体は武器商人、レオン達と別れたあと、どうやら拠点の一つらしいこの場所まで来ていたのだ。

 

 

 「あの警官さん達はどこにいるのかしら?」

 

 「奥にあるあの扉の先にいるのね、三下ガナードの行動の範囲からは逸れているから安心ですよククク」

 

 「それで?何か新しい商品でも増えたのかよ」

 

 

 「そりゃあもうゴリラくらいなら殺せる銃が沢山ありますよ、 それに武器だけじゃない、情報もね」

 

 

ニィーとマスク越しに不気味な笑いを見せる武器商人。

 

 

 「当然値段も銃以上なのね、まぁその事に関する取り引きはもう終わってるのね」

 

 「あぁ、任務が終わればお前の提示する金額が振り込まれる手筈になっている、それで、その情報とやらを聞きたい」

 

 

 「ウム…信者達に指令が来ていてね、どうやらこの先の何処かで戦力を集中させて待ち構えるつもりなの」

 

 「それとサドラーは未だアシュリーを奪還できないことに痺れを切らしている…“孤島から増援”が来るらしいのね」

 

 

 「ほう、サドラーの真の拠点と言う島の事だな」

 

 

 「あの島は制御の難しい化物を隔離する役割もあるんだ、その増援ってのも凶悪な怪物揃いだろうぜ」

 

 「支配種を埋め込んだ手下は村長やサラザールの他にもいるかもしれない、どちらにせよ警戒が必要だ」

 

 

 

会話も中程に、突然レオンのズボンのポケットに仕舞った無線機がザザザと言う通信の繋がる音を流し始める。

 

作戦本部からの緊急の通信なのか、すぐにズボンから取り出して無線を繋げるレオン。耳元に運び話し始める、しかし無線機から聞こえた声は本部の担当オペレーターのものでは無かった。

 

 

 「こちらレオン、どうした?何か伝える事があるのか」

 

 

 「…残念な報告です、もうこの無線は我々の物ですよォ」

 

 

 

無線から聞こえたその声、子供の様な高い声と老人の様な掠れてしわがれた印象が混ざったその声の主はサラザール。

 

水の間で先程対峙したこの城の支配者だった。

 

 

 「サラザールか…」

 

 

 「私の優秀な右腕とペット達から生き延びた幸運は認めてやりますよ、でもね、もう一つ残念なお知らせがありますよォ」

 

 「サドラー様はねェ、貴方達の抵抗にも飽きたのですよォ 今、孤島から新たな駒が送り込まれているハズです」

 

 「この城の戦力だけでも十分なのに更にその戦力が加わるのです、仮にです、貴方達がこの城の戦力を突破したとしてもどのみち生還の道は無いという事です」

 

 

 

 「なるほど…孤島から増援が来るらしいぞ、ルイス」

 

 「そりゃあ始めて聞いたな、恐ろしいぜ」

 

 

 「貴様ら…馬鹿にしているな、今に後悔するでしょう」

 

 「まぁなんでも良いですよ、お前達の処刑はヴェルデューゴに任せていますからねェ…嫌でも絶望を与えてやりますよククク」

 

 

恐怖を煽る為の不穏な言葉を残しサラザールは無線を切る。

 

 

 「わざわざ言いに来るとは暇な奴だな」

 

 「好きにさせておけ、すぐにその傲慢さの報いを与えてやる、さて武器商人よ」

 

 「ムフフフわかってるのね、遂に鬼龍も武器が欲しくなったんだろう?さぁ譲ってやるのね」

 

 「ふざけるなよ、この閉じた鉄格子を早く作動させろと言ってるんだ」

 

 

武器商人が商売スペースとしていた場所のすぐ隣に、渡された地図による所の先へと進む扉があった。ただしその前方に降り立つ黒鉄の鉄格子がそれを阻んでいる。

 

 

 「レバーを起動させれば開くのね、ほら彼処に」

 

 

武器商人が指差す先には確かに操作レバーが壁に取り付けられていた、ただし、やはりその前方には鉄格子が降り立つ。

 

扉を阻む鉄格子の操作レバーが、扉と同様に鉄格子の向こうにある。

 

 

 「これじゃあどうしようも無いぞ」

 

 「要は向こう側から誰かがレバーを開けば良いのだろう、一階の広場から二階の通路へと飛び乗ってしまえばいい」

 

 「なるほど、お前ならそれも可能か」

 

 「鬼龍のオッサンの事だからてっきり体術で鉄格子をぶち破るとか言い出すと思ったぜ」

 

 「ふん、そんな訳無いだろう」

 

 「確かに…でも少し残念なのね、悪魔を超えた悪魔でも素手で鋼鉄を破壊することは出来ないのね」

 

 

 「ほう?」

 

 

先へと進む目処が立ったその時、武器商人の余計な一言に鬼龍が反応する。鬼龍の悍ましい程に強い自尊心にその言葉で火が付く。

 

勿論、素手で鋼鉄を破壊するという発想など無かった、しかし安く見られるのだけは我慢がならない。広場へと向かいかけていた足を向き直してゆっくりと鉄格子に近づいていく。

 

 

 「えっ…鬼龍!?」

 

 「おいおい、マジでやる気か?」

 

 「もし破壊できたなら、大したものだが…」

 

 「ククク面白くなってきたのねェ」

 

 

驚きながらも止めようとするものはいない、超人と表現する他ない比類無きこの男ならば或いは…そのような期待が彼等の中に芽生えた。

 

鉄格子の眼前にまで迫る鬼龍、一瞬の静寂と息を呑む声。

 

 

そして鬼龍が動き出した!その場で右に一回転!

 

速度、筋力、回転、体重、破壊力を構築する要素を最大限発揮して込められた鬼龍の人類最高峰の回し蹴りだ。

 

 

 「ハーッ!」

 

 

それが黒鉄の鉄格子にぶち当たる!ガシャァンと言う鉄格子を激しく揺さぶる音が聖堂に響き渡る。

 

四人の脳裏に鉄格子が勢いよく外れて吹き飛ばされるイメージが生み出される。外された鉄格子が床に落下した音まで聞こえた気がした。

 

 

 

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 

 「………………」

 

 

 

気がしただけであった、確かに蹴撃が命中した箇所の鉄格子は僅かに歪んでいたが全体で見れば全く持って健在。

 

変わらずそこに降り立ち、道を塞いでいた。

 

 

 「…………」

 

 

スッと鬼龍が体制を戻し、何も言わずスタスタと広場の方へと歩いていった。当初の予定通り、一階から二階の通路へと飛び上がってレバーを作動させるつもりだろう。

 

 

 「よし、武器商人、先に進む前に銃器の点検でも頼む」

 

 「ムフフフ、了解なのね、安くしとくのね」

 

 「せ、せっかくだから警官さん達にも一言掛けていこうかなぁ」

 

 「あぁ、そうするといいぜ、ここで待ってるからよ」

 

 

何事も無かったかのように会話し始める四人、気遣いの意味もあるが煽った手前、これ以上鬼龍の自尊心を損なうと何をされるか分からないという恐怖もあった。

 

 

暫くして鉄格子が開けていく、戻ってきた鬼龍は無言だったが目に見えて不機嫌だった。ただこれ以上ダメージを受けぬ為には無言でいることが最良だと解っているだけだ。

 

 

 

そして鬼龍達は古城の更に奥へと足を踏み入れる事になる。

 

 

 

 




◇更に奥へ…
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