TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第30話

 

 

 

 

 「私タチナンテ負ケレバナンノ価値モナインダ、タダ無感情ニ切リ捨テラレ殺処分サレルッ!」

 

 「ダカラソノ前ニオ前達ヲ殺シテヤルヨ、レオン!」

 

 

 「いいや、ここで止めるさ 悲しき過去がお前達をそんな姿に変えたと言うのなら尚更、ここでその暴走を終わらせてやる」

 

 

 

悲壮な覚悟と闘気を燃やして黒き死神が突貫する、それに対するレオンはただ静かに目の奥の信念を燃やして見据え構える。

 

連続して鳴り響く甲高い衝突音、レオンの振るうナイフがヴェルデューゴの爪や尾を火花を散らしてぶつかり逸らす。

 

ヴェルデューゴの猛攻は尚もその速度を増している、だがレオンはその一つ一つを完璧なタイミングで捌いていく。

 

 

 「ナラオ望ミ通リ終ワラセテヤルヨッ!」

 

 

何時までも手傷を負わせられぬ事に業を煮やしたヴェルデューゴが深く踏み込んで身構える、そのまま力を貯めた渾身の一撃を繰り出す。

 

大振りだがそれ故に体重と速度が乗った一撃。

 

だがその一撃の到来をレオンは待っていた。

 

 

 「そこだ!」

 

 

レオンもまた深く強烈な踏み込みと共にナイフを振るう、最適な速度とタイミングにより力が込められたその動作は攻撃を逸らすに留まらず跳ね返すようにヴェルデューゴの腕を弾き返す、相手の力すら利用する極限究極のナイフ・パリィ。

 

 

 「ナンダアッ」

 

 

最大の力を込めた攻撃はしかし、弾かれた反動によりヴェルデューゴの体を大きく揺さぶり体制を崩す。

 

弾かれた片腕に引っ張らるようにヴェルデューゴが数歩たたら踏み大きく隙を晒す、その瞬間を決して逃さぬレオンの追撃が繰り出される。

 

 

 「喰らえっ 乾坤一擲の一撃を!」

 

 

怯むヴェルデューゴの眼前で素早くその身を一回転、その速度を殺さぬまま、しかし驚異的な正確さで逆手に持ったナイフの切っ先を突きだす。

 

その刃はブレること無くヴェルデューゴの顔面、その妖光を放つ右眼に吸い込まれるように突き刺さった。その奥の大脳までその刃は到達する。

 

 

 

 「 ウ ギ ア ア ア ッ ! 」

 

 

 

ヴェルデューゴのけたたましい絶叫、直ぐ様ナイフを引き抜き飛び引くと、先程までいた場所をヴェルデューゴの爪が高速で通過する。

 

 

 「ウゴーッ…」

 

 

ヴェルデューゴが片目を抑える、なんの感情も伺えなかった髑髏の顔は、今はあまりに強い怒気で釣り上がり歪んでいるように見えた。

 

 

 「お前のその天然の甲殻アーマー、まるでダイバースーツの様に全身を包み隙が無い」

 

 「だが…眼球や口内といった露出した粘膜は変わらず急所となる、鬼龍風に言えば…ようやく目付けが出来たって所か」

 

 

 「カ、片目ヲ潰シタクライデ勝ッタ気ニナルナッ…」

 

 「私ハ負ケラレヌ…ラモン様ヲ負ケ犬ニハデキヌ」

 

 

蹌踉めいていたのもほんの僅かな時間、ヴェルデューゴが向き直りその殺意と闘志を再び滾らせる。

 

レオンは何も変わらない、ただ向かい来るその激情にも似た敵意の波を受け止めて対峙するのみ。

 

 

 

 「本当ノ全能力ヲ見セテヤルヨッ レオン!」

 

 

ヴェルデューゴがまた動き出す、今までの技術的な足運びやフェイントをまるで捨てた全速力の急接近。

 

間合いの管理や見切りすら無視した突進からの刃と化した尾による一直線の刺突攻撃。

 

 

またレオンのナイフによる受け流しが発揮されるかと思われたが、突き出されるその尾の速度は余りにも桁外れていた。

 

 

 「なにっ!」

 

 

直感と気の起こりを感じ取ることで攻撃の予想は出来た、だが肉体が反応しきれぬ程の圧倒的な速度。

 

完全に音を超え、巻き起こる風すらも肉を切り裂く凶器と化す程に驚異的なスピード。

 

 

タイミングを合わせ受け流すことなどまるで出来ず、狙われている急所を察知しそこにナイフをただ滑り込ませ防御することしか出来なかった。

 

 

まるでエルヒガンテの殴打を受けたかのように、遥か後方に吹き飛ばされるレオン、ナイフを持ち防御した右腕にほぼ傷みと言ってよい痺れが奔る。

 

レオンがその命を預けるだけあって特別仕様のナイフに破損は無い、だがレオン本人は違う。

 

全身の内奥から凍てつきヒビ割れていくかのような錯覚を覚える、ヴェルデューゴの破滅的な一撃が脳髄の奥から最大限の危険信号を呼び起こす。

 

 

 「今のは…マグレで反応出来なきゃヤバかった…!」

 

 

 「ウググ……」

 

 「 シ ャ ア ア ア ア ア ア ! 」

 

 

 

冷静沈着なヴェルデューゴが両腕をあらん限りに広げて本気の威嚇の怒号を上げる、全能力解放の証だ。

 

 

 「成る程…正しく捨て身、か」

 

 「思考や理性までも捨てて本能のみで肉体を動かす、だからこその最高速度というわけだな」

 

 「だが…ただでさえプラーガに精神を侵蝕されているんだ!そんなやり方をすれば本当に人格が破壊されるぞっ」

 

 

 「ウーッ、ソ、ソレガ、ド、ドウシタ」

 

 

再びヴェルデューゴが駆け出すために脚に力を込める、レオンもまた半ば本能による反射によってその時点で回避を始める。床を踏み砕いて破壊しながら音を置き去りにした致死の攻撃が始まる。

 

 

 「うぐっ」

 

 

またもや凄まじい衝撃と衝突音を響かせてレオンが大きく体制を崩される、首筋を狙った爪をナイフで逸らそうともやはり間に合わない、辛うじて致命傷を負うのを防いでいる。

 

レオンの横を高速で通過したヴェルデューゴ、すれ違う様にその爪を振るう、本能に身を任せた攻撃はヴェルデューゴ自身にさえ正しく認識出来ない。

 

 

 「ウーッ、グッ」

 

 

言葉にならぬ呻きを上げてレオンを見る、未だ血を流すこと無く生きているレオンを視界に捉えて初めて自身の攻撃が防がれたと認識する。

 

 

 (マズイな…)

 

 (このまま続ければ殺される)

 

 

レオンのナイフを持つ右腕から伝わる痺れと力の籠らぬ感覚が、まるで起爆装置のカウントダウンの様に逃れられぬ死の訪れが近いことを知らしてくる。

 

 

 (奴の速さは危険だ、だが動きの制御は出来てない)

 

 (フェイントは勿論、追撃すら無い 一撃繰り出すごとに全能力を使うからだ、その軌道は極めて直線的…) 

 

 (これはピンチだが同時にチャンスでもある…奴の無敵の甲殻を破る手立ては持っているんだ)

 

 (だがそれは平時なら通じないだろう…今ならば当てれる!奴の動きの終わりを狙うことが出来れば)

 

 

 

レオンが懐に忍ばせた“最終兵器”へと意識を向ける、武器商人から事前に対ヴェルデューゴ、対サドラー用にと渡された究極の秘密兵器。

 

向かい合うお互いが敵を屠り去る牙を手にしている、先にその牙を突き立てるのは何方になるのか。

 

 

ヴェルデューゴが無言のまま、両足に力を籠める。

 

レオンもまた極限の集中力を発揮しその時を待つ。

 

互いに理屈を超えた確信に近い予感が訪れる、次の攻防が終わるその時、何方かの命が何方の手によって打ち砕かれるであろう事が。

 

 

 

 (ワ、私ハ無能ダッタ…)

 

 (敬愛スル…主ニ憎マレヨウト止メルベキダッタ)

 

 (私ハ、ラモン様…)

 

 (ア、貴方ニトッテ、役ニ立ツ人間ニナリタカッタ)

 

 

ヴェルデューゴの体に尋常ではない力が漲っていく、それに反してその意識が薄れていくのをヴェルデューゴは感じていた。

 

自らの意識、人格、記憶までもが淀んだ闘志と冷たい殺意に塗りつぶされていく、やがてその視界が暗転するように闇に包まれていく。

 

そしてその心が殺意で満たされた、ヴェルデューゴは暗転の瞬間、自分の肉体が全能力を解き放つ、爆発にも似た脈動を認識した。

 

 

 「 ハーッ レオンヨ 死ネェッ ! 」

 

 

黒き残像と鎌鼬と化した疾風を巻き起こして両腕を振るう、バツ印にクロスさせた神速の斬撃が、目の前にある物体を一瞬にしてバラバラに切り刻んだ。

 

 

解けていく暗転、手に伝わる感傷。

 

 

 (勝ッタ!)

 

 

勝利の確信が訪れる、だがだんだんと鮮明になっていく視界が移した景色はその確信を揺るがし、打ち崩すものだった。

 

 

 「エッ」 

 

 

ヴェルデューゴの眼の前で何かの布のような物が引き裂かれて宙を舞う、ヴェルデューゴにはどこか見覚えがある配色と質感だった。

 

 

次第に床へと舞い落ちていく布切れが視界から失せ、隠していたその先の景色を露わにしていく。

 

即ち、変わらずそこに立ち、ヴェルデューゴへと銃口を向ける警官服を着る金髪のエージェント。

 

 

 「貴様…」

 

 「 レ オ ン ! 」

 

 

レオンは傷一つ無く立っていた、両手に握った銀色の銃口は既にその狙いを定め終わっている。

 

 

その銃は異常であった、分類で言えば拳銃なのだろう。

 

異常な程大きな銃口、横にも縦にも太く長い銃身、その中に内蔵される弾丸もまた特製、その銃限定で使用される特殊弾丸。

 

その機構がもたらす性能と目的はただ一つ。

 

銃撃の威力向上、ただそれだけ、ただそれだけに狂気的な程傾倒し作り出されたこの銃の威力は並外れている。

 

マグナムと呼ばれる大型の拳銃、それら既存するどれをも軽く超越した破壊力を誇るこの銃は正に小型の大砲。

 

 

武器商人の秘蔵する対教団用の魔具の一角。

 

 

狂気の産物、その名をハンド・キャノン。

 

 

 

 「ワ、私ガ引キ裂イタノハ…」

 

 

ヴェルデューゴの足元に落ちるそれはレオンのジャケットだった、素早く脱いで丸めたそれをヴェルデューゴに投げはなったのだ。

 

己に飛来する何か、本能のみで破壊を行うヴェルデューゴの肉体は躊躇なくそれに反応した。

 

結果として、ヴェルデューゴはその場から動かず大きな隙を晒すことになる。

 

 

 

 「酷いじゃじゃ馬のコイツを構える時間が欲しかった…ただ撃つだけじゃお前に当たりはしないからな」

 

 

 「レオンッ 貴様ッ…」

 

 

ヴェルデューゴが動かんとする、それより速くレオンは引き金を引いていた。

 

辺りに爆発か雷鳴のような音が響く。聞く者は皆、初めはそれが銃撃の音だとは認識出来ない、それ程までに重苦しく、強烈な炸裂音。

 

 

 

 「…ハウッ」

 

 

ヴェルデューゴの髑髏のような顔面、その眉間にハンド・キャノンの特殊弾が撃ち込まれる。

 

驚くべきことに爆弾でさえ傷も付かないヴェルデューゴの甲殻がヒビ割れて破壊されていく。まるで交通事故にあった車内の運転手の様に強く後方に首を仰け反らせる。

 

 

ヴェルデューゴの体から急速に力が抜ける、まだ絶命したわけでは無い、だが渾身の溜めからの全力の解放、そしてその直後の脱力時に撃ち込まれた多大なるダメージ。

 

ヴェルデューゴの肉体が異常事態の連続で遂にその操作を放棄する、糸が切れた人形の様に膝を地面に付いた。

 

 

 「…………」

 

 

ヴェルデューゴの眼の前でもう一度、反動のあまり天高く跳ね上がったレオンの両腕とハンド・キャノンの銃口が再び狙いを定め始める。

 

ヴェルデューゴはただそれを見ていた。

 

不思議なことにこれから来る死を理解していながら、少しの恐怖も忌避感も存在しなかった。

 

 

 「終わりだ」

 

 

 「…………」

 

 

死神の宣告がその耳に届く、レオンの引き金にかける指に力が籠もっていき、銃の機構が作動していく音が鳴る。

 

その光景をスローモーションの速度で眺めているヴェルデューゴ、その脳裏に残っている事はただ一つだけだった。

 

 

 

 「……ラモン様」

 

 

 

二発目の轟音が鳴り響き、爆発の様な弾丸は今度こそヴェルデューゴの眉間を破壊して貫通した。

 

灰色の混じった薄緑色の体液を頭部から漏出させ、黒き死神は仰向けに倒れ伏してもう起き上がることは無かった。

 

 

 

 「………」

 

 

静かに力尽きたヴェルデューゴ、倒れ伏すその亡骸をレオンは何も言わず暫し眺めた、脳裏にその死に際の言葉が反響する。

 

 

 「…そうだ、向こうはどうなった」

 

 

やがて二頭の巨人と争っていた橋の方を見やる、どうやらそちらも既に戦いは終わったようだ。

 

 

 「問題は無し、か」

 

 「それにしても…武器商人め、加減を知らないのか」

 

 「……反動がデカ過ぎる」

 

 

問題児の秘密兵器をまた懐に仕舞い、先にいる仲間達の方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 「あ、あわわ…!」 

 

 「エルヒガンテ二体が…簡単に…はひーっ」

 

 

橋の奥に立つサラザールが狼狽し恐怖する、ヴェルデューゴの援護替わりとはいえ、教団の誇る優秀な戦力の一角であるはずのエルヒガンテ、それも二体ともが容易く打ち破られたのだ。

 

 

 「もはや二体だろうと相手にならぬ」

 

 「なぁ、やっぱりオッサンも何か改造を…」

 

 「彼はしっかり人間よルイス、あんな光景を見たら私も信じられないけどね」

 

 

 「う、うぎーっ ヴェルデューゴは何をしてる!」

 

 「早くコイツらを殺してアシュリーを…」

 

 

 「奴ならもう来ないぞ」  

 

 

サラザールを追い詰める3人、その背後からエルヒガンテの 死体を超えて堂々と合流するレオン。

 

サラザールに絶望が奔る、それはつまり己の右腕であり最大の武器でもある懐刀が敗北した事を意味している。

 

 

 「き、貴様…まさか…ヴェルデューゴが、本当に…」

 

 「そんな…そん…」

 

 「う、うがあああっ」

 

 

自らの敗北を認められず怒りのあまり叫び出すサラザール、懐から何か機械の発信ボタンを取り出して直ぐ様ボタンを押して作動させる。

 

 

 「さぁもう観念しろ」

 

 「待て、貴様 今何をした?」

 

 「あぁ?何かを作動させやがったなコイツ!」

 

 「何を…あれは…!」

 

 

動き出した機械の正体はすぐに発見できた、何故なら明らかにそうとしか思えぬ異常事態がレオン達目掛けて自ら進軍を開始した。

 

轟音を響かせレオン達のいる橋から遡って広場の方からその正体は迫ってくる、床をエルヒガンテ以上の重量と破壊力で踏み鳴らしながら。

 

 

 「あれは!」

 

 「馬鹿な…」

 

 

 「広場の石像が…」 

 

 

 「石像が此方へ練り歩いている!」

 

 

 

それは広場に建てられた巨大なサラザールの石像、内部が機械仕掛けとなっているのか、動かぬはずの石の像が人間さながらに両手を上下に振って二本の足で激しく歩行する。

 

軍隊の行進の様な規則正しいフォームで迫りくるサラザール像、この世のものとは思えぬほど異質で珍妙な驚くべき光景。

 

それは滑稽ですらあった、迫りくる石像に自分達が踏み潰されかかって無ければ。

 

 

 「なんだよあのクソ石像!」

 

 「おいっ このままじゃヤバいぞ」

 

 「本当に下らん真似をする屑めが」

 

 

 「はーっ鬼龍よ死ね!レオンよ死ね!ルイスよ死ね!お前達は皆ここで死ね!アハアハアハハ!」

 

 

 「…残念だけど、そうはならないみたいね」

 

 

 

進軍するサラザール大石像が橋の中腹へと到達したその時、サラザール像の背後から煙を引き出しながら強力なエネルギーで宙を推進する何かが飛来した。

 

筒状のそれは練り歩くサラザール像、その頭部に吸い寄せられるように向かっていく。

 

 

その飛来する筒は命中と同時に大爆発、黒煙と炎を盛大に撒き散らしてサラザール像の頭部を吹き飛ばす。

 

それだけにとどまらず圧倒的な破壊のパワーを突然受けたサラザール像は右側に傾き体制を崩す。

 

体制を戻す方法など石像は持ち合わせず、そのまま横に倒れていき、水没した大聖堂の水場へと落ちて沈んでいった。

 

 

 「えっ な、なんっ」

 

 

ブクブクと泡を立たせ完全に見えなくなったサラザール像、そうして開けた視界、石像が通過してきた広場の方向に一人の人物が立つ。

 

 

 「ムフフ、教団のカリスマ気取りはこの時まで、今からは悪の教団殲滅作戦がスタートするの」

 

 

片膝をついて紫煙を上げる鉄筒、サラザール像を破壊するのに使ったロケットランチャーを構えるこの男。

 

教団を敬服し忠誠を誓うつもりはまるで無いがあらゆる武器を入手しカスタムすることに関しては天才的。

 

商人としての挟持の為ならプラーガの支配にも抗う男

 

 

 武 器 商 人 !

 

 

 「私もいるよ!皆、無事!?」

 

 

武器商人の背に続き隠れていたアシュリーも姿を現す、二人共脅威の消失を確認して合流せんと橋を渡ってくる。

 

 

 「ま、まさかまだ他にも協力者が…!」

 

 

 「さぁ次はどうするつもりだ、蛆虫」

 

 

 「ホ、ホアーッ こ、殺してやるっ」

 

 

ヤケになって激昂したサラザールがレオン目掛けて飛び掛かる、護身用なのか何処からともなく取り出した装飾の入った短刀を首筋目掛けて振るう。

 

 

 「無駄なことを…」 

 

 

勿論、戦闘能力の無いサラザールの奇襲ですら無い攻撃など通じない、呆気なくレオンのナイフにより受け流され宙を舞う短刀、返す刀でサラザールの胸元をレオンのナイフが刺し貫いた。

 

 

 「ぼうっ…」

 

 

支配種の寄生体ながらもサラザールの生命力と耐久力は並のガナードを下回る、心臓を突き刺されてはその損傷はそのまま致命傷となる。

 

 

 「サラザール、お前の仕出かした事は許されない」

 

 「だが、本当にそんなやり方しか無かったのか?他の選択肢ってのがお前には有ったはずだ」

 

 「もっとマシな、もっと真っ当な道が…」

 

 

 

 「選、択肢…もっと、マシな…」

 

 「…真っ当…な」

 

 

 

 

 「お前なんて認めない」

 

 「悪魔ァ 悪魔がいるぅ」

 

 「生まれたその日に殺しておくべきだったわっ」

 

 「へっ 先代が死んで当主気取りだよあの馬鹿」

 

 「呪われた愚者は去れ!」

 

 

 

 「ラモン…貴方を一人残して逝く事を…許して」

 

 「ラモン様…この身は何時でも貴方のお側に」

 

 

 

 

 「ま、真っ当な…み、道が…」

 

 「真っ当な道が何なのか…教えてくれよ…」

 

 

 「……サラザール」

 

 

 「はううっ…うぐ……」

 

 

溢れ出した鮮血で口元を赤く染めて、古城の城主サラザールは最後の呻きを残して俯き倒れる、そして二度と起き上がることは無かった。

 

 

 「…………」

 

 

死したサラザールの骸を見下ろすレオン、打ち倒すべき敵なれど、先のヴェルデューゴの語るサラザールの真相からはやるせない悲哀のような感情を持つことを止められなかった。

 

側でその末路を見届けた他の者達も思い思いの言葉を発していく。

 

 

 「…つまりコイツも言ってしまえばサドラーに踊らされた被害者みてぇなもんだ、体よく勢力拡大の為に目を付けられただけさ」

 

 「利用されて死んでいく者は無様で惨めなものだ、不遇の中であろうと己の考えを放棄し他人に全ての決定権を委ねた罰がこの末路だ」

 

 

 

 「……あぁ、そうだな」

 

 「サドラー、このまま野放しにはしない」

 

 

レオンの目の奥の信念と決意の光がより強まっていく、目の当たりにした全ての悲劇を忘れること無く、散っていった者の無念と思いを背負う様な強い輝きがあった。

 

 

 「………」

 

 「どうした、何かあるか?」

 

 「…フッ、いいえ、変わらないわね…アナタは」

 

 「?…よくわからんが、これで全員揃ったことだ」

 

 「約束通り聞かせてもらおうか、お前の目的を」

 

 

 「そうね…そうしてあげる、今回ばかりは、ね」

 

 

アシュリーと武器商人も橋を渡りきりレオン達と合流を果たす、遂に姿を表した協力者、ドレスの女の口から新たな情報が語られようとしていた。

 

 




◇この女の目的は…?
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