TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第31話

 

 

 

 

 

 「それで、全部話してくれるのか エイダ」

 

 

古城の主とその忠臣を打ち倒したレオン達、遂に姿を表した影の協力者たる紅いドレスの女、エイダから今起きているこの状況の新たなる側面が語られようとしていた。

 

 

 「さぁ?どうかしらね」

 

 「…お前は誰の命令で動いている、サンプルを求める理由は一体何なんだ」

 

 「あら、それは今は重要じゃない筈よ」

 

 「またそうやってはぐらかす気か?」

 

 「アナタ達が本当に知るべき事については教えてあげる…この先に待つ本当の脅威についてね」

 

 

問い詰めるレオンに飄々とした態度で受け答えるエイダ、しかし不思議なことにレオンの言葉には懐疑や警戒の色は常より少なく、言葉の端々から互いが既に旧知であるかのような響きが感じられた。

 

 

 「…ねぇ、あの二人って知り合いなのかな…?」

 

 「確かに名前を呼んでいたのね」

 

 「あぁ、俺はまだあの女の名前がエイダだってレオンに言ってねぇ、もしかして既に何処かで出会ってたのか?」

 

 

その事はアシュリーら他の面々も感じ取ったのか、ただ鬼龍だけが口を閉ざし、腕組みをして壁を背に沈黙していた。

 

 

 「お前がルイスと繋がっていたのは解った、サンプルの回収とその監視が目的だろう?だが計画変更とはなんだ」

 

 

 「そうね…順を追って説明してあげる」

 

 「今回のこの一件は既に私の予想を超えている」

 

 「外部からもたらされた、本来なら存在しなかったであろう一つの要素によってね」

 

 

レオンに語り掛けるエイダがその視線を別の方向に向ける、その先にいる仁王の如き偉丈夫と視線が交差する。

 

 

 「貴方の事よ、宮沢鬼龍」

 

 

その先にいるのは悪魔を超えた悪魔、寄りかかっていた壁からゆっくりとその背を起こし、言葉を発する。

 

 

 「俺が予想外の出来事だと」

 

 

 「そう、貴方の介入…それこそが不測の事態」

 

 「裏切者のルイスを捕えること、誘拐された大統領の娘を救出に来た侵入者の始末」

 

 「教団はこの二つの問題の対処を迫られた」

 

 「そこに現れたのが鬼龍、貴方よ」

 

 「米国が誘拐されたアシュリーの救出に乗り出すことは解っていたけれど…」

 

 「この件に貴方が関わるなんて想像も出来なかった」

 

 「世界中の闇の権力者達が最も恐れる最恐の武人…貴方の様な人が何故こんな事に関わりたがるのか解らないわ」

 

 

 「不快な虫けらが俺の視界に入ったから潰す事にした、それだけだ、大層な目的など無い」

 

 

 「貴方の目的が本当にそれだけだったとしても、貴方の介入によって教団は大きな損害を受けたのよ」

 

 「私としても貴方達を利用させてもらうつもりだったのだけれど…貴方達の奮戦の程は良い意味で予想外」

 

 「オマケにルイスまでもが手を貸した」

 

 「もはや隠れ潜む必要すら無いほどに教団は追い詰められている、後必要なのはサンプルだけ」

 

 「それも既に持っているんでしょう?」

 

 

エイダが今度はルイスの方を向く、それを受けてルイスが懐から培養液で満たされた試験管、サンプルを取り出して見せる。

 

 

 「アンタの目当ては確かに持ってる…これを俺達から受け取ればそこでアンタの任務は終了」

 

 「もうコソコソする必要が無くなったからさっさっと受け取りに現れたって訳か…だが、まだ渡せねぇ」

 

 「そうだろ、レオン」

 

 

 「あぁ、まだ脱出するわけにはいかない」

 

 「サドラーをこのままにはしない、それに…」

 

 

 「お嬢ちゃんの体内にいるプラーガを除去しなきゃいけない、そのために孤島にあるルイスの研究室を目指す…そうでしょう?」

 

 「解っているわ、特別にそれまで待ってあげる」

 

 「それに貴方じゃないけれど、私にとっても野放しには出来ない存在がいるのよ」

 

 「レオン、貴方にとっても無関係じゃない筈…この先に待つ本当の脅威とはその男の事」

 

 

 「さっきも言ってたな、本当の脅威?サドラーの事ではないのか、俺にも関係があるとはどういうことだ」

 

 

 「…私の他にもう一人、サンプル奪還と教団の内情を探るために潜り込んだ人間がいる」

 

 「今はサドラーの護衛となったその男、ともすればサドラー以上の脅威となるのかもしれない」

 

 

 「その男の名を…貴方は知ってるはずよ」

 

 

 

 

 

 

大聖堂のその先、正しく城の最後の砦たる古代の塔は、頂上より立ち込める不穏なる暗雲の下で不気味な沈黙を纏っていた。

 

その内部はやはり形状通りの円形型、入口の広場から続く階段が大きい螺旋を描いて昇り続き、階段を登り切ると今度は塔の頂上へと荷を運ぶ貨物用のエレベーターが備え付けられている。

 

 

高く聳えるその塔は最上へ至る道もまた長い、入口広場にも、螺旋階段の途中にも、貨物用エレベーターの付近にも、余す所なく武装したガナード達が潜み待機する。

 

 

貨物用エレベーター付近を見渡せる足場の上に立つ男が一人、赤のベレー帽に筋骨の発達した全身、迷彩柄のズボンに防弾チョッキと下のシャツ。

 

 

城主の間にてサラザールを嘲笑し、古城での戦いに参戦した教団の新たなる刺客、支配種の寄生体を宿す男。

 

 

 「ラモン・サラザールめ、やはり先走ったか」

 

 「想像通り下らない男だ」

 

 

サラザールからクラウザーと呼ばれたこの男、あの時と同様にその手に銀に煌めくナイフを弄び、力尽きた同胞へと向けた言葉は、やはりあの時と同様に侮蔑と嘲りの言葉だった。

 

 

 「必要なのは…強さだけだ」

 

 「力無き弱者に己の意志を全うすることなど出来はしない、それは忠誠であっても、野心であっても…」

 

 

 

 〈オオーッ ヤツラガネリムカッテキターッ〉

 

 〈セントウジュンビカイシダGoーッ〉

 

 

 

クラウザーの眼下に控える手下のガナード達から雄叫びと待ちに待った歓喜の声が上がり始める。

 

どうやら侵入者がここまで辿り着いたという報告が塔の下から上へと伝達して来たらしい。我先にと殺戮の快楽を求めし孤島の戦闘員達が塔の入り口広場へと駆け下りていく。

 

 

 

 「…正義であっても、な」

 

 

 

そしてクラウザーもまた、壁により掛けた背を正し、立っていた足場より跳躍。空中でその身を縦に一回転し軽やかに着地。愛用するナイフを胸元に取り付けたナイフのカバーに仕舞い込む。

 

その視線は、眼下の遥か下にこれから姿を現す者達を見下ろす様に、貨物用エレベーターの隙間か僅かにら見える塔の入り口広場へと向けられていた。

 

 

 「お前はどうだ、レオン?」

 

 

続々と武装を携えて広場に、或いは持ち場へと集結していく戦闘員達に続き、クラウザーも悠々と歩き出した。

 

 

 

 

 

 

暗雲が影を落とす塔の扉が、重苦しく開かれる。

 

石床と扉の木材が擦れ合う音が聞こえ、外の景色がほんの僅かに見えるといったところで扉の開閉が止まる。

 

そこから数秒の間を置いてその手に銃を握るレオンとルイスが素早い動きで扉を開け放ち、銃を構えながら塔の中へと踏み入った。

 

 

 「あ~コイツはまた…」

 

 「想像通りだな」

 

 

 

  

   〈バアーッ〉    〈ヤラセロ ハヤクヤラセロ〉   〈ムフフ…〉

 

 〈チンチンマデタタンヨウニシタンドッ〉     〈イヌ…?〉

 

  〈アーッ シャブヲクレェ〉  〈アヘアヘアヘ〉   〈タテヨ!リュウセイ〉

 

    〈ナンカキモチエェナァ〉   〈イッパイコロスノン…〉

 

 

 

レオン達が踏み入った塔の内部には大勢のガナード戦闘員が臨戦態勢で控えていた、入口の広場に殺到した者達もいれば、上へと続く螺旋階段を守るように集まるガナードもいる。

 

その目で見るまでもなく、塔の上層まで兵達で満たされていることは容易に想像できた。

 

それぞれが凶悪に改造された武装を手に取り、戦闘の始まりを今かと待ち望みレオン達を睨んでいる。

 

 

 

 

 「今からコイツらを蹴散らして塔を登るのか」

 

 「今更ながら骨が折れるな、しかも新メンバーは直接手を貸すのはこれっきりだとさ」

 

 

 「なんの問題がある、恐ろしいのならば隅で縮こまっているが良い、俺だけで楽しむだけだ」

 

 

続けて塔へと足を踏み入れる鬼龍、ひしめく殺意に支配されたガナードの群れを見据えて不遜な笑みを浮かべる。

 

 

 「下卑た雑魚に用など無い、サドラーを叩き潰して孤島へと渡る、時間は限られているからな」

 

 「そうだな!出し惜しみは無しだ、駆け上がるぞっ」

 

 「賛成だ!ここでケリをつけてやろうぜ!」

 

 

 

互いに闘志を滾らせて戦いの始まりを告げる銅鑼の音が響かんとする、やがて一瞬訪れた静寂から跳ね上がるように戦いの口火が切られる。

 

 

 

 

 〈〈〈多勢ニ無勢ダ イッケェーッ!〉〉〉

 

 

 「行くぞっ 迎え撃て!」

 

 

雪崩れ込む勢いで迫りくるガナード戦闘員、それを迎え撃つレオンとルイスの銃撃の音、そして黒き一迅の風となって駆ける超人、鬼龍!

 

お互いの殺気がぶつかり合い、そしてすぐさま骨肉が潰れ、弾け、四散する破壊音が鳴り響く。

 

 

 

 〈オレガグッチャグチャニシテヤルヨッ!〉

 

 「やってみろ!」

 

 

レオンの散弾銃は駆け寄ったガナードの首から上をまるごと吹き飛ばす、狙撃銃の正確無比かつ絶大な貫通力は遠間からクロスボウで此方を狙うガナードの眉間を先んじて撃ち抜く。

 

 

 〈ハーッ ウラギリモノヨ シネッ〉

 

 「どんどん来やがれ、返り討ちだ!」

 

 

ルイスのハンドガンは一発の威力に優れる、武器商人の改造により更にその威力は跳ね上がり、専用の補助パーツにより反動やブレは減少しより隙のない戦闘を可能とする。

 

 

 〈エッ ナニッ〉  〈ナンダアッ〉

 

 「安心しろ、地獄に落ちても寂しくないようしっかり全員殺してやる」

 

 

そして鬼龍、互いの放つ矢弾が飛び交う広場を高速で移動、武器を手に持つ者あらば振るうより速く殴り殺す、盾を構える者あらば蹴り飛ばして後方の敵を巻き込み倒す、遠間から不意打ちする者あらば放たれた矢は鬼龍の体に触れた途端そのエネルギーの全てをあらぬ方向に滑らされる。

 

 

 〈オ、オイッ コイツラ強イゾ!〉

 

 〈デェーッ、ダッタラ取リ囲ンデ殺スンダヨッ〉

 

 〈アッ、一瞬デ前ノヤツガ殺ラレタ!〉

 

 〈ハ、ハヒーッ〉

 

 

 

戦闘開始から僅か数分の間に優勢の流れを作り出すレオン達、度重なるガナード軍団との集団戦の経験がより効率的な判断と動きを可能にする。

 

幾度の共闘の果てに時として互いの目線や呼吸すら把握する程の完全一体の連携をやってみせる。

 

この3人の戦闘技能は明らかにこの騒動の中を進むに連れて初めより遥かに上昇していた。 

 

 

広場に集まり先陣を切って突撃したガナード達が蹴散らされる、その勢いのままレオン達は階段までの距離を詰めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 「よしっ このまま昇り続けるぞ!」

 

 

入口の広場に集結したガナードを蹴散らして階段へと到達、そしてそのまま塔を駆け上らんと更に進む。

 

上方からその進撃を止めようとガナード達が大挙して雪崩れ込む、盾を手にしてまずは押し返してやろうとしても鬼龍が一度蹴り上げれば盾を装備した者ごと吹き飛ばされる。

 

勢いを殺されれば後は作業の如く手早く済ませられる、倒れて怯んだところにレオンとルイスの正確無比な弾丸が殺到した、生き残った者も鬼龍によって葬られていく。

 

 

第二陣とも呼べる敵影を排除して更に上の階層にレオン達が上がろうとした。

 

 

 〈コナイナ人間ニエエヨウニイワサレテ…コイツラ、サドラー様ノ兵隊ノツラ汚シジャ〉

 

 

その時、倒れ伏したガナード達を踏み越えて、レオン達の前に立ちはだかる何者かが現れた、前方に幅の広い影を落とすその存在。

 

 

 「新手か!?」

 

 「なんだコイツ…」

 

 

そのガナードは他の者よりも肉体的に屈強であった、身長は鬼龍より高く二メートルは超えている、プラーガとの適合率が優れているのだろう。

 

禿げ上がった頭に知性品性のまるで無い無骨にして野卑な顔貌、筋肉の上に脂肪をつけたぶ厚く重々しい体躯。

 

 

 〈ニマ〜ッ〉

 

 

そしてその風貌を何よりも重量感のあるものにしているソレ、巨躯のガナードが全身に身にまとった鋼鉄のアーマープレート。

 

アルマデューラの様な古風な騎士の物ではない、オートバイに乗る際に着る保護用ボディアーマーの素材を全て鋼鉄に置き換えたかのような歪なメタル・アーマー。

 

肩パッドやレッグの部分からは威圧目的なのか棘のような突起が生える、ガナードが手にした武装もその重量感に負けず、幾重にも鉄塊を溶接し作り出した複合の巨大鋼鉄ハンマーだ。

 

 

 

 「コイツも適合率が高い個体みてぇだな」

 

 「立ち止まってる暇は無い、すぐに片付けるぞ」

 

 

 

 〈ア〜ン?〉

 

 〈ワラガスナアァ ババタレガーッ〉

 

 

 

レオンから侮られていると感じたアーマー・ガナードは直ぐ様怒りのままに鋼鉄ハンマーを振り上げて突貫する、巨大に見合わずその速度は他のガナードと遜色のない物だったが、今更その程度ではレオン達の不意をつくことは出来ない。

 

 

 「俺がやろう、すぐに終わらせる」

 

 

堂々と鬼龍が迫りくるアーマー・ガナードの眼前に歩み出た、その立ち姿にはなんの構えも無い。

 

 

 〈エエヨウニイワシタルワッ〉

 

 

走り寄りからの速度を乗せたハンマーの振り下ろし、だが対面する鬼龍のほうが速かった、鬼龍の横合いから打ち付けられるローキックがアーマー・ガナードの右膝に命中。

 

 

 〈ナンジャソリァ コソバユインジャア!〉

 

 

プラーガに強化された肉体に加え、鋼鉄のアーマーで保護されたガナードはこと防御力に関して絶対の自信を持っていた。

 

不運なのは鬼龍には心得などというレベルではない効率的な肉体破壊の知識と技術が備わっている。

 

しかもこの騒動を通して強固な肉体を誇る怪物や武装で守られた敵との戦闘経験を積んでいた。

 

 

 〈アンッ?〉

 

 

アーマー・ガナードの体がグラリと揺れて右側に倒れ込むように転倒、慌てて攻撃を中断しハンマーを杖代わりにして堪える。

 

不可解の起きた右足に視線を向けると信じ難い光景が視界に映る、右足が蹴られた膝関節の箇所から脱臼したように骨折し折れ曲がっている。

 

 

 〈アガッ アガガッ〉

 

 

 「防護された箇所をわざわざ狙う馬鹿がいるものか、大きいだけの愚図の弱点は膝だと相場が決まってる」

 

 「ただでさえその体重、鋼鉄のアーマーまで装備しては肉体の悲鳴はプラーガで誤魔化せても蓄積したダメージを消すことは出来ない」

 

 

 〈コ、コノチンカスガッ〉

 

 

近付いてくる鬼龍目掛けてアーマー・ガナードがハンマーを振り下ろす、ろくに体重も速度も乗せられていない腕力だけの攻撃が鬼龍に通じる筈もなく、アッサリと躱される。

 

 

鬼龍が振り抜いたガナードの手首に手を添えたかと思えばゴキリと嫌な音を立てて手首があらぬ方向にの折れ曲げられる、無駄のない肉体の損傷を目的とした関節破壊の技だ。

 

 

 〈ブヒィッ……アベベッ〉

 

 

そして完全に無防備になった顔面に鬼龍の豪腕一線、中高一本拳で人中を正確に撃ち抜けば顔面の穴という穴から血が吹き出して倒れ伏す。

 

 

 「愚図は愚図らしく退いているがいい」

 

 

 「よーし、倒したようだな、さすが鬼龍のオッサン」

 

 「…ん?おい、ちょっと見てくれ」

 

 

また一体の強敵を退けたレオン達、しかしその歩みを止める物がまた一つ、上へと昇れる階段が途中で塞がれているのだ。

 

瓦礫や木板を繋ぎ合わせて組み上げた即席のバリケード、手持ちの手榴弾の威力があれば破壊することは不可能では無いかも知れないが戦闘の只中で余計な消耗や無茶な行動は躊躇われた。

 

 

 「小癪な…バリケードか」

 

 「どかしてる時間はない、別に道から迂回するぞ」

 

 「おぉ、それならこっちから行けそうだぞ」

 

 

 

ルイスが見つけた通路とは本来なら何も無いはずの塔の空中に建てられた足場、組まれた鉄骨の上に木板が貼られている、工事や修検の際に使用された足場がそのままになっているかのようだった。

 

 

 「上に続いていそうか?」

 

 「多分な、奥にハシゴが見えるぜ」

 

 「よし 早く渡ってしまおう」

 

 

足場を渡ろうとする3人、鉄骨と木板の足場は意外にも頑丈な作りなのか、3人が上を移動しても不安な揺れや怪音は少しも無かった。

 

 

 「それにしてもよぉレオン、お前、エイダの事を知ってたのかよ、もしかして初めから気付いてたのか?」

 

 「昔少しな…紅い服装の女スパイと聞いてまさかとは思ったよ、風の噂で生きているとは聞いていたが…」

 

 「お前に声を掛けたのがエイダだったってのはあの時初めて知った、相変わらず本当の目的は解らない」

 

 

 「ふーん、なぁ、俺が言うのも何だけどよ…アシュリーの嬢ちゃんを任せてよかったのか、いやまぁ、それを言うなら武器商人もだけどよ」

 

 「大丈夫さ、彼女が何を考えてるのか知らないが悪いようにはならないだろう」

 

 「武器商人の奴も…見てくれはアレだが…」

 

 

雑談を加えながらも警戒は緩めること無く敵地を進む、そこに油断は無かったはずだが、足場の中腹に差し掛かったその時に本能が異変を察知する。

 

 

 「…! 避けろっ」

 

 「えっ」

 

 「危ない!上だ!」

 

 

急速に高まる脳の警告、首筋に冷たい何かを押し当てる様な感覚が強く、鋭く、その身を貫いた。

 

会話の内容に興味が無かったのか口を閉ざしていた鬼龍が叫ぶ、すぐさま身構えるルイス、そして迫る脅威の実態に気付いたレオンが飛び掛かる様にしてルイスを押しやると同時に己も回避する。

 

 

 「なんだあっ」

 

 

ルイスがいた場所に衝撃を生み出して降り立つ影、筋骨隆々の肉体に赤いベレー帽、俯いて跪く様な姿勢の下、両手で握られたコンバットナイフが深々と床の木板に突き刺さっていた。

 

 

 「貴様…」

 

 

是非を問うまでもなく、その正体は奇襲を仕掛けてきた敵である、鬼龍が一瞬の時間で側面へと移動しその勢いのまま右足を男のこめかみ目掛けて横一文字に蹴り抜いた。

 

 

パァンという空気を震わせる命中音、頭蓋骨ごと破壊し人間一人をいとも容易く再起不能にして見せる鬼龍の剛脚一線、だがその音は戦いの決着を意味するものでは無かった。

 

 

 「お前が宮沢鬼龍か」

 

 「なにっ」

 

 

右から頭部に迫る鬼龍の蹴りを腕を上げてブロック、生半可な防御などその腕ごと粉砕する程の破壊力の蹴りを受け止めて男にはなんのダメージもなかった。

 

苦悶の声も、体幹のブレも、腕に痣一つすらない。

 

 

 「良い一撃だ、人間にしてはな」

 

 

床に突き刺さったナイフを左手で引き抜く、そのまま流れるように逆手持ちの構えに移行し、そして振り抜く。

 

空間に銀色の鋭利な残像を発生させて振るわれる男のナイフ、その狙いが蹴りを繰り出した右足の腿に走る太い血管だと鬼龍は見切った。

 

すぐさま最速の動きで右足を戻して飛び引く、男のナイフが右足のあった場所を通過する、一連の時間は一秒にも満たない。

 

 

 「反射神経も悪くない」

 

 

しゃがんだ姿勢から男がゆっくりと不穏を覚える動きで立ち上がる、露わになったその顔は鬼龍に負けず劣らずの厳しさ、顔、肉体、気迫、どれをとってもその男が他と隔絶した肉体的スペックを有していることを伝えてくる。

 

 

 「くそっ、なんだ!何が来やがった!?」

 

 「また化け物か……」

 

 

既のところで危機を脱したルイスと救援を間に合わせたレオンも体制を復帰させて新たな敵を認識する。

 

すぐさま拳銃を抜き放ち、男に向けて構える、だがその男の姿を見た途端、レオンの顔が歪み硬直する。

 

 

驚愕と疑問、高まる危機感と混ざり合い、レオンに混乱をもたらした。信じられない、という様に絞り出した声には覇気がない。

 

 

 「お前は……」

 

 「クラウザー…!?」

 

 

 「久しいな、レオン」

 

 

姿を現した新たなる刺客、クラウザーは不敵に笑う、口の片端を釣り上げ、しかしその両目は一切歪ませずレオンを射抜くように見据えていた。

 

 




◇新たなる敵…!?
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