TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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稿



ファ~暑い


第34話

 

 

 

 「隙を作れ、奴を引きずり降ろしてブチのめす」

 

 

古城の最奥に断つ塔の最上階、祭壇の間にて遂に幕を開けた決戦、圧倒的な力を振るうサドラーを前にして鬼龍が静かに、しかし力強く言い放った。

 

 

 「サドラーから先に叩くのか?」

 

 

 「あの馬鹿でかいプラーガの触手はサドラーが操作している、先程奴にダメージを与えた途端、明らかに動きが停止した、奴がくたばれば脅威ではなくなる」

 

 

 「解った、援護する!下の床を通って進め!」

 

 

作戦の共有も手早く済ませ、すぐさま行動を開始する、鬼龍は入口側の足場から数メートル低い下の床まで飛び降りた、レオンとルイスは油断なく銃を構え、援護射撃の体制をとる。

 

 

 「愚かな人間め」

 

 

それを見逃すサドラーではない、片手をかざせば二本の触手が縦方向にしなり、下方に降りた鬼龍目掛けて打ち下ろさんと力を溜める。

 

 

 「今だ、撃てーっ」

 

 「おおおっ」

 

 

しかし左右に別れたレオンとルイスが発砲、レオンのセミオートライフルから放たれる銃弾は強靭な大触手に風穴を開けていく、ルイスのハンドガンは一撃一撃が重苦しく強力、連続して叩き込めばかなりの損傷を与えられる。

 

左右の触手ともダメージを受けて怯む、サドラーの背後にある寄生体の母たる大プラーガが叫びのような声を上げる。

 

鬼龍への攻撃を怯ませて無効化した、そうして生じた僅かな時間、鬼龍が床を駆け抜けてサドラーの立つ足場へと到達するには十分過ぎる程の時間だ。

 

 

 「次はしっかり殺してやるよっ サドラー!」

 

 

 「ほざけ、全て無駄なあがきだ」

 

 

しかしその時、駆ける鬼龍の視界に何かが迫る、それはサドラーの立つ足場からも、鬼龍が駆ける下層の奥からも、視界の外からも大挙して迫りくる。

 

 

 「なにっ コレは…!」

 

 「なんだあっ、下の方に何かがいる!」

 

 「アレは…プラーガだっ」

 

 

それは迫り上がった二つの足場を除いた下層を一瞬で埋め尽くす程に姿を現した大量のプラーガそのものであった。

 

宿主を持たずとも、まるでパニックホラー映画に登場する地球外生命に似た姿のプラーガが、ヒビ割れた床や壁から這い出してくる、それはやはり大プラーガを母体とする悪夢の軍隊であった。

 

細針の様に鋭い多脚を動かしながら接近、獲物をその針の脚で突き刺し、動けなくなったその体の傷口にすぐさま露出した神経の触手を捩じ込んで肉体の主導権を掌握する。

 

 

 「フハハ、さぁ踊ってみせろ」

 

 

 「チィッ 小賢しいわっ」

 

 

我先に鬼龍へと迫るプラーガの群れ、しかし届くことは無い、鬼龍の連弾霞打ちで作られた打撃の障壁が迫るプラーガの悉くを吹き飛ばして破壊する。

 

体液を撒き散らしながら宙を舞うプラーガ群、鬼龍が一回転して多数を巻き込む鷹鎌脚を繰り出せば更に多くの数が巻き込まれて一度に絶命する。

 

しかし、どうしょうもなく数が圧倒的過ぎた。

 

 

 「オイ、ぜんぜん減ってねぇぞ!」

 

 「数が多すぎるんだ!」

 

 

どれ程前を行く同族が砕け散ろうともプラーガには恐怖を感じる知能も無い、壁の割れ目から再現など無いのではと思えるほど湧き出して尚も殺到を続ける。

 

 

 「鬼龍!コイツを使え!」

 

 

 「…! ソレは…そうか」

 

 

プラーガの波の一瞬の合間を縫って、レオンが鬼龍に何かを投げ渡す、それを見た鬼龍は納得したかのように受け取った。

 

 

 「余所見などしてる暇があるのか?」

 

 

しかしその意識を向けた隙にサドラーが反応する、またもやその手の動きに合わせて左右から触手が叩き付けられる、レオンとルイスのお互いの立つ場所を足場ごと崩さんばかりに速度の乗った不意打ちだ。

 

 

 「クソッ、マズい!」

 

 「ぬおおおっ」

 

 

直前で無駄なく躱すことは不可能だと判断して咄嗟に下の階層へと飛び降りるレオンとルイス、数瞬前まで自分が立っていた足場の床に触手が叩き付けられて轟音が響く。

 

その音を背後に華麗に身を翻す着地、だが下層に降りたということは自分達もまた、プラーガの餌場に入り込んだということ。

 

鬼龍のみを狙っていたプラーガの何割かが、新たに投下された獲物の方に駆け寄っていく。

 

 

 「でえーっ つい降りちまったあっ」 

 

 「鬼龍、やれ!」

 

 「解っている、今だけはお前の策に乗ってやるよ」

 

 「ルイス!目を塞いでしゃがめ!」

 

 

鬼龍が受け取った何かを素早く上空に投擲、レオンの言葉からそれが何なのか理解したルイスもまた深く俯く様にして目と耳を防護する。

 

獲物の意識が自分達から逸れたのを本能で察知したプラーガ群が全速力で駆け寄って飛び掛かる。

 

レオン達は既に3人とも必ず来たるその瞬間に備えていた、そして祭壇の間に空気を打ち震わせる音の衝撃と、余りにも強力な暴力的閃光が迸った。

 

 

 「貴様ら…何を」

 

 

それは直に浴びれば敵の網膜を焼き付け、鼓膜を麻痺させ、文字通り光と音の速度で無力化させる。

 

レオンが鬼龍に投げ渡したのは閃光手榴弾、人間を超越した性能を誇る怪物相手でも五感を破壊するその威力は有効だった、特に完全に露出したプラーガ本体には。

 

 

 〈キャイイイイイッッ〉

 

 

甲高い、虫の鳴き声よりも少しばかり動物的な叫びを上げて悶絶し、のたうつ大プラーガ。

 

実験により生まれた怪物達と同等の生命力を持つ大プラーガでさえ、弱点である強烈な光には弱い、直接的な破壊力は少ない閃光手榴弾の光が通常の銃撃を遥かに越すダメージを与えた。

 

手足たる二本の触手も戦闘を忘れて宙を藻掻くのみ。

 

 

 

 〈フシュイイイア〉

 

 

大本の大プラーガでさえその有様、群生にして一体一体は生命力の劣るプラーガ群の受けた被害は壊滅的を超えて正しく壊滅そのもの。

 

下層にひしめいていた全てのプラーガ、母体まで通じている壁の隙間から這い出てこようとした個体までもが揃って全滅、絶命した後、その肉体を形成する力も尽きて溶け落ちていく。

 

 

 「うがああっ」

 

 

サドラーもまた例外で無い、勿論、寄生体を露出させていないサドラーがそれだけで絶命することは無い、だが素体が人間である以上は音と閃光の魔の手からは逃れられない。

 

目を庇ってたたら踏む、だがやはり支配種を宿す者、そこからの復帰も凡百のガナードよりも遥かに速い。

 

 

しかし攻勢に転じた鬼龍の速度には間に合わない、レオン達の作戦、それは正しく状況を完全にひっくり返す会心の一手だった。

 

 

 「どうだ、また来てやったぞ蛆虫」

 

 

鬼龍が駆け抜け、数メートルは高さの違う下層から一息で飛び上がり、サドラーのいる場所まで到達、すぐさま攻撃の構えに移行する。

 

 

 「ほざくな ヒトブタァッ!」

 

 

視界が回復しつつあるサドラーにもそれは見えている、迫る鬼龍を今度は完全に絶命させようと首元目掛けて全力の力で片腕が掴みにかかる。

 

 

 「素手などで何ができるかーっ」

 

 

だがやはりダメージの残すその目では完全には見えてなかった、振るわれんとする鬼龍の腕に握られた、先程までは無かった銀色の煌きに気付かなかった。

 

 

 「ほう、耄碌ジジイにはそう見えたか」

 

 

次の瞬間には突き出されたサドラーの五指が全て切り離されて宙を舞った、銀色の鋭利な光が通化とともに何の抵抗もなく切り裂き両断した。

 

 

 「な、なにっ」

 

 

それはナイフだった、鬼龍の右腕には逆手持ちでナイフが握られていた、レオンから投げ渡されたのは閃光手榴弾だけではない、武器商人の元で購入していた予備のナイフ。

 

鬼龍の納める灘神影流は一子相伝の暗殺拳、しかし殺法と対する活法、有用な薬物製法の知識、果ては呪術の類に至るまで、ありとあらゆる殺しに関わる技術が備わっている。

 

当然の事、洗練された武器術も灘神影流の使い手たる鬼龍は習得している、乱雑に突き出された指を一瞬で切り落とすなど造作もない。

 

 

 「蛆虫に手足は不要ッ 切り落としてくれる!」

 

 

そのまま右半身を前に迫り出して右腕を振りかぶる、そのまま逆手持ちの姿勢でナイフの切っ先を突き出した、それは少しのブレも無くサドラーの顔面に向かって行く。

 

 

 「ぼうっ!」

 

 

鬼龍の目付けは既に完了している、サドラーの口内にある眼球、プラーガと直接繋がっているその箇所にナイフが根本まで刺し込まれる、そして間髪入れずに手元を捻り傷口を抉り広げた。

 

 

 「はーっ 灘神影流 “幻魔脚”」

 

 

鬼龍の妙技がまたもや炸裂、前蹴りがサドラーの右足を打つ、ただの蹴りなら強化されたサドラーの肉体には通じない、しかしそれは常識を超えた灘の御技。

 

ヴェルデューゴとの戦いで見せた幻魔拳、その応用である蹴りによる幻魔の植え付け、通常の物理力学では説明の付かない悍ましい破壊の錯覚を脳に植え付ける。

 

サドラーは今、自分の右足が弾け飛んで消失したリアルな感覚を与えられた、灘の活法を修めたものにしか解くことは出来ない。

 

 

 「おおっ、うあああっ」

 

 

突然の感覚の消失に伴い、バランスを維持することができずサドラーは倒れる、そのまま奥側の足場より落下して下層の床まで落ちてくいく。

 

 

 「ぬぐうっ…!」

 

 

ギリリと奥歯を噛み潰す音が聞こえる、サドラーが傲岸な嘲りから一転して自尊心を傷付けられた事への激しい怒りを再燃させる、すぐさま起き上がり、歯向かう者共を始末しようと顔を上げる。

 

 

その眼の前には既に 鬼 龍 ! 不遜にして冷淡な目でサドラーを見下ろしていた。

 

 

 「宣言通り、引きずり降ろしてやったぞ」

 

 「あううっ」

 

 「蛆虫は蛆虫らしく地を這っていろってなあっ」

 

 

見上げたサドラーのこめかみに鬼龍の幻魔脚が突き刺さる、蹴り抜かれた頭部そのものが破裂した風船の様に四散する強烈な幻魔がサドラーの脳内を支配する。

 

 

 「うがあっ」

 

 

蹴り飛ばされ、床を横に数度転がるサドラー、手にしていた禍々しい眼球と触手の生えた錫杖も手放してしまう。

 

 

 「み、醜いヒトブタが…!」

 

 

サドラーが震える足で立ち上がる、実態は錯覚、しかしそれ故にプラーガの再生力でも癒えぬ苦痛と圧倒的な違和感は確実に有効打となっていった。

 

 

 「寄生体を出される前にトドメを刺すぞ!」

 

 「おおっ、腐れ教祖、ブチ殺してやるぜっ」

 

 

そこに待ち構えたレオンとルイスによる銃弾の雨が浴びせられる、ルイスの銃撃が胴体の主要臓器のある箇所を正確に打ち抜き、レオンのライフル弾がサドラーの頭蓋に庇った腕ごと貫通して大ダメージを与えていく。

 

 

 「があああ、があああ!」

 

 

人外を超えた人外たるサドラーの生命力はそれでも尽きることは無い、だが通常ならば決定的な損傷となるダメージを負うたびにプラーガがそれを再生させる、その限界は膨大ではあるが決して無限では無い。

 

全身から夥しい血を流してのけぞる、一度に大きなダメージを刻み込まれればそれは消耗として残り続ける。

 

 

 「いい気になるあっ」

 

 

だがサドラーとてこのまま終わる程度の存在ではない、身を守っていた腕を振り払い叫ぶ、サドラーの内奥でプラーガがのたうち肉体操作の指令を発する、全身の強化された筋肉が脈打つ。

 

神経の様に張り巡らされたプラーガの細かい触手が動き出した、撃ち込まれた弾丸を探し出し、そこに通常の生物では実現不可能な圧力が一瞬で加えられた。

 

 

 「ヤツは何をする気だ!?」

 

 

サドラーの表皮に体内から押し出された弾丸が浮かび上がる、それは体内から弾丸を除去するのに留まらない、撃ち出された時と変わらぬ速度でサドラーの体から弾き出された弾丸が今度はレオン達を襲った。

 

 

 「なにっ、なんだあっ」

 

 

 「はっはーっ、己の弾丸で死ぬがいい!」

 

 

 

想像を遥かに超える驚異的な反撃、レオンの記憶の中の怪物達ですら、銃弾が通じぬ敵はおれども肉体操作で反撃に利用する様な敵は居なかった。

 

 

 「クッ…!」

 

 「なんて真似しやがる!クソッ」

 

 

咄嗟に身を投げ出して床を転がり回避するレオン達、軌道の読めぬ攻撃を一か八か身を低くしながら凌ごうとする、飛び出した銃弾が床に当たって削りながら弾かれていく。

 

そしてここにもまた、想像を超えた対応を繰り出す男が一人、体を投げ出す回避もする事なく、迫る弾丸群を肉体そのものでなんと受け流す。

 

 

 「灘神影流 “弾丸滑り”」

 

 

究極のスリッピング・アウェーにより文字通り迫る弾丸の全てを受け流し無効化、まるで鬼龍の体をすり抜けたかのようにその背後で銃弾が床や壁に着弾する。

 

だが反撃までは行わない、サドラーの様子が変化していくのを、鬼龍の五感と本能が鋭敏に察知していた。

 

 

 「……本当に救えぬ愚かさだ…」

 

 「半端な力を持つ故に真の恐怖を味わうのだからな…おとなしく我が信徒に加わるべきだったと後悔するだろう」

 

 

サドラーがゆらりと立ち上がる、そこに激しく猛り狂う怒りの炎は既に無い、ただひたすらに強い殺意と憎悪が淀んで渦巻く瘴気の気配が張り詰めていた。

 

 

 「見せてやろう…崇拝するべき神の姿を…」

 

 「私の全能力を解放する!」

 

 

宣言と同時にサドラーがその口内を開く、鬼龍に破壊された黄ばんだ眼球がまた覗き出る、既にその傷は癒えていた、そしてそれがサドラーの本領発揮の合図となった。

 

 

 「ヤバいぞ!寄生体を解き放つ気だ!」

 

 「その前に止めろーっ!」

 

 「…いや、もう遅いな」

 

 

メキメキと筋肉と骨、細胞そのものが作り変えられていく音がなる、体内の支配種プラーガもまた同様、硬質化細胞を生成し、体外へとその身を露出させ自らが手足となって敵を排除する。

 

サドラーの首元から血液と黄ばんだ体液が吹き上がる、その噴水の中から続々と巨大化したプラーガの脚が出現する、その数は四本、サドラーの指が切り落とされた片腕は完全な触腕と変わる。

 

そしてサドラーの首から上はもはや元が人間とは思えぬほどの変異を果たす、プラーガと一体化した脊髄が伸縮してその首が触手のように伸ばされ、顔面からは鋭い刃物とかした牙が上下で四本突き出した。

 

 

巨大にして硬質な四本の脚が立ち上がると、その下にはもはや用済みと言わんばかりにサドラーの首から下の体がまるごとぶら下がり、その上にはサドラーの醜悪な蛇の様に変異した頭部が宙にのたうつ。

 

サドラーの口内の眼球がレオン達に向けられる、辺りには常人ならば吐き気を催す程の緊張感と悍ましい殺意が振り撒かれる。

 

 

 「これがサドラーの真の姿か…」

 

 「これ程の変異…どれだけ改良を加えやがった!」

 

 「無駄話は後にしておけ、全力でやらねば死ぬぞ」

 

 

 《サァ絶望スルガイイ、ソシテ私ニ跪キ赦シヲコウノダ、何モカモ、コノ神タル サドラー ガ支配スル!》

 

 

教団の神の咆哮が祭壇の間に響き渡った、その圧倒的な威圧を肌で感じながらも、尚も怯むこと無く構えるレオン達、遂に偽りの神への挑戦が始まった。

 




◇恐ろしい変形…!
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