TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第37話

 

 

 

 〈キィィ……〉

 

 

短く細い断末魔を上げて最後のノビスタドールが撃ち落とされて地に落ちる、ノビスタドールの群れなど支配種との戦いを超えたレオン達には物の数では無かった。

 

 

 「今ので最後か?」

 

 「そのようだ」

 

 「よーし……で、遂にサドラーは死んだ訳だが」

 

 「あぁ、まだ終わっちゃいない」

 

 

祭壇の間での戦いは終わりを迎えた、教団の長たるサドラーは倒れ、ロス・イルミナドスの野望は潰えた、だがレオン達の戦いは終わっていない。

 

アシュリーに取り付いたプラーガを取り除く為、そして道を違えたかつての戦友を止める為、未知の戦力が待つ孤島へと乗り込まなければならなかった。

 

 

 「先ずはアシュリー達と合流する、装備を整えて万全の体制で乗り込もう、島の戦力は未知数だ」

 

 「そうだな、俺も知らねぇ化け物が作り出されている筈だ、それにあのクラウザー、その目的もそうだが…」

 

 「何だか油断ならねぇヤバい野郎だってのは伝わってきたぜ、エイダの言うように本当にサドラーよりも厄介かもしれねぇ」

 

 「だが進む以外に道は無い、アシュリーから忌々しいプラーガを取り除くには孤島に行かなければならん」

 

 「ルイスよ…プラーガのその治療とやらも時間が経ち過ぎると手遅れになるのだったな、アシュリーがそうなるまでに残された時間はどれぐらいだ」

 

 「成長阻害の薬はまだある…慌てる程じゃないさ、まぁ、あんな物とっとと消してやりたいのは変わらねぇけどな」

 

 

不意に三人の会話を背後から聞こえる音が遮った、祭壇の間の入口の門が勢い良く開かれる音、つられて三人が振り返る、だが一目見たその顔に警戒は無かった。

 

 

 「いつの間に連絡したんだ?」

 

 「いや、まだの筈だが」

 

 「寄生体を通じてサドラーの死を感知したのだろう」

 

 

 

 「はっはーっ 恐怖ゲームでもエンディングが一番盛り上がるんだよ!遂にやったのねぇ!」

 

 「レオン!ルイスと鬼龍も!皆無事ね!あの教団のリーダーを倒したんだよね!?」

 

 「おおっ!よく解らんけど終わったみたいだ!」

 

 「悪夢の終幕見たり!ようやく帰れるのかあっ」

 

 

祭壇の間に入ってきたのは武器商人に連れられたアシュリーと警官達、鬼龍の推察通り、プラーガを通してサドラーの命令権の完全な消失を武器商人は感じ取っていた。

 

 

 「フン、騒がしい連中だ」

 

 「まぁ良いじゃねぇか、説明する必要もあるしな」

 

 「エイダの姿は…やはり無いか、まぁ良い」

 

 「これからどうするか、方針を決めるぞ」

 

 

喜びの表情でレオン達の元へと歩み寄るアシュリー達、だが近付くに連れてレオン達の表情や雰囲気から何かを感じ取る、少なくとも勝利を称えている様子ではない。

 

レオン達の元へ到達する頃にはその顔は完全に怪訝な表情を浮かべる、レオン達はその問いに答えた。

 

 

 「レオン…?何かあったの?」

 

 「あぁ、今から話す、聞いてくれ」

 

 

祭壇の間で起きた出来事、その首謀者の真意まで全てをレオン達はアシュリー達に伝えた。

 

 

 

 

 

 「ほ、本当にそんな事が…!?」

 

 「…そうか、サドラーは倒せたけど新しい支配種が孤島で待ち構えているんだね!なるほど…」

 

 「うぅん、どういうことだ」

 

 「仲間割れってことなんスか?」

 

 

 「ヤツの名はクラウザー…聞き覚えはあるか、武器商人 サドラーの護衛を務めていたらしいが」

 

 「うーん、外部から傭兵達を雇っているのは知ってたけど、その中にまさか支配種を授かっていた奴がいたとは初耳なのね」

 

 「サドラーは教団の支配者なんでしょ?プラーガを通じて人を操れる様な奴に反抗なんてできるの…?」

 

 「支配種なら可能なのね、もっともサドラーが最強の寄生体である限りは無駄な反抗に終わる筈…」

 

 「しかしサドラーは殺された、俺達をぶつけ合わせて消耗させる所まで奴の作戦だったのかもしれねぇ」

 

 

 「う〜む、サドラーが早まった故に付け入る隙ができた…だけどそれはクラウザーにとっても予想外の筈」

 

 「チャンスを物に出来るよう、ずっと機会を伺ってきたのだろうな、サドラーもそれには気が付いていたみたいだが」

 

 「まぁつまりだな…今から奴が待つ孤島へと乗り込む、最優先なのはアシュリーの治療だ、クラウザーとも戦闘になるだろう」

 

 「アシュリーよ、お前にはまた危険な場所へと同行してもらう事になるが」

 

 「えぇ、それしか方法が無いならそうするだけよ、心配しなくても私は大丈夫よ、鬼龍」

 

 

 「大した嬢ちゃんだな、それでお前らは?」

 

 

 「勿論行かない、ワシめっちゃ生きたいし」

 

 「俺達が戦力になるのは無理です」

 

 

次なる戦いに向けた準備は進んでいく、情報の共有が終わり、作戦を立て、失った弾薬を補充すれば次はいよいよ孤島へと歩みを進める時が来る。

 

 

 

 

祭壇の間を超えた先にはやはり奥へと続く抜け道があった、潮風が吹く海が見晴らせる場所には、ロープが垂らされており、それを伝って下方へと降りられる様になっていた。

 

一人一人、ベルトをロープにくくり付け命綱として壁を蹴るようにして降っていく、最後の一人が降りきる頃には先に下へと降りた者達が周囲の確認は済ませていた。

 

 

 「海の匂いだ、どうやら先には船着き場でもあるみてぇだ、それを使って孤島へと渡っているのかもな」

 

 「ならここは倉庫か、ここらの木箱は孤島に運ぶつもりの物だったのか…さて、肝心の通行手段はあるのか」

 

 

少し先へと進めば想像通り、外の空間と繋がっている部屋が現れた、壁のない解放されたその先には広大な海が広がっており、海と部屋の中間の水路には数人は乗れるボートが停められていた。

 

 

 「良かったな、泳がなくて済みそうだぞ」

 

 「いやちょっと待てよ、全員は乗れないぜこれ」

 

 

しっかり動くのかふと疑問にかられ、エンジン付きのボートを作動させようとするレオン、手を伸ばした横合いから聞き覚えのある声が投げ掛けられる。

 

 

 「そのボートはちゃんと動くから安心して、でもコレがなきゃ走れないわ」

 

 

物陰に身を隠していたのか、いつの間にやらその場に居たのは鮮やかな真紅のチャイナドレスの女性、エイダ、その手の指にはリングに下げられた差し込みキー、恐らくボートのエンジンキーが弄ばれていた。

 

 

 「エイダ!?いつからそこに!」

 

 「最初からよ、サドラーは片付けたようね」

 

 「あぁ、だが…」

 

 「クラウザーが裏切って暴走を始めた、でしょ?想像通りに事態は展開しているわ、勿論悪い意味でね」

 

 「お前も来るのか?あの時よりも協力的じゃないか」

 

 「クラウザーはサドラーも組織の事も信用していなかった、野放しには出来ないわ」

 

 「…なるほど」 

 

 

 「なぁオイ、話は終わったか?それよりこのボートだがよ…ヘタレ警官は除くとして全員は載せられないぜ」

 

 「アシュリーの嬢ちゃんは当然として後はどうする…あっ!当たり前みてぇにもう乗ってやがる!」

 

 

隠された船着き場に停められたエンジン付きボート、四人ほどが限界のそのボートに先んじて乗り込む男がいた、堂々と腕を組みボートの一角を陣取るは鬼龍!

 

 

 「ムフフ、でもこれで数は丁度いいのね」

 

 「あん?何だよ、武器商人、数え間違いか?」

 

 「実はね…ルイスには暫く此処に残って手伝ってほしいのね…“コレ”を完成させる為にね」

 

 「あ~?また何を言い出す……! コレは…!」

 

 「ククク、見覚えがある筈なのね、最後の戦いには必ずコレが役に立つ筈なの」

 

 「お前…コイツを何処で…」

 

 

突然の提案に困惑するルイスに武器商人が何かを手渡した、それは埃を被って少し変色した数枚の紙、文章と絵図が細かく書かれたそれは何かの設計図の様だった。

 

武器商人の言うようにルイスはその紙に見覚えがあった、何故ならそれを書き記したのがルイス本人だったからだ。

 

 

 「どうした、ルイス?」

 

 「……うむ、そうだな」

 

 「よし解った、武器商人の言うように俺は暫く此処に残るぜ、確かに名案かもしれねぇ」

 

 

ルイスは少しの間、思考して答えを出す、だがレオン達にはその発言の意味が当然理解できない。

 

 

 「どういうことだ?」

 

 「いやぁ、ちと野暮用というか…まぁ心配すんな、後で合流する、今話してもややこしくなりそうだ」

 

 「そうか…何かよくわからんが、大丈夫なのか?」

 

 「あぁ、どのみち一度に行ける人数は限られているしな、此処はお前と鬼龍のオッサンに譲るとしよう」

 

 「解った、お前の事だ、きっと悪い考えじゃないんだろう、また後で会おう、城にもまだ連れてこられた怪物がいるから気を付けろよ」

 

 「おう、解ってるぜ」

 

 

 「えっ そうなんですか」

 

 「や、やっぱり俺達も、いやしかし…」

 

 「ククク、心配することは無いよ、用が済んだらすぐに脱出して合流するのよ、警官さんにも勿論メチャクチャ手伝ってもらうのね」

 

 

 「それじゃあ俺達も行くぞ、後は任せたぞルイス」

 

 「そっちこそヘマをするんじゃねぇぞ?」

 

 

4人は城に残り、もう4人は孤島へと乗り込む、二手に分かれてレオン達は行動を開始した。エンジン付きのボートの運転席にレオンが乗り込み、その横の席にはエイダ、後ろにはアシュリーと鬼龍。

 

 

 「準備はいいな?」

 

 「あぁ、化け物共は残らず駆除してやる」

 

 

 「そ、そう言えば貴女に助けてもらったお礼をまだ言ってなかったね…あ、ありがとう」

 

 「あら、そんなに緊張しなくてもいいわ、私が敵になる事は無いでしょうから…恐らくね」

 

 

エンジンキーを差し込み捻って回せば、ボートのエンジンが唸りを上げて作動する、操作レバーを押し倒せばボートが後方に水飛沫を巻き上げながら疾走を開始した。

 

海の上を走り出したボートはすぐに遙か先へと進んでいき、やがて見送るルイス達の視界から横に逸れて消えて行った。

 

 

 

 「……行ったみてぇだな」

 

 「ムフフ、心配は不要よ、あのメンバーならきっと問題なく任務遂行なのね」

 

 「だよな、それじゃあ俺達も役目を果たすとするか」

 

 

残るルイス達もまた、形は違えど最後の戦いに向けて準備を開始する、武器商人に連れられて今来た道を戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、孤島

 

クラウザーの持ち帰った報告は兵達に動揺を与えた。

 

 

 〈サドラーサマガ、サドラーサマガシンダアッ〉

 

 〈ウ、ウソダロ…コンナコトガ…コンナコトガアッテイイノカ…〉

 

 〈タックモウ…ジャアオレタチハドウスルンダヨ、エーッ〉

 

 〈アヘアヘアヘ〉

 

 

 〈…フゥン、アァソウ〉  〈ドウデモイイデスヨ〉

 

 

孤島の開けた屋外、廃墟のような建物が並ぶ戦闘区域の広場に集められたガナード兵達が口々に思い思いの言葉を吐く、演説台に登った選挙の立候補者の様に、高台からクラウザーが兵士達に言い放つ。

 

 

 「案ずるな、勇猛なる兵士達よ」

 

 

幾つもの戦場に身を投じ、幾度も死線を越えた軍人のクラウザーが放つ低く重い言葉は、支配種の力も相まってその場のガナード達を押し黙らせ耳を傾けさせる力に溢れていた。

 

 

 「サドラー様は確かに斃れた、だがそれは我々の終わりと同義では無い、思い出すがいい、我らには“力”が残されている…素晴らしい“力”がな」

 

 「契約の際、教団から与えられた祝福…そう、プラーガだ、その置き土産、教団亡き後それは…」

 

 「今、我々の手の中にある!」

 

 

 〈…!〉  〈マ、マサカ…!〉

 

 

クラウザーの言葉で更にガナード達にざわめきが走る、まだ知性を残す者はその言葉の意味に気が付いた。

 

  

 「それは単純な兵器よりも一線を画する力を保有したと言うことだ、教団ではなく、我々がだ!」

 

 「我々が従うは教団の教えか?いいや、違う、力だ!圧倒的な力にこそ我々は敬服し忠誠を誓う!」

 

 

 〈ナ、ナニヲイッテルノン…?〉

 

 〈マテヨ、タシカニ…〉

 

 

 「この力があればあらゆる戦場を蹂躙できるぞ」

 

 

 〈〈〈 !! 〉〉〉

 

 

 

クラウザーのその一言でガナード達の目の色が変わる、プラーガに乗っ取られていようとも人間であった頃の自我の残滓が残っている、暴力の飛び交う世界で生きてきた傭兵の自我だ。

 

本来、プラーガが人間社会に擬態し繁殖を有利に進める為に残されたその霞んだ自我が、プラーガ特有の殺意の増幅と合わさって明確な色を取り戻していく。

 

野蛮な暴力性、血に酔う快楽、力への渇望。

 

人道や善性など元より無価値と断じる戦場住まいの彼等、残された唯一の支配種からの命令を受けたプラーガとその提案に抗う余地のない魅力を感じたガナードの自我が重なり合う。

 

 

 「倒れ伏した教団の教えなどもはや不要ッ」

 

 「プラーガの恩恵は今や我等の為にあるッ!」

 

 

 

 〈〈〈オオオオオオッッッッ〉〉〉

 

 

 〈ニマ〜ッ〉  〈ククク…〉

 

 

プラーガを宿す孤島の本体は新たなる支配者の登場を受け入れた、それは孤島の傭兵と城の信徒達の根底の違いをクラウザーが見抜いていたからだ。

 

もはやその場のガナード達にかつての主、サドラーの事など欠片も思い浮かんでいない、クラウザーと、クラウザーがこれからもたらしてくれるであろう甘美なる殺戮と闘争、それ以外は何もその心に映されていなかった。

 

 

 「今からこの島に教団を壊滅させた侵入者がやって来る、何としてでも見つけ出し、殺すのだ」

 

 「欲望の赴くまま、存分に力を振るえ」

 

 

 〈〈〈ホアアアアアアッッ〉〉〉

 

 

ガナード達の歓声が響く、教団からの脱却と独立、プラーガの新たな所有者権の獲得、そしてクラウザーの支配は瞬く間に孤島中に広まっていく。

 

クラウザーが話は終わりだと背を向けて立ち去れば、もう待ちきれないとガナード達もそれぞれの持ち場に向けて走り去っていく。

 

 

 (せいぜい生物兵器の戦闘データ回収の為に利用させてもらうぞ、そしてそれには敵勢力が必要不可欠だ)

 

 

 「ククク、さぁ早く来いレオン」

 

 「こちらの準備は済んでいるぞ」

 

 

クラウザーは己の物となった孤島の奥へと進んで行く、より凶悪で強い力を持つ怪物を解き放つ為に、さらなる力を得る道筋がクラウザーには見えていた。

 




◇恐ろしき軍団…!?
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