TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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TB狙いの時のハンターさん…トライコーンさん…貴方達はクソだ


第43話

 

 

 

 「はあっ」

 

 

孤島の研究施設、淀んだ空気で充満した薄暗い場所で、その雰囲気を生み出す元凶とレオン達は対峙する、リヘナラドール、驚異的な生命を誇る怪物。

 

 

 〈グウウ〉

 

 

鬼龍の浸透系の打撃が、あれから更に姿を現したリヘナラドールの胸を打つ、皮膚が波打ち後退する。

 

 

 「…頭部、胸中央、右脇腹、左足脹脛」

 

 「了解」

 

 

続いてレオンが鬼龍の示した箇所をライフルで狙い撃つ、連続して放たれた銃撃は四つの箇所を同じ数の弾丸で正確に撃ち抜いた。

 

 

 〈アガガッ……アガ…ボウウッ〉

 

 

そうすれば寄生体を全て破壊されたリヘナラドールの肉体が四散する、寄生体の位置を探り出す術を見出した鬼龍が位置を伝えレオンがその箇所目掛けて射撃。

 

まさに最小限の弾薬でリヘナラドールを排除する、不死身とさえ形容されるその再生力はもはや脅威では無かった。

 

 

 「今ので3体めだが問題無いな」

 

 「タネが割れれば容易いものだ、そして…」

 

 「ここがこの化物の製造場所か」

 

 

レオン達は研究施設の奥、手術室に到達していた。

 

手術室と言うだけ合って辺りには専門的な器具や装置、患者を寝かせる手術台が取り付けられている。

 

だが医療の現場に不可欠な清潔という要素はそこにはまるで無い、辺り一面に飛び散った血痕が錆の様なシミとなり、器具には何か焼け焦げたような後、本来は整理されていなければならない道具や薬品は棚の外の床に散乱している。

 

そして何よりも手術台の上に存在する物質がこの場所にどれほど悍ましい狂気が齎されたか物語っていた。

 

 

 「うううっ…!酷いわ…」

 

 「あまり見るなアシュリー、こんな光景は視界に入れるべきじゃない」

 

 「テロリスト共の研究所で似たような物は幾つか見たが…何度見ても直視に耐えぬ下劣さだ」

 

 

そこにあったのは実験の痕跡、特殊な装置で寄生体を体内に捩じ込まれる途中で息絶えた、これ以上無く顔を苦悶で歪ませた人間の死体。

 

リヘナラドールに改造する途中だったのか、完全に硬直した亡骸の伸ばされた右腕が何かを掴むことはもう無い。

 

 

 「こんな事やらされてたんじゃルイスの奴じゃなくても逃げ出したくなるだろうな」

 

 「捜し物はありそうか」

 

 「どうだろうな……ん?」

 

 

様々な物が散乱する手術室の奥に、壁を背に倒れ息絶えた研究員の死体、その手に銀色の光沢を放つ掌ほどの鉄板を発見する。

 

 

 「見つけたかも知れない」

 

 

近づいて手にしてみれば確かにそれは読み込むための溝の様なものが幾重にも彫られたカードキーらしき物だった。

 

 

 「ここに来る途中に読み取り式のロックされた扉があっただろう、そこに差し込んで見れば目当ての物かどうか解る筈だ」

 

 「確か冷凍室だったか、よし、戻って試してみるか」

 

 「あぁ、だがその前に…」

 

 「! 来い、アシュリー!」

 

 

手術室の自動扉が突如開閉音を立てて開いていく、その先から接近する気配を感じ取って近くに居たアシュリーを呼び戻した。

 

 

 「えっ…ああっ」

 

 

そして開いた入口からゆっくりと入室する灰色の人形、リヘナラドール、アシュリーが慌てて飛び引く勢いでレオン達の元まで後退する。

 

 

 〈……………〉

 

 

唸り声一つ上げずに躙り寄る、レオンがライフルを構え、鬼龍が先制の一撃を繰り出そうとした時、リヘナラドールの体勢が崩れ前のめりに倒れ伏す。

 

 

 〈………ゥ〉

 

 

 「なにっ」

 

 「なんだ…?」

 

 「せ、背中が!」

 

 

倒れ顕になったリヘナラドールの背、まるで巨大なスプーンで抉り取った様に後頭部と脊椎の走る背後の胴体の殆どが消失し、赤黒い空洞となっていた。

 

最後の呻きを残してリヘナラドールが爆散、死に際の身じろぎすら無く絶命した。

 

 

 「………」

 

 「…死んだのか?」

 

 「何なんだったの…?」

 

 「既に致命傷を負っていた様だな」

 

 「致命傷?他の生物兵器がやったのか?」

 

 「恐らくはそうだろう」

 

 

戦闘の予感とは裏腹に脅威は消失、だがそれを幸運などとは思えない、辺りの不穏な気配がより強まった気がした。

 

 

 「油断できないな…よし、冷凍室に向かうぞ」

 

 「あぁ」

 

 

肉塊と化したリヘナラドールを残して手術室を後にするレオン達、鬼龍は暫くその異様な亡骸を眺めていた。

 

 

 (寄生体を狙われたのでは無いな…)

 

 (ただひたすら圧倒的な破壊を受けて再生力の限界が訪れ死んでいる、ここまでの事が出来るとは支配種か…?)

 

 

 「……………」

 

 

やがて鬼龍も背を向けて後にする、その顔の眉間の皺は僅かに深まり、目はより細められた。

 

鬼龍は既に新たな敵との会敵が近いことを確信する。

 

 

その後、冷凍室の前まで戦闘は発生せず到達した。

 

分厚い扉の横合いに取り付けられた読み取り機にカードキーを差し込むと赤く光るランプの色が明るい緑へと変化し、音を立てて扉のロックが解除される。

 

 

 「開いた、やはりこれがカードキーか」

 

 「うわっ、つ、冷たい…!」

 

 「冷却機能も最近まで生きていたのか」

 

 

冷凍室の中へと踏み入る三人、扉を開けた瞬間に猛烈な冷気が走り抜け、部屋の中は床も壁も天井も霜が覆い尽くす、そして天井のクレーンからはリヘナラドールの“なり損ない”が大量にぶら下げられている。

 

手足が不揃いなもの、顔が肥大化したもの、半身が消失したもの、より悍ましい肉塊がそこにはあった。

 

 

 「やっぱりイカれてるわ…こんなの」

 

 「失敗作に目覚められても困るから永遠に氷漬けか…つくづく生命を冒涜するのが好きな奴等だ」

 

 「まったくだ、カードキーの書き換え装置は何処だ?こんな部屋は早く出たい」

 

 「うーん…あっ、アレがそうじゃ無い?」

 

 「見つけたか?」

 

 

アシュリーが部屋の横湧きに設置された装置を見つける、差し込み口らしきものがある装置にレオンがカードキーを差し込むと暫くして後、軽快な電子音が鳴りカードキーが装置から戻される。

 

 

 「終わったか」

 

 「あぁ、多分な」

 

 「ならばもうこの部屋に様は無い」

 

 

レオン達は冷凍室から立ち去ろうと出口の扉に近付く、しかしその途端、扉から何かが作動したガチャリという音が鳴る、それは閉錠の音だった。

 

 

 「えっ」

 

 「なにっ」

 

 「チッ」

 

 

そして見計らったかの様に天井のクレーンに吊るされたリヘナラドールの一体が床に落下、動き出す筈の無いリヘナラドールが横たわった体を自ら動かし、唸り声を上げ始める。

 

 

 「アシュリー!向こうの部屋へ!」

 

 「う、うん!」

 

 

 〈ヴヴヴ…〉

 

 「邪魔するな、クソゴミ」

 

 

鬼龍が一瞬で駆け寄る、冷凍から冷めたばかりの分、リヘナラドールの反応は遅れ先手を許す。

 

鬼龍の浸透系の打撃がたるんだ皮膚で波を作り、続け様の回し蹴りが冷凍室の奥へとリヘナラドールを吹き飛ばした。

 

 

 〈バウッ〉

 

 

 「寄生体の箇所は!?」

 

 「脊椎中央、右胸、右足太腿だ」

 

 

そして放たれるライフルの弾丸、示された箇所をやはり正確に撃ち抜いていく、そしてリヘナラドールは力尽き四散、壁や天井の霜をグロテスクに変色させる。

 

戦いの終わりを告げるように、敵性反応の消失を感知したのか、出口の自動ロックが解除された。

 

 

 「脅かせやがって…凍ってたんじゃないのか」

 

 「化物を解き放つ時に冷凍室の機能を解除したようだな、考えてみればカードキーの書き換え装置が問題無く使えるのもその為だ…言わば即席の罠というわけだ」

 

 「中々狡猾だな、クラウザーめ…だがこれでようやく先に進める、廃棄場と培養室を抜けたら通信塔だ」

 

 「アシュリー、もう大丈夫だ」

 

 

 「えぇ、今行くわ……ん?アレは何…?」

 

 

アシュリーの視線の先には逃げ込んだ個室の奥にある、透明な強化ガラスのケースに厳重に仕舞われた黒い筒の様な何かに止まる。

 

 

 「これは…スコープ?レオンが持ってるライフルなんかに取り付けるアレ?…何でこんな所に?しかもこんなに厳重に仕舞われてる」

 

 

ケースは取り付けられた重たいハンドルを回して解錠する作りとなっていた、冷凍室の機能が停止している今ならケースを開けるのも可能だろう。

 

 

 「どうかしたか、アシュリー?」

 

 「あっ、いや何でも無い!今行くわ」

 

 

何かが気になりつつも、レオンの呼び掛けに答え付いて行く、三人は冷凍室から退室した。

 

 

 

冷凍室を抜け出して廊下の奥、廃棄場へと続く扉はあった、薄暗闇を照らす赤い照明がその扉の向こうに不穏な光景を想像させる。

 

 

 「俺が先に行く」

 

 

鬼龍が不遜に言い放つ、だがレオン達にはそれが傲慢の発露というよりも、何かしらの脅威を鬼龍が鋭く感じ取った故であると思えた。

 

実際それは当たっている、レオン達が無言で肯定する中、鬼龍が間を置いてやがて一気に扉を蹴破って廃棄場に踏み切った。

 

 

 「……フン、一足遅かったか」

 

 

鬼龍に続きレオンとアシュリーも廃棄場へと入室、そこは廃棄場という名が連想させる通りの風景が広がっていた。

 

積み上がったコンテナ、ゴミを投下する底の見えない廃棄口、コンテナを運ぶクレーン、そのクレーンを操作する為の部屋らしきものが奥にあった。

 

だがその場には明らかな破壊の痕が刻まれている。

 

 

 「これは…!?」

 

 「この壁や床のヒビって…」

 

 「間違いなく戦闘の後だ、何か強大な存在が研究施設の奥にいることは解っていた、だが出遅れた様だな」

 

 「見ろ…」

 

 

鬼龍が指差す先には、異臭を放つ体液で濡れた床、その後は引きずるように廃棄口まで続いていた。

 

 

 「これは粘液…?」

 

 「化物の物だ、廃棄口の底から這い上がり、戦闘を繰り広げ、また廃棄口へと戻った」

 

 「相手を仕留めたということか?」

 

 「いいや、違うな」

 

 「ならばどうしてだ、それに何故そう言い切れる」

 

 「残気だ、戦った者達の振り撒いた気が染み付いている、集中して読み取ればその時この場所で何が起きたか教えてくれる」

 

 「残気だと…そんな馬鹿な」

 

 「五感を研ぎ澄まし刮目してみろ、お前は既に気を感じ取る感覚を体験している、出来る筈だ」

 

 「……うぅむ」

 

 

懐疑の念を抱きながらも、鬼龍の言葉から不思議な説得力のような物を感じるレオン、城でのノビスタドールとの戦闘を思い出す様に、気を感じ取る為の神経を集中させる。

 

 

 「こんな感じなのか…?……なにっ」

 

 「ほ、本当だ…透明な影の様なものが見える…!」

 

 「それが残気だ、どうだ、何が見える」

 

 「確かに…生物兵器らしきものが暴れている、壁や床のヒビはコイツの攻撃のせいか…そして」

 

 「コイツと戦っているのは…この動き、エイダか?」

 

 

レオンの視界で透明な影達が数刻前の動きを再現している、変則的な動きで空中へと退避する影、エイダのワイヤーショットによるもの。

 

最後には自ら廃棄口の底へと飛び降りて行く、やがて怒りの咆哮を上げて怪物もそれに続いた。

 

 

 「自分から廃棄口の底に逃げたのか?怪物はエイダを追いかけて行ったみたいだが…」

 

 「ほう、そこまで見えたか、どうやら三十分程前と言った所だ」

 

 「こんな高い所から飛び降りるって…大丈夫なの?怪物も追いかけて行ったんでしょ?」

 

 「…あぁ、アイツは強かで抜け目無い女だ、俺達の手助けは必要無いさ」

 

 「さぁ進もう、通信塔までもうすぐだ」

 

 

 「……ここでも無かったか」

 

 

レオン達が廃棄場を通過する、その間も鬼龍はまだ姿の見えぬ何かに向けて闘気を静かに燃やしていた。

 

 

 (予感と言うには明確過ぎるほどに感じる…)

 

 

クレーンの操作室へ続く階段を登り、その先のドアを開けて操作室へ、敵影が居ないことを確認して通過。

 

 

 (強き者の気配…だが支配種のものとも違う)

 

 (不明瞭でもあり鮮明でもある様な…この不気味な気配は一体何だ、全身の肌が針を刺された様にざわついている)

 

 

その先は医務室だった、モニターのような機材とそこに貼り付けられたレントゲン写真、散乱するカルテ、何かが描きかけのホワイトボード、薬品の詰まった棚。

 

そして更にその先の培養室に繋がる扉は、医務室から階段を降りた踊り場の奥にあった。

 

 

 「培養室…そこか」

 

 

鬼龍が他の物には目もくれず、跳躍し一息に階段を抜かして踊り場へ、そして培養室への扉に到達した。

 

 

 「あっ、ちょっと!」

 

 「おい、鬼龍!?」

 

 「探し回るのは好かん、早く姿を見せろ」

 

 

そしてすぐさま扉を開け放ち、培養室に入室。

 

部屋の中は名の印象通り、複雑な機材と実験のデータらしき物、奥からは薬品類の匂いが漂ってくる。

 

 

 「いるな…間違いなく、この部屋に」

 

 

培養室中に充満した恐怖の気配が部屋の温度を引き下げる、まるで先程の冷凍室かの様な体感的な冷気、吐いた息が白くなるのではと思う程の冷え切っている。

 

それに反して体の内奥が火傷の様にジリジリと焼き付く痛みのようなプレッシャーを発する、近くに凄惨な死を振り撒く脅威が潜んでいることを伝えてくる。

 

 

 「支配種並みか」

 

 

 「鬼龍!何か見つけたのか」

 

 「急にどうしたの?」

 

 

 「ククク、レオンよ、アシュリーを連れて離れていろ、まずは俺が楽しむ、俺の獲物だ」

 

 

言うやいなや鬼龍が動き出す、機材のある部屋を通り過ぎ、ドアを蹴破って培養室の奥へと踏み入った。

 

破損したガラスの窓枠を乗り越えると、見えてきてたのは手術室とは打って変わって整理、清掃が施された広い部屋。

 

照明を浴びて妖しく光る戸棚の中の瓶やガラスケースの中の容器の中には培養液に使ったプラーガのサンプルが保管されている。

 

 

その培養室の中央にソレは立っていた。

 

 

 「お前だな、あの位置からでも解る程の馬鹿げた殺意を放っていたのは…望み通り来てやったぞ」

 

 「その姿、変異した特殊個体か、もはや自我も知性もあるまい、さながら哀れな徘徊死体」

 

 

 〈アァ……アッ…ゥ…〉

 

 

人形の二足歩行、定まらない呼吸、弛緩した四肢、鋭い牙が限界まで詰め込まれた恐ろしい口内、リヘナラドールの特徴だった、ただ水死体のような滑りと灰色の肌は無い。

 

煤の様に黒く変色した肌はヤスリの如く荒々しい岩肌へと変質していた、その顔の眼球は肉に埋もれるように消失している。

 

 

 「あの背を抉られたリヘナラドールもお前の仕業だろう?俺を期待させたんだ、ガッカリさせるなよ」

 

 「まずはどの程度か俺が見てやるっ」

 

 

 〈ア…アーッ〉

 

 

鬼龍が乗り越えた窓枠の近くにあったデスクの椅子を掴み取り強引に投げ放った、隙を作り出す、或いは怪物の初動から戦闘能力を割り出す為の攻撃。

 

 

 

 〈アッ、ガアアアアッ〉

 

 

 

怪物の金切り声の如き咆哮、それと同時に命中寸前だった椅子が文字通り粉々に砕け散って飛散した。

 

 

 「…それか、このざわつきの理由は」

 

 

怪物の全身は一瞬にして極悪の豹変を見せた、体の至る所から大きさも太さも長さもバラバラの、例外無く恐ろしく鋭い、剣山の様な針が飛び出した。

 

それが飛来する椅子を破壊した、突き刺さるを通り越して勢いをつけた強固かつ鋭利な針がバラバラに分解する、鉄パイプも組み込まれた箇所だろうと関係無しに刺し砕く。

 

 

 「下手に接近していたら死んでいた」

 

 (この本能からくる危機感が警告していたのは…単純な戦闘能力では無い、奴に備わった凶悪な殺傷能力)

 

 (死の気配だ、ナイフが喉元を掠めた時の様な濃い死の気配、それが奴の中で凝縮し滲み出している)

 

 

 「この俺の肉体に僅かでも死を予感させたというのか…面白い、ならばその能力を味わってやるよっ」

 

 

 〈ア、ア、ア…〉

 

 

怪物が振動するかの様に小刻みに震わせて接近する、今にも数十本の針を展開させる様だった。

 

鬼龍もまたその能力に怯むこと無く迎え撃つ、島に封じられた怪物の最後の一体が遂にその牙を剥いた。

 




◇また戦いが始まる…?
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