TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第45話

 

 

 

 

培養室を超えた先の通信塔は錆びで黒ずんだ鉄骨の橋を渡って聳え立っている。

 

暗雲が立ち籠める空から冷風が吹き荒び、カラスが辺りの鉄骨に止まってそこを歩くレオン達を監察するように見下ろしていた。

 

 

 「よし、まだ通じるか試してみるぞ」

 

 

冷たい鉄骨の通路と階段を登っていく、やがて機器の揃った通信室へと到達、すぐさまそれを使用し連絡を試みる。

 

 

 「本部、応答願う、救助対象は無事保護した、帰還の為のヘリが必要だ…今いる場所に…」

 

 

無線の先からの応答は無く、砂嵐の不快な音に時たま機械音が混じるだけであった。

 

 

 「ダメか…」

 

 「端から助けなど当てにしていないから残念だとも思わない、それよりも邪魔な雑魚共も居ない」

 

 「さっさとルイスの研究室へ最短で向かうべきだ」

 

 「…ウム、脱出の方はエイダに頼る事になるかもしれないな、それより今はアシュリーの治療が優先か」

 

 「うぅん、ルイスから貰った抑制剤はまだあるよ?城以来特に異変は無いし焦らなくても」

 

 「だが出来るならそんなものは早く取り除きたいだろう?鬼龍の言う通り兵隊が居ない今はチャンスだ」

 

 「確かに…それはそうね」

 

 「地図によれば研究室へのルートは幾つかあるが最短というのなら廃棄場から地下を通って進むルートだ」

 

 「廃棄場か…それはつまり」

 

 「あの大穴に私達も飛び込むっていうの…?」

 

 「背に腹は代えられまい、さぁ行くぞ」

 

 

三人は通信塔から廃棄場に向けて移動を始める、その表情は数分後の未来を想像し歪んでいる。

 

 

 

 

 

 

廃棄場の下、ゴミの放棄場所から更に進んだ場所

 

レオン達がアイアンメイデンと会敵する三十分程前─

 

 

 「しつこいわね…」

 

 

怪物からの強襲を受けて廃棄場の下層へと退避したエイダに追いすがる怪物の魔の手が迫る。

 

 

 〈グウウウッ〉

 

 

悪臭で満ちた暗がりの廃棄場をワイヤーフックで通過するエイダ、すぐさま飛び降りて追跡する怪物も汚水に身を浸すことなど躊躇するはずも無く猛進。

 

 

 「ここで戦うのはこちらが不利」

 

 

そしてエイダが先に廃棄場の奥の扉へ到達する、両開きの大きく思い鉄の扉を全身で押す様に開く。

 

自分一人が何とか通れる隙間が出来ればそこを潜り抜けて通過、開きかけた扉を向こう側から閉め、錠前代わりの閂を締めた。

 

 

 「これで暫く持つかしら」

 

 「あの怪物は…特徴から見て資料にあったU−3で間違いない、昆虫の遺伝子を組み込まれた生物兵器」

 

 「そしてここは…」

 

 

廃棄場の先の空間は今まで以上にガラクタやスクラップの散乱する通路、煤と埃で黒く染まり、奥からは熱気と濃い鉄の臭いが漂ってくる。

 

 

 「溶鉱炉でもあるの?」

 

 

更に奥へと進めば想像通りの景色が見えてくる、開けた空間に籠もる熱気は蒸し風呂の様に上昇、天井から吊り下がった巨大な鉄球の真下には、溶岩の如き溶鉄に満たされた大穴が開いている。

 

漂う熱気はこの溶鉄穴から放たれていた、鉄球を吊り下げる鎖の操作を行う為の機器が奥に見える。

 

 

 「行き止まり?いや、あの箇所」

 

 

部屋右側の壁がヒビ割れて損傷している、優れた直感からその壁が何かを隠す不自然な存在だと予感する。

 

 

 「アレで壊せそう」

 

 

吊り下がる大鉄球を動かす機器の元まで向かう、取り付けられたレバーを操作すれば鎖がしなり、釣られて大鉄球が横に大きく振りかぶる。

 

そして速度を乗せた超重量の鉄塊がヒビ割れたコンクリートの壁に衝突した、爆音の様な衝撃と粉塵となって舞う石粉、ヒビ割れた壁にが僅かに崩れた先に扉の様なものが見えた。

 

 

 「これで正解みたいね」

 

 

衝突の余韻により一時的に鉄球の操作が出来なくなる、次の一撃を見舞う準備が整うまで待つその時、

 

廃棄場の方角から別の咆哮と衝撃が発せられる。

 

 

 〈グオオオオオッッ〉

 

 

 「…今の音で気付いた?まったく…」

 

 

廃棄場へ続く扉が凄まじい力の衝撃に晒される、重い鉄扉が次第に歪み始め、掛けた閂もまたその役割を完全に失うまで時間の問題だった。

 

 

鉄球が次の操作を行える様になるのと、殺意に支配されたU−3が鉄扉を閂ごと破壊して押しやり、スクラップ場へと踏み入るのは同時だった。

 

 

 〈オオオッ〉

 

 

既にこの先に獲物が存在することを確信しているU−3が全速力で疾走、両腕も合わせて四足から六足へとなり、更に増した速度でもってあっという間にエイダの元へと到達する。

 

 

 「ハァ…いいわ、追われてばかりいても仕方が無い」

 

 「来なさい、遊んであげる」

 

 

 〈バアッ〉

 

 

全身を部屋中央の溶鉱炉から昇る熱気に炙されながらもU−3が再びエイダに襲い掛かる、左右の何方かから迫ると思われたその巨体が、なんと大穴を跳躍で飛び越して接近する。

 

吊り下がる大鉄球にへばりつくように器用に着地、そしてそれをさらなる足場としてまた跳躍、エイダのいる箇所まで最短距離で突き進んだ。

 

 

 

 〈アアアアア〉

 

 

 「ッ…大胆ね」

 

 

そのまま落下して強襲、エイダのいる鉄球を操作する機器類ごと押し潰す勢いでのスタンプ、強烈な破壊音と煙を巻き上げる衝撃を発生させる。

 

 

 「落ちればアナタも無事じゃ済まないでしょうに」

 

 

一瞬出遅れるもすぐさま回避したエイダはもうそこには居ない、大穴の周りを辿る様に左側へと退避、そしてU−3目掛けて攻撃を開始する。

 

 

 「それとも死への恐怖なんて無いのかしら?」

 

 

クロスボウの火薬ボルトで煙の中の影に撃つ、一射で終わらず無駄のない素早い動きで次の矢が装填されすぐさま撃ち出される。

 

爆発するその矢は何処にあたっても大きなダメージとなる、三度の風切り音とそれに次ぐ爆発が響き渡り、U−3から苦悶の叫びが放たれた。

 

 

 「ウオオオッ」

 

 

憤怒に燃えるU−3が黒煙の混じった粉塵を払い除ける、その肉体からは肉を抉られた出血と火傷が刻まれる。

 

 

 「今さら手加減は必要無いでしょう?」

 

 

溶鉱炉に照らされる灼熱のステージで両者の戦いが再び幕を上げる、エイダがクロスボウを構え、U−3がまたもや跳躍した。

 

 

 

 

 

 

そして現在 廃棄場、ゴミ処理場─

 

 

 

 「いったぁ…だ、大丈夫かな…?」

 

 「あぁ、見た所、何とも無い様だぞ」

 

 「良かった、前の私なら泣いてた」

 

 「ふむ、下には廃棄された兵器でも散乱している物だと思ったが、ガラクタに実験体の残骸くらいか」

 

 「…もしそうならどうするつもりだったんだ」

 

 

嫌々ながらも鬼龍の提案する廃棄場の大穴からのルートを進むレオン達、底の見えない暗黒に見を投げ出すのは死地を潜り抜けた者達さえも躊躇させた。

 

そうして薄暗い悪臭の道を進む、汚水の小川と化したその場所を時にコンテナを押しやり道とし、時に降りた鉄柵を操作して通過する。

 

 

 「む、コレは…」

 

 

レオン達の目の前の厚い鉄扉は完全に破壊されている、中央が大きく凹み吹き飛ばされて床に横たわっている。

 

 

 「エイダと戦っていた怪物の仕業か」

 

 「扉を破壊し追い掛けたようだな」

 

 「俺達も続くぞ、エイダの事だ、簡単にどうこうされるとは思えないが」

 

 

奥から来る熱気を向かい風のように浴びながらも進めば、その先は想像通りの戦闘の形成が多く見られる。

 

溶鉱炉を中心としたその部屋は奥の機械類は全て破損、床にはクレーターのようなヒビが点在し、右側の壁に至っては完全に破壊され、何かが吊るされていたであろう天井から伸びる鎖の先には何も無い。

 

 

 「また一足遅かったか」

 

 「だがそれ程時間は経っていない様だ」

 

 「怪物はどうなったの…?倒した?」

 

 「先に進めば解るだろう」

 

 

砕けた石壁の先にある扉、それはまだ破壊されては居なかった、扉を開けて進んだ先にあったのは電灯が照らす灰色の地下通路。

 

肌をひりつかせる空気が充満している、鬼龍は既にその場所には何かが潜んでいることを察知していた、レオンもまた鬼龍の放つ気が張り詰めたのを認識し警戒を始める。

 

 

 「何かいるのか…?」

 

 「あぁ、近いぞ」

 

 

何とか二人並んで歩ける程度の狭い通路を進む、やがて幾度か軽く曲がった先に降りたシャッターが見えてきた、横の壁には操作レバーが取り付けられている。

 

 

 「シャッターか…あのレバーで」

 

 

 「そこで止まって」

 

 

シャッター前の通路横に別部屋へと続く通路が存在した、そこから真紅の影が静かな声で歩み寄る動きを静止した。

 

 

 「エイダ、無事だったか」

 

 「無事かどうかはまだ解らないわ」

 

 「それはどういう…」

 

 「! 下がって!」

 

 

地下通路の床に突如として振動が走る、エイダが声を荒げ、その振動が不自然な強まりを見せた、今立っている床の下を何かが移動していると理解したその瞬間にレオンは後ろに飛び引いた、その直後に鳴る爆発の様な轟音。

 

 

 「なにっ」

 

 「な、なんなの!?」

 

 「新手か…」

 

 

コンクリートの床が捲り上げる様に砕かれる、勿論レオンの仕業ではない、さっきまで立っていた床から巨大な何かが突き破って現れた。

 

 

 「この形状は…?」

 

 

天井まで届く長さのそれは黒ずんだ肉の塊であった、上を向く先端の両側に三日月のような形状の鋭利な刃が生えている、勢いよく閉じるその刃の間に存在する牙を剥く口内。

 

レオンはそれがガナードを始めとする怪物達から露出した寄生体と同じ存在であることに気付く。

 

 

 「気付かれた、こっちよ!」

 

 

エイダがすぐさま通路を進み、シャッターの操作レバーを下ろす、鈍い音を立ててシャッターが上へ上がっていく。

 

 

 「ここでは戦えない、先へ進むのよ」

 

 「今のはなんだ?お前を襲った化物か」

 

 「ソイツを仕留め損ねた様だな」

 

 「生憎とね…ダメージを与えた筈が返って暴走させたみたい、アレの名はU−3、遺伝子操作の実験体」

 

 「城に居たローブのアイツと同じってこと…?」

 

 「恐らく生命力だけならヴェルデューゴより上よ」

 

 「レオン、彼女を守って、また攻撃してくるわ」

 

 「あぁ、ここに長くいるのはマズそうだな」

 

 

シャッターが完全に開き切り、それと同時に4人は駆け出した、長い通路という不利な状況とをU−3から逃げ延びるために。

 

 

 「今だ、走れ!」

 

 

急速に移動を始めた獲物を感知してU−3も動き出す、床の振動が再開され、振動の発生源が走るレオン達を追跡し始める、それはやがて追い付いて到達する。

 

 

 「チッ、足音を感知している…来るぞ」

 

 「危ない!」

 

 「きゃあっ」

 

 

4人が今足を踏み込んだ箇所を正確に把握したU−3の地中からの奇襲、レオンがアシュリーを抱えて前に飛び込み、エイダと鬼龍は背後へと素早く身を躱す。

 

何度も弾丸で撃ち抜かれ、最後は灼熱の溶鉱炉で焼かれ、皮膚とその下の細胞までもが焼け焦げたU−3と寄生体、だが他の生物兵器のよりもとりわけ屈強なそれは今だ健在。

 

 

 「おい、この先には何がある」

 

 「別館へ続く長い道だ」

 

 「フン…確かにここで殺り合うよりはマシか」

 

 

U−3の寄生体がまた奇襲の為に地中へと戻っていく、その間にも通路を駆け抜け、二つ目のシャッターの元まで到達した。

 

 

 「あっ、また閉まってる!」

 

 「レバーはシャッターの奥か」

 

 「開きかけているな、下から何とか潜れそうだ」

 

 「こうした方が早いだろう」

 

 

鬼龍が突然シャッターに龍腿による超威力の前蹴りを撃ち込んだ、蹴り上げた箇所が歪み、周囲に強烈な音と衝撃が響き渡る。

 

 

 「鬼龍!?」

 

 「! 来るわ!」

 

 

そして足元から伝わる移動してくる振動、すぐさま衝撃の出処を探り当てる、U−3の断頭斧のような寄生体の刃が下から突き上げその上にあったシャッターを切り刻んで破壊する。

 

勿論、それを見越して衝撃を発生させた鬼龍はもうその位置から素早く飛び引いたの後だ。

 

 

 「これで通れる」

 

 「ムチャをする…」

 

 「見えて来たわ、あれが別館への道」

 

 

通路を渡り切ると開けた空間に辿り着く、積まれた木箱と床の線引き、奥には巨大な重機が広い荷台を向けて鎮座している、その下は重機を遥か上の通路まで押し上げるエレベーターとなっていた。

 

 

 「アレは物資を運搬する為のブルドーザーか、移動に使えそうだな…だが」

 

 「あぁ、どのみち奴は追ってくる、後顧の憂いは断つべきだろう、この広さなら戦えん事も無い」

 

 「アシュリー、下がっていろ」

 

 

アシュリーがブルドーザーの荷台を乗り越えてその先の運転席に身を隠し、残る三人は各々の武器を構え戦いに備える、そしてU−3が床を砕き這い出した。

 

 

 〈キャイイイッ〉

 

 

それはU−3であってU−3では無い、本体の触手と四足の下半身を携えた怪物はエイダとの戦いで受けたダメージにより既に絶命している。

 

背より飛び出した寄生体がその肉体の主導権を握る、人の面影があった上半身は深く項垂れる様に地へと投げ出され起き上がらない。

 

 

 「死に体か、だが得てして手負いの獣ほど恐ろしい」

 

 「手早く仕留めるぞ、移動手段を破壊されちゃ困る」

 

 

 〈ギュアアアアッ〉

 

 

下半身の四足を使いU−3が這い寄る、唯一にして最大の武器は寄生体の口内の牙とは別に体外へ突き出した二対の大鋭牙。

 

 

 「だが、あの背の寄生体の殺傷能力は相当だ」

 

 「安心しろ、お前達がヘマをして真っ二つにされても残りのクズどもは俺が代わりに殺してやる」

 

 「それは頼もしい、けど今更そんなヘマはしないわ、そうでしょ?レオン」

 

 

 〈ンゴーッ…!〉

 

 

U−3の背で寄生体が殺意に震えてのたうちまわる、もはや下半身の一部とかした上半身も脚部として突進を繰り出した。

 




◇この強さは本物か…!?
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