TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

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第46話

 

 

 

地下通路の先にある大型重機の停留所に銃声と地を震わす振動が響く、レオン達と変異したU−3の死闘は続く。

 

 

 「また潜ったぞ!」

 

 

 〈キュイイイ〉

 

 

攻撃手段の多くを失ったU−3だが、地中へ素早く潜る事による退避とそこからの奇襲で戦力差に食らいつく、コンクリートの床には既に洞窟のような穴が幾つも出現している。

 

 

 「小賢しい、所詮は虫けらのやる事だ」

 

 

だがその奇襲も鬼龍は既に攻略しつつあった、視覚のない状態から獲物を探知する方法を振動の感知と当たりを付けた鬼龍、しかしそれ以外の要素もあると見抜いていた。

 

 

 「本能的に気配を感じ取っているな、ならば此方から居場所を教えてやるよ」

 

 

鬼龍が地中に向けて強烈な殺気を放つ、するとすぐさま床の振動は鬼龍の立つ場所へと向かって来た、飛び引く鬼龍、示し合わせた様に次の瞬間に飛び出すU−3。

 

 

 「アタリだな」

 

 「今だ!撃て!」

 

 

そして殺到するライフルの弾丸と爆発する火薬ボルト、溶鉄に焼かれたU−3の肉体にさらなるダメージを蓄積する、甲高い寄生体の絶叫を上げてまた地中へと潜っていく。

 

 

 〈キュイイアアッ〉

 

 

再び奇襲を行うと思われたU−3が少し離れた場所に自ら姿を現した、失われた本体の力は戻らず、強力な顎を備えた寄生体も深い損傷が刻まれている。

 

 

 「ほう、同じやり方では後が無いと悟り一か八かの攻勢に出るつもりか、醜い化物にしては嫌に潔い」

 

 「良いだろう、俺が引導を渡してやる」

 

 

鬼龍が一人前へ躍り出る、U−3も刃の付いた歪な顎を左右に最大まで伸ばし獲物を両断せんと地上での突撃を開始する。

 

助走をつけた後、六足合わせた全力の跳躍で鬼龍の元へと一瞬で迫る、左右に展開された刃のリーチは既にその方向へと回避は不可能な程広がっている。

 

 

 「ギロチンの鋭さを持つ牙か、だが恐ろしい武器も本体が死にかけならただの悪あがきだ」

 

 

鬼龍が姿勢を低くして踏み込めば、牙の目測は外れて空を切り裂く。そのすぐ下には潜り込んだ鬼龍、既に技の構えは完了している。

 

 

 「お前達の弱点である寄生体、神経と直結するそれを破壊すれば単純な損傷以上のダメージとなる」

 

 「ならばその弱点を蝕むこの技は特に効く筈だ」

 

 

 〈キャイイイッッ〉

 

 

 「灘神影流 “塊蒐拳”」

 

 

U−3の次の一撃よりも先に鬼龍の魔拳が届く、鎌首をもたげるヘビの如き寄生体に両拳が撃ち込まれた。

 

それは邪気を持って内蔵を蝕む灘神影流の奥義、軽く触れただけでも歴戦の達人すら地に伏せるその技は既に多大なダメージが蓄積した寄生体を更に内奥から焼き焦がす。

 

 

 〈ギュイイ…〉

 

 

 「苦しいだろう、その技は」

 

 「不完全だった俺の塊蒐拳もお前達化物の壊し方を習得する内に完成形へと近づいていった」

 

 

鬼龍の塊蒐拳はかつて己が受けた物の模倣、だが超人的な才覚とセンス、生涯の殆どを費やした研鑽に加え数多の怪物との戦闘経験が技の位を真と呼べるものまで押し上げた。

 

 

 「それが真の“塊蒐拳”だ 味わって死んでいけ」

 

 

 〈 ア ア ア ア ア 〉

 

 

U−3が変色した粘液を吐き出しながら激しくのたうちまわる、積み重なったダメージが遂にU−3の生命力を超えて崩壊へと追いやった。

 

 

 〈ゥ〉

 

 

力尽きた寄生体がとっくに倒れ伏した本体の上で崩れ落ちる、生命が抜け落ちた体の火傷跡からせき止められてた粘液の流出が再開されていく。

 

 

 「倒した様ね」

 

 「あぁ、だが万全の状態ならもう少し楽しめただろう、貴様に先を越されたのが残念だ」

 

 「噂通りの性格、生物兵器との戦いを自ら望む人間なんて貴方くらいでしょう」

 

 「刺激が無いと人生は退屈で色褪せたものになるからな、ともかくこれで脅威は排除した」

 

 「そうだな、後は進むだけだ、あのブルドーザーの荷台に乗って別館まで操縦すれば」

 

 「なら私に任せて!」

 

 

ブルドーザーの操縦席に隠れていたアシュリーが顔を出して答える、いつの間にか操縦席に座り、慣れた手付きで大型重機の発進準備を進めていく。

 

 

 「アシュリー?君が操縦するのか?」

 

 「大学ではこれくらい必修よ!」

 

 

ブルドーザーが振動とうねりを上げる、アシュリーの予想外の技能を前に僅かな笑みを浮かべ、レオン達はブルドーザーの荷台に飛び乗った。

 

 

 

 

その後 孤島、別館

 

 

 「ゲホゲホッ…粉塵が喉に…」

 

 「鬼龍よ…わざわざ壁に突っ込んで壊しながら入る必要は無かっただろ、アシュリーも何故言われるまま…」

 

 「ご、ごめん、なんかそうするべきだと思って」

 

 「ウム…」

 

 「アナタ達、今までもこんな事をしてきたの?」

 

 

別館への長い道のりを進み切ったレオン達、ブルドーザーのシャベルを駆使した強力無比な突進で別館の壁に大穴をこじ開けて荒々しく入館。

 

突き刺さった様に体躯の半分を食い込ませるブルドーザー、そして立ち昇る粉塵と瓦礫の中から身を出す四人。

 

 

「ふう…ともかく別館に着いたな」

 

「ルイスの研究所は孤島の最奥だ、ここも通過点に過ぎない、先を急ぐぞ」

 

 「あぁ、クラウザーも待ち構えているだろうが…」

 

 「なぁエイダ、前みたいに別行動も悪くないがもう少し手を貸してくれると有り難いんだがな」

 

 「…えぇ、良いわ、そうした方が早そうだから」

 

 

半壊した小部屋からドアを開けた先にあるテーブルと戸棚が幾つかある控室の様な部屋を抜けて進む。

 

その先には重たい鉄の質感に包まれた場所が広がっていた、煤臭いその場所には多数のは配管が壁を走り、その先の様々な機器やタンクに繋がっていた。

 

 

 「機械室と言った所か」

 

 

機械が上げる蒸気と橙色の古びた照明の光が合わさり、熱された鉄の蒸し暑い印象をその場を歩む者に与えた。

 

途中で曲がる長い通路や鉄骨だけで組み立てた様な無骨な階段を登り、次の部屋へと進んでいく。

 

 

そうして眼の前に広がるのは広いコンクリートの空間、横合いのエレベーター以外には特徴的な物は何も無い。

 

上部には天井代わりの金網の足場、エレベーターで上部に登れば足場となるであろうその床が広がっていた。

 

 

 

 「上に登れそうだな」

 

 「四人じゃちょっと狭いかも」

 

 

エレベーターの点滅するボタンを押せば問題無く上部へと起動音を立てて登っていく、数秒程で到達した。

 

 

機械室上部、奥に続く鉄の広場は静まり返っている。

 

そこを歩く度に靴底が鉄を打ち鳴らす音が鳴る。

 

 

 「…鬼龍」

 

 「あぁ」

 

 

ちょうど中央まで進んだその時、静まり返った空気が張り詰める、じくじくと肌を刺すかの様な威圧感。

 

レオンも鬼龍もそれが急速に高まる脅威の前触れだと知っている、二人の後ろを歩くエイダもその気配を察知し、アシュリーも三人の様子を見て危険が近づいていると知り身構える。

 

 

 「……」

 

 

無言のままレオンが胸元に取り付けられたナイフの留具を外して静かに抜き放つ、肌を刺すプレッシャーは尚も高まり、遂に張り詰めたその糸が切れた。

 

 

ダン!という鈍い音が鳴る。それは天井を走る配管から鳴っていた、音の鳴った箇所から何かの影が高速で落下する、その影の中には鋭い煌めきが含まれていた。

 

 

 「上か!」

 

 

振り返りもせず前方へ身を投げ出すレオン、上空からの奇襲、天井から鳴った音と一瞬で高まった殺気から瞬時に判断を下す。飛び引いた背後から今度は甲高い音が衝撃に混じって鳴り響いた。

 

 

 「ほう、俺の不意打ちを二度も防ぐか」

 

 

それはナイフが鉄板を穿つ音だった、レオンの立っていた場所の床に荒々しく降り立ち、手にしたナイフを床に突き立てたクラウザーの姿があった。

 

 

 「クラウザー…!」

 

 「現れたな、下衆め」

 

 

そこにすかさず鬼龍が迫る、前回のような小手調べの攻撃では無く、一撃で生命を断つ灘神影流の技を放たんとする。

 

 

 「まだ生きていたか、宮沢鬼龍よ」

 

 

クラウザーもまた突き刺さったコンバットナイフを引き抜いて振り抜く、銀色の残光が鬼龍を迎撃する。

 

 

 「下衆の刃物など掠りもせんわっ」

 

 

それを片腕で受け止める鬼龍、振るわれた刃では無く、それを手繰るクラウザーの片腕を押さえる。

 

危険を承知で敢えて素早く前に出る、筋肉の詰まった剛腕同士が軋むような音を立てて交差して抵抗し合う。

 

 

 「軍人気取りの化物が」

 

 

鬼龍の巌のような握り拳がクラウザーの顔面に横合いから迫る、その拳が側面から打ち付けたと思われたその時、

 

クラウザーがその拳の力に一切の抵抗をせず、脱力した体で振るわれた拳の勢いが向かう方向へと一回転。

 

肉体を使った脱力からの受け流し、スリッピングアウェーの要領で鬼龍の打撃を無効化してみせた。

 

 

 「受け流しは灘神影流の特権では無い」

 

 「チィッ」

 

 

クラウザーがその勢いを乗せて回転して足払いを繰り出す、背後に一回転して飛び引くことで躱す鬼龍。

 

互いに距離を取り、すぐさま次の攻防が始まる。

 

 

 「そうか女狐、貴様もいたか」

 

 

側面に回り込んだエイダが素早く発砲、音速の銃弾を何とナイフの刃で角度を付けて受け流すように弾くクラウザー、人間の反射神経と身体能力では到底不可能なその動き。

 

 

 「えぇ、貴方は危険過ぎるもの」

 

 「俺を始末するというのか、まぁ良い、端から仲間だとは思っていない…貴様も、クライアントの事もな…」

 

 

更には複数鳴り響く銃声、そしてそれを弾き落とすナイフの甲高い音、そしてクラウザーが空中へと脚力だけで高く飛び上がって後退した。

 

コンマ数秒後にその場所の床を激しく打ち鳴らしたのはレオンのショットガンによる銃撃、鉄板の床に細かい弾痕が刻み込まれる。

 

 

 「ここで決着を付けるつもりか」

 

 

 「フ厶、確かにそれでも構わんが…」

 

 

仕切り直しと言うようにクラウザーが改めて四人の前に立つ、レオン達は背後のアシュリーを庇うように向かい合う。

 

 

 「ククク、安心しろ、今更その小娘に用は無い」

 

 「サドラーの命令で拉致したのは俺だが…教団の無き今はもう生きていようが死んでいようが興味は無い」

 

 

 「命令って…あの時私を拐ったのは貴方…!?」

 

 「お前…!」

 

 「どうせ島中の監視カメラで全て見ていたのだろう、このタイミングで姿を現した理由は何だ」

 

 

 「クク…そうだな、お前達を褒めておこうと思ってな、強化コルミロスにアルマデューラ、U−3とアイアンメイデン…全て打ち倒しここまで来るとはな」

 

 「お前達もまた強力な力を持つと認めよう」

 

 

 「それで?駒となる化物はもう居ない様だが何を得意げになっている、わざわざ殺されに来たか」

 

 

 「そう思うか?…ではお前達の疑問に一つ答えてやる、この島に来てから気になっていただろう?」

 

 「兵隊の数が余りにも少なすぎる、と」

 

 

 「なに…!?」

 

 「! レオンよ、気を抜くな、何かが来る」

 

 

クラウザーの不可解な発言と共に機械室の中に押し入ろうとしている敵意を持った気配を鬼龍は感知する。

 

しかもそれはかなりの数の殺気の群れだった。

 

 

 「プラーガに寄生されガナードと成る、ここまではもう知っていよう、だがガナードには寄生体露出の他にもう一つ、形態変化の状態がある」

 

 「お前達がガナードを始末する際は的確に致命傷を与えていたな、だからこそ気付くまい」

 

 

 「貴様…何をした」

 

 

 「調整だ、鬼龍よ」

 

 「教えてやろう、寄生したプラーガは宿主の肉体が使い物にならなくなれば死ぬが…重篤かつ決定的では無い損傷を肉体が受けた際にいわゆる暴走を始める」

 

 「あらゆるダメージの反応を完全にシャットアウトさせ、リミッターは外れた肉体で自らが崩壊する勢いで敵を攻撃する」

 

 「つまり死なない程度に痛め付けるのだ、内臓を幾つか潰し首をへし折る、加減してな」

 

 「そうすることで兵を強化できる」

 

 

機械室の先に続く扉を荒々しく開け放ち、大量の人影が機械室上部へと殺到して入室する。

 

辺りには怒号の代わりにのたうつ寄生体の甲高い鳴き声が響き、濃い流血の臭いが一気に充満する。

 

その大群はクラウザーを避け、その眼前のレオン達四人の前に立ちはだかる。アシュリーやレオンのみならず鬼龍やエイダですらもその新たなる敵影の姿を視界に収めると激しい嫌悪感をその顔に映し出した。

 

 

 「こ、こんな事が…こんな事があっていいの!?」

 

 「なんて惨い真似を…!」

 

 

 「紹介しよう、“ガナード・デスヌカド”だ」

 

 

そこにいたのは凄惨の一言に尽きる有り様のガナード戦闘員の群れ。皆一様に頚椎の骨が横90度にへし折られ、体中には生きたまま切開した様な刺傷や酷い打撲の形跡。

 

もはや武器を扱う事すら不可能となったのか、皆一様に素手、その体は痙攣を繰り返し、寄生体の蠢く音がへし折れた首の裂けた肉の間から聞こえていた。

 

クラウザーの言葉の真意、つまりそれはプラーガの潜在能力を引き出すために敢えて加えられた“調整”なのだ、他ならぬ彼等の主クラウザーの命令によって。

 

 

   〈ァ゙…ベ…ァ゙ベ…〉   

            〈アノウ…〉    〈ウーッ〉

   〈ナン…デ、ジャァ゙〉   〈ヤメロオオオ〉

 

     〈オチンチンミセテ〉    〈ク、クラウザーサマ…〉

 

   〈ナゼ…?〉    〈トッテモイタイノン〉

 

          

へし折られた首の潰れかかった喉から寄生体の呻きに混じって苦痛に染め上げられたガナード戦闘員の声が込み上げる血や空気で変質し零れ落ちる。

 

もはや人としての自我は無いに等しいが、それはまるで彼等を操るプラーガでさえも、唐突で残虐な加虐の意味を測れず困惑を露わにしているようであった。

 

 

 「ククク、プラーガというのは何処までも便利なものよ、使えない愚図共ですらこうして手を加えればそれなりの戦力に代わる」

 

 「支配種の力があれば寄生体の暴走すら制御し利用できる、正しく新世界を統べるに相応しい力だ」

 

 

 「堕ちる所まで堕ちたか、クラウザー」

 

 

 「フン、言っただろう、俺とお前はコインの表と裏」

 

 「互いが揃うことは決して無い、何方かが光を浴びて輝くならば片方はその影へと消え去る運命だ」

 

 「この戦いも生き延びてみせろ、レオン…先で待っているぞ、追い掛けて来れたら教えてやる」

 

 「プラーガの“本当の可能性”をな」

 

 

クラウザーが床を蹴り上げて跳躍、暴走ガナード群が現れた機械室の先へと到達、扉を開けて進んで行く。

 

そしてレオン達から行く手を阻むように包囲の密度を上げていく暴走ガナード群。

 

その数は30を超え、クラウザーが機械室の奥へと完全に消えるとストッパーが外れたかの様に一斉に殺意の絶叫を上げてレオン達目掛けて殺到を開始した。

 

 

 〈 ウ ア ア ア ア ア ア 〉

 

 

 「やってくれるな、下衆め、何処までも不愉快にさせてくれる、文字通りの死兵というわけか」

 

 「完全に肉体を破壊しなければ止まりそうに無いわ、力も相当に強まってるはず」

 

 「肉体を完全に破壊か…簡単じゃないな」

 

 

レオンは散弾銃、エイダは火薬クロスボウを素早く構え、雪崩の様な勢いで殺到する狂える死兵の群れを迎え撃つ。

 

鬼龍もまた鋭い眼光で敵影を見据えている、レオンの撃ち出した散弾銃の銃撃が攻撃開始の合図となった。

 




◇次回、鬼龍達は…?
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