TOUGH DEVIL HAZARD   作:ポジョンボ

5 / 58
攻略本によるとデルラゴのHPは普通の村人と変わらないんだ。人生の悲哀を感じますね。


第5話

 

 

 

 

 「救出任務なんてやってる場合じゃないよね」

 

 

 「死だよ!死が迫ってるんだぞうっ!」

 

 

 

 

探索の途中、二人の警官が突然そう訴える。

 

その顔は恐怖と焦燥に歪み、青ざめてすらいた。

 

 

 

 

 「急にどうした」

 

 

 

振り返り、短い言葉でレオンが答える。勿論、二人が何を言わんとしているのか、なぜここまで怯えているのかは理解している。

 

 

故に刺激してこれ以上不安を煽らない様にできるだけ深刻そうじゃない軽い調子で答える。

 

 

 

 「怖気づいたのか?警官にしちゃあ肝が小さいな」

 

 

 

後ろに立つルイスが茶化すように軽口を叩く。

 

 

 

 「やかましいっ 共犯野郎!」

 

 

 「狂人と戦うつもりはありません!ただ生きて帰りたいだけですよ!」

 

 

 

この警官達の主張はある意味真っ当な物だった。今や5人は村の更に奥地へと足を踏み入れたのだが、その道中を思えば仕方のない事だった。

 

 

まず協会付近の道の先、吊り橋の様に木材で足場が作られた道を進んだ時のこと。もし足を踏み外し落下すれば眼下の断崖に吸い込まれ絶対に助からない。

 

 

そんな場所でもお構い無しに襲い来る村人。

カマやオノを振り回し、こちらを突き落とそうとしてくるのだ。もっとも先頭を行く鬼龍によってそれらの脅威は排除された。鬼龍の時として音速すら超える打撃は村人達では到底反応できず、あっけなく吹き飛ばされ逆に自分達が断崖に落下していった。

 

そして警官の一人が余計な興味から道の途中にある小屋の中の木箱に触れ、中で寝ていたヘビを起こして噛みつかれた。

 

 

しかしそれらはまだマシな方。その先のカラスが何匹も寄り集まる気味の悪い採石場らしき場所を超えて進む。(この時、鬼龍は採掘場であろう門で封鎖された洞窟を睨むようにしばらく眺めていた。)

 

 

問題はここからだ。何が起きたかと言うと、大岩に潰されかけたのだ。坂道を通ろうとするとその前にある不気味な標識を見たレオンが嫌な予感がするなどと言い始めた。

 

 

そして予感は的中する。何故か後方を警戒するレオンにつられて自分達も背後の崖上を見ると、数人の村人共がなんと大岩を押し転がそうとしていた!

 

 

走れ!と誰が言ったか怒号に近い声量の叫びと共に全員走り出す。大岩が転がり出す前に走り出せた事もあいまって何とか地面のシミにならずに済んだのだ。

 

 

極限の緊張もあり息を切らして地面に座り込んだ。

 

レオンとルイスは緊張と息切れこそすれど、すぐに立て直す。

 

鬼龍に至っては息切れすらまるで無い。

 

 

実は途中で転びかけたのだが瞬時に体制を立て直せた事に関して、警官の一人は今までの生涯で最も自分を褒め称えた。

 

 

更に村の脅威は留まるところを知らない。坂道の奥、沼地に建てられた足場と幾つかの小屋。渡ろうとすれば当然のように村人が襲い来る。不意打ちに爆発するワイヤートラップ、極めつけは後ろを追いかけてきた村人と前からくる村人の挟み撃ち。

 

 

無論、広場でのあの人数をたった一人で蹂躙して見せた鬼龍の相手は務まらない。それに戦えるのは鬼龍だけでもない。

 

レオンのみならず、ルイスも正確な射撃で村人を始末していく。

 

 

この時、実は警官達の背後には村人が忍び寄っていたが、殺意に支配された村人は目の前の自分達が仕掛けたワイヤートラップに気付かず通り過ぎ、ちょうど警官達に被害が出ない距離の後方で原型を留めず爆散した。

 

 

そんな道中の経緯を得て、今5人は目の前に巨大な湖が広がる場所まで来たのだ。

 

 

 

 

 「これ以上は危険や!村から逃げ出すぞ!」

 

 

 

警官の一人が宣言する様に叫ぶ、命の危険に晒された人間の当然とも言える結論。しかし帰ってきたのは氷の如く冷たい鬼龍の言葉と嘲笑。

 

 

 

 「ほう、どうやってだ?」

 

 

 「えっ」

 

 

 「あぁそうか 来た道をそのまま戻れば良いのだな お前たち二人で」

 

 

 

鬼龍のその言葉で警官達はこの連中はまだ村から逃げ出すつもりは無く、そうなれば自分達だけでまだ狂人が潜んでるかもわからない道中を引き返せねばならないと理解した。

 

 

 

 「今更村の外へ続く道が残されているとも思えんがな だが結構だ、止めはしない さぁ行け」

 

 

 「あううっ」

 

 

流石に自分達だけの力で村から脱出できると思うほど酷い楽観視はできなかった。

 

 

その様子を哀れに思ったのか、レオンが助け舟を出すかのように二人を説得する。

 

 

 

 「アシュリーを保護した後はヘリで脱出する手筈になっている アシュリーさえ見つければ村に用は無い」

 

 

 

 「……まぁ今すぐ結論を下すとは言わんがなブヘヘ」

 

 

 「アシュリーも心配だしなあっ」

 

 

その情報から一筋の希望を見出した二人は何とか落ち着きを取り戻した。取り敢えずまだ着いてくる事にしたようだ。

 

下手に離れられて犠牲になられる事はどうやら回避出来たとレオンは安堵する。

 

そして中断していた目の前にある問題の解決と向き合った。

 

 

 

目の前には広大な湖、今5人はその湖のほとりにいる。湖の水は雨の日の川のように濁っていて水中の様子などまるで見えない。

 

ルイスの話ではこの湖の先にも進む道があるはずなのだが…

 

問題というのは湖を渡る為のエンジン付きボートが一台しか無いという事だ。

 

岸辺に停められたボートは狭く、一人しか乗ることは出来ないだろう。

 

だからといって泳いで湖を渡るなど賢いやり方では無い。つまり湖の先に行けるのは一人だけという事。

  

 

どうするべきか頭を悩ませる中、まるで常識の如くボートに乗り込んだ男がいた。

 

誰に言われるまでもなく颯爽とエンジンを鳴らしてボートを走らせようとするロングコートの偉丈夫。

 

当然、鬼龍だ。

 

 

 

 「一人でいく気か?」

 

 

 「他にどう見える」

 

 

 

一応の確認で声を掛けてもやはり鬼龍の結論は変わらない。

 

鬼龍はこのような状況で他人に譲るような人物ではない。そもそも偶然同行する形となっているだけで、鬼龍は協力し合う必要性など最初から感じていないのだ。

 

 

何よりもこの先から、正確にはこの湖から強烈な邪気を鬼龍の本能は感知していた。

 

濁りきった湖の奥底から、先の村長をも超える何かのパワーを。

 

武術の達人の逸話として技と共に放たれた気がその者が去った後も周囲の生き物を寄せ付けぬ気の結界と化したというものがある。

 

この湖はそれに似ている。よく見れば小魚の類は泳いではいるが湖全体からまるで生命の気を感じない。

 

何者かがもたらした強烈な死の気配が湖を包んでいるのだ。

 

 

 

 

 

高ぶるままに他の4人の言葉も待たずにボートを走らせる。

 

取り付けられた舵を切り、ボートを操作して湖の先にあるという場所を目指す。

 

 

 

 「あいつ すげぇな…」

 

 

 

警官の一人が畏怖の念からそう呟いて、もう一人も頷いて同意する。

 

こんな状況で自分から単独行動を取ろうとするなんて賢明とはとても言えない。だがこの男は鬼龍。そのような常識は軽く凌駕する存在。

 

 

 「いや、これで良いのかもしれないな」

 

 

 

その鬼龍の実力を事前に聞かされ、且つその目で見たレオンは寧ろ二手に分かれる事でより速くアシュリーを見つけ出せると結論した。

 

鬼龍ならば村人の襲撃にあっても問題なく探索を続けるだろう。そう思考を打ち切り、背後に立つ人物に向き合う。

 

 

 

 「まだ聞きたかった事もあったしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボートを走らせ、湖の丁度半分の地点まで到達した鬼龍。何を思ったかボートを停止させ動かさない。

 

湖に波はなく、不気味な静寂が辺りを支配する。

 

だが鬼龍はわかっていた。その静寂はもうじき終わりを迎える事を。

 

 

 

 「ククク、俺から隠れられると思っているのか?」

 

 「さぁ姿を見せろ どれ程強いのか試してやるよ、化物が」

 

 

 

その時、鬼龍の乗るボートの真下の水が黒く染まった。

 

否、水の色が変わったのではない。巨大な何かがボートの真下を通過し蠢いているのだ。

 

その水中を蠢く黒い影が水面めがけて急浮上をする!

 

直後まるで爆発が起きたかの様に大量の水飛沫が巻き起こり、激しい波がボートを揺らした。

 

そして地獄の底の雷鳴の様な悍ましい大音量の鳴き声が響き渡った。

 

 

水面の爆発と共に姿を表したソレ、滑りのある岩石の様な質感の肌、頭部と思わしき場所の殆どの割合は口だ。まるで洞窟と見紛うばかりの開かれた口内には鋭利な牙が細かく生え揃っている。

 

何よりもその大きさ、水面に出したのは頭部だけだと言うのに既に5メートルはある。湖の下にまだある体の分を足せばクジラと大差ないだろう。

 

 

怪物 誰もが一目見てそう思うだろうソレは雄叫びの後、水中に潜った。もう一度真下からの奇襲をするつもりだろう。

 

だがその時、幸か不幸かボートの碇が泳ぐ怪物の体に鉤爪の如く引っかかり、皮を破いて肉に食い込んだ。

 

すると当然、縄で繋がったボートは動力を無視して怪物の泳ぐ方向へと猛スピードで引っ張られていく!

 

 

 

 「フハハハハ!せいぜい楽しませろっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんだあっ!」

 

 

湖に突如現れた怪物の叫びはレオン達にも届いていた。

 

全員が湖の方向を凝視する。そこには猛スピードで鬼龍を乗せて疾走するボートとその前方を水飛沫を立てて泳ぐ巨大な何かの姿。

 

双眼鏡を取り出してよく見てみればその何かは魚に似てるが背ビレや鱗などは見られない。

 

だがやはり何をおいても驚愕すべきはその大きさ。あの地獄の街でもこれ程巨大な怪物はいなかった。(少なくともレオンが遭遇した中では)

 

 

 

 「アレはまさか…デルラゴか!」

 

 

 「知っているのか!ならアレもプラーガで作られた化物か!?」

 

 

 「プラーガを使った生物巨大化実験の被検体だ!制御に難があったからな…サドラーめ、ここに廃棄したんだ…!」

 

 

 

ルイスの口からあの怪物の名と情報が明かされる。他にも何やら気になる言葉をあったが今はそれどころでは無い。

 

 

 

 「ねーっ なんなの、あの化け物!」

 

 

 「おい見ろっ あのオッサン何か手に持ってるぞ!」

 

 

その言葉で視線は鬼龍の乗ったボートに集まる。そこには高速で走り狂うボートの上に悠然と立ち上がり、右手に棒状の物、双眼鏡で確認すればボートに備え付けられていたのか狩猟用の銛を握った鬼龍の姿が!

 

 

車の法定速度以上の速さで走るボートという不安定な足場で平然と立つ鬼龍の体幹にも驚きだが、何よりもこの状況で一切衰えぬ鬼龍の闘志が見る4人を驚かせる。

 

 

 

 「戦う気かよ…」

 

 

 

デルラゴの他の生物が及びもしない戦闘力を知っているルイスは兵器の類も無しに、それも水場という奴のフィールドで戦うなど信じられないと立ち尽くす。

 

 

 

 

 

 

そんな4人を差し置いて湖の怪物、デルラゴと対峙する鬼龍!槍投げの様に順手で銛を掴み、切っ先を相手に向けて狙いを定める。

 

力の限り投擲された銛は矢の様な速度と一切のブレがない正確さでデルラゴの体に突き刺さり、大量の血飛沫が飛び散った。

 

 

 

 「フン、図体に反して貧弱な表皮だ」

 

 

 

この状況で唯一と言っていい攻撃の手段が通用すると見るや鬼龍はすぐさま第二の銛を構え投擲する。

 

 

またもや鮮血が吹き上がり、銛は深く突き刺さる。

 

武術家として相手の急所を見抜き、狙い、打ち込むという見切りの技術。既に絶人たる鬼龍の見切りは未知の怪物が相手でも遺憾なくその力を発揮し、デルラゴの血管が多く走る箇所を正確に狙い撃ちすることが出来るのだ。

 

 

 

 「おぉ!きいてるぞ!」

 

 

 

陸地から戦いを眺める警官達が声を上げる。あれほどの出血の量ならあの大きさとてすぐに動けなくなるだろう。だがそれは通常の生物だったらの話。

 

 

それがわかっているレオンはいつ怪物の思わぬ反撃で窮地に陥ってもおかしくないと緊張の糸を絶やさない。

 

 

 

 (ここから銃で掩護してみるか?いや遠すぎる 狙撃銃を使えば或いは…)

 

 

しかしそんなものは手元に無い。何かいい方法は無いかとあの怪物を知るルイスに声をかける。

 

 

 「おい、ヤツに弱点は無いのか」

 

 

 「……そうだ寄生体だ、寄生体が死ねば宿主も死ぬ ヤツを弱らせれば体外に寄生体が飛び出してくるはずだ!」

 

 

 「よしっ その情報をあのオッサンに伝えるぞ!」

 

 

 「しゃあけど残念ながらその方法が無いわ!」

 

 

 

結局、どうこうできる事も無く見守ることしかできぬ4人。

 

 

そして湖の上の戦いは更に激しさを増していく。

 

 

あれから更に数本の銛を叩き込まれたデルラゴは苦痛かはたまた怒りからか短い雄叫びを上げて水中に潜っていく。

 

既に次の銛を振りかぶっていた鬼龍は逃がすものかと潜るデルラゴに狙いを定めて、爆発的に膨れ上がったデルラゴの殺意を感知しすぐさま銛を手放し舵を操作してボートを右側に移動させた。

 

 

次の瞬間、先程まで鬼龍がいた場所を水中で向きを素早く変えて急浮上したデルラゴが大口を開けて通過する。

 

 

 

 「生意気なマネを…」

 

 

手放した銛を掴み、今度こそ叩き込まんとしたその時、デルラゴの泳ぐ速度が急激に上昇した!

 

ボートもそれにつられてより速く引っ張られる。まだこんな力が残っていたかと思えば、迫りくる視界の先を覆う何かの影が!

 

 

 

 

 「おい、マズいぞ!」 

 

 「鬼龍!」

 

 

 

戦いの行方を見つめる4人が凍りついた。鬼龍の視界を覆うそれはへし折れて湖に流され漂う巨大な流木だ。

 

 

もしあの速度で衝突すればただでは済まない。少なくともボートは転覆し湖に投げ出されてしまう。

 

そしてそうなれば後の展開は想像するに難くない。

 

 

それを見る誰もが、そして本人も普通ならば絶望する状況。

 

 

だがこの男は鬼龍!普通、並、通常、そんな言葉は彼の前では滑稽そのもの!

 

 

体の力の流れを知り尽くした鬼龍ならば、この激走するボートの速度をそのまま攻撃に乗せる事など児戯にも等しい。

 

 

鬼龍のただでさえ強靭極まる龍腿が速度を乗せて強化され流木を真っ二つに両断する。

 

 

ボートの速度を少しも落とさずにデルラゴを追い詰める。

 

 

 

 「小賢しい不意打ちなんぞで俺を殺せるつもりだったのか?」

 

 

 

そこからの戦いはある意味一方的だった。突然の方向転換、水中からの急浮上、ボートの通る先を予測した流木を利用した攻撃。

 

そのどれもが事前に察知され躱される。対してデルラゴに突き刺さった銛は既に十は超えていた。

 

 

 

 「こんなものか、ウスノロの怪物め」

 

 

 

鬼龍が攻撃を予見出来るのには理由があった。それはデルラゴに限らず村人達にも共通する理由。

 

プラーガにより理性を奪われ、増幅された殺意に飲まれた彼らはそれを制御するすべなど無い。

 

つまり相手の動きだけでなく殺意や気を読み取り動く武術家の鬼龍にとって彼らの殺意に支配された攻撃は余りにも読みやす過ぎるのだ。

 

デルラゴに至っては動物的な本能も合わさり、姿がまるで見えなくとも迫りくる攻撃を読めるほどの殺意を放っていた。

 

 

 

しかし先程までの猛攻とうって変わり、突然水中に戻り姿を表さないデルラゴ。

 

 

また水中からの奇襲かと思われたが鬼龍が徐ろにボートの方向を変えた。

 

するとその先に示し合わせたように浮上して現れ、全速力でデルラゴが迫りくる。

 

 

開かれた口内には青白いのたうつ針金のような寄生体の触手が見えた。

 

 

 

 

 

 「どれだけ体が膨れ上がっても所詮は獣 マトモな思考など持ち合わせるはずも無い」

 

 

 「己から敵に急所を晒して近づくとはな」

 

 

 

距離があろうと鬼龍の剛腕と正確さで放たれる矢と化した銛は口内の寄生体を容赦なく貫き破壊していく。

 

 

無視できないダメージを負い、本来水中からの突き上げでボートを転覆させるつもりだったデルラゴは目測が外れ、手前の地点で体を水面に突き上げて姿を晒す。

 

 

鬼龍はボートから飛び上がり、デルラゴに接近した。

 

 

 

         コレ       

 「やっぱり最後は拳だよなあっ」

 

 

 

デルラゴの頭部付近に突き刺さった銛に剛腕を叩き込めば、釘を金槌で打ち付けるが如く銛はデルラゴの体内深くに潜り込み内部の寄生体と脳を完全に破壊する。

 

 

最初に現れた時とは比べ物にならないほど短く弱々しい断末魔の叫びを上げてデルラゴは水面を血で染めながら沈んでいく。

 

 

ボートの上に着地した鬼龍は最後にデルラゴと繋がった錨の縄を蹴り上げて切断する。

 

 

 

 「愚かしいだけの化物など伝承に名を残す価値もないわ」

 

 

 

鬼龍が冷たく吐き捨てる。湖全体を覆っていた淀んだ死の気配が完全に掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 「加勢する必要なんて無かった様だな」

 

 

戦いの結末を見届けたレオンが双眼鏡を仕舞いながらそう言った。

 

 

 「なんか凄い物を見たのん…」

 

 

 「俺達何もしてないんスけど いいんスかこれで」

 

 

 「ククククク 恥ずかしがることはないよ、生き残ったのなら無問題よ」

 

 

 

 「よしっ こちらは別ルートからアシュリーを探すぞ」

 

 

目の前で起きた光景に驚愕する警官二人もレオンが探索を再開すると伝えれば頷いて同行する意思を示す。

 

 

 

 「なぁ、あのオッサンは何者なんだ?」

 

 

ルイスがずっと疑問だった質問を問い掛ける。

 

 

 「怪物を超えた怪物、らしいぞ」

 

 

レオンからの答えは短く冗談めいた口調だったが、あのデルラゴと単身銃器も持たずに戦い、終わってみれば圧勝などまさにその言葉通りの存在であろう。

 

 

 

 「鬼龍か…」

 

 

無意識にその名を呟き、鬼龍がいた湖に顔を向ける。

 

だがそこに鬼龍はもうおらず、既に湖の奥に進んでいった様だ。

 

 

 「俺もさぁ 結構この村に長くいるんだけど見たことなかったなあ 銃無しで化物に勝てる奴」

 

 

 「………そうか」

 

 

 「ムフフフ さぁ俺の店まで早速移動しましょうかね」

 

 

 「……………」

 

 

 「自分で言うのも恥ずかしいけど武器を調達し売り捌くことの才能と才覚は抜きん出てるんだよねぇ」

 

 

 「……………」

 

 「……………」

 

 

 

来た道を戻り探索を再開しようとした4人は立ち止まり、皆が何と言ったらいいのかわからずに押し黙る。

 

そして全員が一つの方向を、確実に先程まではいなかった目の前のフード付きコートとマスクで顔と体を包み隠し、背には大きなバッグを背負った黒尽くめの男を見やる。

 

その風体は猫背気味な姿勢とやたらと強い眼力もあいまって怪しいを超えて不気味だ。

 

 

 

 「あれれれ 皆ついてこないの?」 

 

 

 

この状況ではどうするべきかはまだ誰も決められていなかった。

 

 

 

 




◇この男は…?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。