青薔薇の恋(From:BanG_Dream!) 作:渋川ジュン
俺たちRoseliaは最高のパフォーマンスを披露することができ、大盛り上がりでライブは終わった。
しかしまだガルパ杯は終わっていない。というのも、結果発表が残されているからだ。
投票結果はもう少しで出るという。演奏を終えて待機室に戻ると、そこには沢山の他バンドの方がいた。
「ポピパ、Afterglow、パスパレ、ハロハピ、モニカ、RAS──」
リサが読み上げる。それを聞いて、俺は戦慄した。
「全員いるじゃねぇか……」
「ここはRoseliaの待機室のはずですが」
紗夜さんも困惑している。というか狭い。暑い。シンプルに出て行って欲しい。
「友希那せんぱーい!! スゴくいい演奏でしたね!」
すると、人混みの中からポピパのボーカルさんが抜けてきた。
「戸山さん。Poppin’Partyも良かったわ」
「あたしも悪くなかったと思います」
すると、今度は美竹さんが横からしゃしゃり出てくる。
「……『悪くなかった』?」
友希那さんと美竹さんが視線でバチバチやり合っていた。それに気づいたのかはわからないが、戸山香澄さんが手をパンパンと鳴らした。
「もうすぐ結果が出るみたいです! フェスのTシャツに着替えましょう♪」
「!?」
え……俺は嗚咽を漏らした。
緑のシャツにオシャレなフォントで『GBP』と書いてある。いや──そんなことはどうでもいい!
「Toyaさん? どうかしましたかー?」
「ちょっと……中に着るインナーを……」
いや待て待て待て待て!!
何人かここで着替え始めてるんだが!?
そっか! みんな女子だから気にしなくていいってか!
「すみません、ちょっとトイレに──!!」
「Toyaさん!?」
「放ってあげてください。きっと、彼女も恥ずかしがり屋なのでしょう」
廊下に出た時に、紗夜さんのフォローが聞こえた。ナイスだ!
ていうか、戸山さんは俺が男だってことに気づいていないのだろうか。この女装は相当レベルが高い。普通、声で気づくと思うけどな。
「よし」
俺はなんとかトイレで着替えることに成功し、生肌もインナーで隠してから再び廊下に出た。
「羽沢さん……もうすぐ……ステージに出るそうです」
すると、俺を待ち構えるかのように白金さんが壁際に立っていた。
「わかりました。今日は素晴らしい演奏をありがとう」
俺は一礼した。それを見て、彼女は頷く。
「すごかったよ、本当に」
「いえ、羽沢さんのドラムも……」
「出ますよー!! せーのっ!」
わー!! 女子の黄色い声とともにみんながステージへと駆け出していく。置いていかれないように、俺もまた走り出す。
「……!!」
再び躍り出た壇上から見えたのは、GBP杯のTシャツに身を包んだ観客席だ。
どこまでも煌めいていて、夢と希望に満ちていて──これがフェスか。
『投票の集計が完了しました。それでは、結果発表〜!!』
拍手が鳴り止まない。ポピパ、アフグロ、パスパレ、Roselia、ハロハピ、モニカ、RAS──
口々に観客がバンドの名前を叫ぶ。
『まずは七位から──と言いたいところですが、時間が押しているのでTOP3だけ発表します♪』
場内の盛り上がりは最高潮に達していた。えっと、一位のバンドには何かしらの賞品が与えられるんだっけか。
旅行のチケットだったりしてな。
『三位──』
ごくり。
『Poppin’Partyー!』
戸山さんはそう言うなり、バンドのメンバーと共に一礼した。場内に拍手が鳴り響く。
ポピパで三位か。プロ目前の本格派が優勝者でないとなると、一位、二位はどのバンドになるのだろう──。
『惜しい結果になっちゃったね、有咲♪』
『なんで私に振るんだよ!』
こういうのは見ていて楽しい。仲良しなんだな。
『それでは、二位の発表です♪』
小さい女の子に司会が代わった。えっと、牛込りみさんだっけ。とても可愛らしい声をしている。
『二位のバンドは──』
頼む。ここで来ないでくれ。
Roseliaには頂点が相応しい。いや、少なくともRASだけには負けたくない!
チュチュのほくそ笑む顔なんか見たくない。演奏が終わってから、目も合わせていないのだ。
頼む、お願いだ。来ないでくれ。RASになんて、負けたくない!
『二位は』
ごくり。自分の唾を飲む音が聞こえた。
『RAISE A SUILENです!』
おっしゃあああああ!!
どうだ、チュチュ!
ウチのボーカルを煽っているようじゃまだまだなんだぜ!
「……」
チュチュは不機嫌そうな顔でそっぽを向いた。やはり優勝以外見えていなかったのだろう。
『それでは、一位の発表です』
ここで、またしても司会が変わる。先ほど戸山さんとイチャイチャしていた金髪ツインテールの女の子だ。市ヶ谷有咲さんだっけな。
『えっと……やべぇな。ちょっと緊張してきた──』
やめてくれ。そんなこと言われたら、こっちまで手足が震えてくるじゃないか。
友希那さんと紗夜さんは鉄の仮面を被っているけど、リサは先からあたふたしてるし、白金さんも無言で自分の爪を手のひらに突き刺してるぞ!
『コホン。改めて、ごきげんよう』
『そのキャラまだ続けてたの?』
『う、うるせー!』
イチャイチャは続く。今度はギターの花園たえさんが突っかかった。
『今度こそ改めまして、こんにちは。花園たえです。ええと、半日に渡るGBP杯、如何だったでしょうか。──七組のバンドの活動は続きますので、これからもどうぞ応援をよろしくお願いします!』
場内に拍手が鳴り響いた。
そうだ。俺たちなら大丈夫。
Roseliaは最高のパフォーマンスをした。
俺が足枷にならなければいいが。いや、本当になんでもいい。
Roseliaに優勝させてくれ! それだけでいい。
『それでは、一位の発表です! 七組の頂点に立ったバンドは──』
─────時が止まったみたいだった。
心臓が止まったのかもしれない。
僅かな静寂は、確かな自信までも奪っていく。
『一位はAfterglowです!』
この日、Roseliaは負けた。
たしかに負けたのだ。