踏み台転生したらなんかバグってた   作:泥人形

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第一の破滅、来たれり

 
ご神託チャット▼


名無しの神様 …………

名無しの神様 ………………

名無しの神様 …………??

名無しの神様 ?????

名無しの神様 何かもう笑うしか無くなってきたな

名無しの神様 なに、この……なに?

名無しの神様 ワロタ

名無しの神様 さっきまでのワイら「立華起きろーッ! 起きろ起きろ起きろ起きろ!! 死ぬ! 死ぬから!! とにかく起きて逃げろーーーーーーッ!!!!」

名無しの神様 今のワイら「はにゃ~……?」

名無しの神様 はにゃにゃ~ん……

名無しの神様 もう訳分からんニャンねぇ

名無しの神様 何でもありになったとは言ったけどさぁ……

名無しの神様 仮に拡張されても軸は変わらねぇんだからよぉ……

名無しの神様 基本はメインシナリオ通りなはずなんだよなぁ……

名無しの神様 そもそもこっちの介入に対して「混ざってる」とか言える以上、黒帝ちゃんワイらの領分にちょっと踏み込んでない?

名無しの神様 そう……ですね……

名無しの神様 いやでもこれ、立華の方は混ざってる判定されてないよな?

名無しの神様 そういえばそうだな……

名無しの神様 やっぱこれ、日之守自体に問題があるのでは……

名無しの神様 まあ、だとしてもこっち側に踏み込んできてるのは間違いないんだよな

名無しの神様 敵味方問わなくても、最高峰の才能持ちが拡張で壊れた性能に達してんだよ

名無しの神様 半歩分だとしても神の領分に踏み込んできてるの、普通に大問題ですが……

名無しの神様 拡張どころじゃなくて、世界としての位階が上がってますねぇ、これ

名無しの神様 ふぅ~……

名無しの神様 責任者くん、息してる~?

イカした神様 ……………………

名無しの神様 し、死んでる……

名無しの神様 メインシナリオくんと一緒に逝っちゃった!

イカした神様 上司ちゃんから鬼電来てるンゴねぇ……

名無しの神様 いやくさ

名無しの神様 悠長にチャットしてる場合じゃねぇんだよなぁ……

名無しの神様 はよ出ろカス

名無しの神様 上司ちゃん降臨してて草

名無しの神様 いやっ、つーかこれ、何がどうなった結果だ?

名無しの神様 そりゃもちろん、世界拡張の影響だろ

名無しの神様 拡張っつーか、世界レベルが上がってるっぽいんだけどな

名無しの神様 明らかに原作から乖離してんだよ

名無しの神様 黒帝味方ルートとか、なんなんすかね……

名無しの神様 味方って言うか……何かその……せんせーと融合してるんすけどぉ

名無しの神様 しかもそれに日之守が求婚されてんだよね

名無しの神様 情報量が多いとかいうレベルじゃないんだよ

名無しの神様 あの変な女たらしバグ太郎出禁にしろ

名無しの神様 何でラスボス誑し込んでるんですかね……

名無しの神様 隠しキャラも一緒に落ちてるの意味不明だろ

名無しの神様 そもそもループって何?

名無しの神様 まあ……その説は前から提唱されていたが……

名無しの神様 せんせー、マジでどこからも情報開示されてねぇからな

名無しの神様 開発者がSNSで「アテナは作中でもかなりの激やば女ですよ」って呟いてたことしか情報がないんだよな

名無しの神様 なんでこんなぶっ壊れた世界線で真実を知る羽目になってんだ

名無しの神様 ちょっと納得いくのが腹立つところだな。道理で意味深な台詞ばっか言う訳だよ

名無しの神様 しかもこれ、つまり黒帝と魔王以外に新たな脅威が出てきた……って理解で良いんだよな?

名無しの神様 まあ、飽くまでせんせー/黒帝ちゃんの台詞だけだから断定はできないけど、多分そういうことだと思う

名無しの神様 そうでもなきゃ、あの黒帝ちゃんが校長への復讐を諦める訳ないからな

名無しの神様 あるいは魔王がもっとヤバくなってる可能性もあるけどな

名無しの神様 実際、味方キャラばっかり強化されてるし、そこは当然だろうな……

名無しの神様 レア先輩もだし、黒帝もせんせーもこれな訳だしな

名無しの神様 これもしかして、日之守が全部の起点になってるのか?

名無しの神様 てか、そろそろ日之守の方にもチャンネル繋いだ方が良くねぇか?

名無しの神様 ほんそれ

イカした神様 いやもうずっと前からやってんのに繋がらないんだよね

名無しの神様 は?

名無しの神様 おい初耳だぞそれ

【壊れた世界で】蒼天に咲く徒花 ヒロイン全滅世界滅亡ルートRTA【何をする】

 

 

 

 

 

 

 暗闇が無くなり、元の状態に戻った控え室。

 そこでぐったりと倒れ伏した四人を守る形で立つ俺と、相対するアテナ先生(黒帝)

 どう見ても、これからバチバチに殺し合う感じの構図であるのだが、何かもうそんな空気じゃなくなっていた。

 俺の返答に、滅茶苦茶泣きそうな顔をしたアテナ先生(黒帝)が、絞り出すように言う。

 

「…………せんせー(アテナ)が、未来ではキミの恋人だって言ったら、信じるかい?」

「えっ、こわ……疑います。未来の俺の倫理観と貴女の常識を……」

「そこまで言うことだったかなぁ!?」

 

 あんなにラブラブだったのに……! と妄言を吐き散らかすアテナ先生(黒帝)だった。

 何だろう、さっきとは別種の恐怖で身体が震えてきたな。

 俺が転生者じゃなかったら、普通に気絶とかしてたと思う。

 

「まあ冗談はさておき、だ」

「本当に冗談だった? トーンがガチ過ぎだっただろ」

「うるさいっ! 冗談ってことにしておきたまえ────そろそろ、時間も無くなってきたんだから、なおさらね」

「時間?」

 

 また急に意味深なことを言い出したな……と思ったが、すぐにその真意を理解する。

 魔装を展開までしたのだ。

 そろそろ異常を検知した教員か、あるいは校長先生がすっ飛んでくる頃だろう。

 それはきっと彼女も分かっていたことだろうから、今の彼女がかつての自分よりも強い、という言葉は嘘じゃないんだろうな、と思う。

 真正面からぶつかって、勝てる自信があったのだろう。

 

「ん? ああ、別にそこは、気にしなくても良いよ……いや、元々はそこが狙いではあったんだけどね。どうせ有耶無耶になるから、考慮しなくて良い」

「有耶無耶になって良いレベルの話では無いと思うんだけど……」

「なって良いんだよ──いいや、()()()()()()()()んだ」

「……?」

「良いかい? 良く聞きたまえ……これから世界は、()()()()()()()()()()()

「破滅……?」

「滅亡と言い換えても良いし、終末と読み替えても良いよ。とにかく、この世界が終わるタイミングが、七つ来る。そしてせんせー(アテナ)がいた未来では、ついぞそれに勝てなかった。

 校長(あいつ)は殺され、魔法魔術防衛機構は崩壊し、この学園の生徒も皆殺しに遭い、そして、少年が死んだ」

「すげぇ壮大な話になってきたな……」

 

 というか、壮大の一言で纏めたくない感じのスケールだった。

 先程から、あまりにも初出の情報ばかり出されているせいで、普通に現実逃避してしまう。

 完全に別ゲーの話だろ、これ……。

 流石にこれは俺のせいではなくない? という気持ちが強い。

 むしろ、これまでのイレギュラーも全部、その七つの破滅とかいうやつのせいなんじゃないの、と思って来たほどである。

 

「これをね、少年にどうにかして欲しいんだよ」

「貴女と結婚するくらい無理だと思いますけど……」

「せんせーと結婚するのって、世界滅亡級に無理だったのかい!?」

 

 いい加減泣くぞ!? と半泣きで睨んでくるアテナ先生(黒帝)だった。

 泣かれるとこっちが悪いみたいな気分になるからやめてほしいな、とだけ思う。

 

「いや、しかしだね、少年。キミにしか頼めないんだよ、こんなこと」

「買い被り過ぎですよ……今だって、俺は貴女より弱いのに」

「でもキミは、これから強くなれる。というか、加速度的に強くなる。キモいくらいに。そこが重要なんだよ」

「何か今罵倒混ざってなかった?」

「気のせいさ」

 

 気のせいかあ。

 それなら仕方ないな。

 

「それにこれ、未来の少年に頼まれたことだし」

「う、嘘だ……俺がそんな殊勝なことを頼む訳が……」

「良く意味が分からないけれど、『ムシキングの大会でグーしか出せないけどノーダメで優勝する、みたいな難易度だけど頑張って欲しい。多分だけど、大体全部俺のせいなので』という伝言を預かっているよ」

「俺だーーーーーッ!!!」

 

 すげぇ俺だった。

 どう考えても前世のことを知ってる俺にしか出来ない、馬鹿極まった伝言過ぎて、その場で絶叫してしまう。

 ムシキングとか今更覚えてるやついないだろ。

 じゃんけんでグーしか出せないくらい言え。

 しかも、俺のせいなのかよ。

 何で毎回「俺は悪くないのでは?」→「俺のせいなんじゃん!」をやらなきゃいけないんだ。

 

「ふふっ、理解してもらえたなら、何よりだよ」

「理解したくなかった、こんなこと……それで、俺はどうすれば?」

「んー? すぐに分かるさ。ほら、来るよ────第一の破滅、『()()』が」

「は?」

 

 刹那。

 会場は────世界は、劈くような悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、空より落ちてきたそれを、果たして何と形容するべきか。

 東洋に伝わる竜にも思えるが、しかし、内から溢れ出る闇色の魔力によって、輪郭が酷く曖昧な、巨大な存在。

 人ではない、魔獣でもない。当然ながら、魔族でもない。

 それは魔王。

 魔を統べるもの。魔導を体現せしめた、絶対なる王。

 ゆらりゆらりと、会場にそれは舞い降りる。

 魔法魔術界最強とすら謳われる、アルティス魔法魔術学園校長、ナタリア・ステラスオーノの守護魔法を強引に打ち破り。

 悠然と、しかして優雅に。

 

「──終末である」

 

 そのたった一言にさえ、魔力が乗せられている。

 並の魔法魔術師では、それを聞いただけで気を失っていただろう──学園の生徒たちがそうならならなかったのは、他でもない、ナタリアと教員たちが、反射で守護魔法を展開したからだ。

 

「裁きの時である。決断の時である。処断の時である────あらゆる生命は、ここで終わる」

 

 誰もが守りの内側にいて、なお跪き、頭を垂れてしまう。

 圧倒的だった。

 強い、弱いの次元の話ではなく、ただひたすらに、存在が違う。

 

「余こそは、滅亡を齎す世界の機構」

 

 顎がゆるりと開かれる。

 そこにあったのは、破滅の光だった。

 生命を終わらせ、世界を終わらせる、魔の光。

 

「────破滅の光を此処に。余は、全てを終わらせるもの」

「おいおい、気が早くないか? もう少しくらい、せんせーたちとお話してほしいところなんだけど」

 

 ただ一人、アテナ・スィーグレット、あるいは、ノエル・ヴァルトリク・リスタリアは、魔装を伴い、魔王の前へと姿を晒した。

 互いが自然と発生させる魔力がぶつかり合って、空間が軋んで悲鳴を上げる。

 

(うわ、本当にアテナの記憶通りだなあ……生徒と先生を丸ごと守ってるせいでナタリア(あいつ)が動けないの、やっぱり最悪だよ)

 

 会場の状況を把握しながら、彼女は小さく舌打ちをする。

 もしも庇護すべき生徒がいなければ、とっくにナタリアが動いているはずなのだ。

 それが出来ない────故にこそ、元々彼女はこのタイミングで、襲撃を仕掛けようと画策していたのだが。

 

「……抗う者か」

「ま、そんなところかな──魔王様はさ、どうやって封印から解き放たれたんだい?」

「世界がそう望んだが故に、余は解き放たれた。ただ、それだけのこと」

 

 まるで世界に意志があるとでも言うような台詞に、アテナ(ノエル)は冷や汗を流しながら、未来の少年が立てていた予測は、概ね間違っていなかったのか、と納得をする。

 前回の顕現時には、対話をすることすら叶わなかった。

 何故。どうして。何のために。

 そういった理由の一つすら聞き出せず、戦いは始まってしまった。

 誰もがひたすらに動揺し、生まれてしまった多くの死体の上に立つ形で、一応の撃退となった。

 あのような悲劇は、もう繰り返してはならない。

 自身と完全に混ざり合った、半身とでも呼ぶべきアテナの記憶が、そう叫んでいる。

 

「これ以上の言葉は不要である────この星は、世界は、これにて終わりであるのだから」

「ッ──短気だなあ! もうちょっとくらい、悠長にしてくれても良いだろうに!」

「遡行者であれば、時の重要さは分かるであろう」

 

 瞬間、重圧は更に増した。

 溢れ出る魔力が指向性を持ち、破滅の光は膨れ上がった。

 

「王核起動──第一、第二、第三拘束解除」

 

 ナタリア・ステラスオーノが息を呑む。

 アテナ(ノエル)は杖を掲げ、会場を更に守護魔法で包み上げた。

 

「王核覚醒──第四、第五、第六拘束解除」

 

 それは世界を終末に導く、終わりの宣言。

 創世されると同時に用意されていた、世界の自滅機構。その一つ。

 

「王核展開──第七拘束解除」

 

 本来、魔王と()()は別物だ。

 しかし、世界の揺らぎによって、偶然にもそれは一つになった。

 故にこそ、魔王には明確な自我が無い。

 あるいは、自我そのものと、滅亡への機構が一体化している。

 

「之なるは、始まりの破滅。第一の滅亡」

 

 ナタリアは、犠牲を出さないことを諦めるか否かの瀬戸際にいた。

 一撃は耐えられる。確実に、誰も死なせない自信がある──だが、その次は?

 生徒がいる以上、防戦に徹しざるを得ない。されども、それは死をほんの少しだけ、先送りにするだけだ。

 あるいは攻撃に入れば、撃退することは可能だろう。

 これもまた、間違いがない──魔王とはいえ、あれはまだ未完全だ。

 封印から出てきたばかりで、あらゆる力が本来のそれには及んでいない。

 しかし、そうだとしても、攻撃の余波だけで死人が出る。百や二百程度の規模を大きく超える、死人が。

 当然ながら、被害が少ないのは後者だ────しかし、決断は容易ではない。

 どうすれば良い、と。

 思考が停滞しかける。

 

 そんな様子を観察しながら、アテナ(ノエル)はほくそ笑む。

 殺す気は失せたものの、禍根が消えた訳ではない。

 その苦渋に満ちた面を拝めたことで、一先ずは留飲を下げるとするか、と気合を入れた。

 ────アテナ(ノエル)がここで、魔王を叩きのめすことは可能だ。

 だが、彼女はそれをしない。

 何故なら、それでは意味が無いから。

 もっと強くなってもらわなければならない少年がいる。

 少し先の未来で、己の非力さに泣いた少年が、記憶に刻まれている。

 英雄になるべき、少年を知っている。

 

「だからほら、そろそろ出番だよ。甘楽」

 

 微笑みながら、彼女は空を見上げる。

 真夏に相応しい太陽を背に、一つの影がそこにあった。

 

 

 

「砲撃魔法:重複拡大展開」

『Magia del bombardamento:Espansione di Distribuzione duplicata』

 

 蒼色の巨大魔法陣が、空を埋め尽くすほどに展開される。

 展開数は優に百を超えており、その一つ一つが、上級魔獣であっても掠めただけで殺せるだろう。

 

「弾種:限定無し」

『proiettile:Illimitato』

 

 あまりにも膨大な演算量に、杖が悲鳴を上げる。

 処理しきれなかった部分が反映され、解れ始めた魔法陣を見上げた甘楽は、零れた演算を、無意識的に()()()()()()()()()

 

「目標捕捉────3,2,1」

『Sparare!』

 

 火花を上げ、自壊していく杖が絶叫をする。

 瞬間、百を超えた砲撃は解き放たれた。

 それは、裁きを下す絶対者に向けられた、抗いの牙。

 危険を察し、上空へと放たれた破滅の光とぶつかり合った蒼の砲撃は、しかし、拮抗することなく吞み込んだ。

 それこそ、裁きのように。

 天空より落とされた連なる砲撃は、余すことなく魔王の全身へと降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 んもおおおおおおお! 何で八章でやっと出て来る魔王がもう出て来てんだよぉーーーーーッ!!!

 封印はどうなってんだ封印は!

 一章の途中でラスボスが揃うんじゃねぇ!

 ただでさえ、それなりに疲労してる身体に鞭打って無茶したのに、結構ケロッとした顔しやがって……!

 ちょっとは痛いくらい言いやがれ……!

 クソッ、何でこんな危険を自ら犯さなきゃいけないんだ……いや、俺のせいらしいから、そんな文句言えないんだけど……。

 つーかこれ、立華くんが気絶している以上、絶対に殺すことはできないから、撤退させるしか無いんだけど、どうすれば良いんだろうな。

 大気に漂う魔力を収束・変換し続けて、俺二、三人分の魔力をぶち込んだのに平気そうな顔してるから、正直力押し出来るかすら分からないぞ。

 未完成状態とは言え、流石魔王と言うべきか、弱点属性とか無いし……。

 満面の笑みでサムズアップして来る辺り、アテナ先生(黒帝)は、ガチで俺一人にこいつを叩かせる気満々なのが伝わってくるし……。

 しかも杖、壊れちゃったんだよな。

 魔法使えなくない? え? 終わりじゃん……。

 甘楽(おれ)、設定的に魔術属性無いし、マジで打つ手無いぞ……。

 …………やはり、拳か? 男らしく、原始的な暴力で挑むべきなのかもしれない。

 ギラギラと目を輝かせ、如何にも「お前を殺す!」みたいな面をした魔王を前に、俺は大きく息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次の更新こそは来週になるかと思います。多分。

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