踏み台転生したらなんかバグってた   作:泥人形

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あてなプロフェッサー

 

「やあ、お帰り。ご飯は出来てるし、お風呂も沸いてるよ……あっ、それとも、僕──いいや、私にする?」

「ソォイッ!」

「ぐわぁーっ!?」

 

 アルティス魔法魔術学園、赤の不死鳥寮(ロッソ・フィニーチェ)。その一室。

 事あるごとに飛び掛かって来る馬鹿妹の猛攻を退け、豹変しつつある月ヶ瀬先輩を上手いこといなしながら、やっとの思いで迎えた三年目。

 俺は新しく同室となった、とある少年──いや、少女と言うべきか? もうこれ分かんねぇな──に向かって魔力を放射した。

 かなり痛そうな声を上げながら派手に吹き飛び、これまたド派手に壁にぶつかった金髪の少女は、「きゅぅ……」と短い声を上げ、クルクルと目を回す。

 その様子ですら絵になっており、実に可愛らしくはあるのだが、それはただの少女ではない。

 というか立華くんだった。

 正確に言うのなら、立華ちゃんなのかもしれないのだが、まあ、とにかくそういうことである。

 

「いったたた……何をするんだ、急に」

「さも自分に非はないみたいな面するのやめない? ちょっと数秒前の自分の行動、思い返してみようか」

「やれやれ、ちょっと揶揄っただけでこれとは、参ったものだな」

「ここで肩を竦められるの、本気で納得がいかないな……ていうか、何で女モードなんだよ……」

「こっちの方が、身体の調子が良いんだ。いつだってベストコンディションでいようと思うのは、誰だってそうだろう?」

「戯言を……!」

 

 がるるるーっと睨む俺に、言葉以上に全身で「やれやれ、これだから童貞君は」みたいな雰囲気を出してくる立華くんだった。

 クソッ、嘗めやがって……。

 ていうか、女性体の方が調子いいんだ……。

 何かもう、自分が元々は男性だってことを忘れてそうな言い分である……そう考えてみれば、性転換する度に女性らしさが上がっている気がするのも、あながち勘違いじゃないのかもしれないな、と思った。

 まあ、シンプルにやめてほしいのだが。

 普通に理性がぶっ壊れそうになる────と、ここまでのやり取りを見れば分かると思うのだが、立華くんの性別は可変になった。

 さながらソシャゲの主人公である。

 いや、これだと完全に人間をやめちゃったように思えてしまうので、ここは正直に、迷宮(ダンジョン)の影響が完全に消えなかったのだ、とはっきり明言しておくべきではあるのだが。

 これはもう間違いなく、力ずくで迷宮をぶっ壊した弊害であると考えられるのだが、彼が患った性転換は、かなり複雑なものとして、立華くんの中に残った。

 具体的に言えば、彼が魔力を扱えば、自動的に彼女になるようになったのである。

 俺達魔法使い、ないしは魔術師にとって、魔力とは身近なものだ。軽い身体強化なら意識せずとも使えるくらいだし、魔法や魔術を使えば、否が応でも魔力は全身を駆け巡る。

 そうなると当然、立華くんの身体は女性へと変化する訳だ。

 

 つまるところ、魔法使いとして生きていく以上、立華くんはもうほぼ女性、みたいな意味不明な生命体へと変貌してしまった。

 そういう関係性もあり、三年生から立華くんは、俺のルームメイトとなったのである。

 男性とも女性とも言い難い、酷く扱いに困る生き物になってしまったので、もうこれは仕方がないだろう。

 問題児は問題児に押し付けておけ、というやつだ。

 まあ、迷宮を粉々にしてしまった俺としても、申し訳なさは多大に感じていたところであり、同室になることに文句の一つも無かったのであるのだが……。

 何か当の本人が、一ミリも不便さを感じておらず、むしろ積極的に性別を入れ替え、このような真似をしてくるので、罪悪感と言ったような感情は一瞬で消え失せたのであった。

 お陰で学園に戻ってからも、毎日がスリルに満たされている。

 学園と実家、どっちも安息の場所にはならないのは何なんだよ。

 

「仕方ないな、僕が日之守の安息の場所になってあげようか?」

「どの面フレンズ!? と言うか、本当にその姿で言うのやめない? コロッといきそうになっちゃうだろ」

「いつまで経っても慣れない君が悪いんだろう……全く、これで僕が悪女だったとしたら、君の人生は破滅していたぞ?」

「まあでも、死ぬほど好みの女性に人生終わらせられるのは、それはそれで()()だよな……」

「君のその、たまに露見する業の深い性癖は何なんだ!?」

 

 どこでそんなもの培ってきたんだ! と立華くんが叫ぶ。完全に現代に生まれたモンスターを見る目だった。

 し、失礼過ぎる……。

 人間なんだから、軽く十年も生きてれば、それなりの性癖は獲得してしまうというものだろう。

 ただでさえ、ネットの海に気軽に飛び込めてしまう世代なのだ。

 言わば俺は、時代に英才教育された、最先端の人間と言えるのではないだろうか?

 

「僕からすれば、魔物とは違うベクトルの化物に見えるんだが……」

「人間は未知を目の当たりにすると、理解できる形に何とか押し込もうとしちゃうからな。格が違い過ぎてすまない……」

「君は人を負けたような気分にさせる天才か!?」

 

 再び叫ぶ立華くんだった。また一つ勝利を重ねてしまった俺は、フッと息を吐いてから時計を見やる。

 時刻はほぼ五時。窓の外からは、当たり前みたいに早朝特有の陽光が降り注いでいた。

 如何にも俺が、残業でもしてきて帰ってきたところであるかのようなシチュエーションが練成されていたのだが、今は普通に朝だった。

 それも、俺にしては大分どころか、かなり早い。

 寝起きドッキリも良いところである。

 目覚ましとしてはこれ以上ない衝撃であったが、二度と同じことをしないで欲しいと強く思った。

 ワンチャン止まるからね、心臓が。

 

「僕としてはハートを射抜くつもりだったんだけどな……」

「物理的な意味だとしても、精神的な意味だとしても、物騒極まりない発言するのはやめようか……洒落になってないからね、マジで」

 

 というか、普通に一緒に暮らしているだけで、その内絆されてしまうような気がしてならない。

 やはり同室になったのは間違いだったか……と思う反面、そうでもないと思う自分がいるのが悔しいところだった。

 不都合なことばかりが増えた訳では無いしな。

 例えば、ほら、こうして早朝に目が覚めてしまった時、暇潰しの相手をしてくれる人が出来たということでもあるんだし。

 そういった利点は、仕返しも兼ねて、素直に活用させてもらうことにしよう。

 

「良し、そういう訳で、模擬戦でもするとしようか」

「どういう訳なんだ!? 文脈が繋がっていないぞ!」

「朝から刺激的な目覚ましをしてくれたので、そのお返しと思って……」

「き、君はこんな美少女を甚振るのが趣味なのか……!?」

「まあ、傷ついて苦しむ美少女の姿に、興奮しないと言えば嘘になるけど……」

「へ、変態だ……」

「失礼の極みすぎない?」

 

 ほら、行くよ。と手首を掴めば、顔を赤くしながら「い、嫌だー!」と抵抗する立華くんだった。

 随分可愛らしい抵抗だな、と何となく思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉーし、せんせーも久し振りに、全力出しちゃおっかな~!」

「は? おい待て、何だこれは……?」

 

 模擬戦をするべく、勝手に決闘場を拝借したところ、俺の相手が立華くんからアテナ先生にすり替わっていた。

 どう頭を回転させても意味が分からない。何で俺の知らないところで選手交代が発生してんだよ。

 レベル50以下のバトルタワーではしゃいでいたら、突然レベル100に殴り込まれた気分である。

 ふざけんな、それはルール違反だろうがよ……!

 

「いやぁ、最近は目が覚めるのが早くてね。お散歩してたら少年たちを見かけたから……代わっちゃった」

「うわ……完全にお婆ちゃんの行動ルーティーンだ……」

「うるさいぞ!? 年齢の話をするのはやめろ!」

 

 全く、失礼な子だなぁ、少年は。と、煙草の煙を蒸かしながらアテナ先生が言う。

 というか、そういうことなら立華くんはどこにいるんだ、と思い辺りを見回したら、当たり前みたいな面で観客席にいた。

 目を向ければ、満面の笑みで両手を振ってくる。それはそれで可愛らしいが、後で一発ビンタしよう……と心に誓った。

 

「余裕だね、少年。緊張しなくても良いのかい?」

「もう充分してますってば……アテナ先生の前にいる時は、いつだって」

「つまり、少年はせんせーに気がある……ってこと!?」

「ポジティブシンキングすぎるだろ……」

 

 いや、確かにドキドキはしているが……。

 恋愛的なそれとはかけ離れている感情だった────というのは、流石に無理すぎる言い分か。

 嘘か真か分からないが、それでも未来の俺は、アテナ先生と恋人関係であったと言うのだ。

 はっきりとそう言われてしまえば、そういうつもりは無くとも、意識しないのは無理というものだろう。

 ただでさえ、中身を考慮せずに外見だけ見れば、アテナ先生は超の付く美人であるのだ。

 

「えへへ、照れちゃうなあ」

「中身が全て台無しにしてるって言ってるんですけど、通じてますか?」

「大丈夫だよ、その内こんなせんせーのことが、好きになるだろうから」

「出たな、恐怖すら覚える謎の自信……」

 

 嫌という訳では無いので、そういう未来もあり得ることを加味すると、あながち笑えなかった。

 冗談では済まされない感じである。

 やれやれ、とため息を一つ。スイッチを、切り替えた。

 

「アテナ先生が相手なら、加減とか考えませんけど、良いんですよね?」

「んー? ああ、そうだね。うん、本気でおいで。去年はあんまり見てあげられなかったし、一年分の努力、見せてもらおうじゃないか」

 

 言って、アテナ先生が軽く杖を振るえば、光点が一つ生み出され、鋭く空へと跳ね上がる。

 瞬間、視線は交錯した。

 互いの周りに存在する魔力に指向性が与えられる。互いの体内に存在する魔力が練り上げられる。

 

 初手でどう出るかは脳内には置かない。取得できるありとあらゆる情報を精査するのに、総てのリソースを注ぎ込み、そこに反射を乗せる。

 とはいえ、前提として、魔導は用意してはおくのだが。

 詠唱はほぼ無意識状態で口遊む。決闘ならば許されないが、これは模擬戦だ。これくらい許されるだろう。

 

 パ、パ、パ、と音が鳴る。遥か上空まで打ち上げられた光点が、規則的な音を連続して生み出し────そして。

 派手な爆裂音が、鋭く木霊した。

 

「魔装展開────我が身に宿りし闇は《深淵》」

「展開────"第弐装甲魔導:夢纏"」

 

 解き放たれた魔力の圧が、瞬時に決闘場を支配すべくせめぎ合った。

 闇色と蒼色のそれは、数秒の拮抗を生み出してから弾き合う。

 

「ふふっ、良いね。思っていたより、ずっと成長してる!」

「────ッ!」

 

 一瞬未満だった。瞬きすら置いていく早さで、懐まで踏み込まれた。

 極至近距離で目が合って、宙を裂くように出された手を、辛うじて回避した。

 掠めた頬から血が噴き出て、冷や汗が背を伝う。

 けれども、それは想定内だし、計算内だ。一番確率が高かった攻撃で、一番躱せる自信が無かった攻撃────そして、躱せた時の反撃が、一番入る攻撃!

 踏み出していた足はそのままに、すれ違うのと同時に指を二本、アテナ先生の腹へと当てた。

 

「ぶっ、飛べッ!」

 

 零距離砲撃。防御も回避も許さない速度で、圧縮していた砲撃魔導を撃ち放った。

 視界を焼き切るような閃光。

 発生する反動をそのままに、俺にだけ有利な距離を生み出した。

 このまま得意な距離、得意な戦闘に──

 

届け(consegna)

 

 ──持ち込めなかった。ふざけたことに、全くの無傷であるアテナ先生のつま先が、深々と腹に突き立った。一秒にも満たない硬直の後に、鋭く蹴り飛ばされて宙に浮く。

 え? 何? あれ防いだの? ていうか、今のは高速移動……では無いよな。距離そのものを、無かったことにした?

 ああ、もうこれだから、闇系の魔術は嫌いなんだよな! 理屈が全く分かんねぇ!

 光系の魔術を、ただのとんでもパワー&スピードな攻撃として、素直に運用している今の日鞠を見習ってほしい。

 

華々しく踊れ(brillantemente) 麗しく舞え(magnificamente) 血染めの婿よ(macchiato di sangue)

「ああぁぁああ無理無理無理無理無理無理!」

 

 詠唱は、抽象的になればなるほど質が高い。それは当然として厄介ではあるのだが、こうして相対することになれば、その詠唱からどういう魔術が繰り出されるのかが、目にするまで全く読めないと言う方が、至極厄介であることに気付く。

 もう訳分かんねぇもんな。

 多分360度、あらゆる方向から無数の銃撃が飛んできているのだが、困ったことに反撃に移れない。隙が無い。防御に徹することだけに、選択肢を削られる。

 当然、そこまで追い詰められてしまえば、

 

縋り落とせ(aggrapparsi)

 

 防御に有効な、第二の手を発動させることを許してしまうし、それを避けられない。直下から這い伸びてきた無数の手に、下半身を絡めとられた。

 引きずり落とされる、アテナ先生が分かりやすく走り込んできている。今の距離のままでも圧倒できただろうに。

 要するに────嘗められている!

 だから、防御を捨てた。未だに降り注いでくる銃撃はそのままに、痛みで飛びそうになる意識を握り込んだ。

 叩き落とされてバウンドした瞬間、足を振り抜いたアテナ先生と目が合った。

 側頭に用意していた防御魔法と接触し、打ち破られる。けれども一瞬以下の余裕が出来た。

 

「勇あるものよ 果て無き夢に 終わりを告げろ」

「なぁっ────!?」

 

 この瞬間に、砲撃や銃撃を行使するのは不可能だ。それだと遅すぎる。発動してから射出するまでに、アテナ先生キックで意識を刈り取られてしまう。

 かといって、接近戦にもつれ込ませるのはダメだ。単純に俺の練度が低すぎて、もっと情けない感じにボコされる。

 なので夢纏を解いた。というか、()()()()()()()()()()()()()()()

 蒼色の爆発に、目を見開いたアテナ先生が呑み込まれる。

 

「ゔっ、ぐぉぁ……!」

 

 まあ、そうは言っても、こんなもんは言わば自爆特攻なので、俺も被害に遭うのだが。

 当然みたいに巻き込まれ、互いに真逆の方向に吹っ飛んだ────吹っ飛びながら、砲撃魔法を用意した。

 限界まで圧縮したのを、合計百門。

 最初、お腹に触れた時に付けておいたマーカーを元に、一束にしたそれらを撃ち放った。

 防御魔法が割れる時特有の破砕音が幾つか響き、爆風が再び生み出される。

 

「やっ……ふー……」

 

 やったか!? と言いそうになったのを途中でやめたせいで、やたらとスローなマリオみたいになってしまった。

 全然そんなご機嫌ではない。純粋に、これだけで倒せたとは思えないし……。 

 いやでも、これで終わって欲しいな~~……。

 夢纏を再度形成しながらも、アテナ先生がぶっ倒れていることを祈る。

 もう本当、全身が痛いし、疲労がドッと襲ってきている。

 何で朝っぱらからこんな思いをしなきゃいけないんだよ……!

 起きたばっかりだってのにもう寝たいんだけど。

 しっかりご飯を食べて、ゆっくりベッドでぬくぬくしたかった。

 

「あっはっは! いやぁ、やるようになったね、少年! 今のはちょっと痛かったなあ!」

 

 巻き上がった爆炎の中から悠々と、アテナ先生は姿を現した。 

 台詞の通り、全くのノーダメージではないっぽいが、逆を言えば、ノーダメージではないってだけらしい。

 パッと見で分かるの、手の甲にあるちょっとした傷だけだもんな。

 マジかよ……と、そりゃそうだよな……という感想を同時に抱いた。

 

「良いね、もうちょっとだけ、ギアを上げようか」

「まだ上がるんですか……?」

「そう硬くなることは無いさ。ここからは、授業の時間にするとしよう──星はこの掌の中に(stella in mano)

 

 アテナ先生が片手を握り込むと、()()()()()()

 次いで、青空が黒々と塗りつぶされて、光が消え失せる。

 直後に、大気中の魔力への干渉が出来なくなるのを感じた。感知が出来ない、どういった手段を用いたとしても、前が見えない。

 上も下も、右も左も分からなくなるような黒。

 自分が今、本当に立っているのかどうかすら不安になる闇の中で、ただ、アテナ先生の声が響いた。

 

「これまで多くの魔装を見てきたとは思うけれども、少年は多分、魔装の本質を、少しだけ見誤っている」

 

 声が聞こえる。逆を言えば、声しか聞こえない。それ以外の音が、ほんの少しも鳴っていない。

 異常とも言える空間だった。何せ、自身の息遣いすら、耳を澄ましても聞こえない。

 いや、聞こえないどころか、感じることすら出来ない。

 今、俺、本当に生きてるか?

 

「魔術の出力を上げる、大規模な魔術を軽々と扱えるようになる。なるほど、それも確かに魔装の利点だ。これ以上なく映える、メリットの一つ。だけどね」

 

 近づいて来ている、()()()()

 完全に勘だ。というか、勘にしか頼れない。

 集中すればするほど、この気味の悪い空間に心を乱されるようだった。

 ていうかもう泣きそう。あるいはもう泣いてるかもしれないが。それすらも分からない。

 精神攻撃には普通に弱いので勘弁願いたかった。

 

「一番のメリットは、一定の領域を完全に支配した後に、その領域内でのみ、自身の属性そのものを引きずり出すことが出来る、という点だ────どうだい? 少年。闇は……()()()()()()()()?」

 

 怖いどころじゃないんだけど。パニックを起こすのを通り越して、身体が自由を手離しそうになっていた。

 息が乱れてる、んだと思う。心臓もきっと、激しく鳴っている。

 

「闇の中では人は動けない。闇の中では人は見えない。闇の中では人は聞こえない。闇の中では、人は生きていられない」

 

 ギュッと胸を握った。何か恐怖が一周して段々イラついてきちゃったな。

 何でこんな朝からボコボコにされ、泣きそうなくらい怖い授業を受けなきゃいけないんだ。

 クソッ、絶対目にもの見せてやる……と、展開していた夢纏を圧縮した。

 このまま砲撃として撃ち放つ。ぶっちゃけどこにいるかは分からないが、十中八九正面だろう。

 そうでなかったとしても、この空間を破壊できればまあ、何かしら好転するだろう。

 

「────ッ!!」

 

 だから、叫んだ。どうしても聞き取ることは出来なかったけれど、圧縮した砲撃魔導を解き放った感触だけが、掌に残って、

 

「そういう、使用者が思う概念をそのまま押し付けられる、非常識的な空間を生み出すのが、完成された魔装というやつだ。ま、せんせーほど完成度が高い魔装も、早々無いと思う──ってうわぁぁぁあ!? ちょっと少年!? ごり押しで破ろうとするんじゃなーい!」

 

 アテナ先生の、驚愕交じりの絶叫が響いた。

 魔装によって編み上げられた空間に歪が生まれ、俺達の中心で、魔導と魔術の砲撃が拮抗しているのが見えた。というか、押されているのが見えた。

 何で魔術で魔導に、力技で対抗できるんだよ……!

 俺の周りは例外ばっかりか……!? と、じりじり眼前へと迫る闇に冷や汗を流せば、

 

「呪怨武装:code003────ぶっ破壊(こわ)せ! 超級(SSR)美少女百連ガチャスラーーーーッシュ!!!」

「ぎゃー! なになになになになになになに!!?!??」

 

 かなりのソシャゲプレイヤーと思われる発言が、闇をぶち割りながら降ってきた。

 突如として戻った全身の感覚を、思わずフル稼働させながら絶叫すれば、ズドゴォン! という激しい爆音と共に振るわれた、やたらとメカメカしい斧が、()()()()()()()()()()()()()()()()して、地面にぶち込まれた。

 それを握るのは、一人の少女。

 

「おっと悪ぃな。模擬戦(じゃれあい)っつーことは見りゃ分かったが、これ以上は日之守(ヒノ)クンが危険(ヤバ)そうに見えたんでな、介入させてもらったぜ」

 

 どっからどう見てもうちの学園の制服ではなく、修道女……かな? と不安になってしまうくらい、修道服をベースにした、露出の多い衣に身を包み。

 濃い紫の髪をベースに、明るいピンク色も交じった長髪の彼女は、「平気か?」と俺に手を差し伸べた。

 

「オレの名前はミラ=キュリオ・プリーモ。《ヴァルキュリア呪術騎士学校》から来た、テメーの護衛(ラバー)だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 
ご神託チャット▼


転生主人公  また変な女が増えたんだけど!!?

名無しの神様 反射で出ちゃったにしても最悪の感想すぎるだろ

名無しの神様 誰!? とかじゃなくて完全に「何あの女?」の方向性なんだよな

名無しの神様 こわいよ~

名無しの神様 無差別女威嚇女じゃんこんなん

名無しの神様 女(男)(女)

名無しの神様 性別あやふや太郎花子がよ

名無しの神様 白黒つけろや

名無しの神様 まあ、ワイらとしても「誰!?」なのですが……

名無しの神様 急に異次元の戦い始まったと思ったらこれなんだもんな

名無しの神様 ヴァルキュリア呪術騎士学校って何だよ……

名無しの神様 初耳過ぎるんだが?

名無しの神様 この配信見てると俺のプレイ時間一万を超えたデータがゴミに思えて来る

名無しの神様 草、元気出せよ

名無しの神様 こいつらがおかしいだけだぞ

イカした神様 隣で見てた上司ちゃんが泣いちゃった

名無しの神様 いやワロタ

名無しの神様 お前は平然とチャットやってんじゃねぇ!

名無しの神様 全ての元凶がこの態度なの、最悪過ぎ

名無しの神様 ちょっ、まっ、え? いやいや、えっ……!!?

名無しの神様 なになに

名無しの神様 急にビックリしまくるじゃん

名無しの神様 初見かァ~?

名無しの神様 いやっ、そうじゃなくて、え? これ、今までのバグって、そういうことなのか?

名無しの神様 急に確信を得た感じの発言来たな

名無しの神様 恐れず言ってみろよ

イカした神様 つーか情報は欲しいからな、何か気付いたなら言ってくれ

名無しの神様 え? お前ら分かんない? 何もピンとこない感じ?

名無しの神様 焦らすじゃん

名無しの神様 良いからはよ言えや

名無しの神様 いや、もしかしたら勘違いかもしれないんだけど……このミラってやつ、『蒼天に咲く徒花2(仮称)』の開発映像で出てきて無かったか?

名無しの神様 えっ

名無しの神様 えっ

名無しの神様 えっ

名無しの神様 えっ

名無しの神様 ………………

名無しの神様 ワロタ

名無しの神様 は? ガチじゃん

名無しの神様 うわー! マジだ! え!? 次回作のキャラなの!?

名無しの神様 どうなってんですかねぇ、これぇ……

名無しの神様 拡張時に接続した世界は、次回作の世界だった……ってコト!?

イカした神様 んああぁぁぁぁあおおぉぉぉんんホントじゃんヤダもおぉぉぉおお!!

【性別可変ボケナスと】蒼天に咲く徒花 バグキャラ日之守甘楽 攻略RTA【謎のシスター】

 

 

 

 

 

 

 




悪ぃ、もう書き溜め無いわ。

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