踏み台転生したらなんかバグってた   作:泥人形

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りおんフレンド

 

「いやっ、だからさぁ、あれは違うんだって! あいつ、俺が昼寝してる間に仕掛けてきたんだぜ!? そうじゃなかったら一撃で返り討ちにしてたんだって!」

「ほぉーん」

「んおおおおお信じられてない!」

「ここの団子美味しいですね」

「そもそも話すら聞いてなかった感じか!?」

 

 信じてくれよォ! と叫びながらのたうち回るのは、先程までキメ顔で握手を求めてきていたリオン・ディ・ライズであった。

 あの後、『旅行中に悪かったな、お詫びくらいはさせてくれよ』とのことで高級団子屋に連れてかれ、二人並んで団子に舌鼓を打っていた。

 因みにミラは『ジジイに呼ばれちまったからよ、行ってくる』と言い残して去って行った。それで良いのか、護衛……。

 まあ、状況的に見れば護衛・監視役をライズさんに代わってもらった、という形になるのだろうが。

 ヴァルキュリア呪術騎士学校、色々とガバガバ過ぎるだろ。

 

「でも再戦を挑んでないってことは、勝てないって思ったからじゃないんですか?」

「おいおい、あまり痛いところ突くなよ。泣いちまうぞ?」

「図星なのかよ……」

 

 こんな軽口に屈しないで欲しかった。さっきまで纏ってた如何にも兄貴分ですみたいなオーラは何処に落としちゃったんだよ。

 今すぐ探して拾ってこい、絶対に必要だから。

 

「ていうか、そう。ミラの……お兄さん、なんですか?」

「まさか、ただの先輩後輩関係だよ。まあ、普通の……って言うにはちょっとばかし親密かもしれんが。ミラの言葉遣いが変なのは、流石にもう分かってるだろ?」

「ああ、やっぱりアレはそっちでも変なんですね」

「呪術騎士が全員あんなんだったら、俺は呪術騎士やめてるって」

 

 どのような人が見ても不快感を与えなさそうな、実に清涼感溢れるイケメンらしい笑みを浮かべるライズさんだった。

 客観的に見て腹が立たないくらいのイケメンを見るのは久し振りだな、と思った。それこそ立華くん以来じゃないだろうか?

 まあ、その立華くんは今や、ほとんど男性体の姿を忘れつつあるのだが……。

 

「それより、敬語はやめにしないか? ついでに『さん』付けも、俺はあまり好きじゃないな。リオンで良い、俺もきみのことは、甘楽って呼ばせてもらうからさ」

「……ミラみたいなこと言うんだな、リオンは」

「逆だ逆。ミラのやつが、俺を真似してるんだ」

 

 呪術騎士は内向的なやつが多いからな、と少し懐かしむように言うリオンだった。確かにこれは、ただの先輩後輩関係という訳でもなさそうである。

 どっちかっていうと幼馴染とかの方が近いのかもしれない。

 直接出会ったことのある呪術騎士がラウレストおじいちゃん先生とミラだけだったので、てっきり呪術騎士ってのは距離を強引にでも縮めてくる人種が多いのかと思っていたのだが、そうでもないらしい。

 

「上澄みともなればまた話は別だがな。呪術騎士って存在である以上、一周回って弾けてるやつは多いよ」

「リオンはそうは見えないけど」

「そう見えるよう努力してるからな、俺はじいさん──うちの校長の方針には反対派なんだ」

「ああ、あの技名叫ぶやつ……」

 

 一応反対派もいることに、心のどこかで安堵する俺がいた。同時に、反対派でありながらもトップを維持しているリオンに、少しだけ底知れないものを覚える。

 何故ならそれは、どれだけ消費してもなくならない負の感情が、腹の底ではごうごうと燃え続けていることの証左であるのだから。

 人をこういう見方はしたくないのだが、どうしても呪術の構造上そう見えてしまう自分がちょっと嫌だった。

 

「それより、だ。もっと聞きたいことがあるんじゃないのか? 例えば──」

「第三の破滅について? ぶっちゃけ、聞かなくても良いかなと思ってる」

「あれ!? 何でだ!?」

「何でも何も、リオンも第七秘匿機関の一員だろ。見れば分かる。それなら帰ったあと、報告書読んだ方が手っ取り早いっていうか……」

「おいおい、ドライなやつだなあ。報告書だけじゃ分からないことだってあるだろう? な!?」

 

 聞いてくれよ~と全身でアピールしてくるリオンだった。精神年齢が高いのか低いのかイマイチ分からない人だな……。

 正直なところ、今聞くと超長話になりそうだから嫌だってのもあるのだが……何せ、未だにアイラ達と俺は連絡が取れていないのだ。

 ミラは濃い呪力のせいで方向感覚が狂うとは言っていたが、恐らくそれだけではない。

 多分、電子機器も軒並み不具合を起こしている。そう考えれば、ナビが上手く機能しなかったのも納得というものだった。

 魔力でも似たような現象は起こるから、力という側面で見ればかなり近似の存在なんだろうな。

 とはいえ似ているだけであり、同一視はしてはいけないのだろうが。

 魔力対策はされている杖が不具合を起こしている訳だしな。

 しかし、まあ、リオンの言うことにも一理ある。

 より多くのことを聞くのならば、やはり口頭で聞くのが一番情報を得られるのは間違いないだろう。

 この先関わることは少ないだろうとは言え、友好的な関係を作るのはマイナスにもならないし。

 でも俺、今日は遊びに来てるんだよなぁ……。

 修学旅行に来てまでする話じゃないだろう──いや、あるいはこのために、わざわざ旅行先を日乃和にしたのか?

 だとしたら一発くらいは校長をビンタしても良さそうなものであった。いや、する前に打ちのめされる気はするのだが……。

 しゃーない、切り替えるか。

 ふー、と長めのため息をこれ見よがしに吐き、それから団子を頬張った。

 ゴクリと喉を鳴らして茶を啜る。

 

「……俺、まず第三の破滅が出たって話すら聞いてないんだけど。それに、そもそも第二の破滅からの出現インターバルが短すぎないか? 一年も経ってないぞ。いや、それは第二の破滅の時もそうだったけど……魔王のセンサーにも反応しなかったし、大体何で日之和に出現したんだ? 定石通りなら、アルティス魔法魔術学園を狙うだろ。第一、第二はこっちで撃退してるんだから、第三だって俺達を第一の標的に据えるべきじゃないか? そもそも──」

「うおおおっ!? 振り切ったと思ったら質問塗れじゃないか、落ち着け落ち着け。情報の濁流で攻撃して悪かったよ。一つずつ解説するからクールダウンしようぜ、な?」

 

 暢気に串団子をもぐつきながら、リオンが苦笑いと共に言う。

 参ったな、かなりきつめの自制をしていただけに、ちょっと解放したら物凄い早口になってしまった。

 でも、仕方なくないか? 第三の破滅撃退とか軽く流していたが、普通に大事件だろ。

 何なら一年分のタスクはもう終了しましたよと言われたに等しいレベルである。

 それ自体は有難いことこの上ないのだが、詳細はどうしても気になるというものだった。

 こちとら婚約者(暫定)に、『俺って多分、いつ死んでもおかしくないでしょう?』とか超真顔で言っちゃったばっかりなんですけど!

 

「まず一つ目なんだがな、第三の破滅を撃退とは言ったが、正確にはそうじゃないんだ」

「は? じゃあ、何? 封印とか……いや、違うな。憑依させたまま拘束してるのか?」

「……ハハッ、こいつぁビビるな。察しが良いどころじゃないぞ、甘楽。ほぼ大正解だ、どういう頭の回し方すれば、一瞬でそこに行きつくんだ?」

「え? マジなの? うわっ、人権を何だと思ってるんだ……」

 

 日之和ってその辺の法律とか良識が無いのだろうか……。

 普通に怯えてちょっと距離を取ってしまった。呪術騎士、超怖いんだけど。

 ……いや、でも仮にレア先輩から第二の破滅を引き剥がせなかったら、俺でも拘束するで妥協していたかもしれないな。

 

「待て待て! 誤解だ! 流石に言葉通りのような真似はしていない!」

「他の解答が無いように思えるんだけど……」

「いやっ、それはそうなんだが……その、だなあ。つまり()()()()()()なんだよ」

 

 スルリとリオンがアームカバーを外す。露になったのは、純白に染まった右腕だった。

 そうとしか形容できなかったが、当然ながら言葉通りそのままという訳では無い。

 その白は異質の証明だった。塗られた訳でも無く、染められた訳でも無く、敢えて言うのであれば、取り憑かれている言うべきか。

 あるいは、そこに住まわれていると言っても良いだろう──白色の何かが、リオンの右腕で脈を打っていた。

 

「第三の破滅を憑依させっぱなし……っていうのは、少しだけ違う。正確に言えば、俺はこいつに憑依されて、強引に調伏したんだ」

「なんて?」

「だから、調伏したんだよ。こう、気合でグッ! とな。激闘の末に、呪力で右腕に圧し固めてやったんだ。呪術騎士にメンタル勝負で勝とうとか、百億年早いんだよな」

「ちょっと意味わかんないですね……」

 

 こいつ何言ってんだ?

 ちょっと想像の百倍くらい意味不明だった。破滅って調伏とかできるものなのかよ。

 確かに憑依系の魔術はメンタルの強靭さである程度抵抗できるものではあるが、それにしたって些か無法過ぎる。

 レア先輩が憑依されたんだぞ? 作中最大最強のメンタルを持っているとされる、レア先輩がだ。

 あー、それじゃあ抵抗するって無理なんだなって思うじゃん。

 だから、憑依された際の選択肢として挙げることすら馬鹿馬鹿しいとすら思っていたのだが……。

 出来ちゃうんだ。

 呪術騎士ってすげぇ~!

 素で心底から感心してしまった。

 

「これがちょうど二日前のことだ」

「すげぇ直近の出来事! え? 嘘でしょ……!?」

「残念ながらマジなんだなあ、だから情報がまだ行き渡ってなかった訳だ。こっちの方でも、報告を纏めるのに手間取ってるしな」

 

 だろうな、としか言いようがなかった。

 第一、第二と続けざまに戦い、恐らく誰よりも破滅のことが分かっているであろう俺ですら、ちょっと意味わかんないですね……となっているのだから、それも当然だろう。

 こんなんを一日二日で報告書にまとめ上げろとか言う方が無理である。俺なら絶対にやりたくない。

 

「てか、たった二日前のことなのにピンピンしてるのか……頑丈だな」

「取り柄の一つだからな。それに、甘楽と違って直接的な命のやり取りをした訳じゃない。精神的な引きずり合いだったから、丸一日寝ればそこそこに回復するさ」

「そういうもんなのか……?」

「そういうもんさ。起きた時に腕がこんなんになっていたのは、我ながら驚いたけどな」

 

 もうちょっとスマートに圧し固めたつもりだったんだけどな、と屈託なくリオンは笑った。

 まあ、どう贔屓目に見てもキモいからな……。

 何ならキモい以外の感想を捻出できないまであるキモさ。

 いやもう本当に気持ち悪いんだって。右腕だけ別の生き物みたいに胎動しているし、不快感を煽るようなゴムっぽい白色だし。

 逆にこれがキモくないのなら、何がキモいんだよという話ですらあった。

 

「キモいキモい言い過ぎだろ!? もう少しオブラートに包めよ……!」

「あっ、気にしてたんだ。何かごめん」

「まあアームカバーとか付けてると、封印された右腕を隠してるみたいでドキドキするんだけどな」

「う、うわぁ……」

 

 厨二病が見え隠れしていた。俺がやっても微妙に痛いのに、二つ年上のリオンがやるのは結構なきつさがあるな……。

 でも言いたいことはちょっと分かるので、それ以上の追及が出来なかった。

 仕方ないよ、男の子なんだもん。

 

「それで、その右腕どう使うつもりなんだ? まさかずっとそのままって訳にもいかないだろうし、かといって何にも使えないなら斬り落とすしかないと思うんだけど」

「ああ、それなんだけどな、俺とじいさんはこれを触媒に出来ないかって考えている。どうだ? 甘楽」

「触媒って……つまり、第四の破滅を召喚するって言いたいのか? ああ、だから俺なのね……」

 

 召喚とは、ざっくりと言ってしまえば空間転移の魔法魔術である。仕組みとしては、学園から第七秘匿機関本部に飛ばしてくれるアレと大体同じと言って良いだろう。

 原作にはない癖に技術自体は広く知られてるのは何なんだろうな……。

 まあ、校長クラスでもないと使えないからほとんどどうでも良かったのだが、第三の破滅を触媒に第四の破滅を召喚するとなれば、そうも言っていられない。

 触媒とは、自身とは無関係な物だったり生物を、強制的に呼び出す時に使う代物だ。

 竜の鱗があればどっかの竜を引っ張り出すし、上級魔獣の血を使えば同じ血が流れてる手ごろな上級魔獣が呼び起こされる。

 とはいえそこに、契約等や上下関係というものは一切存在しない。

 文字通り、その場に召喚するだけである。言い換えれば、空間転移させるだけな訳だからな。当然だ。

 で、今回は『第三の破滅』という超級の触媒と、俺の魔導を用いた召喚によって、第四の破滅を無理矢理引きずり出したい、という訳だ。

 七つの破滅は既存の魔法魔術や呪術に当てはまらないが、魔導に関してはそうじゃないっぽいからな……。

 

「出来そうか?」

「出来ると思うけど、幾つか問題があるな」

 

 細々と数えればそれこそキリがないほどにはあるのだが、その辺は周りが解決してくれるだろう。

 だから、要点だけを告げる。

 

「一つ目、第四の破滅の憑依先がない。生半可なものじゃ多分憑依させられないし、それは自動的に召喚の失敗を意味する」

「大丈夫だ、そこは既に目星をつけている」

「二つ目、準備は万端にしても普通に失敗する可能性がある。そうなったら多分俺は死ぬし、二度と誰も召喚出来なくなってしまう」

「し、死ぬのか……?」

「当たり前だろ、ただでさえ魔導はハイリスクな代物なんだぞ……」

 

 魔導で召喚するということは、イコールで俺が一人で七つの破滅と精神的な接触を行うということと同義だ。

 イメージとしては触媒がナビで、俺はそれを元に運転するドライバーってところか。で、車が魔導。

 車に召喚する対象を紐づけして帰ってくる感じだ。

 だから、失敗をするなら紐づけするタイミングであり、そこで失敗するなら逆に俺が破滅に持っていかれることを意味する。だから死ぬ、精神的な意味合いにはなるが。

 

「植物状態になるんじゃないかな、まあそうなったら解剖やら何やらして役立てて欲しいところだ」

「自分の生死にかかわってくるってのに、随分ドライなんだな。甘楽は」

「や、そりゃ生きていたいとは思うけど、どうしようもない時ってあるだろ?」

 

 とか何とか言っているのを聞かれたら、それこそ月ヶ瀬先輩に監禁されそうなものだな……と身を震わせた。

 大前提なので特に語ることはないが、俺は死にたい訳じゃないし、むしろ生きたいと思っている方ではあるんだけどな。

 

「で、三つ目。単純に第四の破滅に勝てない可能性がある。第二の破滅ですら俺は真っ当に死にかけたし、第三の破滅についてだって──」

「──直接戦闘をした訳じゃないからな、戦闘力が測れないってか」

「そういうこと。ぶっちゃけ俺は一対一で勝てる気はしない……」

「なぁに、俺がいるさ。俺たちは主人公だろ? そんな俺と、甘楽が組めば勝てるだろ」

「何なのその謎の自信は……」

 

 いや、確かにリオンの実力が相当上なのはもう、先程ので充分に分かったのだが。

 リオンの俺に対する信頼は何なんだろうな。

 それに主人公というのなら、それは立華くん(ちゃん)なわけだし……。

 不安は拭えない──多分、どれだけ戦力を集めても拭えないんだろうな、と思った。

 分からないという事実がもう怖い。誰だって、そういうものだ。

 

「でも、この問題点と釣り合うくらいにはメリットもあると思ってる」

 

 事実、こちらで場所を決められ、タイミングも定められ、戦力も十全に備えることが出来るのは、これ以上ないメリットだ。

 俺としてはやらない手が無いと言って良いほどには。

 中々無いどころか、これをやらなかったら、こんな好条件で戦えることなんてまず無いだろう。

 

「だからまあ、校長の説得は俺がやるよ」

「? いや、そこに話はもう通してある」

「は?」

「だからこれは、甘楽に対するただの事前確認だ。そっちの校長が、本人が了承しないのならばこの話はなしって言うからさ」

「は???」

「つまり、決行日はすぐそこってことだ。具体的に言うなら二日後だな」

「修学旅行最終日じゃねぇかそれは……!!」

「ハハッ、悪いねぇ」

 

 帰るまでが修学旅行って言葉を知らねぇのかよ! 俺にもまったり最後まで楽しませろよ! 帰りの飛空戦艦内で思い出を語らったりさせろ!

 クソッ、ここまで全部大人共の掌の上だったのかと思うと猛烈に反発したくなってきた。

 

「わざと植物状態になって滅茶苦茶に曇らせてやろうか……?」

「それはマジでやめろ」

 

 マジのガチな顔で言うリオンだった。

 ご、ごめんってばよ……。

 

 

 

 

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