サンディエゴ鎮守府で起きるロクでもないKAN-SENと騒ぎを収めることの出来ない指揮官の無能とホモビと偶に愛憎噴き出す日々を綴った日誌 作:ゼフィガルド
人類に仇なす存在『セイレーン』が出現し、人々は生活圏の後退を余儀なくされた。未知の技術と軍事力の前に蹂躙されるだけかと思いきや奇跡が起きた。
脅威に対抗する様にして出現した彼女らは、在りし日の大戦で運用されていた軍艦と同じ名前を冠し、水上を駆ける華やかな戦士として世界を守り続けている存在は『KAN-SEN』と呼ばれていた。そして、彼女らを導く者達を『指揮官』と呼んだ。
「ふむ。素晴らしい出来だ」
サンディエゴ鎮守府。ユニオンの西海海岸に位置する軍事港の執務室では、指揮官と共に数人のKAN-SENが映像を視聴していた。
執務机の椅子に座っていたのは人間では無かった。全長70cm程。白と黒のツートンカラー二足歩行鳥類、ペンギンである。嘴基部がピンク色であることから、フンボルトペンギンやケープペンギンの類であることが伺えた。
「酷い詐欺ですね。私達はこんなに恰好良い活躍をした覚えはありませんよ」
視聴した内の一人。青と紫の長髪に探照灯とSGレーダーを模したアクセサリーが特徴的な軽巡洋艦型のKAN-SENであるヘレナが訝しんでいた。
グルリと執務室を見渡してみれば、部屋のあちらこちらに盗聴器と盗撮用のカメラが設置されており、執務机の引き出しを開けてみれば書類以外に、遊戯王カードが収められていたりした。
「指揮官にも息抜きは必要ですし」
遠慮がちに擁護したのは、指揮官の傍にピタリと付いている秘書艦。藍の着物に開けたデコに突き立った兎耳が特徴的な重桜の空母、蒼龍であった。
優し気に諭している様に見えるが、腰のホルスターに入っているのが花札ではなく、同じく遊戯王カードであることから、自らの弁護も兼ねた擁護であることは明らかだった。
「四六時中、指揮官に張り付いている訳じゃないから言って良いのかは分からないけれどさ。平和になったとはいえ、限度はあると思うんだ」
遠慮がちに指揮官達を諫めたのは、ユニオンの兄貴姉貴。ユニオンらしいブロンド美女と言っても過言ではない、軽巡洋艦型のKAN-SEN。クリーブランドであった。
そう。KAN-SENの出現により、人類はある程度の平和を取り戻すことに成功していた。セイレーンも最近は音沙汰が無く、気まぐれの様に顔を出しては陸地に攻撃して行くという、よく分からないムーブを取っていた。
「何を言うか。君達が活動できるように、私は鎮守府の業務から、市井との渉外まで幅広くこなしているのだ。その上、私に対して偏執的とも言える交流を図ろうとする者達への対応。これらの疲れを上手くとる為にも、娯楽は欠かせないのだよ」
「舌だけは、藍も変わらずよく回りますね」
で。平和になった後だが、セイレーンが完全に滅びた訳でも無いので、軽々に軍事を縮小することも出来ない。
また、KAN-SEN達も出生から、一般的な生活に混じることは難しく、鎮守府で面倒を見ることになっていた。当初は、大本営も彼女らが戦闘以外の目的を見つけることを喜ばしく思っていた。……が。
「で。この広報用PVに合わせて、私達の私生活をインタビューしに来ると?」
「その通りだ。出来れば、映像に合わせた感じの使命感とか体裁とかを気にした感じで、お願いしたいんだ」
「なんで、私達?」
「まず一つ。ここはユニオン領にある鎮守府だ。やはり、取材を受けるのもユニオン陣営のKAN-SENにしたい。それと、もう一つの理由だが」
指揮官が手元を操作すると、壁面の一部がひっくり返り、モニタが出現した。鎮守府内の様子が映し出されていたが、訓練や委託に励む。等と言う殊勝な姿は殆ど映し出されていなかった。
例えば、ロイヤル陣営。金髪碧眼の幼児体型のKAN-SEN。クイーンエリザベスを中心とした茶会が開かれていたが、これまた優雅さからは掛け離れていた。
「今日もベルとリアは欠席?」
「はい。二人共、互いに使用している監視用のカメラやら盗聴器が電波干渉を起こして使えなくなっているという事で、互いが設置した機材の全撤去を求めているらしくて」
「ロリコンと呼ばれた、私ですらドン引きするぞ」
イラストリアスとベルファスト。ロイヤルを代表する2人が居ないことから、副官的なポジションに収まっているフッドが現状報告をし、駆逐型専門(ロリコン)であるアーク・ロイヤルですらドン引きしていた。
「おかわり」
彼女らが引き攣った笑いを浮かべている中。妹艦から面倒を見ることを放棄された、エディンバラが主食の様に、スコーンを貪っていた。
ユニオン陣営の方を映し出してみても、大概の奴は部屋に籠ってFPSかオープンワールドゲーをしており、演習をしたり訓練をしている奴はいない。
「良かったじゃないですか。これで、我々も庶民感アップって感じで」
「良くないわ! 国を代表する防人達が、昼間っから働きもせず、コーラ飲んで、ピザ食って、ゲームしている姿を外部に晒せるか! オォン!?」
「でも、そいつらの上司は指揮官なんだよなぁ。真面目さで取材したいなら、鉄血か重桜陣営に頼めばいいじゃないか」
「重桜は私の出身地だから、恣意的な意思だと思われてしまうから却下だ。鉄血陣営についてはだ、その……」
これまた手元のパネルを操作して、鉄血陣営を映し出した。モニタ内に映し出された彼女は、見られていることが分かっているのか、カメラ目線になっていた。
「指揮官、見ている?」
手を振っているのは、銀髪ツインテールのグラマラスな重巡洋艦型KAN-SEN。この鎮守府の古参でもあるプリンツ・オイゲンだった。
「全員で相談したのだけれどね。この鎮守府の体たらくが、指揮官の責任でもあるのなら、庇い立てることは本人の為にもならない。という事で、私達は取材に対してボイコットすることにしたの。少しは己を顧みた方が良いかもね」
ご丁寧に手まで振っていた。因果応報を体現せよという、あまりにも辛辣な対応だった。
「駄目みたいですね」
「頼む! 私の体裁を守る為にも! 二人に協力してくれ!」
「うーん。まぁ、困っているみたいだし」
「指揮官を甘やかす人が居るから、何時まで経っても鎮守府の体質が改善されないんですよね」
「まま。そう言わずにな。ヘレナ? 一緒に頑張ろうぜ?」
クリーブが面倒見の良さから、指揮官に救済の手を差し伸べようとしていた。甘やかしていたら、何時まで経っても指揮官が本気で動き出そうとはしないが、少なからずの好意がある為、無碍な対応が出来ないのが彼女の弱みでもあった。
「流石、クリーブ君だ。では、当日は頼んだぞ!」
「おう!」
元気よく頷くクリーブランドに対して、ヘレナは眉をひそめていた。果たして、自分達だけが面倒ごとに追われて良い物かと。
「そうだ。良い事考えた」
クリーブにも聞こえない位に小さな声で呟いたヘレナは、指揮官から提示された取材の日に向けての準備を始めるのであった。