サンディエゴ鎮守府で起きるロクでもないKAN-SENと騒ぎを収めることの出来ない指揮官の無能とホモビと偶に愛憎噴き出す日々を綴った日誌 作:ゼフィガルド
ここはサンディエゴ鎮守府。御神体であるサンディエゴちゃんを崇め奉ったり、そうでなかったりしながらも。多国籍のKAN-SENが帰属する場所である。
前回はBBQをやって終わったが、実際問題。社交界に出れる程の教養があるメンバーを増やしておくことは鎮守府的にも有意義だと思われた。
「最近は、大本営からの突き上げも厳しくなっているしなぁ。鎮守府を首になったら、動物園に就職するしかなくなるのは勘弁だ」
「何処かには配属されるでしょ」
ヘレナは相も変わらず執務室のソファで寝転びながら、Swtichをプレイしていた。プレイしているタイトルはインクで塗ったりするアレだった。
鎮守府の長がいる部屋で狼藉を働いているKAN-SENが居たとしても、誰も注意しない辺りがこの鎮守府の緩さでもあった。秘書艦の蒼龍もペラペラとリストを捲っていた。
「鉄血のメンバーは重巡以降の年長組から承諾を貰いました。それと、対抗する様にロイヤルと重桜からも」
「ユニオンの者達は?」
「エンタープライズさんにも声を掛けたんですが、あまり得意でないということで。クリーブランドさんにもお声がけをしたのですが」
「クリーブさん。快活に見えて、割と繊細ですから難しいと思いますよ?」
普段はアホの所業を披露しているが、仮にでも戦局を左右する要の艦種『レーダー艦』特有の観察眼は、同陣営の人柄も把握していた。
「そう言う聡い所は普段から発揮してくれんかね」
「やだよ」
「今日はアルバート社長に誘われていますし、事情も説明しました。誰を連れて行きましょうか?」
「ふぅむ。ま、手堅く。ビスマルクだな」
内線に繋ごうとした所でコンコンとノックの音が鳴った。まさかと思い、入室許可を促すと入って来たのは。
「お呼びになりましたか?」
「(お前じゃ)ないです」
入って来たのはロイヤルが誇る瀟洒なメイド長、ベルファストであった。タイミングの良さから考えて、いつも通り盗聴していたのだろう。
「ご主人様。考えても見て下さい。メイドはステータスです。自慢になりますが、私ほど完璧な人材を連れて行けば、指揮官は増々一目置かれる存在となるでしょう」
「うーん……」
普段の素行はサンディエゴ会ロイヤル組若頭と言わんばかりに喧嘩っ早さが目立つ不良メイドとなり果てた存在であるが、見た目は依然として美女である。
流石に社交界では、指揮官を立たせてくれるだけの教養と理性も残っているだろうと信じた所で、背後に気配を感じた。案の定、艦載機に腰掛けたイラストリアスが居た。
「指揮官。止めましょう。こんなの連れて行ったら、イメクラの女を連れて来たって勘違いされちゃいますよ?」
「今回ばかりは私の方が教養も作法もありますのでね。今日日、乳袋があろうと暴力ヒロインは流行りませんよ」
「よし! 今日はベルファストを連れて行く! 次はイラストリアスだ!」
指揮官は早口でまくし立てた。この口喧嘩を長引かせれば、自然と武力による喧嘩へと推移することは分かり切っていたからだ。
「蒼龍さん。社交界の時も、先方に言い包められていること多いんじゃないんです?」
「基本的に『うん』『はい』って言っていますね」
重桜の模範的なYESマンだった。そりゃ、我を通したいユニオンの重役の方々からは好かれるだろうとは思った。
「ご主人様のご期待に沿った活躍をして見せましょう」
「あんまり張り切らないでね。頼むから」
~~
さて、招かれたアルバート社長との会食。社員や有名人も招いた、そこそこの規模の物であるが、男性陣の視線を一斉に集めていたのはベルファストだった。
「ご注文の方は?」
「君」
「うーん、質の悪いアルコールを口にしてしまったようですね。ギネスを飲んで、もっと利口に酔ってくださいね」
男性陣は鼻の下を伸ばし、何とかしてはちきれんばかりの双丘の先にある桃色の突起を覗き込もうとしていた。人々以前に男しての本能を引きずり出してしまう程の逸材を連れて来た指揮官は目をそらしながら、アルバート社長は微笑んでいた。
「流石だね。これじゃ、サプライズに登場して貰うモデルが気の毒だ」
「スイマセン……」
「ベルファストさんは悪くなかったんですけれどねぇ」
本当に珍しいことだが、ベルファストはキチンと場を弁えて、在りし日の瀟洒ぶりを遺憾なく披露していた。ただ、主催者のメンツを潰しかねない位に注目を集めるのは予想外だった。
「いや、僕は全然気にしていないよ。むしろ、友人である君がこんな美女と一緒に仕事をしていることを誇らしく思うよ」
「あ、ありがとうございます」
「(本心なのか。皮肉なのか判断が付きにくい…)」
かくして、勝手に針の筵に座らされている気分になりながら、指揮官はアルバート社長との会談に応じていた。
~~
「で。どうでした?」
「何も悪くはなかったんだ。強いて言うなら、彼女が魅力的すぎたのが悪かったな」
「気持ち悪」
慣れない恰好付けをした結果。ヘレナからストレートな感想を告げられた。
「そうですか。ご主人様が、その様な境遇に陥るとは……」
「あくまで主催者のメンツを保つ程度には、後ろに控える存在感。ということを考えたら、蒼龍さんがベストなのかもしれませんね」
「そうですか。ウフフ」
大和撫子ぶりを褒められたこともあり、蒼龍が微笑んだのも束の間。いつも通り、無遠慮にドアがノックされたので入室を促した。
「じゃあ、次は私ですね」
「いや。君達のグラマラスさは男性陣の目の毒ということで……」
「は?」
イラストリアスの眉間に青筋が浮かび上がった。ロイヤル組若頭の片割れであり、馬力の関係上からトップクラスの武力を持つ彼女が凄めば、指揮官のノミの様な心臓はプチっと潰れかねない。
「諦めましょう。指揮官に恥を掻かせたいのですか? いや、貴方の存在自体が恥でしたね」
「ユニオンジョークでも覚えて来たのかしら。ちっとも面白くないけれど。もっと聞かせて貰えるかしら」
微笑みを絶やさずして、執務室から去ってく二人を見ながら指揮官の神経は限界寸前まで来ていた。
「どうして」
「指揮官がどちらが一番なのかをはっきりさせないからでは? ハーレム物の主人公じゃないんですから」
「いや、だって。どっちかを選んで、片方にやる気を喪失されても困るし……」
「コイツがユニオンのお偉方達に好かれているとか。マジ?」
カスみたいな意見だった。ヘレナからブーイングを受けながらも、指揮官は次は誰を指名するかを考えていた。