マリス・フライングバットレス   作:エターナルドーパント

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闘争のフェスティバル

(出久サイド)

 

「此方オペレーターです。聞こえていますか?A.I.M.S.各員、報告を」

『イージス分隊、異常無し』

『バトル分隊、異常無し』

『サンシャイン分隊、異常無し』

人がごった返すスタジアム。キャロルさんがザイアスペックで各警備班から報告を受け取る。

各所に仮面ライダーイージス、バトルレイダー、そしてACの分隊をそれぞれ配置してある

「了解しました。繰り返しますが、我々はZAIA(企業)です。対価に見合った成果を挙げる事、これは当然の義務とお心得下さい」

『Roger』

通信を落とし、此方に向き直るキャロルさん。いつも以上に無機質で無感情な瞳が、僕を見据えた。

「A.I.M.S.、総員配備完了しました」

「ご苦労様です。所で主任は?」

「申し訳ありません。いつもの気紛れです」

「またかぁ・・・」

キャロルさんの報告に溜息を吐き、指先を頭に当てる。

この祭典、雄英体育祭は、オリンピックに取って代わり世界中の注目を集める一大イベントだ。そんな時に主任(トラブルメーカー)の所在が掴めないのは、正直胃に悪い。

「そう言えば、例のアレは渡してありますか?」

「はい。既に今朝方渡してあります」

「ならば結構。楽しくなりそうですね」

「はい。楽しめるよう、我々A.I.M.S.が警護いたします」

「期待していますよ」

「恐れ入ります。では、私はこれで」

「えぇ、お気をつけて」

キャロルさんと別れ、教員席に向かう。擦れ違う数名と会釈を交わし、八木さん(オールマイト)の隣に座った。

「お加減は如何ですか?」

「おぉ、緑谷先生。いやはや、お陰様で絶好調ですよ」

そう答えて、右手の焼き鳥をつまみにコーラを飲む八木さん。胃の修復も着々と進んでいる。

「呉々も、無茶は禁物ですよ。前みたいな事は、もう起こさないように」

「は、ハハハ、善処するよ・・・」

「・・・」

乾いた笑いを吐きつつ、顔を引き攣らせる。その煮え切らない態度が気に入らないので、少し視線を尖らせて刺すように睨み付けておいた。

 

『さぁさ沸き立てEverybody!今年の期待の新人の入場だぜイェアッ!!

実況はこの俺、プレゼントマイクが務めるぜ!そして解説がゲストのこのお方!』

『ハイハーイ!ZAIAエンタープライズアイテム開発第13課主任、シュニン・ハングマンだ!面白おかしく解説してやるぜェ!』

 

「ブッ!?主任!?な、何をするつもりですか!?」

 

『イヤイヤ~っ、ちょっとお手伝いをネ♪』

 

主任(あの野郎)、まさかの実況席に居やがった。しかも選りに選って、一緒に居るのがストッパーになりそうも無いプレゼントマイクか・・・

『社長、私も参加してストッパーになってきます』

「あぁキャロルさん、お願いしますね」

『バディの面倒を見るのは当然です。では』

狙い澄ましたようなタイミングで、キャロルさんからの通信が入った。優秀なオペレーターで有り難い。

 

『取り敢えずまぁ、コイツらだろォ!?敵の侵入を退けた期待の新星!1年A組だろォ!?』

 

「ウムム・・・」

「心中複雑そうですね」

大歓声を浴びてA組生徒が入場して来る中、八木さんは苦虫を噛み潰したような顔をする。

「いや、1番の脅威を倒したのが、正体不明の敵だったからね・・・飲んだバリウムが、胸元で突っかかっているような気分さ」

「貴方が言うと説得力が違いますね」

彼は最近、検査の為にバリウムを飲む事も多い。毎度毎度僕がジャッカーで検査してあげられれば楽なんだけど、生憎と忙しい身の上だからなぁ。

 

『そんなA組見て、日和ってるヤツいるゥ!?居ねぇよなぁ!!存分に活躍して注目かっ攫え!B組、普通科!サポート科ァ!貴様等になら~♪出来る筈だァ~♪』

 

「ほぉ~、ヘイト管理が上手いですねぇ。流石は傭兵稼業」

「プレゼントマイクには、そこら辺の気遣いとか難しそうだからなぁ・・・」

良い具合に闘志を煽って焚き付け、場を盛り上げる主任。彼の然り気無い配慮によって、A組以外の生徒に不満のぶつけ先が出来た。見るからに士気が跳ね上がり、鬨の声とばかりに吼える生徒もいる。

「良いわねこの青臭い熱気!凄く好み!だけど静かにッ!!選手宣誓ッ!!」

仮面越しにも分かる程に恍惚の笑みを浮かべ、18禁ヒーローミッドナイトが鞭を鳴らす。うーむ、青少年の健全育成と言う概念に対して真正面からケンカ売ってる気がするなぁあの人・・・

「入試主席者、渡我被身子!」

「はいっ!」

ミッドナイトからの呼名に元気よく手を挙げ、宣誓台へと上るひーちゃん。爆豪に烈火の如く悪意を向けられているが、一切気にする事無くマイクに向かった。

 

『宣誓!私は製品の性能を大きくアピールし、ZAIAエンタープライズ社の宣伝業務を全うする為、戦う事を誓います!』

 

「・・・おぉう」

「これ大丈夫?」

「どうかなぁ・・・どうだろ・・・」

ひーちゃんの何ともドストレートな宣誓に、観客席がザワつき出す。ザイアスペックで中継のチャット欄を覗いてみれば、学生を利用する鬼畜企業だの若年性社畜だの、割かし散々な言われようだ。

 

『私は、この会社に、社長に何もかもを救われました。

()()()生きて良いんだと、此処にいて良いんだと、親すら言ってくれなかった事を言ってくれた社長の為に、私は役に立ちたいと思っています。それ程に、ZAIAと社長を愛してます。

皆さんにも、そんな縁があると思います。それに報いる為と思えば、全力を超えて戦える筈です。

見せ付けましょう。私達なら、それが出来る。

これが私の、()()()()()()()()!目指すは勿論テッペンです!私に切り札を切らせられる人がいる事を期待します!』

 

先程とは一変、拍手喝采が巻き起こる。チャット欄も、健気だとか良い事言うとか、肯定的なコメントが多数を占めていた。まぁ若干洗脳の類いを疑うものもあったが・・・

「いやぁ、どうなるかと思ったけど、中々アツい事言ってくれたねぇ渡我少女」

「ホントですよ」

「にしても・・・何かちょっと不穏な闇深いワードが聞こえた気がしたんだけど・・・」

「彼女は常識の被害者です。私が責任持って支えますので、ご心配などなさらぬよう」

「お、おう、了解した・・・」

ひーちゃんは経験から、表面的な同情に懐疑的だ。下手に接すれば、八木さん(オールマイト)は確実に嫌われ、避けられる事になる。そんな気まずい展開は御免だ。

 

『素晴らしい宣誓をありがとね、渡我さん!さぁ、早速競技を始めて行くわよ!第一種目はァ~、コレ!』

 

───障害物競走───

 

巨大モニターに表示された、誰もが知るであろう有り触れた競技名。しかし、雄英はやる事全てが桁違いである。すぐに表示が切り替わり、コースマップが映された。

 

『ルールは簡単!多数の障害物が仕掛けられた全長4kmのコースを疾走し、この会場に戻って来た速さが順位よ!コースさえ守れば、破壊妨害何でもあり!さぁさぁ位置に着きまくりなさい!』

 

「さてと、ウチの仕込みも楽しんでいただきましょうかね」

「え、緑谷先生も障害物設置したの?」

「勿論!宣伝出来るタイミングは逃しませんよ!」

「し、商魂逞しいね」

「はい。そうで無くては、会社経営など出来ませんから。これが資本主義ですよ」

ゾロゾロとスタート位置のトンネルに群がる生徒達。対してひーちゃんは余り動かず、最後尾の更に後ろに陣取った。

そしてアークの因子を活性化させ、モデリングビームを照射。愛用のフォースライザーでは無く、ショットライザーを生成する。

【HARD!】

「変身!」

【SHOT RIZE!】【インベイディング!ホース!シュー!クラブ!】

コースを変えて曲がって来た弾丸を旋風脚で蹴り砕き、ひーちゃんは仮面ライダーイージスに変身した。

そしてスタートランプに光が点り、同時に周囲の格納コンテナが展開。円盤状のボディにカメラ腕、脚のようなブースターを装備した青色のドローンが複数発進する。

「あれは?」

「我がZAIA社第13課が開発した新型高機動ドローン、HELLKITEヘルカイトです。ああ言った撮影の他にも、災害救助や偵察等にも転用可能です」

「何でも出来るね君の会社」

「いえいえ、出来る事だけですよ」

「その範囲が広過ぎるんだよなぁ」

 

─DVERRR!─

 

「あ、始まった」

「即凍結しましたね」

スタートのアラートが鳴った直後、トンネル出口が巨大な氷壁で覆われた。轟君の個性だなあれは。

 

『ギャハハハハ!あの坊や、中々やるじゃ無い?』

『後続への妨害として的確な攻撃ですね。スタートダッシュをさせない事は重要です』

 

『そう来なくては!』

【HARD!】

『ブチ抜きますよ!』

【インベイディング!ブラスト!】

 

その氷壁を、イージスが必殺技、ハード・インベイディングブラストの弾丸で撃ち砕いた。衝撃力と炸裂力に優れるあの大口径弾ならば、あの程度の氷塊は難無く破壊出来る。

 

『出遅れるぐらいが丁度良いです!』

 

『へぇ~、中々やるじゃん。じゃ、先頭には第一関門を!カメラちゃーん、寄って寄って~』

 

モニターのカメラが急降下し、先頭を走る轟君と爆豪を映し出した。

 

『アーッアーッ、先頭のゴミムシ共~?聞こえてるカナ~?』

『何だテメェ誰がゴミムシだコラ殺すぞォ!』

『うんうん!元気が有り余ってるねェ!その元気を見込んで、君等にプレゼントがあるんだ。もうすぐでしょキャロりん?』

『はい主任。起動信号を受信しました。間も無くです』

 

2人の問答が響くと共に、モニターの映像が分割。半分が別カメラからの映像を映し出す。

それは、大型マンタのようなフライトユニット(ホバーグライダーMark2)に懸架されたキャタピラ下半身のロボットの群れ。その数、凡そ60。

腕部はガトリングガンや鋼鉄製のバリスティックシールドで武装されており、中々に武骨な造りだ。

拠点防衛型機械雑兵、通称GOLEMゴーレム。主任がメインで設計したらしい。

更にセメントスに作らせたであろう高台には、虎縞カラーの別型。戦車の砲塔に2本脚をそのままくっ付けたような形のそれは、折り畳んでいた砲身を伸ばして脚のアンカーを打ち込み、狙撃用のレーザーサイトを起動する。

狙撃支援型機械雑兵、通称SPEERシュペーア。これも主任設計。

 

『な、何だコイツらァ!?』

『弾丸は非殺傷ゴム弾だから当たっても死なないけど、死ぬ程痛いからそのつもりで!じゃあ、第一関門《ロボ・インフェルノ》!頑張ってネ~♪プレゼント、気に入ると良いケド・・・』

 

「やる事が派手だねぇ」

「その方がコマーシャル効果が高いんですよ。因みに、ヒーロー科高校や国防軍の訓練向けにも販売してます。詳しくは、株式会社ZAIAエンタープライズ公式ホームページから!」

「此処でもコマーシャル!?と言うか撮影してたの!?」

「ザイアスペックに主任が入電して来やがりました。ほら彼処」

「あ、ホントだ。カメラこっち向いてる・・・」

突然主任から振られたアドリブ要求に応え、上空のカメラにウィンクしておいた。ひーちゃんや()()()曰く、僕の顔のパーツは所謂カワイイ系らしい。それなりに整っているので、活用しない手は無い。

 

『ハイハーイ、ファンサありがとね~社長!さーて、先頭は早くもインフェルノを突破したっぽいねぇ』

『お見事でした。やはり、この程度では無理でしたか。後方の仮面ライダーイージスも、順調に追い上げて来ております』

『あ、そーなんだ。なら遠慮無く、お次もやっちゃいましょうかね!2番、起動!』

 

─ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・─

 

何やら大きな地響きが聞こえて来た。この瞬間、僕の中からおおよそ良い予感と呼べる物が全て消し飛び、頭の何処かで何らかのスイッチが切り替わるのを感じる。

これは・・・恐らく諦めの類いだろう。

 

『第二関門!L.L.L.(レディロングレッグ)だ!精々撃ち抜かれないように!死にはしないと思うけど・・・』

 

モニターには、開かれた地面のシャッターの下から、何かがせり上がってくるのが見えた。

それは、真っ赤な円盤形のボディに6本の長い脚が付いた、60m程の高さであろう巨大兵器だった。

「・・・おい、主任、おい主任(アホ)、アレ何だ。私はあんなの企画書すら知らされてないぞ」

 

『ギャハハハハ!そうだっけ!?まぁ良いんじゃないのどうでも。こう言うのあった方が面白いよ!

それに心配せずとも、あのL.L.L.(レディロングレッグ)含め、全仮想敵は雄英が一括購入してくれたからさ。会社としてはかなりウハウハだよ~?』

 

「貴様後で憶えとけよ・・・と言うか、あの巨大兵器幾らなんです?」

 

『え?あぁレディ?大体3億ぐらいかな』

 

「僕の年収!?」

思わず叫んだが、僕は悪くない筈だ。悪いのはあんな物を社長権限通さずに作って売った主任と、そんなものを一括払いで買ってしまう雄英だ。

 

『何かと思ったら・・・しょうもねぇ』

 

─バキィッ─

 

『あぁっと!せっかちだなぁ轟クンは~。どれもこれも凍らせてばっか!それしか出来ないの~?もしかして、バカの一つ覚え~?ハッハハハハ!』

『っ!黙れッ!』

『あっれれェ?まさか怒っちゃった~?ア~ハハハ!・・・だけど』

 

─バギギッ バキンッ!─

 

「何!?まさか、あの状態から再起動だと?有り得るのか、そんなマシンが・・・」

一時は沈黙したかに見えた巨大兵器、レディロングレッグとやらは、何と自分を覆う氷をいとも容易く粉砕してしまった。何て馬鹿げたパワーだ。

 

『なっ!?』

『ビックリしてるとこ悪いけど・・・頑張らないと、落ちちゃうよ~♪』

『クソがッ!』

 

カメラが上空に切り替わると、L.L.L.のボディから大量の垂直発射(バーティカル)ミサイルが打ち上げられているのが見えた。それは上空で反転し、途中で分裂して大量のマイクロミサイルとして降り注ぐ。

 

『チッ!面倒臭ぇわ!』

『クッ、厄介だな』

 

爆豪は頭上を爆破して防ぎ、轟君は氷でバリケードを建てて受け流し防御。弾頭の材質自体は非常に軽く脆いようで、音を起てて容易く拉げ、弾かれていく。

 

『中々上手く防ぐモンだ。けどさ・・・脚、止めちゃって大丈夫?』

『あ?』『何?』

 

そんな忠告を追うように、L.L.L.の脚部装甲が左右に開く。そして格納されていた目玉のような装置が露出し・・・

 

シュビィッ

 

青いメーザービームを撃ち出した。

轟君のバリケードを容易く砕き蒸発させ、2人の顔を青ざめさせる。

そうだった。あの主任(アホ)の辞書には《遠慮》や《自重》の項目は無いんだった。うむ、今日も今日とて良い天気!胃が痛いな!

『強敵!ならばこそ、討ち取るのみですわ!』

八百万さんがジャージの腹をたくし上げ、瞬時に大砲を生成。手早く照準を合わせ、躊躇い無く発射した。

その弾頭は見事L.L.L.の装甲に命中し、けたたましい音と共に炸裂。爆煙を撒き散らし、火の粉の雨が降る。

あれもしかしてテルミット弾か?エグいものを・・・

 

『へぇ~?やるじゃ無い。それなりにはサ。だけど・・・効かないんだな、コレが』

 

実況席の主任の言う通り、モニターに映し出されたL.L.L.は、多少装甲に焦げこそあれども、目立った損傷は確認出来ない。どれだけ頑丈なんだアレは・・・

 

『じゃあ、やり方を変えましょう』

【SHOTGUN RIZE!】

【Progrisekey confirmed. Ready to utilize】

【SPIDER's Ability!】

『まずは足を捕まえて!』

【トラッピング!カバン!ショット!】

 

拡張領域からアタッシュショットガンを取り出し、トラッピングスパイダーを装填するイージス。そして上空のホバーグライダーMark2に狙いを定め、ワイヤーネットの捕縛弾を撃ち出した。絡め取られたグライダーは高度を下げ、イージスの前方に着陸する。

 

『良い子ですね。っと、危ない!』

【HARD!インベイディング!ブラスト!FEVER!!】

ライズスターターを押し込み、今度はバックルからショットライザーを取り外さずにトリガーを引く。エネルギーは薬室では無く左腕のガントレットに充填され、紅い半透明のライオットシールド型バリアを作り出した。

斜めに構えたそれでメーザーを受け止めつつ、右手でグライダーを拘束するネットを解く。そして天面のシューズコネクタに足を乗せ、揚力を上げて空中に浮上した。

 

『ギャハハハ!やっぱり使ってくれると思ったよ被身子ちゃん♪』

 

『開発するとこ見てましたから』

そう。あのグライダーは前に吸収合併した新人達に13課を紹介した時、スノボ型のフォルムで開発されていたものだ。コンパクトさと多方向への均一な推進力を捨て、多大な積載量と絶大な推進力に特化させた戦力運搬用モデル、それがMark2。

つまり、人が上に乗り、下にもう1つ戦力をぶら下げて運ぶ。コレが本来の運用方法なのだ。

『じゃ、いっちょ行きますよっ!』

右太腿のホルダーから専用武器の大口径機関銃(トリデンタ)を取り外し、ジャグリングの要領で左手に投げ渡す。そして空いた右手でショットライザーを引き抜き、上空から迫るミサイルを次々と撃ち落とし始めた。

「上手い。きっちりとパルスフレア弾に切り換えている。アレなら失速した弾丸が降ってくる事も無い上に、直撃せずとも炸裂して発生したダメージエリアで誘爆させられる」

「何か凄いSFワードが聞こえたんだけど」

「実現したんですよSFを。正直大体のSFなんて、ZAIAに掛かればただの設計図ですし」

「君中々に凄まじい事言うね?」

八木さんがドン引きするが、実際アークは核に勝る動力炉(コア・ドライビア)を簡単に複製しちゃったからなぁ。何より、プログライズキーシステムによる飛行機能には空間そのものに負荷を掛ける事で推力や揚力を確保する空間干渉テクノロジーが内包されている。つまり、やろうと思えばアークのテクノロジーのみでもコア・ドライビアの起こす重加速を主作用と据えれば発生可能だったのだ。我が相棒ながら、何と言う理不尽か・・・流石は世界を破滅させた力だ。

 

【HARD!インベイディング!ブラスト!】

─ドゴゴゴォンッ!─

 

『よしっ!』

『ハハハハ!そうそう、そうだよ!そう来なくちゃあ!』

『ありがとう、グライダーちゃん!またね!』

 

L.L.L.のレーザーキャノンを撃ち抜いて脚1本を壊したイージスは、ショットライザーをバックルに装着しつつグライダーをパージ。見事な五点着地を披露し、そのまま走り出す。

当然ながら爆豪と轟君は追い掛けようとするが、それを狙って大量のバーティカルミサイルが降り注ぐ。

「・・・L.L.L.の思考ルーチンが確実に切り替わりましたね」

「何か、絶え間無くミサイル撃ちまくってるよね」

 

『あ、言い忘れてたけど、脚部を破壊されると自閉モードになってミサイル攻撃オンリーになるようにパターン組んどいたから』

 

「正気投げ捨ててやがるぞあのバカ!?何で止めないんですかキャロルさん!?」

 

『え、このプログラム提案してきたのキャロりんだけど?』

 

「嘘だと言ってくれェ!?」

「大丈夫かい緑谷先生!?」

あぁ、胃が・・・胃が痛みを訴えている。何でそんな酷い事が出来るんだ・・・

 

『因みに耐久テストのVTRが此方になりまーす♪』

 

主任がザイアスペックに送って来た動画を恐る恐る再生すると、グラインドブレードを装備したハングドマンとL.L.L.の脚部装甲材が映し出される。

そしてハングドマンはグラインドブレードを起動し、高速回転させながらエネルギーをチャージ。一気に突き出した。

無論装甲材に直撃するが・・・結果、表面が削れて少し凹んだだけ。

「マジか・・・」

 

『因みに3回直撃に耐えて、4回目で内部にダメージ入ったよ』

 

「もうやだこの主任・・・」

「み、緑谷先生、気を強く持って・・・」

「・・・ちょっと、寝てきます」

「あぁ、うん・・・気を付けて・・・」

流石にクラクラして来た。控え室が空いてるから、そこで少し休もう・・・

「ごめんアーク、10分でメンテお願い」

『了解した。寝ていろ』

若干痛む頭を擦り、溜息を吐いて席を立つ。既にアークが体内を操作しているのだろう。全身でナノマシンが活性化するのが感じ取れた。

全く、情け無い。ひーちゃんがあんなに僕と会社の為に頑張ってくれてるのに、それを見てやる事すら出来無いだなんて・・・

 

(NOサイド)

 

『さぁさぁコースも遂に大詰め!最終障害物はコレ!《鉄血汚染地帯》!大量の地雷と浮遊機雷(マイン)が散蒔かれてるから、頑張らないと痛い眼見るヨ!じゃあ、頑張ってネ~♪

因みにレディには既にお休み頂いておりま~す。流石に後続が可哀想だからネ』

 

最後の障害物コースは、滑走路のような一直線。しかし、地面にはそこかしこに掘り返したような跡があり、空中には浮遊機雷が漂っている。何の規則性も無く、避けながら進むのは至難の業だろう。

 

─Click・・・KABOoooooN!!─

 

「ほわぁ!?」

案の定、先頭を走っていたイージスも地雷を踏み抜き吹き飛ばされる。更に不運な事に、飛ばされた先には機雷があり・・・

 

─パゴンッ!─

 

「ぐえっ!?」

当然接触して起爆。踏んだり蹴ったりとはこの事である。

そして、イージスの不運はコレで終わらない。マスク内のディスプレイが突如としてけたたましくアラートを鳴らし始めたのだ。

【Warning.Warning.Happening to error in the FCS.】

「火器管制に異常!?これ、まさかデバフ機雷ですか!?」

表示された文章は、FCS、つまり火器管制機構(Fire Control System)に異常が発生した事を示すもの。その状態では正しく武器を扱えない為、自動的にセーフティが掛かるよう設計されている。更に、今渡我の使っているレイドライザーは訓練用の物であり、特定のシグナルを受信すると意図的にエラー反応を引き起こす仕様なのだ。

「くっ、私メタのトラップ!主任さんですね!」

 

『そ~だねぇ~♪流石にこのままじゃ、仮面ライダーが有利過ぎるからサ。キッチリそっちにも効く平等なトラップを仕掛けてマース♪』

 

「ふふっ、そう来なくっちゃ!」

トリデンタをホルダーに取り付け、再び駆け出し───

 

─Click KABOoooooN!!─

 

「おわぁ!?」

3歩目で再び地雷を踏み抜いた。

「嘘でしょう!?何で・・・あ、スキャンレーダーって火器管制の管轄だった!」

ライダーシステムの高性能スキャンレーダーを充てにして走ろうとした渡我だったが、そのレーダーがそもそも機能不全を起こしているFCSに包括されている機能だ。当然、不発である。

「待てやコラァ!!」

「あー!キレてる人が来たキタキタキタ!」

足止めを喰らっている間に、爆豪と轟の2名が追い着いて来た。特に爆豪は人とは思えぬ凄まじい形相である。

「地雷に爆弾、面倒臭ぇな」

「俺にゃ関係ねぇ!!」

僅かに顔を顰める轟に対し、爆豪はえげつない顔のまま口角を吊り上げ、爆裂加速で地雷原を飛び越えようとする。しかし、それを見越さぬ程主任は甘く無かった。

 

─BshorE!─

 

「うごぇっ!?」

横合いから降り注ぐ、粉砕式非殺傷ボールバレットの雨。上半身に満遍無く衝撃を喰らい、爆豪は凄まじいストッピングパワーを体感する。

炸裂したのは、動体感知式の指向性散弾地雷(クレイモア・マイン)*1。木に括り付けられたそれが、2mの高さに觝触した物体目掛けて凄まじい密度の弾幕を射出したのだ。

「ぐはっ!?」「どわっ!?」

結果、バランスを崩した爆豪は轟と玉突き事故を起こす。轟が防ごうと反射的に伸ばした腕に、バランスを立て直そうと突き出した爆豪の手が引っ掛かり、もみくちゃになって盛大に転倒。そして倒れた先には、狙い澄ましたように地雷があり・・・

 

─Click KABOoooooN!!─

 

「ア゙ァァァァ!?」「うおぁ!?」

一周回って美しい程に吹き飛ぶ2人目。それを待ち構えるのは、やはり機雷である。

 

─ボシュゥッ!─

 

「ぐっ・・・!?ぐへぇっ!?がはぁっ!?」

「うがっ!?あぁぁ!?」

機雷が炸裂すると、真っ白な煙が吹き出した。その煙に飲まれ、爆豪と轟は激しく咳き込む。

数秒後、煙の内側から爆風が吹き荒れ、煙を吹き飛ばす。中から出て来た2人は、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしていた。

 

『ギャハハハ!選りに選って生身で催涙機雷にぶち当たっちゃったかァ!いい顔になったねぇ?お加減いかが?』

 

「殺ずぞグゾがァ!がへっがはっ!」「ゴホッゴフッガハッ!」

催涙剤のせいで咳き込みながら、2人はそれでも走る。

そんな中、轟は右手で地面を撫でつけ、前方の地面を凍結させた。

「は、半分野郎ォ゙!」

「ゴホッ、ゴホッ・・・仕方ねぇ゙!」

なりふり構っていられなくなったのだろう。地雷を氷で埋めて道を作り、無理矢理にでもペースを上げるつもりだ。

「おわっ!?」

その氷に脚を取られ、トップランナーのイージスは頭から転倒する。幸い、猫のように身軽な彼女は見事な受け身で体勢を立て直したが、今度は足が滑って今度は足が滑って踏ん張りが効かず生まれたての子鹿のような有様になってしまった。

「あーもう!アイゼン!」

こうなっては流石に不利である。管制の不具合で機能しない足裏のスパイクを、アークの因子でハッキングする事で強引に起動させた。

FCSもやろうと思えばこれでコントロール出来たが、負担が地味に大きいのと、流石にワンサイドゲームになる程にはオーバースペック過ぎる事から少しだけ自重していたのだ。

しかし、それで負けるとなれば話は別。渡我にとって勝利は大前提であり、その上でパフォーマンスをして魅せる必要があるのだから。

人工筋肉マッスルコート!出力70%!」

半分まで絞っていたイージスのパワースペックを上昇させ、氷を踏み締めて駆け出す。

強力なグリップ力に素の身体能力も相まって、走るスピードは中々速い。時々地雷を氷ごと踏み抜いてバランスを崩しこそするものの、吹き飛ばされる事無く前へと飛び込む。強化手術を施された改造人間のスペックは伊達では無い。

「おっ、スキャン復活!」

そして、このタイミングでジャマーの効果も切れた。スキャニングレーダーが復活し、足元の地雷の位置と浮遊機雷のデバフ効果をそれぞれ解析、ヘルメット内に表示する。

「成る程、じゃあこれで!」

【HARD!】

ライズスターターを押し込んで、必殺技の待機状態に移行。右腿のトリデンタを取り外して左手にパスし、そしてショットライザーを引き抜いた。

視線でターゲットポインターをセットし、トリガーを引く。

【インベイディング!ブラスト!】

照準補助を利用して、大量に弾丸を散蒔く。それは悉く進行方向の地雷を撃ち抜き、更に機雷も撃ち落として炸裂させた。

どぎつい黄色やショッキングピンクの煙が吹き出すが、イージスはその中に躊躇無く飛び込む。起爆させたのは生身の人間に対して効力を発揮する薬剤爆弾であり、それらはライダーシステムが防護してくれるからだ。

「クソが!小賢しいマネしてんじゃねぇぞコラァ!」

催涙ガスから何とか復帰した爆豪は、得意の爆裂加速で距離を詰めようとする。目の前に漂う有害な煙も、掌の爆破で散らして突破した。

それを怨みがましく睨み付けながら、その後ろを轟も通過する。

そして、ゴールのトンネルを駆け抜け、最初に光を浴びたのは────

 

『第1位、渡我被身子選手。唯今ゴールしました。第2位に爆豪選手、第3位に轟選手が、順々に到着しています』

 

言わずもがな、渡我被身子仮面ライダーイージスだった。

 

『あらら~、バランス調整ミスっちゃったカナ?やっぱライダーシステムって強力だよねぇ、戦闘能力なら無個性並の被身子ちゃんでも、使い慣らせばこの結果なんだからサ~。

マ、しょーがないよね!ライダーを足止めするなら、それ以外を殺す気で仕掛けなきゃいけないし。仕掛けを突破したのも、個性と実力だしね。さぁ、拍手拍手~!』

 

主任のおちゃらけた声と共に、実況席から拍手が飛んだ。

爆豪は血涙を流しそうな勢いで顔を怨嗟塗れにし、轟は視線を下に向けて歯を噛み締める。

「社長~!勝ちました~!って、あれ?」

そんな中、渡我は変身を解除して、出久の居た方に大きく手を振る。しかし、そこに出久の姿は無かった。

 

「ウへへへ、オイラ天才!」

「サイッテーですわ!」

「女の敵!滅ぶべし!イヤーッ!」

「グワー!?」

八百万にへばり付いていた峰田は、ゴール直後に渡我から投げっぱなしジャーマンを喰らった事を追記しておく。ネット掲示板は大層盛り上がったそうな。

 

to be continued・・・

*1
商品名:訓練用非殺傷赤外線式指向性散弾地雷ONIWASOTO(主任命名)




~キャラクター紹介~

・緑谷出久
苦労人系1000%社長。主任の被害者。
主任から急遽差し込まれたアドリブにも見事に対応してファンをキャッチしたが、その後怒濤の想定外に胃を殴り倒されダウンした。
そんな彼を労るスレも立っているし、逆に『可哀想は可愛い』と愛でるスレもある。

・渡我被身子
中々にぶっ飛ばした吸血系ヒロイン。
L.L.L.にビビらず、逆に脚1本持って行くという大金星。しかし地雷は踏ん付けちゃう。
ネットでの反応は、『健気で可愛いよね』派、『洗脳されてるんじゃね?』派、『リア充爆発しろ!』派の3つに分かれ、渾沌を極めている。

・シュニン・ハングマン
盛大にやらかしを重ねる問題児主任。出久の胃痛の種。
原作でイレイザーが座っていた実況席に陣取り、まずは初手のヘイトコントロールで全体の士気を盛り上げる有能ムーヴをした。
競技が始まってからは、先頭3人を煽ってゲームを面白くしている*1
社長である出久に何1つ報告せずにL.L.L.を投入したバカ。

・爆豪勝己
主任の被害者。
催涙ガスを諸に喰らい、顔が凄まじい事になってしまった。当然ブチ切れている。

・轟焦凍
主任の被害者。
此方も催涙ガスで顔がぐちゃぐちゃに。静かにキレかけている。

~アイテム・用語紹介~

・仮面ライダーイージス
【挿絵表示】

カブトガニのショットライザー系ライダー。
必殺技はバリアを発生させるインベイディングブラスト・フィーバーと、高威力のエネルギー弾を撃ち出すインベイディングブラスト。

・ヘルカイト/HELLKITE
V系アーマード・コアに登場する無人兵器。作中では高機動型と呼ばれる。
ルンバにブースター脚と武器腕を付けたような見た目。今回のは青色で、武器腕の代わりにカメラを搭載した中継タイプ。

・ホバーグライダーMark2
ZAIAが開発した飛行ユニット。
かなり大きく、翼長は最大3.5m程。形はスパイダーマンのグリーンゴブリンが乗っていたグライダーに近い。
元々はレイダーやライダーが個人で乗る為に、フレキシブルな移動性能を追求してスノボ型にされていたが、ACやロボットを懸架して運搬・投下する為に大型化。積載量と頑丈さが4倍に増加した。
勿論上に乗る事も出来るが、バランスを取るのがかなり難しく、乗り熟すにはコツがいる。

・ゴーレム/GOLEM
ヘルカイトと同じく、V系に登場する無人兵器。
手っ取り早く言えば、ショルダーキャノンを取っ払ったガンタンク。更に盾を持ってたりする。
今回のは非殺傷仕様であり、訓練用の仮想敵として販売もしている。

・シュペーア/SPEER
V系無人兵器。
戦車の砲塔に鳥足をくっつけたようなヤツ。マスコット味がある。
近付いたらひょこひょこ逃げて行く。ゲームだとガトリングをバリバリ撃って来て鬱陶しい。

・レディロングレッグ/L.L.L.
ACVに置ける『あんなモノ』枠。
本来なら確実に120mはあるサイズだったが、この世界では60mにサイズダウンしている。
しかし厄介さは本物であり、バーティカルミサイルで足止めしつつレーザーキャノンをブチ込んでくる。
外装はグラインドブレードの直撃に3回耐える程の規格外の頑丈さを持ち、停止させるにはレーザーキャノンの本体である目玉のような砲身を狙うしか無い。
だが、今回のはあろう事か脚1本破壊されたらそれ以降ミサイル攻撃しかしなくなると言う清々しい程のクソボスムーヴをカマす思考ルーティンが組み込まれていた。選手は泣いて良い。
しかもそのプログラムを提案したのが、寄りにも寄って主任のストッパーである筈のキャロりんである。出久も泣いて良い。

・ZAIA社からの派遣部隊
雄英に雇傭された警備用部隊。
仮面ライダーイージス、バトルレイダー、ACのそれぞれ1個分隊ずつ配置している。
実は彼等、名目上はアークゼロ対策で雇傭されている。そしてアークゼロの正体は出久。後は分かるね?

*1
尚、煽りは後ろ2人にしか効いてない

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