マリス・フライングバットレス   作:エターナルドーパント

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飛び込むユウキ

「いやぁ眼福だった~」

ライズフォンをポケットにしまい、ホクホク顔で客席に向かう出久。因みに、その中には渡我のチアリーディング動画が入っている。

「ん?何か熱いな」

『曲がり角の向こうに高熱反応。エンデヴァーだな。オールマイトのナノマシン反応もある。集音するか?』

「お願い」

ザイアスペックを通して周囲をスキャンしたアークが出久に報告する。出久はアークに集音モードの起動を指示し、聞き耳を立てた。

 

『あれは、貴様を超えさせる為に生ませた子だ』

『君は・・・!』

『今は下らん反抗期だが、必ずトップに君臨させる』

 

「あれ、ってのは轟君か・・・ドロッドロだな」

『見事に毒親だ』

【MALICE LEARNING ABILITY】

「ホントだよ」

吐き捨てるように呟く出久。集音モードを終了し、何食わぬ顔で曲がり角を曲がった。その先には、当然ながら筋骨隆々の巨漢オールマイト火炎を纏った巨漢エンデヴァーが居る。

「おや、オールマイトにエンデヴァー。奇遇ですね」

「み、緑谷先生・・・」

「ほう、貴様の方から来てくれたか。丁度良い」

高い背丈で見下ろすエンデヴァーに、出久は口元を扇子で隠し微笑む。両者共に眼は冷たく、相手への情動が限り無く薄い。

「貴様の懇意にする、渡我被身子、だったか。中々に良い闘い振りだ。焦凍のテストベッドには丁度良い。踏み台にさせて貰うぞ」

「無礼な方だ。まぁ、どう言おうが勝手ですが・・・彼女に勝てると言う前提を、一部の疑いも無く話しているのが・・・気に食わない」

形だけ笑っていた眼を鋭く尖らせ、パチンと扇子を畳む出久。

「ほう?貴様の女が勝つ、と?」

「少なくともウチのエース兼テストパイロットは、自分の性質と折り合いを付けている。自己嫌悪に呑まれた子供とは、挙動のキレが違う。

何より・・・反抗期だの何だのと言ってましたが、ようは貴方が彼と向き合い切れていないだけなのでは?彼に道具としてでは無く、1人の人間として、自分の息子として接した事はどれだけあります?」

「フン、一大企業の社長様ともなれば、他人の家庭事情にも首を突っ込むのか。大したモノだな」

「生憎ですが・・・私は社長であると同時に、雄英高校特別講師。生徒の状態を掌握する権利と、義務がある」

バチバチと火花を散らすように睨み合う2人。そんな中で、オールマイトは居心地悪そうに冷や汗を零した。

「何より・・・彼の頑なさを見る限り、貴方が何を言っても無駄でしょう。その場合は、家庭環境にも介入せざるを得ません」

「知った風な口を利いてくれる。貴様が出しゃばって、それが何になると?」

「今の所は何とも。ですが・・・私の優秀な部下ならば、或いは・・・」

「成る程。では、精々楽しませて貰うとしよう」

踵を返して去って行くエンデヴァー。再び扇子で口元を隠しながらその背中を見送り、出久はフッと息を吐いた。

「た、胆力ゥ・・・」

「専属の()()()を抱えてるような輩とも話しましたからねぇ。此方を殺す気が無いと分かっていれば、これしきは」

「うん、君エンデヴァーを比較しちゃいけないモノと比較してるね」

出久が引き合いに出した比較対象に、明らかに顔を引き攣らせてドン引きするオールマイト。

しかし、出久は涼しい顔。ZAIAの急激な成長には、治安の宜しくない業界への営業もやむを得なかったのだ。アークと言う最強のバックアップのお陰で、死ぬ事は絶対に無いと確信していた事もあるが、それを抜きにしても出久は肝が太い。

「オールマイトも分かるでしょう。力とは、経験ですよ」

「それはそうだけど・・・」

「では、観客席に戻りましょうか。次の競技が始まります」

「う、う~ん・・・」

スッキリしないモヤモヤとしたモノを抱えたまま、オールマイトはトゥルーフォームに戻る。そして不敵に笑う出久に続き、自分の席へと戻った。

 

(渡我サイド)

 

「俺、棄権しようと思う」

「寝惚けてるなら顔洗って来たら良いと思いますよ」

訳の分からない事を言う尾白君に、私は反射的に返す。この一大イベントで棄権するなんて・・・

「えっと、失礼しました。尾白君は、本来は目立つのが嫌いで、この体育祭も嫌々参加してて、って感じですか?」

「いや、そんな事は無いよ。名誉な事だし、そう言うのが苦手な訳でも無い。ただ・・・俺はさっきの騎馬戦、何もしてなかったんだ。他人の個性で、操られてただけで・・・」

「・・・?それが、何か?」

「おかしいかも知れない。参加するべきだってのも分かってる。でも、これは俺の、プライドの問題なんだ・・・

あと何で君らその格好なんだ・・・?」

「あーこれは変態グレープの仕業です。お気になさらず」

チアリーディング衣装を少し撫で、ポンポンで口元を隠す。

出久くんもめっちゃ写真撮ってましたし、そこだけはあの変態グレープに感謝ですね。

それにしても・・・

「・・・羨ましい」

ボソリと口から溢れた呟きは、歓喜に叫ぶミッドナイトの声に潰え消えただろうか。

どうだって良い。私に出来ない生き方に、あれこれ首を突っ込むだけ野暮だから。

でも、そんな風に理想を追い掛ける、手段を選びたがる、形振り構いたがるそんな生き方が・・・ほんのちょっぴり、眩しく見えてしまった。

同時に、チャンスを手放すなんてバカだと嘲笑する私も居る。そんな氷みたいに冷たい私を、少し恐く感じた。

「なぁ、ちょっと良いか」

そんな憂鬱な気分の私に、彼、轟君が話し掛けて来た。何とも親近感を憶える、濁りかけの瞳で。

 

───

──

 

『じゃあ!選手入場ネ!

北方!B組から来た茨のシスター!彼女の勝機は花開くか!塩崎茨ッ!

VS.バーサス南方!蝗害纏う企業戦士!若き全てを会社の為に!ライダーシステムのエースパイロット!渡我被身子ォ!』

 

主任さんのエントリーガイダンスに従い、ステージに上がった。お相手は、さっきの騎馬戦でツタのような髪の毛を伸ばして来た人だ。

口の中に入れていた血液錠剤を噛み潰し、拡張領域バス・スロットに接続。フォースライザーとホッパーキーを出現させる。

「貴女の強さ、嫌と言う程に見せて頂きました。出し惜しみは無しで行きます」

「そうですか」【FORCE!RISER!】【JUMP!】

闘志を燃やす塩崎さん。でも、多分それは無理だろう。

ライズスターターを押し込んで起動したキーを、ライザーに装填。おどろおどろしいアラートと共に黒いバッタの群れが旋回し、私を覆い尽くす。

「変身」

【FORCE RIZE!】

【ライジングホッパー!

A jump to the sky turns to a rider kick.】

【BREAK!DOWN!】

黒い群れが鎧となり、アンダースーツから伸びた拘束帯にキャッチされて身体に張り付く。

やっぱり、これが一番良い。他のより、しっくり来る。

 

『Ready!Fight!!』

 

「先手必勝!」

塩崎さんは髪をうねらせ、散弾のように突いて来る。

でも、遅い。001を捕まえるには、速度も面積も足りていない。左前にステップして射線を躱し、更に伸びたツタに右ステップで取り付いた。数本纏めて脇で挟み込み、横宙返りサイドフリップで絡め捕る事で一気に引き寄せる。

「きゃっ!?」

そして、着地した左脚をそのまま軸足に、右脚で後ろ回し蹴り。踵が彼女の顔面に直撃する寸前で、ビタリと止めた。

「ぐっ・・・」

「まだ、やりますか?」

「参り、ました・・・」

 

『決着ゥ!戦闘時間まさかの3秒!初っ端からカマしてくれるねぇ001!』

 

脚を下ろして、身体に巻き付いているツタをブチブチと引き千切る。そして変身を解除し、悔しそうに歯を噛み締める塩崎さんに向き直った。

「確かに出し惜しみはしてませんでしたが、出力の方向性を間違えましたね。足が遅い敵には今ので良いですが、瞬発力の高い敵には今みたく避けられます。どちらかと言えば、人体が潜り込めない程度の密度で面制圧するべきでした」

「助言頂き、ありがとうございます。念頭に置いて、鍛錬を積み直します」

「素直なのも美徳ですね。練習には付き合うので、人手が欲しければ声を掛けて下さい」

「はい。その時は、ご指導お願いいたします」

ぐいっと彼女を引っ張り起こし、ジャージの埃を払ってあげる。そのまま入場口に向かい、私は観客席に戻った。

 

(NOサイド)

 

『あーらら、ウェイ君呆気なく退場~!心繰君、中々やるじゃない?』

『戦闘に人質奪還、場合によっては錯乱者の沈静・・・有用な個性です。戦略の勝利ですね』

 

第2試合、上鳴対心繰。その結果は、心繰の煽りにアッサリと答えてしまった上鳴の場外負けだった。

上鳴は心繰の個性、《洗脳》を喰らった尾白からの警告は聴いていた。しかしながら、このトーナメントを辞退した尾白を挑発の出汁に使われた事で反応してしまったのだ。

 

『悪く無いんじゃない?バカ正直に正面切って闘うより、卑怯な手を使った方が被害も少なく迅速に敵を始末出来るしね。闘いに於いては、卑怯こそが正義だよ』

『主任、その程度も理解出来ない無能が、この雄英体育祭の観客席に居るとは思えませんが・・・』

『イヤイヤ、この場ではそうでも一般の有象無象がどう言うか分かんないよ?アイツらの中には、理想論振り回して安全圏から文句言う事しかしないゴミムシが一定数いるからね。有用な()()()()()()がそんなアホのせいで心折られるなんて、馬鹿馬鹿しいし勿体ないじゃん』

『成る程、確かにいますね。そんな卑小で、愚かな存在が』

 

実況席の主任とキャロルは、勝者である心繰の戦略に最大限のフォローを入れ、ヘイトコントロールを行う。これをするとしないとでは、世間の印象は雲泥の差なのだ。

「お前スゲぇじゃん!」「よっ、普通科の希望!」

「・・・へっ」

普通科生徒からの歓声に一息吐いて、ニヤける口元を隠す心繰。彼にもまた、大きな可能性が芽吹いた。

「チクショ-!ごめん尾白!忠告無駄にしたァ!」

「まぁまぁ上鳴君、そうお気になさらず。私に叩き潰されて、ボコボコになるよりは良いじゃないですか」

「おーいおい、比較対象がおかしいぜ~トガヒー・・・」

がっくりと肩を落とす上鳴に、渡我の揶揄いが飛ぶ。尤も、本人は至って真面目に安心させようとしているつもりなのだが。

「次は飯田君ですね。どうなるんでしょうか」

「まぁ、結構良い戦いするんじゃね?強えじゃん委員長」

「だと良いですけど」

感情の薄い眼でそう零し、渡我はペットボトルのキャップを捻った。

 

───

──

 

「ハッハッハッハッ!あのマジメ君、してやられたなぁ!」

日陰者の第13課ロビー。テレビの生中継を見ながら、ギムレットが笑う。

映し出されているのは、サポート科生の発目に広告塔として良いように利用され、最終的に彼女が自分から場外に出た事で勝利となった飯田の絶叫だった。

「お人好し過ぎるな。まだまだ子供だ」

腕を組んで肩を竦め、ニヒルに笑いながら評価するデリンジャー。若干の呆れこそあるものの、言う程嫌いでは無さそうだ。

「俺は好きだぜ、ああ言う真っ直ぐなヤツは」

「君も突撃バカですからね」

「おうコラ何だとスカイテメェ?」

「事実じゃ無いですか脳筋クン?」

「ハッハッハッハッ!」

じゃれ合うダウンギャンブルとスカイハイを見て、愉快そうに笑うストライカー。

「にしても、毎年この日にはほぼほぼ依頼が無くなりますよね」

「お、そう言やそうだな。デカい事件が起こる事も少ねぇし・・・何でだ?」

「んなモン決まってる」

2人の疑問に、ガボリとコーラを呷り、ガフッとゲップを吐き出しながらストライカーが答えた。

「《情報収集》だよ。最高峰のヒーロー候補生共の個性、技術、気質、戦略・・・どう考えても値千金、いや、()()()とも言える重要情報だ。最低限頭の回る屑なら、こんな貴重で上質なデータはほっとく筈がねぇ。

そして同時に、細々としたしょうもねぇ犯罪は多少増えやがる。恐らく、イベント時のヒーロー、ポリ公共の即応力を確認する為に、無能な屑共をあぶく銭で煽ってやがるんだろうな」

「ヒュ♪流石はリーダー、その辺鋭いネ・・・フゥ、よっと」

紫煙混じりの口笛を吹き、咥えタバコの灰を落とすギムレット。そして最後に1口吸い、親指から弾きあげて拳から飛び出した錐で貫こうとする。しかし刺さるには角度かタイミングが甘かったようで、未だに燻っていたタバコが弾き飛ばされた。斜め向かいに座っていたガーゴイルの、寄りにも寄って襟の中に。

「アッチャァ!!?」「あ、悪ぃガーゴイル」

黒い隊服を一瞬で脱ぎ捨て、裏返った奇声を上げて首筋をはたくガーゴイル。空気のような無表情から一転、眼と歯茎をひん剥いた形相である。コードネームの通り、まるで鬼瓦ガーゴイルのようだった。

 

───

──

 

「でやぁぁぁぁぁ!!」

「遅ぇ!」

 

─BBom!!─

 

「あぐっ・・・!」

第1試合、最終戦。爆豪対麗日。

低姿勢のタックルで突撃する麗日を、掬い上げるアッパーのような爆破で爆豪が迎撃する。この攻防は既に7回目に達しており、麗日の息は上がっている。

 

「いい加減にしろー!」「女の子いたぶって遊んでんじゃねぇぞ!」「とっとと場外にでも投げ飛ばして決着にしろよ!」

 

一見すると煮え切らないような爆豪の応戦に、観客席から野次が飛んだ。爆豪は勿論、麗日も、クラス席の同級生らや出久も腹立たしげに顔を顰める。

そしてそれは、この場で最も気紛れな自由人も同じだった。

 

『黙れよ』

 

殺意にも似た圧を纏って、主任の声がスピーカーから響く。普段の巫山戯た声では無く、珍しい本気の声だ。

 

『コイツらはお互いに、自分を叩き潰し得る可能性を見出している。腹に何かを隠していると確信している。だから下手な手は打たないだけだ。麗日も、微塵も諦めちゃいない。それを貴様らの腐れた脳味噌で勝手に決め付けるんじゃ無い。この程度も見極められないのなら、とっとと此処から消えちまえよ、ゴミムシ以下の屑共が』

『このスタジアムの出口は、常時開放されております。どうぞ其方から、無能な不要物はお引き取り下さい。どうせその程度の卑小で粗末な判断能力では、この戦いを見ようと、何1つ建設的な事は無いでしょう。お疲れ様です』

 

主任に引き続き、毒舌家のキャロルも腹の底から湧き出す軽蔑を隠す事無くブチまける。

コント染みた遣り取りのせいで他人からは忘れられがちだが、2人の本職は傭兵。現実を見ない無能な輩は、足を引っ張る害悪でしか無い。

 

『と言う訳で、このゴミクズ共は気にしちゃダメよ。じゃあ、頑張ってネー!』

 

「・・・ケッ、余計な事しやがって」

「フフッ・・・でも嬉しいな」

「おうコラ余裕かテメェ、ボロカスの癖してニヤつきやがって・・・何企んでやがる」

鋭く薄めた眼を更に吊り上げ、細い息と共に疑惑を吐き出す爆豪。

明らかに火力、体力、筋力、反射神経の全てで負けている麗日が、それでも尚一切折れる事無く繰り返して来る突撃。その意図を図りかね、爆豪は冷静ながら苛立っていた。

「ぐっ・・・フッ・・・バクゴーくん、ありがとね。油断しないでくれて・・・!」

「あ?・・・ッ!」

一瞬苦々しい顔をし、ニヤリと笑う麗日。それを見て一瞬訝しみ、次いで大きく眼を見開く。弾かれるように上空を見上げると、上空に漂う無数の石礫が視界に飛び込んだ。

「テメッ、狙いはッ!」

「解除ッ!」

麗日は両手の指の腹を合わせ、能力を解除。途端に上昇を続けていた瓦礫は重力との契約を思い出し、雨霰と落下し始める。

「・・・!」

 

─KaBBBBBBBBBBom!!!!─

 

しかし、爆豪は一枚の奥の手を切った。左手を振り上げ、最大威力の爆燃剤を分泌して着火。数十mにも届くであろう爆炎を発生させたのだ。

礫の雨は悉くが撃ち飛ばされ、1つとしてステージの中に降ってくる物は無い。

観客席のほぼ全てが驚愕に包まれ、同時に諦観が湧き上がる。麗日の最後の一手が、為す術無く叩き潰された。最早立ち向かう事など出来まい、と。

「ぎぃっ!」

しかし、麗日は身を屈めて眼と耳を塞ぎ、口を開けて爆発の衝撃波を凌いでいた。そしてつんのめるように走り出し、再度爆豪を狙う。

麗日は諦めない。何故なら、これすらも想定の範囲内だから。彼女は爆豪の最大火力を知っている。敵のデータがあるならば、その中の最大火力を奥の手として警戒せよ。授業で習った事を実践したのだ。

「うおぉぉぉぉぉッ!!」

左肘で顔をカバーしながら、全てを出し切るつもりで突貫する麗日。爆豪は痺れている左腕を庇って右手を向けた。その掌が爆発する瞬間、タイミングを見切って左手を振り抜く。

真横から叩き逸らした手首を更に掴み、自分の跳躍と同時に一気に引き寄せた。

「ぜりゃあッ!!」

 

─ドゴンッ!─

 

「ごへぁっ!?」

突き上げられた麗日の右膝が、爆豪の腹に刺さる。

横隔膜を叩き上げられる激痛に眼を白黒させる爆豪だったが、次の瞬間にはガチンと歯を噛み締めて意識を無理矢理引き戻した。

「ぐぅっ、どっせぇア゙ァッ!!」

湧き上がる激痛と吐き気を腹筋で抑え込み、カウンターで手を取り返す。そのまま後ろに引き倒し、左手を麗日顔面に押し付けた。

次の一手で、確実に殺せるポジション。明確な王手だ。

 

『そこまで!勝者、爆豪勝己!まぁこんなモンかな。ガキンチョにしちゃ良くやったよ。あの最後のブーストチャージも、発想は悪くなかったさ』

『皆様。爆豪選手の勝利と、麗日選手の執念に、盛大な拍手を』

 

「・・・立て」

「・・・」

「立てッつってんだ」

麗日の顔から手を退けて立ち上がった爆豪が、彼女に呼び掛ける。当の本人は口を結び、涙に潤んだ眼を横に逸らしていた。

「彼処まで喰い付いといて、何寝てんだ。お前の性根はそんなもんじゃねェだろ」

尚も、麗日は答えない。しかし、僅かに肋骨が痙攣するように震えていた。

「・・・ケッ、泣くのは後にしろや。腑抜けてんじゃねぇぞ、()()!」

彼女の手を取り、名を呼んで引っ張り起こす。そして立ち上がった麗日は・・・

「う、ウッ・・・───

 

うぼぇっ!」

 

吐いた。

「ア゙ァァァァァァ!!!?」

消化しかけだった胃の内容物を腹にブチまけられ、一瞬で眼を吊り上げて吼える爆豪。すぐさま左手を爆破し、その炎でシャツの右の首元から裾までを迅速に、尚且つ器用に焼き切って脱ぎ捨てる。

「うっぷ・・・ご、ゴメンばくごーくん・・・」

「丸顔テメェ選りに選って真正面からぶっ掛けやがってクソが!」

「ご、ごめんって・・・ゔっ」

「ア゙ァーッ!せめて屈めや!カメラの眼ェ考えろ!折角の俺の勝利をゲロまみれにしやがって!」

 

『イヤイヤ~、口ではキツい事言ってるけどサ、シャツだった布で吐いてる所をカメラから隠してあげてる時点で、ねぇ?よっ、青春真っ盛り!』

 

「テメェは黙れクソパンダ!おいコラクソ救護ロボ共!はよ薬持って来いや!」

 

『ギャハハハハハッ!ハーッハハハハハハハハハハァ!』

愉快そうな主任の笑い声と共に、麗日は担架で運ばれて行った。爆豪は歯軋りと共にぶつくさと文句を垂れつつ、ステージから退場する。

心底不愉快そうな彼にはしかし、小さくは無い心境の変化があった。

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

・緑谷出久
全力で先生を完遂する1000%社長。
エンデヴァーに対して一切怯まず、真正面から啖呵を切った。その胆力に対してツッコミへの回答は、治安の悪い所でも真正面から交渉してきた経験。比較対象が明らかにおかしい。
地味に渡我を「貴様の女」扱いされて否定しなかった。

・A.I.M.S.メンバー
主任直属、愉快な傭兵団。
今日は非番なので、皆で体育祭を観戦中。楽しく傍観しているものの、この時期の危うさに気付いている。
ガーゴイルは胸に水ぶくれが出来た。

・渡我被身子
ちょっぴり曇り気味の吸血ヒロイン。クラス内の渾名はトガ、トガヒー。
成果よりもプライドを重視して意地を張れる尾白に対して、少し複雑な心境。自分の価値を示す事に固執し過ぎて、他を少々蔑ろにしていると言う自覚がある。
戦闘で披露した技は、シビルウォーでキャプテンアメリカがスパイダーマンの糸を絡め捕って蹴り付けたアレ。

・アーク
ほぼ空気な一般転生悪意。
殆ど台詞も無く、最早最近存在が忘れられてそうなレベル。

・シュニン・ハングマン
実況席で活躍した主任。
選手達の戦法を分析し、フォローとヘイトコントロールを担当。更に麗日の奮闘に可能性を見出し、それを侮辱した観客に珍しくキレた。

・キャロル・ドーリー
毒舌解説席オペレーター。
主任の補佐を担当し、分析をより鮮明にする。今回のドMホイホイな侮蔑台詞のせいで、ネット掲示板にファンクラブスレが乱立。ブタ共がブヒブヒと興奮を垂れ流している。

・爆豪勝己
ちょっと価値観変わり掛けてるファッキンボンバー。
また腹に一撃食らった。そして更にゲロも喰らった。踏んだり蹴ったり。
麗日の事をちょっぴり認めてツンデレ発動仕掛けたが、ゲロ引っ掛けられてブチ切れ。惜しい。

・麗日お茶子
原作よりちょっぴり強いゲロイン。
ちょくちょくACで訓練を行っていたので、三半規管が鍛えられて容量がほんの少し増えた。
主任も言っていた通り、生身ブーストチャージを習得。爆豪に一杯喰わせた。
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