(出久サイド)
「ねぇねぇセンセ!渡我とはどんな関係なの!?」
「社長ってやっぱ儲かるッスか!」
「彼女とかいますかー?」
「ボクのキラメキ、ヤバくなかった?☆」
「今何歳なんすかー?」
「待って、待って下さい。処理は出来るけど出力は一遍に出来ないから。1つずつ答えさせて」
放課後。僕は1-Aのメンバーに、ものの見事に揉みくちゃにされていた。うん、皆さん好奇心旺盛で結構結構。
「では回答。
えーっと、被身子さんとの関係は・・・複雑だなぁ。偶々散歩してる時に目に留まって、声を掛けたのが始まりですね。其所からお友達って感じ、かな。
次。年収は世界中の銀行に分散してるけど、合計すると年収は大体3億ぐらいですね。まぁ常人だと文字通り死ぬ程大変ですが。
お次ね。彼女はいないよーフリーだよー。
ハイ次。あの光線は反動があるって事は多分荷粒子砲の類いかなーと思いましたね。
ラスト。今は君達と同い年、まだ15歳。今年で16になります」
「えー!?」「ナンパ!?」「若いってもんじゃねぇぞ!?」
「すげぇって・・・」「大金持ちやないかい・・・」
うーむ、やっぱり情報が派手過ぎていけないね。
「緑谷先生!俺の兄さんは、確かザイア製品を事務所に導入していると言っていました!お世話になっています!」
「おぉ、飯田君。ん~、っと・・・あぁ、インゲニウム!確かに彼の事務所にも売り込んであります。彼らの使用データは貴重なサンプルになっているので、こっちも助かってますよ」
どうやら生徒の中にも、利用者の家族が居たらしい。嬉しい偶然だね。
「そう言えば、緑谷社長は既にヒーロー免許を取得しておられるのですか?」
「ん、えぇまぁ。まだ仮免許ですが」
百さんの質問に、僕は是と答える。流石に仮免許までしか取れなかったが、戦闘の際に自己判断を行う分には問題無い。
「へぇ~。やっぱそんだけのし上がれたって事は、何かスゲー個性も持ってるんすか?」
「ん?いや、上鳴君。僕は無個性ですよ。出来る限り鍛えてますけど」
無個性。このワードが出ると、決まって皆ざわめく。男女問わず、目を丸くしているようだ。
「それを補う為に、社長は様々なアイテムを開発してるんです」
「へぇ~・・・あ、さっきの槍もそうなんですか?」
「そうですよ。確か君は・・・麗日さんか」
頷きつつ質問を切り返してきた女子に、少しして返事を返す。
ザイアスペックに生徒名簿をインストールしたのは正解だったな。
「と言っても、量産型の供給商品とは違って、コレは特別な非売品。私だけの・・・」
【THOUSAND JACKER!】
「専用武器、ですがね」
スーツの中から取り出したサウザンドジャッカーを、手首のスナップでガシャッと伸ばす。一部の男子は、この伸縮ギミックに眼を輝かせていた。
うん、分かるよ。格好いいよね、こう言う伸縮ギミックとか変形ギミック。
「その武器って、どんな機能が付いてるんですか?
「そうですね。簡単に言えば、個性データをコピー出来る武器です。例えば、さっきの爆豪君・・・は、駄目だな。被害が大きいし。
誰か手を貸してくれませんか?」
「あ、じゃあ俺が」
手を挙げてくれたのは上鳴君。彼なら分かり易いだろう。
「じゃあ、穂先を握って」
「ウッス」
上鳴君がサウザンドジャッカーの先端を握ったら、ジャッキングリングを引き絞る。
【JACKRIZE!】
「うおっ!?」
「言い忘れていましたが、運動神経系をジャックする副作用があるので一瞬虚脱感に襲われます」
「先言ってくれよセンセェ・・・」
「済みませんね」
『出久、解析完了だ』
と、そうこうしているウチにアークからの解析データがザイアスペックに送られて来た。ほうほう、コレはコレは・・・
「またもや適合データ。今日は運が良いですね」
【Progrisekey confirmed.Ready to Learn.】
アークによれば、この能力はライダモデルの欠陥データの修復に使えるらしい。ならばと、迷わずブランクキーを装填してトリガーを絞った。
【INJECTRIZE】
【
出来上がったのは、アビリティ:サンダーのライトニングホーネットプログライズキー。とても有用なアビリティだ。
「えっと、確か爆豪の時もソレ造ってましたよね。何スかそれ」
「あぁ、コレはプログライズキー。現在開発中の新型サポートアイテム、そのソフトウェアユニットとなる装置です。ご紹介は追々・・・
ではでは、いざご照覧あれ!このサウザンドジャッカーの性能を!」
【Progrise key confirmed. Ready to break.】
【
「離れて下さいねッ!はぁッ!」
【
ジャッカーを鋭く振るうと、放電と共に
「あ、あんな正確に雷を・・・」「スゴいスゴーい!」
「あの、あんな使い熟されたら、俺の立つ瀬ねぇんスけど・・・」
「お、落ち込むなって・・・」
おっと、これはいけない。先生が生徒の心を折ってどうする。
「あー、我がZAIA社でサポートアイテムを作ってみませんか?素晴らしいデータを頂けたお礼です。このライトニングホーネットを使える装備を作って差し上げられますよ?」
「え、良いんスか!」
「勿論。恩も仇も、私はしっかりと返したい
「じゃあ、お願いします!」
うむ。未来の顧客を獲得出来て、結果オーライだね。
「あ、そうだ。ねぇ先生、もしその武器、
「あー、確かに」「敵に回ったら怖過ぎる・・・」
「実質何でもありだしなぁ」
「ほう、其所に真っ先に思考が向くとは、良い着眼点ですね」
確かに、武器は味方の時の頼もしさと敵の時の手強さを比例させる。もし僕以外にサウザンドジャッカーを使う奴が出て来たら・・・うむ、考えたくも無いな。
「確かにコレが敵に渡れば、1000%厄介な事になるでしょう。
ですがご心配無く。このサウザンドジャッカーには、私の指紋と静脈スキャンによるプロテクトが掛かっています。私以外は起動出来ません。
万が一起動したとして、内蔵した自爆装置を社長権限で起動させ、テルミット反応で内部を丸ごと融解させられます」
若干の嘘を混ぜて、セキュリティ対策をアピールする。
本当は起動に必要なスキャニングコードなど存在せず、アークがハッキングする事で無理矢理起動するのが唯一の正規ルートと言う逆転の発想を採用したシステムだ。不正開錠どころかそもそも鍵穴すら無いので、僕達以外には起動のしようが無い。
『出久、時間だ』
「おっといけない」
時間を確認すると、確かにそろそろ迎えが来る頃だ。
「済みません皆さん、これから本業の社長業務があるので、今日はこれで・・・」
「えー?そーなのせんせー?」「お気を付けて」
「やっぱ社長って忙しいんだな」「また明日ー!」
生徒達に手を振って、校門前で待機してくれていた社用車に乗り込む。
「お疲れ様です、社長」
「態々ありがとう」
「いえ。では、発車します」
ドライバーに労いを掛けつつ、シートベルトを締めた。そして眼を閉じ、アークの居る電脳空間に飛び込む。
「で、どうだった?」
『この通りだ』
悪意の文字が犇めくドス黒い電脳空間で、一際黒い異形・・・アークゼロと一問答。突き出されたのは、膨大なデータ。それに次々と眼を通す。
「これは・・・」
『あぁ』
その内容は、僕とアークに対応を決定させるには、充分足るものだった。
導き出された、ただ1つの結論は─────
「『滅亡だ』」
(NOサイド)
「クソ・・・クソッ、クソッ!クッソォ!!」
深夜。とある公園で1人の青年が、腸に溜まった怨嗟をぶちまけていた。
──あ~あ、あれ何時まで掛かるかな──
悠々と退社する上司や同僚の嘲笑を背中に、真夜中まで残業を続けた山のような作業。
──おいおい、俺じゃねぇよ。お前のしょうもないミスで迷惑した皆さんに土下座して謝れよ。なぁオイ!とっとと謝れよコラ!土下座だド・ゲ・ザ!──
小さなミスに対して、教育も指導もせずただただ怒鳴り散らす上司に、オフィスで公開処刑のように強要された無意味な土下座。
──ほらイーッキ♪イーッキ♪──
無理矢理連れて行かれたキャバクラで流し込まれた、アイスバケットになみなみと注がれた酒。当然酔い潰され、なけなしの休憩時間に掻き込んだ貴重な夕飯ごと胃の中身を全てトイレで吐き戻す羽目になった。更に翌日は早朝に電話で叩き起こされ、二日酔いのまま休日出勤させられる始末。
「あぁッもうクソがッ!死ねよックソがあッ!死ねェ!!死ねェェェェ!!」
脳内を埋め尽くす、吐き気を催すような悪意の暴風雨。
それに流されるように、ビジネスバッグもスーツの上着も地面に叩きつけ、ガンガンと乱暴に踏み付ける。そんな彼の顔は、何時の間にか涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
「お兄さん、溜まってますね」
「え・・・?」
そんな彼に、話し掛ける少年が1人。闇夜に浮き上がるような真っ白なパーカーを着たその少年は、何時の間にか青年の前に立っていた。
「何だよ・・・お前・・・」
「感じますよ・・・貴方に降り掛かった、悍ましい悪意を。
憎いでしょう、腹立たしいでしょう。悔しいでしょう」
まるでぐずる幼子に語り掛けるような優しい口調で、少年は囁き続ける。
「ムカつくなァ・・・いっちょ前に同情してんじゃねぇよこのガキ!何も分かる訳ねェ癖に、知った風な口効いてんじゃねぇ!」
「いいえ、分かります。私も、冷遇される立場だったから」
「っ!?」
青年は、困惑した。目の前の謎の少年が発した言葉の、その温度に。
自分に優しく共感する暖かさがある。しかし同時に、針のように鋭く研ぎ澄まされた氷柱のような、痛みを伴う程の冷たさも籠もっている。
そんな矛盾する心の温度に、青年は毒気を抜かれてしまった。
「貴方を苦しめるその会社・・・滅亡させてあげましょうか?」
「めつ、ぼう・・・?」
現実味の無い申し出に、青年はポカンとする。
「彼方は冷遇されるべきでは無い。彼方の頑張りは知っています。遅くまで丁寧にデータを纏めているのも、後輩の失敗をやさしくフォローしているのも・・・
それを無理矢理搾取する会社など、棄ててしまいませんか?」
久しく聞いていなかった、暖かな称賛。それは、枯れて果てたと思っていた青年の心に突き刺さる。
「ぐっ、うっ・・・うあぁぁぁっ・・・!」
「今夜は、しっかりとお休みなさい。私が、彼方の憎悪を引き受けます」
そう言って、優しく彼の頭を撫でる少年。その眼からは、赤黒い光が漏れていた。
【
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
・緑谷出久
最若年悪意社長雄英教師。公私の公では敬語がほぼ抜けない。
渡我との出会いが、実はほぼナンパだった。淀んだ腐りかけの眼で笑顔だけ貼り付けてたらそりゃアークの眼にも留まるよね。
立て続けに2つもライダモデルが復元出来て、未来の顧客候補も確保出来たのでホクホク。因みにサウザンドブレイク時は落雷をバックにジャッカーを胸元に寄せる決めポーズを付けてた。
・アーク
一般転生2周目悪意。
昼間は基本喋らず、出久の情報処理装置を担当している。本格的に喋る場合は、出久の脳にハッキングして電脳空間で会話。因みにデフォルトの容姿はアークゼロに固定した。
また、アークの存在そのものが出久のメインウェポンであるサウザンドジャッカーの起動キーであり、アーク無くしてサウザンドジャッカーの機能を行使する事は不可能である。
・上鳴電気
ジャックライズ被害者2号。但し合意の上。
自分の弱点を全く引き継がずえげつない使い熟し方をされたので結構ショック。でもそれと同じ使い方が出来る装備を開発してくれると言う約束が出来たので其所まで引き摺ってはいない。
・社畜の青年
会社の悪意の被害者。イメージキャスト:佐野岳。
何所にでも居る優しい青年。しかし、優しい故に悪意に利用され、心身を擂り潰される羽目になっていた。
モデルはドラマ《封刃師》の第一話に出て来た社畜青年の穢人。
~アイテム紹介~
・サウザンドジャッカー
新しい必殺技を披露した優遇武器。この小説において、
ジャッキングブレイク→属性そのものを放つエネルギー攻撃
ハッキングブレイク→ライダモデルの特性を自分の身体に付与するバフ攻撃
サウザンドブレイク→ライダモデルの性質を全開放するハイブリッド攻撃
と言う設定としている。
・ライトニングホーネットプログライズキー
超優遇プログライズキー。
原作での性能として、上鳴のサポートアイテムであるターゲットと同じ効果を持つ蜂型ミサイル、へクスベスパを発射する能力があったのでこのモデルに。
今作最初のサウザンドブレイクを飾った。