マリス・フライングバットレス   作:エターナルドーパント

7 / 24
切られる地獄へのチケット

(出久サイド)

 

『やっぱ派手っつったら、爆豪・轟・渡我の3強だよなぁ』

『ダーティーかつヒロイックだもんなぁ。カッケェよ001』

『爆豪ちゃんは人気出すの大変そうね。すぐキレちゃうし』

『あ゙!?出すわクソがッ!』

『ほらこう言う』

わちゃわちゃと賑やかな会話を傍受しながら、僕は雄英を目指してザイアエクステンダーで駆ける。夜中の()()()帰りだが、これから講師の仕事だ。

そして傍受している内容は、離れた雄英敷地内を走るバスの中の生徒達の会話だ。

『アハハハハハ!良いじゃん!盛り上がってきたねェ!』

そして、一緒に乗っている頭痛の種(あのヤロウ)の声も聞こえてきた。ホントに喧しいな・・・

『それにしても、主任さんが助っ人とは驚きました!』

『あ、そうなんだ。まぁ良いんじゃないのどうでも』

『自分の事なのに無頓着ですね』

『主任。渡我被身子テストパイロットが困惑しています。余り困らせないであげて下さい』

通信に割り込む形で、クールな女性の声が混じって来る。

彼女はキャロル。主任の補佐を務めるオペレーターだ。彼女は精神を電脳世界に切り離す個性、《ヴァーチャルダイヴ》を持ち、情報処理分野に於いては凄まじい適性を叩き出している。因みに我が社のAI改良も請け負ってくれたスーパーエリートだ。

『ハハ!よぉうやくお目覚めかぁいキャロりん♪相変わらずぐっすり熟睡出来てるみたいで羨ましいね。ま、君の芸術的な寝相の悪さは見習いたかァ無いけどさ!ギャハハハハ!』

『リクエストを認証しました。どうやら死にたいようですね』

「キャロルさん、一応生徒は巻き込まないようにして下さいね?」

『社長、これはジョークですよ。ただの可愛らしい、オペレータージョークです』

『アッハハハハハハ!ねえ社長聞いたァ!?あのキャロりんが自分で可愛いとか言っちゃったよ!今日はテルミットかミサイルの雨でも降るのかな!?ギャアハハハハ!』

『分かりました。では主任、テルミットグレネードとマイクロミサイル、好きな方をお選び下さい』

『あれ?マジ?』

「はいはいそこ、痴話喧嘩しないで下さい」

喧しい遣り取りを聴きながら、脳内に薄らと浮かび上がる《人選ミス》の4文字から眼を逸らしつつ通信を切る。

「全く、あれで戦力としても開発部としても優秀だから腹立つな」

『と言っても、優秀な人員というのは得てして何処か拗くれているものだ。大切なのは許容だぞ。何より、主任はアレでもまだマシな方だ』

「あーうん、アークが幾つか見せてくれた狂気(キチガイ)ライダーに比べればね」

真っ先に浮かんでくるのは、やはり某神ィを自称するリアル作画崩壊男。次いで自分の作ったアンドロイドに幼稚な動機で拷問を繰り返したカスに、他人を実験材料にする事をあたかも呼吸でもするかのように実行するサイコ科学者。後は国を跨いでテロを仕掛けてその被害を出汁に自社の軍事製品で丸儲けしようとした別世界のザイアのCEO・・・

うん、主任はまだ人格者だね(錯乱)。

『いやそれは違うぞ』

「やだなぁアーク、冗談さ冗談・・・」

『いや、眼がマジなんだが?』

そんな事を言い合っている内に、もう駐車場の入口だ。さて、今日もお仕事と行こうかな。

 

(NOサイド)

 

「此処が今回の演習施設、《嘘の災害・事故ルーム》、略して・・・USJだ」

「「「「USJだったァ!?」」」」

相澤から告げられた、今回使用する演習施設の名前。どうにも危ない名前をした施設であり、生徒側からツッコミが上がる。

『ギャハハハハ!ねぇ、アレ大丈夫だと思う?』

「いやぁ、私はちょっと・・・分かんないです」

『あ、そうなんだ。じゃあキャロりん?そっちはどう思う?』

『著作権は既に消滅しています。法的には何の問題も無いかと』

『ヤハハハ!クールだよねぇ、何時も・・・』

一方ザイア組は、施設名について楽しく談笑していた。物を造る会社だからか、著作権方面には明るいようだ。

「元気があって宜しいですね!では、ボクも挨拶をさせていただきましょう!」

「あー!スペースヒーロー13号だ!ファンなんだぁ~!」

そんな中、教員として授業に参加している宇宙服のようなコスチュームを着たヒーロー、13号が声をあげる。A組女子の1人、麗日お茶子は、ファンであった為かテンションが跳ね上がった。

「訓練に入る前に、ボクから小言が1つ、2つ、3つ・・・」

『せめて纏めて来ようよ』

「うぐっ」

主任の空気を読まないツッコミが13号を襲う。

「で、では本題に・・・突然ですが、ボクの個性は知っていますか?」

「はい!ブラックホール!その個性で、災害現場でも素早く人を助けられるんですよね!」

「その通りです!」

興奮気味の麗日の言葉に是と答え、但し、と続ける。

「使い方を誤れば、容易く人を殺める事が出来てしまう・・・そんな危険な個性です。皆さんの中にも、そんな人がいると思います」

『まぁ、俺のゲンコツとか普通に頭蓋砕けるしね!』

「私は個性を発動する過程で殺しかねないです」

『ま、要するにだ。殺す力も無けりゃ現場じゃ大体人助けなんか出来ないんだから、今の内に自分の殺傷力を認識して、活殺自在になれって事だよね!』

「・・・纏めるとそうですが、ボクの言いたかった事を全部取らなくても・・・」

『ギャハハハ!あ、そうなんだァ・・・まぁ良いんじゃないの?ウダウダ話すより、簡潔に言った方が分かり易いよ。只でさえコイツら本番経験の無い、クソ童貞クソ処女共だしね』

「セクハラです!」

 

─バゴォンッ!─

 

『ア゜ッ!?』

途轍もなく重い音と共に、主任が渡我に蹴り飛ばされた。基本的に主任の立ち位置としては、不謹慎な事を言えば蹴っ飛ばしたり殴り飛ばして良いと言う中々にハードなモノなのだ。

「ウチの主任さんが御免なさいなのです」

「いや、まぁ良いけどよ・・・つーか、いい加減その人について教えてくんね?さっきも、『着いたら話す』っつって聞けなかったし」

「それもそうですね。主任さん、自己紹介をお願いします」

『ハイハーイ!』

シャチホコのように海老反りになってすっころんでいた主任だが、話を振られた途端に一瞬で起き上がる。先の立ち位置にあって尚ここまで巫山戯られるのは、この頑丈さあってのモノだ。

『って訳で、どォーもヒヨッコ諸君!俺は社長が経営するザイアエンタープライズの開発部主任、シュニン・ハングマンだ!』

「「「「「役職そのまま名前かよ!?」」」」」

『ギャハハハ!まぁビックリするよねぇ、日本人ならさぁ。でもお前等にゃ言われたく無いかな?其処のパツキンイナズマボーイなんて、まんま上鳴電気なんて名前だしさ!』

「た、確かに・・・」

実際、世界には浪人(ローニン)やらバカやらと、日本語では可笑しな名前が幾らでもある。シュニンと言う名前があっても不思議は無い。

『年齢は27、個性は見ての通り《ロボット》の異形型!今回は社長の助っ人に来たんだ。で、何か質問ある?』

「では、先程おっしゃっていた開発主任とは、一体何の開発でしょうか?」

『兵器』

「・・・え?」

『だから、兵器だよ、兵器。他人を殺傷する為の道具』

八百万の質問に対する主任の爆弾回答に、生徒側は粗方フリーズする。

「え?そ、そんなヤバい事してんの?シャチョーって・・・」

「あーもう、言い方最悪ですよ主任さん」

『ギャハハハ!そっかそっかァ!』

悪びれる様子も無く、何時もの調子でゲラゲラと笑う主任。一種狂気的なまでのその笑い声に、渡我以外の生徒達は若干引き始めた。

『まぁお前等に馴染みのある言い方をするなら、サポートアイテムってヤツだね。まぁウチのは全くの新型だけど』

「私の使ってるフォースライザーとか、他にも新型装備が色々ありますよ!」

「な、なぁんだ、サポートアイテムかぁ・・・」

「てっきり戦争とかに関わってるとか思っちゃったぜ」

軽く言い方を変えただけで、狼狽えていた生徒達はコロリと安心する。それを見て、渡我は複雑な表情を浮かべた。

『つってもさぁ、ヒーローってヤツァ、ぶっちゃけやってる事は他人への攻撃だからねぇ・・・自分が兵器と定義出来る範疇にあるモノを装備して、何時でも人を殺せる事・・・努々忘れるなよ』

何時もの調子とは違う、ドスの効いた低い声。その声には殺気が乗せられており、生徒の耳から鼓膜を揺らして、脳髄に恐怖を擦り込んだ。

『アレ、ちょーっと脅かし過ぎちゃったカナ?まいっか!遅かれ早かれ・・・アレ?』

おちゃらけた雰囲気に戻った主任だったが、何かを感じてUSJ中央広場に視線を向ける。丁度同時に渡我と相澤も其方を見遣った。

「ッ!全員、その場から動くなッ!」

「何やってんですか彼奴ら・・・」【FORCE RIZER!】

ぶわりと髪の毛を逆立てて、相澤が待機を命令する。一方渡我はフォースライザーを装着し、伊達眼鏡を掛けてザイアスペックを起動した。

「え、何?入試みたく、もう始まってるぞー的な?」

『イヤイヤ、あれは()()()()だよ。お前等クソ童貞は気付かないだろうけど』

「あれは・・・(ヴィラン)だ!」

「ヴィ、(ヴィラン)ンンン!?」

相澤が断言すると、瞬く間に動揺が広がった。ヒーローの卵とは言え、未だ子供。有事への心理的備えは、まだまだ未熟である。

「あ、アホだろ!?ヒーローの学校、本拠地だぜ!?何でそんなとこに乗り込んで来るんだよ!?」

『ん~、どうだろうね?キャロりん、雄英職員室に外線通達は?』

『現在施行中。ですが、不明なジャミングにより接続不能です。私も本体に戻れません』

『ギャハハ、やっぱりか!応援を喚ばれないよう電波妨害をしつつ、しかもこっちの予定を読んでA組が孤立するこのタイミングに仕掛けて来る。クールだねぇ・・・マァとは言え?此処に飛び込んで来る辺りはやっぱりバカだよね!最低限、アホでは無いみたいだけどさ!』

情報を手早く整理し、分析する主任。

敵のジャミングにより、電波通信は不能。ディープウェブネットワークを介して電脳空間と物質空間を行き来するキャロルも、ザイア本社に眠る自分の本体へと帰還出来ない状態である。

「初めまして、雄英の皆様」

と、そのタイミングで敵の中心格級の人物、黒霧が口を開いた。

「我々は(ヴィラン)連合。今回雄英に侵入させて頂いた目的は、オールマイトに息絶えて頂く事・・・なのですが・・・」

『ギャハハハ!残念だったねぇゴミムシ共。あの物好きな変態人柱は此処には居ないよ。もうちょっと待ってくれれば来るんじゃない?ちょっ~と時間掛かるけどね!』

RAID(レイド) RIZER(ライザー)!】

軽口を叩きながら、主任は自分のメイン武装となった兵器、レイドライザーを装着する。

『渡我ちゃん。A.I.M.S(エイムズ)隊長として、変身許可』

「おい!何を勝手に!」

『生憎だけどさ。ことプログライズキーシステムが絡む殺し合いに於いては、俺には全般指揮権があるんだ。一介の教師よりも遥かに上の、()()()()()()()権限がね。そして俺の仕事は、ああ言うゴミムシ共の排除。この任務に於いて、俺と渡我ちゃんは、指揮官と兵士の関係になるんだよ。てな訳で、行こうか渡我ちゃん!』

「了解です!」

【JUMP!】【SEARCH!】

淡々と説明しながら、主任と渡我はそれぞれのキーを起動。腰のユニットに装填した。

フォースライザーの不安を煽るようなアラートと共に、レイドライザーからは建設現場を想起させるようなけたたましい待機音が鳴り響く。

「変身!」『実装』

【FORCE RIZE!】RAID RIZER(レイドライズ)!】

渡我がレバーを引き、主任はレイドライザー上部のボタンを叩き込む。

【ライジングホッパー!】

【スカウティングパンダ!】

 

【A jump to the sky turns to a riderkick.】

【BREAK!DOWN!】

 

彼の眼に未知は有り得ない(There is nothing unknown to his eyes).】

 

それぞれのシステムが発動し、渡我は001に、主任は光学観測ゴーグルと竹型のメーザーランチャー(デッドモノクローム)が特徴の紺と白の戦士、スカウティングパンダレイダーに変身した。

しかし、主任のレイダーはこれでは終わらない。

PACKAGE(パッケージ) RIZE(ライズ)!】

追加音声と共に、彼の前方に更なるパッケージパーツが出現。

乱射魔の(THE FUNKY TRIGGER HAPPY) ゴリ押し強行突入(POWERFUL DYNAMIC ENTRY)!】

それは、ブースターユニットを備えた太い両脚の装甲と、大型の銃をマウントしたウェポンハンガーが肩に着いた両腕。後ろからブーツを履くように脚を突っ込むと、余剰スペースが締め上げられ密着。両腕も上からパッケージが被さり、よりゴツいシルエットとなった。左肩には、タロットカードの大アルカナ12番、吊られた男(ハングドマン)のエンブレムが着いている。

LAUNCHING(ラーンチング) HUNGD MAN(ハングドマン)!】

これが、主任自ら開発した特殊武装パッケージ・・・A(アーマード)C(カスタム)ハングドマンである。

『戦えないヒヨッコ共は下がってなよ!オジサンがちゃっちゃと終わらせちゃうからサァ!システム、戦闘モード♪』

「クソがッ!」

 

─BBOM!!─

 

『アラ?』「ちょっ、ファッキンボンバー!?」

主任の警告に真っ向から反抗し、爆裂射出で独断専行する。しかし、飛び出したのは彼だけでは無かった。

「此処で引いたら(おとこ)じゃねぇ!()()()()はもう御免だッ!!」

「切島君!?」

「オールマイト殺すだァ!?その前にテメェが殺されるたァ思わなかったのかァ!?」

「バカッ!戻りなさい2人ともッ!!」

13号の制止も虚しく、2人は真っ直ぐと黒霧に飛び込む。対して、黒霧の後ろからは真っ黒なローブをスッポリと被った2人組が現れた。

 

─ドグッ カァンッ─

 

「ばがっ!?」「うがっ!?」

黒ずくめ2人組によって、爆豪達は容易く殴り飛ばされてしまう。硬質化の個性で受け止めた切島は兎も角、爆豪はモロに腹に拳を受けてしまった。時速50km以上の加速を得た60台後半の体重を、容易く殴り飛ばす拳を。

「ゲッ、がハッ・・・うごぇ・・・!?」

「痛ぇ!?わ、割れた!?パワー系の個性かよ!?」

結果、腹筋を貫き内臓を穿つ衝撃に耐えきれず、爆豪は胃の内容物を吐き戻してしまう。切島は内臓へのダメージこそ無いものの、硬化させた腹部に罅が入ってしまった。

「オイオイ、どうせなら頭殴れよ」

爆豪を殴り飛ばした人物に対し、敵のリーダー、死柄木弔がクレームを入れるような口調で話し掛ける。どうやら派手なスプラッタがお好みなようだ。

「申し訳ありません。ですが脳を破壊された際の絶命反射の危険があり、距離を離す事を優先しました」

「ふぅん・・・まぁ良いか。あのカス共が地べたに這い蹲ってるのが見られたし、ちょっとはスカッとしたよ」

合理的な理由などは理解せず、ただただ嫌いなモノが痛い目を見ているので満足した死柄木。その様は未熟で、何処か子供の気紛れめいたモノを宿している。

「それにしても、流石は雄英生。まだまだ荒削りとは言え、攻撃に躊躇がありません。ですので予定通り─────

 

─────散らして、嬲り殺す」

 

『あ、やっべ』

ブワリと黒い靄(ワープゲート)を周囲に展開する黒霧に、主任は若干慌てた様子で飯田を引っ掴んだ。

「は!?な、何を!?」

『ゴメン、ちょっち時間ねェからさ。ちゃちゃっと走って、先生呼んできてよ。貴様の脚なら、それが出来る』

「ま、待って下さい!仲間を置いて行くなど、委員長の───」

『ウダウダうっせェなァ!戦闘の基礎も知らねぇゴミムシ風情が、いっちょ前に戦えると思ってんじゃ無いよ!今のお前にゃ、良いとこ行って漸く使いっ走りの伝令係が関の山なんだよ!』

理想との乖離にごねる飯田を、荒々しい正論武装で捻じ伏せる。この場で最大戦力は、どう見ても主任。その最大戦力から戦力外通告を叩き付けられ、飯田の顔が苦々しく歪む。

「他にないから仕方無いにしても、敵前で策を話す事がありますか!」

「聞かれて良いから話したんでしょうが!」

迫り来る靄を、13号が指先を開いて吸引する事で足止めする。一応は吸い込まれているものの、長くは持ちそうに無い。

『焦るより、今はやれって言われた事だけやれば良いのさ。じゃ、頑張ってねェ!』

「うぉあ!?」

『証明して見せろ。貴様の、価値ってヤツを』

圧を消しておちゃらけた口調に戻しつつ、主任は飯田を入口まで放り投げた。しかし次の瞬間、視界がぐらりと傾く。

『お?っと、クッソ時間切れか』

足元を見てみれば、何時の間にやら黒い靄が絨毯を広げていた。その中に片脚が沈み込み、踏ん張る事も出来ない。

『主任、13号が危険な状況です』

『あ、そうなんだ。じゃ、ちょっとだけ助けるかな!』

左肩のウェポンハンガーから巨大なアサルトライフルを取り外し、13号に銃口を向ける。当の13号は、自分のブラックホールを空間跳躍で背後に繫げられつつあった。このままでは、自分の重力(個性)で自分を引き裂いてしまう。

『背後がお留守だぞォ!お嬢ちゃん!』

銃身下部のマウントレイルに着けたグレネードランチャーが、ボシュッと言う音と共に弾頭を発射。それを最後に、主任はその場所から消え失せる事となった。

 


 

「うわっ!?」

「ぐっ・・・」

爆豪と切島は、崩れたビルの中に飛ばされた。USJ内、倒壊エリアである。

「お、来た来た」「ガキだ!」「俺達の獲物だァ!」

それを見て、血を嗅いだピラニアの如く寄り付く集団。敵連合に引き入れられた、金目当てのゴロツキ共だ。

「ボロい仕事だよなぁ?コイツらガキを殺しゃあ、それだけで報酬がたんまりなんてよぉ!」

「や、やべぇぞ爆豪!敵がいっぱいだ!」

「ッ・・・クソが」

腹を擦りながら痛みを沈め込み、何とか起き上がる爆豪。満身創痍の獲物を前に、薄汚いチンピラ共は舌舐めずりをする。

「・・・おい、クソ髪」

「え、それ俺か?」

「良いから黙って聞けや殺すぞ」

「アッハイ」

低く唸るような声の爆豪に、どうこう言うだけ無駄だと押し黙る切島。この場合の最適解である。

「隙作ってやる。それに合わせて、合図で殴り込め。ゼッテェ振り向くな」

「お、おう。よく分かんねぇけど」

手短な指示で切島を頷かせると、爆豪は両手に意識を集中する。パパッと小さなスパークが散り、成分の調整が完了した。

「喰らえや、クソ敵共が!」

 

─PPPAM!!─

 

閃光手榴弾(スタングレネード)ォ!」

頭の上でクロスされた手から、凄まじい閃光が放たれる。周囲の敵の網膜を真っ白く塗り潰し、致命的な隙を作り出した。

「やれクソ髪!」

「お前スゲぇな!」

それを合図に、岩より硬い拳と金属製ニープロテクターが敵の顔面に叩き込まれる。

この日、爆豪は生まれて初めて連携プレーを行った。

 


 

『ギャハハハハ!盛り上がってるねぇ!』

「うわぁぁぁ!選りに選って頭おかしい野郎と一緒だァ!」

「峰田ちゃん、失礼が過ぎるわよ」

「いえ梅雨ちゃん、この人にはこの反応が妥当ですから気にしないで下さい」

泣き叫ぶ峰田を叱る蛙水に対して、何でも無い事のように言い放つ渡我(001)。飛ばされて来たのは、この4人。

彼女らがいるのは、USJ内水難エリアの難破船型のハリボテの上。背後の孤島を含め、周囲をぐるりと巨大な人口湖に囲まれており、その中には数十人の水中特化敵が潜んでいる。

「ウワァァァン!死にたくねぇよぉ!」

「喧しいですねぇ・・・」

みっともなく泣き叫ぶ峰田にうんざりしながら、船の下を見遣る001。其方では、大量の敵が今か今かと待ち構えていた。

「とっとと刻んじまおうぜェ?」「焦るなよ。どう足搔いても俺らにゃ勝てねぇんだから」「さっきの女、結構楽しめそうだったよなぁ・・・♪」

 

「・・・ゲスで、カスで、小物です。獲物を前に舌舐めずり、ド三流のする事なのです」

『まぁ良いんじゃない?どっちにしろ始末するんだしさ。でもこの2人邪魔だから、渡我ちゃんが運んでってよ』

「じゃあ、この場の処理はお任せします。あ、社長にSOSだけ出しときますね!」

『お願いします、被身子パイロット。我々のザイアスペックでは、量子通信は1度が限度ですので』

キャロルの言う通り、現状で支給されたザイアスペックは、未だ不完全な試作品と言うべきモノである。

出久のそれは、アークが全制作した完成品であり、量子通信も30時間は送受信可能である。だが、それを量産してしまえば市場は大混乱に陥る事は確実。故に、部下や商売相手には意図的に性能を著しく落としたデッドコピー版を渡しているのだ。

これは量子通信の送信が1回の緊急時SOSしか出来ず、処理能力も本来の30%程度で、正直言って出来損ないも良いところである。

尤も、その程度の性能であれど単純な連携作戦には問題無いので、現状クレームは無い。

「じゃ、ハヤブサちゃんで行きましょうか!」

【WING!】【FORCE RIZE!】

渡我はホッパーキーからファルコンキーに素早く換装し、再びフォースライザーを展開する。

【フライングファルコン!】【BREAK!DOWN!】

「さ、行きますよ!」

001から迅に再変身した渡我は、蛙水と峰田を掴む。

「時間稼ぎ、お願いします!」

『任せちゃってよ!オジサン頑張っちゃうからさ!システム、戦闘モード!』

主任(ハングドマン)は右手のデッドモノクロームをウェポンハンガーの空きホルダーに取り付け、軸回転で下りて来たもう1つのホルダーからアサルトライフルを取り外す。装填された大容量ボックスマガジンから銃の電子機器が残段数を割り出し、モニタに映し出した。

そして左手の銃もハンガーに預け、代わりにウィンチェスターライフルにも似たレバーコッキング構造のグレネードライフルに持ち替える。

『オラオラァ!こっちだァ!』

 

─BARRRRRRRRRNG!!─

 

「げぇ!?実弾!?」「何でチャカなんか持ってんだよ!?」「ガキじゃねぇのか!?」

挨拶代わりとばかりに、ハングドマンは右手の銃でフルオート射撃。海面に銃弾を散蒔く。尤も、撃っているのは樹脂弾なので、当たっても大怪我で済む代物だ。

『キャロりん、左は任せた(ユーハブ・レフトコントロール)!』

承知しました(アイハブ・レフトコントロール)

更に、左腕の操作権限をキャロルに譲渡。グレネードライフルの並列斉射で、更に広域を牽制する。

「行きます!」「えっちょっ心の準備が!?」「腹くくりなさい峰田ちゃん」

『じゃあ、頑張ってねェ~!』

敵がハングドマンからの射撃に一杯一杯になっている隙に、迅がスクランブラーを展開。空中に舞い上がり、最初に居た広場を目指した。

「クソッ!ヤツら逃げるぞ!」「気にしてられるかよ!」「こっちはもうあっぷあっぷしてるっつーの!」

狙い通り、敵はハングドマンの制圧射撃に釘付けになっており、迅の撃墜処では無い。多少余裕のある場所からは気持ち程度に疎らな攻撃が飛んでくるものの、迅はそれを余裕を持って回避し、悠々と飛び去って行く。

『中々上手く避けるもんだ。あホイ~っと☆』

迅の回避に関心しながら、ハングドマンはアサルトライフルからグレネードを放った。その弾頭は緩く弧を描いて湖に着水し、一拍遅れて水柱を立てる程の途轍も無い大爆発を起こす。

『メタルナトリウムグレネード、威力は上々のようです』

『まぁ良いんじゃない?それなりにはサ』

衝撃波で気絶した敵がプカプカと浮かび上がって来るが、深層に潜って爆発を遣り過ごした生存戦力もまた浮上し、次々と攻撃を放って来る。船は見る間にボロボロになり、傾いて沈み始めた。

『ヤバいヤバいッ!ギャハハハハ!』

脚のバーニアを吹かし、後ろの孤島の岩山に退避するハングドマン。船はミキサーに掛かったように砕かれ、敵はギラギラと紺色の仇敵を睨め付けている。

『じゃあちょっと遊ぼうか』

 

─ガシャッ─

 

両手の武装をハンガーに預け、右手で太腿の装甲を叩く。すると小気味好い音と共に一部装甲が浮き上がり、その隙間にプログライズキーが装填出来るスロットが出現した。

【THUNDER!】

【Progrisekey confirmed. Ready to Over.】

【Hornet's ability!】

ライトニングホ-ネットを起動し、スロットを閉じるように再び叩く。すると両肩のウェポンハンガーがパージされ、代わりに背中に巨大なちくわぶを半分に切ったようなハニカム構造の装置が出現、接続された。

 

【不明なユニットが接続さレマしタ。システムに深刻ナ障害が発生シテいマす。直チにシ用を停止しテ下サい】

 

ノイズ混じりのシステム音声が発する危険警報(ワーニングコール)を無視し、ハングドマンは更にスロットをタップ。すると背部の装置、13×5×2・広域殲滅超高圧電磁砲(マルチプルパルス)が変形し、両肩前面を覆うように展開された。更にハニカム構造から六角柱型の電磁波放射装置がシリンダーのように飛び出し、さながらハリネズミのような見た目になる。

 

『ギャハハハハ!ハーッハッハッハッハッハッハ!!』

【ライトニング!オーバーライド!】

 

狂ったような高笑いと共に、周囲は緑の閃光に包まれた。

 

(出久サイド)

 

「全く、選りに選って今日か!」

『嘆いても仕方が無い。全速力で向かうだけだ、出久』

ひーちゃんからの、1回キリのSOSを受け取った僕は、瞬時にUターンしてエクステンダーに跨がり、目一杯に飛ばしていた。

『場所はUSJ内、確実に黒霧含むオールフォーワンの手下だ』

「分かってる!だからこそ急がなきゃ・・・ッ!」

ザイアスペックの望遠機能で、遠くから此方に猛スピードで走ってくる人影を見付けた。あれは・・・飯田君か!

「アーク、彼のヘルメットにハッキング!」

『了解した』

飯田君の方も、僕に気が付いたらしい。減速仕掛けているが、その必要は無い。

「飯田君!状況は大体予測しています!貴方はそのまま雄英本館に!他の先生に伝達を!」

『ッ!分かりました!』

減速を途中で辞めて再加速した飯田君と、猛スピードで擦れ違う。そして更にギアを上げ、アクセルを目一杯に捻った。

電磁コイルを内蔵したホイールが、超伝導のスパークを飛ばす。間も無く、時速は250kmに到達。その辺りで、漸くUSJが見えた。

「上から派手に突っ込む!」

STRONG(ストロング)!】

【Progrisekey confirmed. Ready to Boost!】

【Herculesbeetle's Ability!】

ユニバーサルスロットにアメイジングヘラクレスキーを叩き込むと、ライダモデルを抽出。ヘラクレスの象徴たる角は、鋭い衝角に。力強い羽は、この大型バイクをも浮かせる逞しいウィングになった。

「行けッ!」

車体は揚力を受けて浮き上がり、段々と高度を上げる。そしてUSJのドームを目掛け、一気に突貫した。

けたたましい音と共に、ガラスが砕け散る。同時に僕は座席を蹴り、宙に身を躍らせた。

 

【THOUSAN DRIVER!】

【BREAK HORN!】

「変身ッ!」

 

【PERFECT RIZE!】

【The golden soldier THOUSER is born!】

 

高速前宙を繰り返しながらアンダースーツに身を包み、拳を地面に叩き付けて着地する。

 

【Presented by ZAIA】

 

「恐れ慄け。赦しを請え。私の強さは─────

 

桁外れだ」

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

・緑谷出久
出遅れた1000%社長主人公。スーパーヒーロー着地で威圧感マシマシに決めた。遂にキメ台詞初使用。出来ればもう少し爽やかに使わせたかった。

・主任/シュニン・ハングマン
超絶問題児開発主任。
ZAIAエンタープライズのサポートアイテム開発部を率いる人物であり、更にもう1つのリーダー肩書きを兼任している。
ゴテゴテに弄ったスカウティングパンダは、実は出久に内容を提示していなかったりする。
何時も狂ったように笑っており、興味が無い事に関してはとてもドライと言うか素っ気ない。
日常的に冷やかしやセクハラを繰り返しているが、彼に対しては社長権限で《その場で制裁しても良い》と言う特別許可が公布されているので、3時間に1回は殴り飛ばされ蹴飛ばされる。それでも持ち前の頑丈さで笑ってみせる剛の者。
元ネタは皆さんご存知、アーマードコアV(ファイブ)の焼け野原ひろし主任。専用機のハングドマンがスカウティングパンダにソックリだからとポン付けしたら、まさかの原作01のパンダレイダーも開発主任だったと言うミラクルが起こった。三奈&ミーナ、かっちゃんグリス&ギアッチョパターンの再来。

・キャロル・ドーリー
主任のメインオペレーター兼パートナーパイロット。
何時も冷静で丁寧な口調だが、主任に対しては一切の容赦が無く、割といとも容易くえげつない行為を行おうとする。尤も、それは気の置けない関係の裏返しなのかも知れないが・・・
個性は《ヴァーチャルダイヴ》。簡単に言えばSAOのナーヴギアみたいな事が自前の肉体で出来る。故にフルダイヴ中は本体は動けないので、ZAIA本社で厳重に保管されている。

・爆豪勝己
歩く火薬庫なクソ幼馴染み。
主任に言われた事にカチンと来て突貫した結果、謎の敵に殴り飛ばされ動けないままに転移させられた。
この世界ではヘドロ事件が起こっていない為、実質これが初めての大きな敗北。
ダメージを受けて本調子じゃないままで敵に囲まれれば止む無しと苦虫を噛み潰しながらワンマンプレーを捨て、切島に協力を仰いだ。

・切島鋭児郎
主任に言われた事に過去の記憶を刺激され、飛び出した結果殴り飛ばされ転移させられた。
防御特化の個性であった為爆豪よりは軽傷だが、それでも拳で硬化を割られるのはほぼ初めてなので大きく動揺した。
爆豪が初めて連携プレーを持ちかけた相手。

~アイテム・装備紹介~

・レイドライザー
簡略式量産型汎用各種兵装実装装置
プログライズキーを装填しボタンを押し込む事で、そのキーのライダモデルを瞬時にラーニングし装甲を作り上げるサポートアイテム。
味方の位置をリアルタイムで視界に透視投影する事で連携精度及びフレンドリーファイア防止性能を高めており、使用者の脳波を計測する事で戦闘時の動きをサポートし、武器のブレを最小限に抑える。
また、戦闘終了後のクリアリング完了時には、脳波に干渉して興奮を抑え、パニックを抑制する機能が搭載されている。

・スカウティングパンダプログライズキー・ACハングドマン
スカウティングパンダの主任専用カスタムバージョン。
A(アーマード)C(カスタム)システムにより、突出した技能・特性を持った所有者に対して専用に制作・チューニングした追加武装パッケージを装着する。
主任のハングドマンは、分厚い装甲と各部のバーニアによるホバー移動、更にデッドモノクローム以外の銃火器の携行及びスムーズな持ち替えが出来るカスタムである。
反面、瞬発力が大きく損なわれており、足を停めると致命的なタイプ。かなりピーキーなプロ向けカスタムと言える。

・オーバードスロット
各種過火力武装展開用制御ユニバーサルスロット
ACの右太腿に装着された、カセットテープスロットのような構造のユニバーサルスロット。特定のプログライズキーを装填する事で、それぞれのライダモデルに対応した超特大過火力兵器(オーバード・ウェポン)を展開する。

・オーバード・ウェポン/OW
超特大過火力兵器
ライダモデルの性質を機構に組み込みつつ、とんでもなく巨大な兵装として組み上げた頭悪い兵器。ぶっちゃけロマン砲の類い。
無茶苦茶な設計の武装をこれまた無理矢理接続する事になるもんだから各システムに多大な負荷が掛かり、【不明なユニットが接続されました】と言うアラートが鳴る。スカウティングパンダの場合、持ち味である超長距離精密索敵能力もエラーで使い物にならなくなると言う諸刃の剣である。
取り回しもクソも無く、展開時にウェポンハンガー等の肩部用武装を強制パージする為、前隙も後隙も馬鹿みたいに大きい。だが、決まれば相手は確実に再起不能に陥れられる切り札でもある。因みにパージした肩部用武装は、格納後に手動で再度装着する事で使用可能。但しパージ状態で変身解除してしまうと、パーツはその場に転がった状態なので再実装しても肩はスカスカである。実に面倒臭い。
イメージし難ければ、ガオガイガーのゴルディオンシリーズを思い浮かべれば良い。アレこそ正にOWである。

・マルチプルパルス
13×5×2・広域殲滅超高圧電磁砲
ライトニングホ-ネットのOW。ハニカム構造の六角柱集合物を弧を描くように配置し、そのハニカム構造から横13門縦5列×2の合計130門のパルスキャノンを展開して背後以外のほぼ全方位を超高圧電磁波で塗り潰す極悪武装である。電子機器は勿論ぶっ壊れるし、生身の人間だって感電するし、金属は電子部品関係無くバチバチとスパークを散らす。代わりに1発撃てばしばらくの間はエネルギーが枯渇し、生身の筋力に依存した動きしか出来なくなってしまう。そしてOWを使う時は必ずACなんてクソ重い物を纏っているので、確実に行動不能。
尚、この行動不能時間中にも武装の格納や変身解除は可能である。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。